リリカルなのは×デビルサバイバー As編 |
アースラの司令室に、カイトが肩を支えられながら入る。
PT事件時にも入室したことのあるこの部屋だが、いま見ても映画とかによくあるような、計器類が沢山あることが素人目から見てもよく分かる。
特に眼を見張るのが大画面のモニターだ。宙に映しだされているそれを見ただけでも、時空管理局という組織が地球を上回る技術力を持つ事が分かる。
モニターには様々なものが映しだされているが、注目する点は二つ。防衛システムのバグと、なのは達の様子だ。
いまだ形を成しておらず、攻撃をすることができないでなのはたちは、現在防衛システムをどうにかするための策をたてようとしていた。
「だいじょーぶ? カイトくん……」
「いや大丈夫じゃないのは、エイミィさんの方だと思うんですけど」
歩くこともままらない様子で、それでもゆっくりと歩いてきたのは、エイミィだった。
彼女の顔色は青く、唇は紫色に変色しているのを見て取れた。
「アリサ……バニングスさんが倒れたと聞きましたが?」
「うん。あそこの椅子で横にさせてるよ」
エイミィが指さした方には金髪の少女と、紫色の髪の少女が居た。
金髪の少女、アリサ・バニングスは椅子を何個か並べて、その上で横になっており、紫色の少女こと月村すずかは彼女の看病をしていた。
「そうですか」
「それじゃ、私も少し席を外すね……」
ふらふらと、エイミィは歩いて行く。
彼女を見送ってから、自分を支えてくれている管理局員に礼を言い、少しふらつきはあるものの、自分の足でカイトは二人の元へと歩いて行く。
「大丈夫か?」
「あ、カイトさん……私は大丈夫ですけど、アリサちゃんが」
寝ているアリサはエイミィと同じで顔は真っ青、唇は紫色に変色していた。
「……命に別状はないそうよ」
「――そうなんですか?」
その声に反応して、カイトは後ろを振り返る。
そこにはリンディが立っており、心配そうな表情はしているものの、顔色はよく、健康そのもののようだ。
「ただ――アリサさんはまだ子供だから、体力が少ない。それもあって、こうして倒れちゃったみたいね」
「……なら、良かったのかな? いや、よくはないか。それで、一体全体何が起きてるんですか?」
リンディは少し考えたあと、「ついてきて」と言った。
何か、神妙な表情をしているリンディを見て、少し思うことはあったがカイトはその指示に素直に従った。
「コレを見てくれるかしら?」
リンディは自分の席についてから、手元のコンソールを操作して、リンディとカイトにしか見えないモニターを表示させた。
「これは――っ」
「そう、中々に厄介な事になりそうなのよね?」
モニターには海鳴市の様子が映し出されており、道端で倒れている者や、車道を走っている車が脱線し、様々な場所で事故が起きていた。
「見てもらえば分かるのだけど、どうやら海鳴市でも同じ症状がでているようなのよ」
「異常が起きているのでは俺たちだけではない、か。不味くないですか?」
「えぇ、今も混乱が広がっている。だから早く防衛システムを撃退しないといけないのだけど……!! 防衛システムが……」
闇でありスライム状だった防衛システムに、ある変化が起き始めていた。
「なんだよ、これ……」
其れは『眼』だった。
突然闇に亀裂が入ったかと思えば、とても大きな『眼』が現れた。
次の変化は『腕』だ。
何かを求めるように、無数の腕が闇から出現している。流石に眼があるところに、腕は生えてはいないものの、それでも異質である。
「これが防衛システム……?」
防衛システムの変化を直ぐ様感じ取ったなのは達は、攻撃をしかけた。
そして同時に、クロノから連絡が入る。
『艦長! アルカンシェルの用意を』
「クロノ?」
『防衛システムをアースラ軌道上に飛ばします。そこに、アルカンシェルを撃ちこめば……』
「分かったわ。なんとか用意させてみせます」
『お願いします』
そこで通信が切れた。
初めて聞く、アルカンシェルという名をカイトはリンディに尋ねた。
「アルカンシェル――アースラに取り付けられた主砲ね。その威力は海鳴市ぐらいであれば一瞬で消滅させる事ができるわ。そして、十年前、闇の書が暴走した際撃ち込まれ恐らくは防衛システムを暫くは沈黙させた実績もある」
