真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 第四章 幕間5『真理』 |
拠点:真理 題名:良くある旅人たちの一日
数日後、出発する準備を済ませた私たちは徐州下?の魯粛先生の屋敷より、魯粛さん、孫権さんの部下の甘寧さんと周泰さんと別れを告げ、次の目的である河北に向かうため出発しました。
徐州でも色んなことがありましたけど、幾つかにまとめるとこんな感じです。
一つ目、徐州を治める陶謙さんを殺した張?を殺しました。
彼も例によって『氷龍』を使う人間でしたが、今回は北郷さんも倒れるほど危険な相手でした。これからもこんな戦いが続くと思うと、北郷さんのことが心配でなりません。
二つ目、孫権さんと護衛として亞莎さんが旅に出ることになりました。
あ、亞莎さんの真名は出発する前日に許しあいました。遙火ちゃんが、「真理の友達はあたしの友達。あたしの友達は真理の友達」と言いながらなんか場の空気でそうなりました。遙火は真名の扱いが他の人よりちょっと緩い気がします。
そして三つ目は、これは個人的な話ですけど…
私、北郷さんに自分の気持ちを伝えてしまいました。
……
///////
「…真理ちゃん、顔赤い」
「ふぇ?」
「何、真理ちゃん具合悪いの?休むか?」
「だ、だ大丈夫です!まだ出発したばかりじゃないですか」
「具合悪かったら直ぐに言ってね」
「てわわ…はい」
御者台に座っている北郷さんと隣の雛里お姉さんまでに聞かれて慌てて遠慮しました。
荷馬車の人は4人から6人に増えて、御者台に居る北郷さんと隣の雛里お姉さんを除いても、荷物とか合わせると馬車の中は一杯になります。
「深月の所からもらってきた薬があるんだけど…」
私の反対側の孫権さんが心配そうに言いました。
「ほ、本当になんでもないです。ちょっと考えごとしてただけで……てわ」
「考え事…?」
てわわ、つい口走ってしまいました。
「………」
言葉がない亞莎さんと言いますと、孫権さんの隣に座ったまま軽く眠ってしまってます。
馬車の天井は木材を撤去した代わりに風の通りが良い黒い布(出所:鞄)が張られて、馬車の中は熱くもなく丁度良い感じです。
「それにしても、馬車に乗っているだけだなんて少し退屈ね」
「そ、そうですね」
旅と言っても、御者台で手綱を握っている北郷さん以外には特にすることがありません。
雛里お姉さんが御者台の隣に居るのは、たまに北郷さんが手綱を握ったまま眠ってしまうことがあるせいで危険なことが起きないように横で話をかけたりする役割ですけど、基本的にはイチャイチャしてます。
遙火の場合、私とお話しながら時間を潰したり、それとも寝たりします。遙火は良く寝ます。
私といいますと、基本的に何もしません。私は独りで何もしないで居ることに結構慣れてるので退屈だったりとはそんなに思いません。暇だったら本を少し読む程度です。
しかし、人数も増えたことですし、もうちょっとうまく時間を潰せるものがあればいいと思います。
「こんな時こそこの鞄の出番です」
「それは…一刀の鞄?」
「はい」
さあ、私たちに何か暇を潰せるものをください。
パカッ
<<孫子兵法書講解>>
「「……」」
日々是精進、だそうです。
「……Zzz」
遙火は何時の間に眠ってしまいました。
私と孫権さんも本を握って半刻経たずに眠ってしまいました。
旅をしてると野宿することは日常茶飯事です。
日が暮れるまで宿のある村に辿り着ける目論見がなかった場合、さっさと諦めて野宿の準備をしないと日が暮れて大変なことになってしまいます。
「今夜は野宿です」
「だな」
地図を地図を持った雛里お姉さんがそう言うと、北郷さんが馬車を止めました。
「今日はこの辺りで野宿になりそうだから、皆準備しよう」
「準備って?」
野宿しようとすると準備するものが一杯です。
先ずは夕食の準備です。
お昼は基本的に移動中に軽く食べます。
歩いて行くのならちゃんと食べるかもしれませんが、馬車で移動しているんですから、お昼はそれぐらいでも十分です。だけど夕食はちゃんと食べないと身体に良くありません。だから夕食は本当にちゃんと食べないと旅を長くなると病気になりやすくなります。
「…水の音する。釣ってくる」
「良し、各自位置に」
基本的な役割があります。
北郷さん:野営地作り(てんと張り)
雛里お姉さん:料理、青菜採り
遙火:火、川があったら釣り
私:料理補助、たまに遙火と一緒に釣り(という名のサボりです。釣ったことがありません)
基本こんな感じでした。
「呂蒙」
「はい」
「遙火と一緒に魚釣って来てくれ。人数が増えると必要な量も増えるからな」
「…亞莎、行く。競争」
「釣ると言っても、釣り竿も何もありませんが…」
「ここに…」
パカッ
「ほら」
「あっ」
野宿に必要な様々なものは北郷さんの鞄から調達します。おかげで私たちの野宿はそこら辺の宿屋より豊かだったりします。
「私は何をすればいいのかしら」
「孫権さんは私と一緒に行きましょう。木の実とか山菜など集めるのです」
「私あまりそういうものに詳しくはないのだけど…分かったわ。一緒に行動する以上、一つずつ習って行かなければいけないからね」
働かざるものは食うべからず。まさにこのことですね。
