セレス海海戦 前 |
セレス海海戦 前
ニカノール首相がユークトバニアのレジスタンスによって救出され本艦隊に合流してから、約二週間たった。本艦隊に合流したのはニカノール首相だけじゃなく、レジスタンス兵が2名、ユークトバニア軍のナスターシャ・ヴァシーリエヴナ・オベルタス少佐。そして、ラーズグリーズ隊の旧ウォー・ドック隊のメンバーの元隊長、オーシア国防空軍のジャック・バートレット大尉が合流した。彼らの話によるとユークトバニアもオーシアと一緒らしく、軍上層部と政府はベルカに繋がっているらしい。つまり、この戦争はベルカがベルカ戦争の復讐のために仕組まれた戦争だったことが完璧に分かった。だが、この仕組まれた戦争も終わりが近い。オーレッドのオーレッド軍港の第一艦隊と合流するためにケストレルから飛び立ったハーリング大統領が無事に合流し、そして、今日の1300時に第一艦隊の海兵隊及びシーコブリン隊共に大統領府に奇襲を掛け無事に奪還した。現在は軍の指揮権を軍上層部の好戦派から取り戻すために動いている。また、ニカノール首相がもこちらにいるため、ハーリング大統領とニカノール首相の二人の共同声明でこの戦争の真実を言えばこの戦争を終わらせることが出来る。そのため、本艦隊はいつでもニカノール首相をオーレッドへ向かわせることが出来るように、オーシア本土近くまで来ていた。
『フリゲート艦オルフェスCIC』
「艦長、レーダーに艦影及び機影共になし」
「わかった、引き続き警戒しろ」
「了解、艦長」
本艦隊はいつも以上に警戒を厳重にしていた。ベルカの目的はユークトバニアとオーシアの両国が滅ぶまで戦争を続けて、ベルカ戦争の復讐をすること。そのため、ベルカはユークトバニアとオーシアの好戦派と手を組みニカノール首相とハーリング大統領を誘拐し。そして、ベルカと手を組んだ両国の好戦派は政権と軍上層部を乗っ取り、あとはベルカが何もしなくても、好戦派が勝手に全面戦争をしてくれる。だが、ハーリング大統領とニカノール首相が救出された今、いつでも二人は表舞台に舞い戻り、戦争を終わらせることが出来る。しかし、両国が滅ぶまで戦争を続けたいベルカにとって、ハーリング大統領とニカノール首相はまさに邪魔者であった。そのため、ベルカはハーリング大統領とニカノール首相を消しに来る。どちらか片方を潰せば、たとえ片方が生き残ってこの戦争の真実を言ったところで、潰された方の国はプロパン工作と言って戦争を続けるだろう。そして、ベルカはおそらくニカノール首相を狙いに来る。ハーリング大統領はすでに第一艦隊の海兵隊とシーコブリン隊共に大統領府を解放したため、オーシアがベルカの手から取り戻すのも時間の問題だ。そうなると、ベルカはニカノール首相を狙いに来る。おそらく、ベルカはニカノール首相がケストレルにいることはわかっているだろう。そのため、本艦隊は警戒を厳重にしていた。
「ホークス。レーダーに反応があったらすぐに言え。本艦が艦隊の中で一番レーダーの性能がいいからな」
「わかっている。反応があったらすぐに言いますよ、艦長」
「頼むぞ。ここで、ニカノール首相をやらせるわけにはいかないからな」
そう、ここでニカノール首相をやらせるわけにはいかない。戦争を終わらせるためにも。
「これは!」
レーダーを見ていたホークスが何かを見つけたらしく顔付が変わった。
「どうした。ホークス?」
「レーダーに艦影あり!IFF確認。ユーク艦隊だ!」
「やはり来たか。数は!」
「4・・・7・・・15・・・いや、18。数は18隻!本艦隊の前方から接近中。このままのスピードだと約15分後には接敵する!」