「なるほどね」
なのは達が映し出されたモニターを見る。
陣形としてはなのは、フェイト、はやてを主軸とし、彼女たちをサポートする形で、ヴィータ、シグナム、クロノが待機。完全補助担当のユーノ、アルフ、ザフィーラ、シャマルと言ったところだ。
カイトは知る由もないが、シャマルがこの作戦の肝である、アースラ軌道上へ飛ばす役目を負っている。
「さて、どうなるか」
「……そういえばカイトくん。体調は大丈夫なの?」
リンディに尋ねられ、ふと自分の体調の悪さをカイトは思い出した。
「さっきよりはマシですね。バニングスさんみたいに倒れるほどじゃないし、エイミィさんみたくふらふらになるほどでもない」
「そう――でもこの体調不良も、防衛システムが原因なのかしらね?」
「恐らくは。俺の体調が悪くなったタイミングは、防衛システム出現後だし……。そう言うってことは、他の人たちも同じタイミングで体調を崩しました?」
「えぇ、そうよ。まずはアリサさん、次にエイミィ、それに続くように隣の子。情報把握している時にカイトくんも体調が悪いことを知って、最後に海鳴市の一般市民にも影響がでた。かなり最悪な状況ね」
「それってつまり――」
視線を戦闘中のなのは達が映しているモニターに移す。今まさに攻撃を開始しようとしている彼女たちを見て、カイトとリンディは同時に言う。
「「防衛システムが強い力を持っているということ(ということね)」」
* * *
異変を感じ取ったのは、何時からだったのだろうか?
もしかしたら最初からだったかもしれないし、戦っている最中からだったかもしれない。
まず最初に動いたのはなのはだった。砲撃を得意とするなのはの一撃が防衛システムを襲った。生命体ではない防衛システムに対し、非殺傷機能は起動せず、人を殺すほどの威力を持つ一撃が放たれた。
ここまでは問題ない。防衛システムは倒すべき敵だし、なのはの長距離砲撃は一番槍としてもちょうどいい。だが、問題はこれから先だった。
『え!?』
なのはの砲撃は防衛システムに当たる前に霧散した。
「――!? バリアだと? リンディさんっ!」
「少し待って、エイミィさん? 聞こえるかしら? ……えぇ、悪いのだけど少し厄介なことになりそうなのよ。えぇ、ごめんなさい。急いで戻ってきてくれるかしら?」
リンディは通信を切った。
「なのはさんの砲撃を完全に無効化するバリア。さすがにアルカンシェルを無効化するほどじゃないとは思うのだけど……」
「一旦無力化してからならともかくとして、元気な内にどうやってこの艦の軌道上に移動させるんです? 俺なら全力で抵抗しますよ?」
「不味い、かもしれないわね」
二人して視線をモニターへと移す。
だが、予想外の事態というのは一度発生すると続けて二度、三度と襲いかかるものだ。
二度目の異変、それははやてに襲いかかった。
『いつっ!?』
鋭い痛みを感じ、はやては右手を自分の頬へと伸ばし、触る。
生暖かい水分がはやての手を流れていく。それは紛れもなく血液だった。
それから続いてフェイト、ヴィータ、シグナムと少なくともモニターからでは分からない攻撃が、彼女たちを襲っていた。
「いったい何が……?」
「すいません、遅れました……」
エイミィの足取りは、いまだおぼつかないようだが、それでも先程よりは顔色は良い。所定位置に座ると次の指示をリンディに仰いだ。
「防衛システム、及びその攻撃の解析を! このままでは手も足もでないわ」
「了解。すぐに取り掛かります」
いつもよりも鈍くはあるが、エイミィはコンソールを叩きはじめた。
「撤退も視野に入れたほうが良いかもしれないわね……」
「……一応突っ込んでおくけど、防衛システムを倒すために海鳴市を巻き込んで、アルカンシェル撃つとか勘弁だからな」
「最悪の案ね。でも本当に手がなくなってしまえば、それもやむを得ないわ」
「……ふん(果たしてそれを、自分の故郷が同じ目にあった時にも、言えるのかね)」
頭を横に振ってからカイトはモニターを見ようとして……気づいた。
「ジオダ……ジオっ」
轟音とは程遠いものの、それでも十分な威力を秘めた雷の一撃が、カイトから放たれる。
「なにっ?」
「おっと」
リンディの驚いた声と、男のとぼけた声が同時に聞こえた。