孫権さんは一応姫さまで、暮らしも軟禁状態であったとは言え結構豊かだったらしいです。料理もしたことありそうにありませんし、自分が食すものを自分の手で集めるという経験はないでしょう。
「判らないものがあったら言ってくださいね。特にキノコとかは毒があるのが多いですから、判らなければ採らない方が良いです」
「その心配はないわ。……あれ以来キノコは絶対に食べないことにしたから」
「…孫権さん新野から徐州に来るまで良く行きてましたね」
そんなちょっと不穏な話をしながら孫権さんと雛里お姉さんは野菜採りに向かって、遙火ちゃんたちも釣りに向かいました。
そして…
「と、じゃあ、真理ちゃんは僕の手伝い…だな…」
「はい……」
「……」
「……」
そう言えば、あの時以来二人きりになるのは初めてです。
「…あの、何からしましょうか」
「……あ、ああ、そうだな…じゃあ、俺はテント張るから、真理ちゃんは火を付ける準備してくれる?」
「はい」
あの夜、北郷さんに告白した以来、まだ北郷さんから答えを聞いていません。自分の頼みが北郷さんにとってかなり無茶ぶりだったことも判っていますし、下手するとここに居る皆の仲がギクシャクになることも覚悟してのことでしたけど、北郷さんの慌てる顔を見ると不安になります。
告白した時はすっきりして、待っている時にはドキドキしましたけど、そういうドキドキも長くなるとどんどん不安に変わります。いっそ断られて謝られてたら、その一度胸が砕けそうに苦しくても、それで終わるんじゃないかなって悲観的な考えも浮かびますけど、まだまだ慌てません。静粛さはある意味、ずっと寂しく過ごしてきた私の唯一の得意分野ですから。
火付けどころを造ると言っても大した準備は要りません。そこらにある適当な石を丸く置いて、普段はそこらにある落ちた枝や葉っぱなんかを集めて火を付けますが、今回は魯粛さんのところから持ってきた薪があるのでそれを積んで隣にも余分を置いておくだけで十分です。
「……」
直ぐに仕事が終わってしまって私は北郷さんの方を振り向きました。北郷さんはまだテントを張っています。
最後にテントを固定させるための杭を地面に釘つけている北郷さんの姿をそこに座り心地良さそうな岩に座って見つめていました。
「ふん!ふっ!」
「……」
周りは静かな中、そうやって北郷さんの働く姿を見ていると、それだけでもとても気持ちが良くなります。
「ふいぃ……終わった」
「てわっ!」
杭を刺すのを終えた北郷さんがこっちを振り向きました。
「あ、真理ちゃん、もう終わったのか」
「はい」
「じゃあ、ただ待つのもアレだしちょっと散歩でもしようか」
散歩。
二人だけで歩くというのもとても久しぶりな気がします。
百合お姉さまを呉から連れに行く時以来でしょうか。
「はい」
・・・
・・
・
野営地にした場所からちょっと歩きました。雛里お姉さんたちや遙火ちゃんたちが向かった方とは違う方向に暫く二人とも無言でただ歩きました。
最初にこうして歩いてた時は歩いて半刻経たずに歩き疲れたと言ってたと覚えています。今でも馬車で移動してますから長く歩くことにそんなに自身があるわけではないですけど……。
ふと隣の北郷さんの顔を見上げると、北郷さんが私の方を見ていました。
「あ」
「ぅあ…うむ……」
見ていたのをバレた北郷さんが慌てて前を向きました。
「……」
「…ああ、言おう。ここで言おう」
「?」
ふと止まった北郷さんは、
「真理ちゃん」
「は、はい」
「前の告白の答えなんだけど…」
「!」
「遅れちゃってごめん。なんか…言おうと思ったんだけどうまく言うタイミング掴めなくて…」
「言い訳は良いです!」
「あっ」
だって待っていたんです。
もう雰囲気とか関係ないです。早く言ってください。
「覚悟はできてます。言ってください」
「……」
北郷さんの口が開くまでのその時間がとてもじれったく感じてしまいます。待つことの得意な私は一体どこへ行ってしまったのでしょうか。
「僕の住んでた世界は基本的に男女一人ずつ付き合うのが一般的だ。男一人が二人の女の子と付き合ってると二股と言って、世間的に最低な男呼ばわりされる。もちろん、こことあそことは文化の違いがあるから別に関係ないかもしれないけど、でも僕の場合はちょっと特殊だから…」
北郷さんの言い回しがとてもじれったいです。
好か否か早く言ってくれないと胸がドキドキして破裂しそうなのになんでこんなに人を待たせるのでしょうか、この人は…
「左慈に相談したんだ。僕が雛里ちゃん以外の子を好きになってもいいのかって。そしたら基本的には雛里ちゃんが一番だって。無意識的に僕は雛里ちゃんのことを一番優先するようにできてるらしい。だから、努力はするけど、真理ちゃんのことを寂しくすることもあるかもしれないけど…」
だから…早く…
「そんな僕でも良かったら…どうぞ……」
「……え」
「宜しく…お願いします」
気付いたら北郷さんが頭下げていました。
「そ、それって…」
「………」
「良いってことですよね…北郷さん」
「……」
北郷さんはそのまま固まって何も言わずに居ました。
いえ、ちょっと震えてました。
「北郷さん…」
「…ぁ…ぅっ…」カタガタブルブル
北郷さん?
