Advanced Bravers |
ハンターA―ガンランス使い
ハンターB―双剣使い
ポッケ村の集会所。その一角で、AとBが向かい合っている。
Aはテーブルに自分の武器を広げ、手入れをしている。
「おい、Aよ」それまで黙ってAを見ていたBが、声をかける。
「なんだ、Bよ」作業の手は止めず、声だけで返すA。
「その物騒な武器をいますぐしまえ」
「なぜだBよ。ハンターたるもの、いかなる時も己の得物は万全の状態にしておかねばならぬだろう」
「確かにそうだ。まったくもって文句のつけようもない、非の打ち所のない正論だ。だがな……そのガンランスの砲口が常に俺の方を向いているのは何故だ?」
「安心しろ、Bよ」
Bの顔を見つめ、真面目に答えるA。
「火薬の量は少なめにしておいた」
「入れるなよ!!」
「確か、Bの武器は双剣だったな」
「ああ、圧倒的な攻撃量でモンスターを殲滅する、イケイケの俺に相応しい武器だぜ!」
武器を取り出し、ノリノリで鬼人化のポーズをしてみせるB。
「俺は双剣について常々思っていることがあるんだが、聞いてくれるか、Bよ」
「お、おう…なんだ、言ってみろよ、A」
「乱舞攻撃、あれな。子供がダダこねてるみたいに見えるんだ」
「言い返せない自分がとても情けないぜ」
「実は、ほかの武器にもいろいろ物申したい」
「あまり聞きたくはないが、まぁ言ってみろ、Aよ」
「ならば語ろう。Bよ、お前は大剣についてどう思う?」
「大剣か、そうだな。重い一撃、早い納刀、いざという時のガードと、功走守そろった万能武器だと思うぜ。なんといっても全攻撃中最大威力の溜め斬りは圧巻だな!」
「まさにその通りだ。まぁあえて弱点を挙げるとすれば…攻撃を刀身で受けるので、刃が欠けやすいことだ」
「確かにそれはあるな」
「そこで俺は、大剣のガードをもっと使いやすくする画期的な方法を考えた!」
「そんな方法があるならぜひ聞かせてもらいたいものだな」
「発想の転換という奴だ、Bよ。刀身で受けるから刃が傷む。ならば……右手に盾を持ち、それで敵の攻撃をガードすればいいのだ!!」
テーブルの上に立ち上がり、集会所中に響く声で力説するA。
心底呆れた様子で、しかし律儀に返してやるB。
「盾を持ったとして、剣はどうするんだ。あれは両手持ちだろう」
「それは当然、左手で持っていただくしかないな」
「持てるか、アホ」
「む、確かに少々重いか」Bの指摘に、少々考え込むA。
「よし、ならばこうすればいい!」
いかにも、ワタシイイコトオモイツキマシタみたいないい笑顔をしている。
「重くて持てないなら剣を小さく軽くすればいい! これで攻撃回数も大幅増で、まさに大剣最強だな!!」
「Aよ。世間では、それを片手剣と呼ぶんだ」
「実は、狩猟笛の強化プランもある」
「ロクでもないのは確定的に明らかだな。どんなプランなんだ」
「よくぞ聞いてくれた。狩猟笛といえば、まずなんといっても演奏ありきだろう。だが、この演奏を戦闘中に行うのが難しい」
「確かにそうだな。狩猟笛の達人ともなれば演奏しながら敵を攻撃しつづける猛者もいるとは聞くが、俺たち程度ではせいぜい白白を絶やさないようにするのが精一杯だ」
「そこで、だ。演奏と攻撃を同時に行うために、砲撃機能を付けた」
「何を言っているんだお前は」
「笛を吹くと、先端から弾が出るのだ。これで、モンスターは迂闊に近寄れない」
「聞いた俺が迂闊だったよ」
「欠点は、弾も息で吹くため、物凄い肺活量を要求するところだな」
「もう直接殴りに行った方が早えよ」
「他人の武器ばかりとやかく言ってるが、お前の使ってるガンランスは改善案ないのか、Aよ」
「もちろんあるぞ、Bよ。」
「ほう、ぜひ聞かせてもらいたいものだな」
「うむ。まずだな、ガンランス部分にバーニアを付けて、飛行できるようにするんだ。」
「それで?どうするんだ。空から攻撃でもするのか」
「ちょっと違うな。飛行させたガンランスを、俺の脳波で操るんだ。すると、俺は敵の攻撃をただひたすらガードしてるだけで、あとはガンランスが攻撃してくれて、いつの間にかモンスターは倒れてると、こういうわけだ。ただ、いかにも完璧に見えるこの案だが弱点もあってな。」
「なんとなく予想はつくが、どんな弱点だそれは」
「斬ったり砲撃を撃つと反動でバランスを崩して、墜落するんだ」
二人の傍を全身ザザミ装備をしたハンターが通り過ぎていった。
「ザザミか…蟹の防具は実に優秀だよな、Aよ」
「それには異論はない、Bよ。ただ、ザザミ防具のあの見た目はもう少しなんとかならないものだろうか。あれでは俺のイケメン具合が台無しだとは思わないか」
「残念だが、たいそうお似合いだ、Aよ」
「今のは聞かなかったことにしてやる、Bよ」
「Aの顔面は置いておいて。ザザミ防具の女子用のデザインはものすごくかわいいんだよな。工房の熱意と悪意を同時に感じるぜ」
「さっきはああ言ったが、実はなんだかんだいって男用もけっこう気に入ってたりする。部屋では、パジャマとして愛用してるほどだ」
「いや、それは寝にくいだろう」
「全裸に靴下、そしてザザミUだ」
「大した紳士っぷりだよ、お前って奴は」
「なぁBよ。各種防具の組み合わせで、スキルと呼ばれるスペサルな能力が発動することは知っているか?」
「腹が減ったら肉を喰え、並にハンターにとっては常識だな。もちろん知っているぞ。やはり双剣使いたる者、圧倒的な攻撃力をスキルでさらに増幅させるべきだ。切れ味+1で鋭さを増し! 業物で刃の耐久力を持続させ! 見切りで会心攻撃をバンバンだす! まさに双剣こそ狩りの華よ……うっとり」
「いや、聞いてねぇし」
「お前が話振ってきたんじゃねぇか。なぁAよ。そういうお前は、ちゃんと発動スキルを意識して防具を組んでいるのか?」
「もちろんだとも、Bよ。ガンランサーたる者、スキルに対しては一切抜かりはないと言っても差し支えはないというのも過言ではないかもしれなくもないような気もする」
「ややこしいな。どんなスキルつけてるんだ? 言ってみろ」
「釣り名人、肉焼き名人、笛吹き名人」
「ガンランスにかすりもしてねぇよ!! どんだけ名人なんだよ!」
「まぁそう言うな。なんと、砲撃もオドロキの秒間16連射だぜ★」
「それはモンスターハンターじゃなくてスターソルジャーだよ!」
「なぁ、Bよ。俺は近頃、訓練をたしなむようになったのだが」
「ほう、訓練とは、お前にしては殊勝な心がけだな、Aよ」
「指定の武器防具が用意されているのはいいのだが、どうもあれ、教官のお下がりのようでな。そのせいで、なんというか、こう……とても形容しがたいナイススメルが、な……」
「心中お察しするよ……ていうか、俺も何回かやったことがあるからその辛さ、わかるぜ」
「あれは、モンスターを狩る訓練じゃなくて、忍耐を養う訓練じゃないかと思わざるを得ない」
「そういう意味合いもあるのかもな」
「それとだな。教官が、フィールド各所にがんばって訓練用にアイテムを用意してくれてるじゃあないか」
「まめだよな、教官。採掘しないといけないところにも隠したりしてるし」
「それなんだが、一つだけどうしても文句をいいたい。何故教官は、回復薬をわざわざうんこの中に隠すのだろう」
「このうんこまみれの回復薬を使いたくなければ無傷で勝てるほどのハンターになれい、というメッセージじゃないか?」
「まぁ飲むんだけどな!」
「まぁ飲むよな」
「なぁ、Bよ。お前のところは、アイルー雇ってるのか?」
「ああ、ネコ婆さんのところから派遣されてきたな。料理に狩りのオトモに、役に立ってもらってるぜ」
「かわいいな」
「かわいいな」
「そんなかわいいアイルー達だが、少々困ってることがある」
「ほう、いったい何にそんなに困っていると言うのだ、Aよ」
「武器を持てば華麗にスタンさせ、麻痺を与え、尻尾すら斬ってのける。爆弾を持てば、果敢にも大タル爆弾で敵の固い外殻を吹き飛ばす。俺が傷つけば、回復笛を吹いて癒してくれる。千里眼を発動するときもあるな。家に帰れば、安い値段の美味しい料理でお腹を存分に満たしてくれる。まさに八面六臂の大活躍だ」
「それのどこが問題なんだ? いいアイルーじゃないか、大事にしてやれよ」
「気付かないか? こいつ、俺より圧倒的に強いんだぜ……」
「もうお前がオトモハンターだな、それ」
「なぁBよ。このままおしゃべりもいいのだが、そろそろどこかに狩りに行こうではないか」
「今日一番建設的な発言だな、もちろんいいぞ。どこに行こうか? グラビモスか、ナルガクルガか。それともティガレックス?」
「Bよ…張り切ってるところ大変申し上げにくいのだが、ポポでお願いします」
「そんなん一人で行けよ!」
「まぁ待て、話を聞け。お前がポポに対してシビレ罠をしかける。罠にかかった哀れなポポを、俺が竜撃砲でドカン……だ」
「ドカン……じゃねぇよ! ダンディな感じで言うな! 手間かけすぎだろ、数回突けば死ぬじゃねぇか!」
「話を聞けと言ってるだろう、早漏野郎。実は、こんがり肉の在庫が少なくなってきてな。蓄えておこうかと思ってるのだが、なにせ数が数だ。生肉を焼くのも非常に面倒くさい。そこで俺は考えた。後で焼くのが面倒なら、先に焼いておけばいいじゃない…と」
「意味わかんねぇよ」
「つまり、竜撃砲でとどめを刺すことによって、生肉じゃなくてこんがり肉が剥ぎ取れる。一石二鳥。ハンターたるもの、常に狩りの効率をも気にしなくてはな」
「間違いなくコゲ肉だよ!」
〜〜結局、リオレウスを狩りに来ました〜〜
「森丘に来るのは久しぶりだが相変わらず雄大な眺めだな。心が洗われるようだな、Aよ」
「まったくだな、Bよ。広大な大自然を悠々と飛び回る竜王リオレウス…実に絵になるものだ。だがBよ。かれこれ1時間は観察しているのだが、レウスの野郎、一向に地上に降りてくる気配がないぞ」
「それは困った。地上に降りてきてくれないと、戦いにすらならん。なにか地上に引きずり降ろす方法を考えないとな」
「奴の好物を餌に誘き出すのはどうだ」
「いい考えだ。それで、何を餌にするのがいいだろうか?」
「You☆」
「お前が喰われろ!」
「気にするな、冗談だ。」
「お前が言うと冗談に聞こえないんだよ。まぁいい、何か餌になりそうなものは持ってないか?」
「ちょっとポーチを見てみよう」アイテムポーチの中身を一つづつ地面に広げていくA。
「ファンタグレープ、じゃがりこ、ノパソ、PSP、ワンピースの最新刊、セブンスター、iPod、日光で売ってるおもちゃの手裏剣と木刀、P2Gの攻略本…」
「遠足気分はいいが、せめて世界観を合わせろよ…」
「Bよ。レウス待ってる間、モンハンやろうぜ!」
「メタ発言はやめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「騒いでる間に、奴がこっちに気づいた! 降りてくるぞ!」
「よし、戦闘準備だ! 俺が強壮薬を飲んで鬼人化するから、お前は閃光玉を投げて奴を足止めしておいてくれ!」
「合点承知ッ! 行くぞッ! 3……2……1……そおぃっ!!」
緑色の煙が巻き起こり、Aの身体が瞬時にして掻き消えた。
「モドッてんじゃねーよ!!」
Aがいない間、孤軍奮闘するB。レウスに着実にダメージを与えていくが、自分もまた無視できない手傷を負っていく。
「くっ……! Aはまだか、このままでは……!」
レウスが息を大きく吸い込み、ブレスの体勢に入る。
もうダメか……Bが覚悟したその瞬間、
「待てぇいっ!!」
背後で大きな声がした。Bが振り向いた。レウスも釣られて見た。
そこには崖に上り、逆行を背に決めポーズを取っているAがいた。
「え、A……信じていたぞっ!」「待たせたなB!とうっ!!」
華麗に崖から飛び降りるA。
そのままぐんぐん落下していき すごい音を立てて着地した。
「Bよ」「なんだ」「足が痺れて動けない」「普通に来いよ!」
二人になったことで優勢になり、チームワークで徐々にレウスを追い詰め、ついにレウスが脚を引きずり始めた。
追い詰められたレウスが最後の力で宙に飛び上がり、これまでで最大の威力のブレスを放とうとしている。
「あれを喰らったらまずい! Aよ、レウスの真下に飛び込むんだッ!」
二人同時に足元へ、ハリウッド・ダイヴで飛び込む。背後では火球の爆発。まるで映画の1シーン。
「よし、なんとか避けれたな。奴もそろそろ着地してくるはずだ。Aよ、奴は瀕死だ! 着地に合わせてお前の竜撃砲でキメてやれ!!」
「アイ・アイ・サー!」
Aがガンランスを構えて、竜撃砲のチャージを始める。
3……2……1……0『発射ッ!!』二人の声が重なる。
ポーーーーーーーーーーン!
軽快な音が響き、あたり一面に、色とりどりの紙吹雪が舞った。
Bは呆然として、何が起こったのかわからない様子だ。
「Bよ」AがBを真顔でみつめる。
「実は、お前の誕生日を祝おうと思って内緒でクラッカーを仕込んでおいたのだ。おめでとう!」
「俺の誕生日は三ヶ月前に過ぎたよ!!」
「何を言っている。俺は九ヵ月後のお前の誕生日を祝っているのだ」
「うるせぇよ!」
レウスが、怒りに任せて、必殺の勢いで突進をしてきた。
「くっ、距離が近すぎて回避も防御も間に合わない……ここまでか。Aよ、なんだかんだで、お前とやってこれて楽しかったぜ…アバヨ」
「Bよ、俺も最後にお前に言っておきたいことがある」
「な、なんだ」
「今日は誕生日じゃなくて、お前の命日だったな(笑)」
「うまいこと言ってやったみたいな顔してんじゃねぇ!!」
「ならば真面目に……Bよ」Aが真剣な表情でBのほうを向いた。
「ハッピーバースデー」
「違えっつってんだろ!!」
報酬が0zになりますた=@ END
説明 | ||
コミックマーケットにて、モンスターハンターP2G本 「別冊 狩に生きる」に収録した短編。 |
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