18隻だと。くそ、こちらの艦隊は空母ケストレル、通信情報艦アンドロメダ、駆逐艦コーモラント、同じく駆逐艦フィンチ、そして、本艦を合わせて5隻だけだというのに。戦力差が違いすぎる。だが、ラーズグリーズ隊を入れれば戦力差が少しは無くなる。それに、ケストレルにいる、ニカノール首相がこのことを黙って見るはずがない。おそらく、ユーク艦隊に攻撃中止を呼びかけるだろう。だが、それでも、ダメだったら勝算は少ない。
「このことをすぐに全艦に伝えろ!」
「了解、艦長!」
それでもやるしか無い。いまから、進路を変えても、もう手遅れだ。ここで応戦するしかない。
「ケストレルから入電!現進路を維持し、ユーク艦隊と交戦する、以上!」
ホークスからその報告を受け俺は艦内放送を入れる。
「総員、戦闘配置。これより、本艦隊はユーク艦隊と交戦する。繰り返す。総員、戦闘配置。本艦隊はこれよりユーク艦隊と交戦する。」
俺が戦闘配置と言ってすぐにCIC室は荒々らしくなり乗組員たちが持ち場に付く。
「敵艦隊を目視で確認。本艦隊の進路を塞ぐ形に布陣している」
艦前方を写しているモニタを見ると敵艦隊が写っていた。
「ケストレルから入電、これより、オープンチャンネルでニカノール首相が敵艦隊に攻撃中止を呼びかける。以上」
やはり、ニカノール首相はユーク艦隊に呼びかけるか。うまく、行くといいだが。
≪ユーク艦隊の諸君≫
ニカノール首相の声が通信を通して聞こえてくる。
≪私は、君たちの政府を代表する国家首相ニカノールだ。この・・・≫
ニカノール首相の言葉が止まったが、すぐにまた喋った。大方、ケストレルの名前を確認したのだろう。
≪オーシア空母ケストレルの艦上にいる。我ユークトバニアとオーシアの間に友情を取り戻すためだ。我々は再び・・・≫
すると、突然ニカノール首相の声に雑音が入り通信が途絶え、代わりに野太い男の声が通信から聞こえてきた。
≪艦隊各艦に告ぐ、ユークトバニアとオーシアの間には憎悪しか存在しない。元首ニカノールは敵についた。これを敵と認め、敵艦もろとも海中に沈セツメヨ≫
「駄目だったか。ならば、主砲、発射用意、目標ユーク艦隊!」
「艦長、敵艦の一隻、進路を変えました」
「何?」
≪しかし司令官、仮にも元首のお言葉です。我々だって、理不尽な戦いは御免なのです。戦闘の中止を!≫
ユーク艦隊の1隻が進路を変え、本艦隊に進撃中の僚艦の前に立ち塞ぐように右舷をさらす。
≪我に従う艦は、艦隊の前を邪魔するフリゲート艦『ピトムニク』を撃沈せよ!撃ち方始め!!≫
野太い男の声が叫ぶとともにユーク艦隊の何隻かの主砲が火を吹く。ピトムニクは攻撃を回避するために、動き出すが、間に合わず、いくつかの攻撃が右舷に艦橋付近に命中し、炎が燃え上がる。さらに、浸水したらしく徐々にピトムニクは傾斜していく。
「くそったれ!」
傾斜して行く、ピトムニクを見た俺は思わず言った。CIC室にいる乗組員たちも険しい表情をしている。沈黙が海域を支配した。僚艦に攻撃命令を下した、艦隊司令官さえも何も言わない。そんな時だった、1隻の艦が沈黙を破るようにスピードを上げた。
『ユークトバニア海軍第四艦隊所属ミサイル駆逐艦グムラクCIC室』
目の前でフリゲート艦ピトムニクが味方の攻撃を受けた瞬間を見た、グムラク艦長と乗組員たちは険しい表情をしていた。特に艦長は血が出るほどに手を握りしめていた。そして、艦長はある決断をした。艦長は艦内放送用のマイクを手に取り艦内放送を入れる
「全乗組員よく聞け。本艦はこれより第四艦隊から離れ、ニーカノル首相がいるオーシア空母ケストレルに合流する。だが、これは決して国家反逆ではない。ニーカノル首相を敵と言い、そして、同僚の艦を撃沈を命じた艦隊司令官とその艦隊司令官の命令に従う艦こそが真の国家反逆だ。そのことを肝に銘じろ。それでも、私に従うことが出来ない者は退艦してもいい。以上だ」
艦長は艦内放送を切り、周りを見渡す。CIC室にいる乗組員たちは全員、艦長を見ている。
「私は、艦長と共に行きます」
ある1人の乗組員が言った。
「俺も行きます。ニカノール首相を守りましょう!」
「そうです、あんなクソッタレ司令官とは行動を共に出来ません」
≪こちら、機関室。ここに居る全員はニカノール首相を護りたいと言っている!≫
次々とニカノール首相を護りたいと言ってくる乗組員たち。そのことを聞いてた艦長は実にいい乗組員たちを持ったと思った。
「わかった。では、行くぞ」
艦長がそう言うと、CIC室にいる全員が頷く。
「これより、本艦はニカノール首相を護るため、第四艦隊を離れ、オーシア空母ケストレルと合流する。機関最大全速前進!」
本艦はスピードを上げ、第四艦隊から離れていく。艦長はオープンチャンネルで通信を開く。
「こちらは、栄えあるユーク海軍、ミサイル駆逐艦『グムラク』。同僚の撃沈を命じる艦隊司令官とは行動を共に出来ない。我々はニカノール首相を護る。同意する艦は我に従え!」
≪こちら、駆逐艦『ドゥープ』。我艦もニカノール首相を護る!貴艦に従う!≫
≪こちら、駆逐艦『チゥーダ』。グムラク、ドゥープ、我艦も後に続く!≫
≪こちら、フリゲート艦『ブイストルイ』。グムラク、我艦も貴艦に従う!≫
≪こちら、駆逐艦『ブードゥシシィ』。我艦も同僚の撃沈を命じる艦隊司令官とは行動を共に出来ない。我々もグムラクに続く!≫
グムラク艦長の呼び掛けで、ドゥープ、チゥーダ、ブイストルイ、ブードゥシシィの4隻も離反し、艦隊から離れ、本艦と共にケストレル艦隊へと
合流するため、機関最大でケストレルに向かう。
≪旗艦に従わぬ艦は攻撃する!≫
艦隊司令官の声が通信を通して聞こえてくるが、もはや、離反した艦は誰1人聞く耳はなかった。
「オーシア空母ケストレル、聞こえるか!こちらは、ユークトバニア海軍ミサイル駆逐艦グムラク艦長だ!我艦はニカノール首相を護るためドゥープ、チゥーダ、ブイストルイ、ブードゥシシィと共に合流する!ニカノール首相を護るためだったら命令違反、軍規違反なぞクソくらえだ!!」
『フリゲート艦オルフゥスCIC室』
≪勇気ある彼らを護れ。戦闘機発進!≫
ケストレルの方を写しているモニターを見ると、ケストレルのカタパルトからラーズグリーズ隊のF-35が1機飛び立った所であった。すでに前方には離反したユーク艦を沈めようと対艦ミサイルや主砲を発射。離反したユーク艦はファランクスで対艦ミサイルを撃ち落とし、海面には主砲の砲弾の水柱が多数上がる。今の所には離反艦隊の被害はないが、このままだと時間の問題だ。
「ホワイト、主砲はまだ有効射程内に入らないのか」
「まだです!もう少し待ってください!ガレ艦長!」
俺はいら立ちを感じながら再びケストレルを写しているモニターを見ると、ラーズグリーズ隊の最後の1機が飛び立った瞬間であった。
≪今、我々に味方する心が現れた。勇気ある彼らを護れ!≫
すると無線に軽い雑音が入ったかと思えばある曲が流れ初めて、俺や他の乗組員たちも驚く。その曲は『Journey Home』だった。
≪戦闘開始。我々は孤独ではない!≫
「ガレ艦長。敵艦隊、主砲の有効射程内に入りました!」
「よし!目標、『味方艦隊』後方のユーク艦隊!」
「了解!目標、『味方艦隊』後方のユーク艦隊!」
「撃ち方始め!」
Journey Homeの穏やかなメロディー中、本艦と僚艦の主砲が一斉に火を吹いた。
のちに教科書にも乗る有名な海戦。セレス海海戦の火蓋が切って落とされた。
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第8話 | ||
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いいよねぇエースコンバット(COMBAT02) | ||
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