もしかして、恥ずかしがってます?
「北郷さん、顔上げてください」
顔を見ようと下がった北郷さんの顔に手を付けるとはっきり分かるほど熱が上がってました。顔を見ずとも北郷さんがどれだけ恥ずかしがりながらこの話をしたのか判ります。
私が言った時にもこれほどじゃなかったのに。
戦う時はあんなに凛々しい姿なのに……。
「…こちらこそ、これから宜しくお願いします」
「…うん」
手を北郷さんの顔に当てたまま、その頭にに自分の頭に軽くぶつけて私はそう言いました。
暫くそのまま両方共その次どうすればいいのか判らなくて暫く停止してました。
「……帰りましょうか」
「…そうだな」
それから戻ってくる過程は覚えていません。
手を繋いで歩いてきた気がします。原因はそれだと思います。
戻ってくると皆さんが帰ってきたようでした。
私が用意した火付け所に遙火ちゃんが付けた火が上がっていて、その周りに遙火ちゃんたちが釣ってきた魚が手入れされて焼かれていました。
「帰ってきたんですか」
「あ、うん…ただいま」
最初に私たちに気付いたのは雛里お姉さんでした。採ってきた山菜の手入れをしている手を止めてジド目で私たちの方を見ました。
「…言ったんですか」
「…言った」
「てわわ…」
そうですね。雛里お姉さんが知らないわけがありませんね。
「何の話なの」
「そういうことがあります。孫権さんは気にしなくて良いです」
そういえば、遙火ちゃんと亞莎さんの姿が見当たりません。
「倉たちは?」
「火だけつけて、また釣りに行きました。多分もう釣らないと思いますけど」
つまり遊びに行ったわけですね。
ところで雛里お姉さんが少し拗ねてるように見えます。当たり前と言ったら当たり前ですけど……
ちょっとだけいたずらして見ましょうか。
「…っ!」
「あっ、どうしたの、真理ちゃん」
「ちょっと、脚が痺れて……歩きすぎたみたいです」
その場で脚ば痺れて倒れたフリをしてそこにあった岩の方に座りました。
「どの脚?」
「左の方の……」
「ちょっと待って」
北郷さんは直ぐ様座り込んだ私の両脚を伸ばせて手で揉み始めました。
「この辺?」
「うっ…ん、もうちょっと下の方です」
「…なにしてるんですか」
「あ、いや、真理ちゃんが脚痺れたって言うから」
「……」
「っ…北郷さん…」
「あ、ごめん」
北郷さんは私の靴を脱がせて今度は足元を揉み始めました。
こ、これは思ったより……気持ちいいです」
「んっ…」
「ごめん、ちょっと痛いよ」
「は、はい……もっと強く…」
「今日だけ…今日だけだから……」
「って、鳳士元、何してるの、せっかく採ってきた山菜をそんなにちぎったら食べられないじゃない!」
ふふっ、ごめんなさい、雛里お姉さん。
明日からはちゃんと正々堂々としますから。
でも今日は…って
「ふあぁ…?」
「…!!」
「ほ、鳳士元、落ち着きなさい!」
・・・
・・
・
説明 | ||
やっと懸けた… というよりは人類(ryがちょっと詰まってるので移っただけですけど… 今まではそんなんじゃなかったけどこれから女難が増えそうな一刀です。 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
3425 | 2960 | 13 |
コメント | ||
更新されていることに気づいていなかった……益々恋愛事情が難しくなりますね。(山県阿波守景勝) アルヤさん>>これが後々愛紗のように進化していくと想像してみてください(TAPEt) ひなりんの嫉妬ににやにや(アルヤ) 劉邦柾棟さん>>思い返すとこれほど命知らずな行動ができる娘もなさそうな…アハハ(TAPEt) 命いらないの? 真里ちゃん?(((( ;゚д゚)))アワワワワ(劉邦柾棟) |
||
タグ | ||
真・恋姫†無双 恋姫 一刀 真理 雛里 韓国人 | ||
TAPEtさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |