武装神姫「tw×in」 第十五話 |
そういえば、朝言ってたっけ。
「うん、やろうか」
「筐体はここ予約してきたから、早速始めよう!」
真南は筐体の向こう側へと回った。
真南とのバトル、ということは相手はミズナか……正直、とてもやりにくい相手なんだよな。
ミズナが、というよりは、真南が。
「マスター! マスター!」
コナユキが手を振って示し、胸を張った。
「わたしに任せてほしいのです! 必ず、勝ってみせるのです!」
すっかりやる気が戻ったみたいだな。でも、
「ごめんコナユキ、他の皆もバトルしたいからさ」
二度続けては他の三人に悪いからね。
「うぅ、わ、分かったなのです……でしたらカナユメさん! 一緒にマスターのバトルを見ましょうなのです!」
「な、ちょっ待って、アタシとキサマはライバルで、仲良くするなど…」
「決まりなのです!」
「聞けよ!」
カナユメの言葉も聞かず、コナユキは一方的に決めてしまった。
「うら?、二人はすっかり仲良しさんうらね」
天野の肩から降りたうらが二人の横に並んだ。
「うらさんまで……」
「さんはいらないうら、うらでいいうらよ」
「し、しかし…」
何やら賑やかだった。
「天野、少しコナユキをよろしく」
「えぇ、バトル頑張りなさいよ」
コナユキを天野に任せ、オレは三人を見た。
さて、誰で行くか……
「マスター! 準備出来ましたよ!」
「え?」
改めて見れば、ルミアが武装した状態で立っていた。一人じゃつけられないから、二人に手伝ってもらったはずだけど。
「二人はいいの?」
スレイニとエンルに訊ねた。
「はい、ルミアさんがやる気満々で言うものでしたから」
「前に負けたのがまだ悔しいのね」
そうか、ルミアは数日前に木部の氷李とのバトルで負けてそれ以来だった。
「早くやりましょうマスター! 向こうは待ってますよ!」
真南が行った筐体の向こうに目を向けて見る。
「さぁミズナ、今日はコレで行くからね」
「本当にソレ使うんですか? あたし使ったことありませんよ?」
「大丈夫だよ?、わたしもないから」
「なんでそれで大丈夫って言えるんですか、やれやれ……」
ミズナは武装した状態で、真南は今回使う武器を見せていた。
「こちらも早く武器を!」
「うん、分かったよ」
ルミアの武器、とりあえずはアーム武装のナックル:手甲・拳狼+腕甲・万武と、投擲:手榴弾
後は……
「うーん……」
真南が使う武装がアレなら、コレが有効かな。
「よし、コレで行くよ」
Ride on!
フィールドは先ほどと同じく滝。
ルミアの動作確認を終え、開始の合図を待っていた。
「ミズナさん、今回はどんな武器で来るんでしょうね」
『実は、もう分かってるんだ。三つ共』
「え! 本当ですかマスター!」
『うん、多分間違いない、けどね』
「?」
ミズナの、引いては真南の強みは、その飽き性にある。
悪く言っての飽き性は、良く言って、同じ戦術というのをあまり使わないから対策を取れないということだ。
まぁ基本初めて戦う人にはそうなるけど、真南の場合それを含めて厄介な相手なんだ。
何故かと言えば…
「あ! 始まりますよ!」
Ready……Go!
開始されたが、ミズナとの距離があるので攻撃は起こらない。
互いに少しずつ近づき、ようやくロングレンジ武器の届く距離になった。
そこで、ミズナは動いた。手に銃器を持ち、引き金を引いたのか銃口付近に光が見えた。
だが、弾丸の類いは飛んでこない。
しかし、
『前にダッシュだ!』
「え? は、はい」
オレは指示を出してルミアはダッシュ。
その直後、数秒前ルミアのいたところに光の球が数個現れた。
「えぇ!? 今の何ですか!?」
『アレが、粒子ブラスターだよ』
ミズナが持っていたのは、粒子ブラスターの一つ、ヴィヴィアン。
粒子ブラスターは総じて、発射後銃口から弾丸が飛ぶことはなく瞬時に狙った相手の周囲に光が現れる。それが弾丸で、弾道というものが無いので動きは読みにくく見えるけど、必ず自分の所に現れると分かっていればこういう回避が可能だ。
ミズナは更にヴィヴィアンを放つ。ルミアは距離を詰めつつ弾丸を回避していく。
四発射つと、ヴィヴィアンが弾切れしたのか、新たな武器を持った。
やはりそれも粒子ブラスター:ニニアン
なので同じ要領で間合いを詰めて行く。
ようやくルミアのナックルが届く位置に付き、ミズナへ右ストレートを放った。
ミズナはガード。ルミアはコンボを繋ぐが全て守られた。
隙をついたミズナは後ろへとダッシュして間合いを開けた。
「逃がしません!」
ルミアは後を追おうとダッシュを開始する。だが、
『ルミア、ちょっと待った』
「はい? どうしましたマスター」
オレはルミアを止めた。
『何か様子がおかしい』
後ろへ下がったミズナは、ニニアンを見たまま動かなかった。