「お前は――!」
「久しぶりだねぇ、悪魔使い。数ヶ月ぶりの再開、といったところか」
「嬉しくない再開だがな。で、何のようだ」
カイトはCOMPを左手に持ちつつ戦闘態勢に入る。
男の背後には、先ほどの轟音に気づいた管理局員が背後で同じく、戦闘態勢に入っていた。
「おっと! 今回は戦いに来たのではないのでね。まずは話を聞いてくれないかなっと」
男はカプセルのようなものを、管理局員たちに投げた。一人の管理局員が持っている、杖状のデバイスでカプセルを打ち払うと同時に、煙のようなものが散布される。
「――! ガルッ!」
低級疾風魔法が煙を払う。
少々のダメージを管理局員も負うだろうが、それよりも煙を払うほうが先決だと、カイトは判断した。
「な、に……?」
「なんだと?」
煙が払われた時、そこに居たのはバリアジャケットが解除された管理局員たちの姿だった。
「まぁこんなものか。さて、話を聞くか、否か。どうする?」
「目的は?」
「目的、か。……私も、私もアレには些かならない程の、縁があるのだよ」
男の視線の先には、防衛システムが映ったモニターがある。
「復讐か?」
「違うな。友の心残りを晴らしたいだけさ」
「…………」
「…………」
しばしの沈黙。
その間ずっと、カイトは男の目を見ていたが、男は決して視線をそらすことはない。それどころか逆に、強く返してくるほどだ。
「嘘ではない、か。リンディ艦長、どうします?」
「そうね……それで、話というのはなにかしら? それを知らないことにはなんとも言えないのだけど?」
「先程も言った通り、私はあの防衛システムを……闇の書の闇をどうにかしたいと思っている。しかしそれには私だけの力では足りないのですよ、だから私は貴方たちに協力を求め、私は私の持つ防衛システムについての知識を、貴方達に託す。ギブ・アンド・テイク……というにはおかしいが、それが私の目的だ」
「闇の書の……? では、この状況の原因も分かるというのかしら?」
リンディが示したモニターには、防戦一方となっているなのは達の姿を映している。
見えない攻撃に対処できず、結果的に防御一辺倒になり、攻撃のタイミングを掴めずにいるとおもわれる。
「あぁ、知っている。そして、あれの原因も対処方法も、何故あれが出現したとき、悪魔使いを含めた者たちが体調不良になったのか、その理由も全てな」
「……艦長?」
カイトがリンディを見ると、彼女は一回ため息を付いてから、頭を横に一回振った。
「フェイトさんには謝らないといけないわね……分かったわ。それで、まずはどうすればいいのかしら?」
「ありがとうございます。ではまず、高町なのはたちを帰還させるべきでしょう、私の持つ情報と夜天の管制人格と情報のすり合わせ、及び情報を共有すべきだ」
男はそう言うと、自身の持っているチップを取り出した。
「これに大体の情報は詰まっている。……が、怪しい情報もあるのでね、情報の裏を取りたい」
「情報の裏……ね」
「仕方ないだろ? 夜天、闇……そう呼ばれ、最も活動していた時代の記録だからね、情報も風化している。その為に必要なのさ」
分かる? とでも言うように、男は言った。
その様に頬を引き攣らせてから、カイトはため息を付いた。その後はアリサたちが居る場所へと歩いて行く。
* * *
数分経っただろうが? ボロボロの状態のなのはたちが司令室に帰還した。
「――っ!?」
帰還したとき、フェイトの視界に入ってきたのは、仮面の男だった。
「なんであなたが!」
デバイス――バルディッシュを構え、フェイトは問うた。
「君たちと目的は同じだからさ」
男は右手でバルディッシュに触れ、下へと降ろしていく。
「闇の書の闇。あれに苦い思いをさせられたのは、私も同じということだ」
「くっ……」
そしてそのままバルディッシュを押さえ込んだ。
フェイトは腕を必死に動かしているが、バルディッシュはぴくりともしない。
「ごめんなさい、フェイトさん。でも今は藁にも縋りたい状況なのよ」
「モニターからしか見てないからよくわからないけど、あいつの攻撃が見えないんだろ?」
そう言われ、戦いの場に居た者たちは皆頷いた。
「エイミィさんがその原因を調べてはいるけど、どうやら面倒な状況になっててさ。これ以上時間を掛けると、問題が多発しそう……いや、してる」
