咲-Saki-《風神録》日常編・南二局一本場
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 『デート』という言葉を、某日本で有名な分厚い国語辞典で探してみる。

 

 デート【date】

  1、日付。時日。

  2、日時や場所を定めて異性と会うこと。あいびき。「彼女と――する」

 

 今回注目すべき点は、1ではなく2。日時や場所を定めて異性と会うことを指す言葉である。そしてその次の言葉、あいびき。漢字変換すると、逢引である。合挽きではなく、逢引である。

 

(逢引……デートかぁ)

 

 そんな全く持って無駄なことを考えながら、俺はモモと遊びに向かうために、身支度を整えるのだった。

 

 まあ、要するに緊張してテンパっているということだ。

 

 

 

咲-Saki-《風神録》

 南二局一本場 『遊びに行こう!〜デート編〜』

 

 

 

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モモとの集合場所は、近所の駅前。ただ片田舎のここら辺の駅前だ、ハッキリ言って栄えていない。というか、この近所には俺たちが遊ぶような場所は一切無い。いや、あると言えばあるのだが……釣堀ぐらいしかない。生憎俺は釣りが趣味ではないので一回も利用したことはないが。今回のデートでも利用することには決してならないだろう(モモの趣味が釣りじゃない限り)。ということで遊びに行くというと大体電車に乗って街まで出て行くことになるのだ。

 

「……九時半、か」

 

 約束した時間は十時だから、三十分前に到着する事が出来た。ひっそりと設置されたベンチに座ってモモを待つことにしよう。

 

「……お?」

 

 と、思ったのだが、どうやら待ち人は既にいたようだった。

 

 肩口まで届き、やや前髪にかかっている黒髪。やや緊張した様子の固い表情。女の子の服装にそこまで深い知識と語彙が無いために詳しい表現は出来ないが、白のワンピースに黒のジャケットに身を包んだモモがベンチに座っていた。

 

「おはよ、モモ」

 

 挨拶をしながら駆け寄る。俺が来たことに気付いたモモは、強張っていた表情を緩め、笑顔になった。うん、相変わらず可愛い。

 

「おはようっす、御人君」

 

「悪いな、待たせちまったみたいで」

 

 女の子を待たせるとは何たることだ。いくら女の子(ゆみ姉を除く)と一緒に遊びに行ったことがないとはいえ、流石にそこら辺のマナーは弁えてるつもりだ。

 

「全然大丈夫っすよ。私がわざと時間より早く来たんすから」

 

 へ?

 

「その、私の存在感って薄いじゃないっすか。だから、今まで集合場所で待ってても気付かれないってことがほとんどだったっす。けど、御人君ならきっと気付いてくれるから、ちょっと待つ人の気持ちを味わってみたかったんすよ」

 

 こういうのもなんかいいっすね、と照れたように笑うモモ。

 

 ヤバイ、超可愛い。

 

なんかこう、ギュッと抱きしめたい衝動に駆られるが、流石にそれをやって許されるほど俺とモモは親密ではないから自重する。というか、例え親密であっても男女でそれはやったらいかん。……ゆみ姉だったら苦笑しながらも許してくれるような気がしないでもないけど。

 

「でも待たせちまったことには変わりないからな。昼飯でも奢るよ」

 

「そ、そんな、悪いっすよ。私が勝手に早く来たのに……」

 

「気にしなさんなって。こんなところでぐらいカッコつけさせてくれ」

 

 男の小さな意地ってやつだ。普段の対局でも全然カッコいいところを見せれないし、好きな女の子の前ではカッコつけたいのだ。

 

「……普段も結構カッコいいっすよ?」

 

 何やら顔を赤らめたモモが何かを呟いていたが、顔を赤らめたモモも可愛いなぁなどとどうでもいいことを考えていた俺にはその内容は耳に入ってこなかった。

 

(……何やらとっても重要なことを聞き逃したような気が……?)