「? ミズナさんどうしたんでしょう?」
ルミアが首を傾げた時、ミズナは口を開いた。
「マスター、やっぱりこれ使い難いですよ」
あぁ、それか。
「というか、全部コレで埋める必要はなかったでしょう」
毎度のことだからな。
『ルミア、少し休憩ね』
「はーい!」
それから少しの間、ミズナと真南の会話が続いた。
オレにはミズナの声しか聞こえないけど、なんとなく、内容は想像出来た。
「マスター、やっぱりこれ使い難いですよ」
『えー、せっかく買ったのに』
「というか、全部コレで埋める必要はなかったでしょう」
『だって3つあったしさー』
「だからって全部粒子ブラスターって、武装指定バトルじゃないんですよ?」
『でもカッコいいよねー、キラキラっとしてて』
「はぁ……全然話になりませんね……毎回」
多分、こんな感じだろうな。
「すみません、お待たせしました」
『ルミア、終わったみたいだよ』
「分かりました!」
体育座りで素直に待っていたルミアは立ち上がった。
「再開しましょう、行きますよ!」
ミズナが再開の合図と同時、新たな武器を取り出した。
粒子ブラスター最後の3つ目、サラ・ヴァティーヌ。
その引き金が引かれた。
瞬間、青い柱のような光がルミアの周囲に現れる。
『ダッシュで回避!』
「はい!」
ルミアは前へとダッシュする。その直後、青い柱となった光線が数秒前いた場所に降り注いだ。
「あれ? 今までのと違いますね」
『うん、アレは少し特別でね』
粒子ブラスターはジャンルでは重銃器、ベビーガンに分類されるが、その中でまた二つに分かれている。
1つがヴィヴィアンとニニアンのハンドブラスター。そしてもう1つがサラ・ヴァティーヌのランチャーブラスター。ハンドブラスターは出が早く威力は低い。逆にランチャーブラスターは出が遅く威力が高い。他にも撃ち方や弾丸の種類が異なるので、区別は簡単だ。
というか、やはり粒子ブラスター3つだったか。真南。
やっぱり、やりにくい相手だな……
「行きます!」
ルミアがミズナへと接近。ナックルでストレートを放つ。
しかしミズナはガードを取らず、レールアクションの構えをとり、スーパーアーマーの状態でルミアの攻撃を喰らった。
何のレールアクションか、なんて考える必要は無……しまった。
『ルミア! 早くミズナから離れるだ!』
「え?」
瞬間、
「遅いです」
ミズナの周囲を、光の柱が覆った。
「うわぁ!?」
コンボを繋いでいたルミアはその光に触れたとたんに吹き飛ばされた。
「な、なんですか今の!?」
起き上がりながら先ほどの光に驚くルミア。そこまでダメージを受けた感じではないか。
『レールアクションだよ、粒子ブラスターのね』
粒子ブラスターのレールアクション『ATK:粒子ブラスター』は、その名前をしながら一切の移動をせず、その場で自身を覆うように光の柱を呼ぶ、防御向けの技だ。
つまり、遠くにいる相手には効かない上、スーパーアーマー状態だが撃たれ放題になる。
ただし、現在ルミアに銃器は、無い。
「マスター、ついにアレの出番ですね!」
確かに、今使わないとダメか。
『よし、行くよルミア!』
「はい!」
ルミアは3つ目の武器を取り出した。
「はぁぁ!」
両手で柄を握り、一気にミズナへと近づき突き刺した。
粒子ブラスターを撃つ暇も与えぬ早い一突、そこからコンボを繋ぎ、ミズナを吹き飛ばした。
「やりましたよマスター!」
右手にその武器、槍:偃月刀を持ってガッツポーズをした。
ルミアのかくし球が、この槍だ。基本ナックルによる近接重視のルミアだが、槍により一気に相手との間合いを詰めることが出来る。加えてルミアの動体視力が合わさると、かなりの距離差を埋められるんだ。
『まだ油断しちゃいけないよ、この感じで行くんだ』
「はい!」
ルミアは槍を構えて、再度突っ込む。
「二度は効きませんよ」
ミズナはニニアンをこちらに向け、引き金を引いた。あれで光球が現れても、槍による一突のスピードなら回避しつつ攻められる。
しかし、
「え!?」
光球が現れたのは、ミズナの周囲だった。
驚くルミアがミズナへ、その前の光球へぶつかる。
「うわ!」
ルミアが怯んだ内に、ミズナは距離を取った。
まさか二回目から効かないか。
これが、真南とミズナの厄介なバトルスタイル。
どんな武器だろうと、上手く填まると何でも使いこなし、予想外の攻撃を行ってくる天性の適応能力の持ち主の真南と。マスターの飽き性で沢山の武器を使わざるを得ない為に、多くの武器を扱えるようになった人工の適応能力の持ち主のミズナ。
適応能力者コンビ、今回の適応力は……かなり凄い。
説明 | ||
粒子×適応力= タイトルの書き方、変えてみました。 |
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