「へ?」
状況をまだ把握してない面々は、同時に顔を見合わせてから、カイトを改めて見た。
「俺を見てもらっても困るんだけど……リンディさん?」
「えぇ、皆これを見てもらえるかしら?」
先程も見た、現在の海鳴市の様子が映し出されたモニターだ。気のせいだろうか? 先ほど見たときよりも倒れている人間の数は増えている気がする。
「これって……!」
「これが今の海鳴市の……いや、防衛システム近辺の様子だってさ。しかもこれ、体調不良で倒れる奴がどんどん増えてるっぽいし」
「あぁそうだ」
男は近くの機械に近づくと、持っていたチップを挿入した。次に宙に浮いたキーボードを操作し、とあるテキストを表示させた。
「さて闇の……いや、夜天の主」
「ん、なんや?」
病み上がり、しかもつい最近まで車椅子生活を送っていたはやては、この場に居る者たちの誰よりも体力がない。そのため、守護騎士四人に見守られるように、壁際に座り込んでいた。
はやては男に話しかけられると、シャマルに支えられる形で立ち上がった。
「キミとユニゾンしている、管制人格と話がしたい。一旦ユニゾンを解除してもらえるだろうか?」
「ん……ちょっとまっててな? ――うん、うん……えぇってリインフォースが言っとるから、解除するな?」
光りに包まれ、一人だったはずの存在が、二人に増える。一人は当然はやて。もう一人は、数十分前まで戦っていた女性――はやて曰く、リインフォースの名を持つ管制人格。
「これでいいだろうか?」
「あぁ、なにぶん私はリンカーコアを持たない、普通の人間でね。ユニゾンしている状態のデバイスと会話なんてできないんだ」
通訳してもらうのもめんどいしね。と、男は続けた。
その男の目の前で、いまだバルディッシュを動かせていないフェイトは、よく言う……と、重い声で言った。
「では話を始めるとしよう。だが……現状、何が起きているか把握できていないと私の策を話しても理解できないはずだ。ではまず……」
男は周りを見回してから、バルディッシュを抑えていた手を外した。
その瞬間、バランスを崩し倒れかけたフェイトを、なのはとアルフが支えた。
「、管制人格および、その守護騎士たちに問いたい。なぜ、見えない攻撃の原因、体調不良を何故引き起こすのか。あのバリアはなんなのか? それを知っているか? 把握しているか」
リインフォースが一歩前に出た。
「――分からない。少なくとも、私たちの知る夜天……闇の書にはあのような力は存在しない」
「なるほどな……となるとあのときの……。いや、どうでもいいか。よし分かった、では話そうか。かつて、バグった防衛システムを利用し、とあるものを集めようとした者たちが居た」
手元のコンソールを操作し、一枚の写真を表示させた。
そこに映っているのは、数人の白衣を着た数人の男たちだ。
その目付きの悪さは――何処か、ナオヤを思い出させた。
「其れは感情。喜怒哀楽……様々な感情だ。その中でも、男たちが求めたのは、怒り、哀しみ、苦しみ……様々な負の感情」
次に映ったのは、様々な人達が死にゆくさまだ。写真からでも分かるほどの痛み、哀しみ……様々な人の表情。
それを見たなのはたちはすぐさま視線を逸らし、口元を抑え、吐き気に耐えていた。
「人の感情――そのエネルギーの名を」
――"マグネタイト"。と言った――
「マグネ、タイト……」
その名に反応した者は一人、天音カイトだ。
「そう、お前は知っているな? そして、人の感情――その意味を」
「ま、さか――」
頭を抑えて、激しく鼓動する心の臓の音を感じつつ、浮かび上がる様々な説の中で、最も胸糞悪い説を選びとった。
「その者たちと対峙していた存在は強大だった。そして求めた。その強大な一人の人間が振るった力を――。そう、その者たちは創りだそうとしていたんだ」
――((神を|アクマ)) ――
そろそろオリジナル色が強くなっていく感じ。
最も強くなるのは、これから先ですけど。
説明 | ||
10thDay 創るもの 原作は投げ捨てるもの。 いや、冗談ですけどね。 |
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