 

 まぁ気のせいだろう。

 

 

 

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 電車で揺られること大体三十分前後、俺とモモは隣町までやって来た。ここまで来ると流石にビルなどが立ち並ぶ街といった感じになってくる。大抵新作のゲームやら漫画やらはここに買いに来る。……周りの奴らはここまで来ずに某密林通販で買ってるらしいけど。俺はパソコン持ってないんだってば。千五百円買えば送料無料ってどういうことだよ。わざわざ千円以上払ってここまでの往復切符買ってる俺に謝れ。

 

「さてと……」

 

 これからどうしたものか。結局ノリだけでここまでモモを連れてきてしまったため、特に何をするといったことを一切考えていなかった。かといって誘った自分がモモに聞くのもあれだし。はてさて、どうしたものだろうか……。

 

 悩みながら歩いていると、隣を歩くモモが声をかけてきた。

 

「あの、御人君」

 

「ん? 何?」

 

「ちょっと行きたいところがあったりするんすけど……いいっすかね?」

 

 モモの方からそう申し出てくれるとは、逆にありがたい。

 

「もちろん。今回はモモへのお詫びも兼ねてるんだから。やりたいことがあるならドンドン言ってくれ」

 

「えっと、じゃあ場所が分からないから案内してもらいたいんすけど……ゲームセンターって何処っすか?」

 

 ……ゲーセン? こう言ったらアレかもしれないが、モモがゲーセンに行きたがるとは思いもよらなかった。とりあえずゲーセンの場所は知ってし、結構行ったことはある。格ゲーが苦手な俺にとってゲーセンはメダルゲーやプライズゲーをするところなのだが。

 

 というか。

 

「都合のいいことにここがゲーセンです」

 

 駅を出てから適当に歩いていた俺たちだったのだが、ちょうど目の前がゲーセンだった。というわけで早速入店である。

 

 自動ドアを潜り店内に入ると、ゲーセン特有の騒音にモモが若干顔をしかめた。ゲーセン来るの初めてか、それとも慣れてないか。

 

 

 

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「それで、ゲーセンで何かやってみたいゲームでもあった?」

 

「?」

 

 どうやら騒音で俺の声が聞こえなかったらしく、モモはきょとんとした表情で小首を傾げた。こんな一挙手一投足をイチイチ可愛いと感じてしまう俺は本当にモモにベタ惚れなんだと思う。

 

「何かやってみたいゲームでもあったの?」

 

 今度はちゃんとモモに聞こえるように若干顔を近づけながら再度聞く。

 

「……!」

 

 ん? 顔が赤くなった。なんだ?

 

「え、えっとっすね。その……プリクラっていうのをやってみたかったんす」

 

「……あー、プリクラね。……なるほど、プリクラか……」

 

 なるほど、女の子らしいゲーセンに来る目的だ。

 

 さてさて、結構昔からあるプリクラだが、昨今のゲーセン事情を知っている人なら知っているだろう、現在のゲーセンの何処にプリクラが置かれているのかを。

 

プリクラというのは、その撮影中は目の前のカメラに集中してしまうため、足元への注意が散漫になってしまう。そのため、足元の置いたカバンの置き引きや、後ろから女性のスカートの中の盗撮などが問題となった。そういった問題を解決するため、ほとんどのゲーセンではプリクラの筐体を店内の一箇所に固め、その区域への立ち入りを女性に限定した。まぁ全てのゲーセンでそのような処置を取ったかどうかは知らないが、少なくともこのゲーセンではそのようになっている。

 

それでだ、別に完全に男子禁制になっているわけではない。とある条件があるが、その区域に男子も入ることが出来る。その条件というのが――。

 

 

 

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「だ、男子はカップル限定っすか……」

 

 これである。とは言っても、これを律儀に守ってる奴が何人いるか分かったものではない。何回か男だけでこの区域に入ってる奴らを見たことあるし。

 

 さて、流石の俺もこの場面で「俺はここで待ってるから」と言ってモモを送り出すほど空気が読めないわけではない。こんな状況だ、自惚れじゃなければ恐らくモモは俺とプリクラを撮ろうと思ってくれているのだろう。

 

「……えーっと……一応聞いておくけど、モモはプリクラを一人で撮りたいわけじゃないよね」

 

 それでもちょっとだけ不安なのでそう尋ねる。

 

「………………」

 

 その質問に対し、モモは黙って頷くことで肯定してくれた。つまり、俺と一緒にプリクラを撮りたいと考えてくれているということで。

 

「……はぁ」

 

 ならば、俺が取るべき行動は一つである。

 

「ま、こうのは深く考えなくていいんだって」

 

「ひゃ……!?」

 

 むんずっとモモの手を握り、俺はプリクラコーナーへと足を進めていった。

 

 ……照れ隠しにした行動だったのだが、このとき初めてモモと手を繋いだんだよなぁ……と、後に思い出して照れるのだった。

 

 

 

 《流局》

説明
ギャラクシーデッキが完成したので更新。

一枚だけの天狗さんは売るべきかもう一枚買うべきか……。
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