ソードアート・オンライン デュアルユニークスキル 第十六話 前線での安らぎ |
デュオ視点
俺は街から出た後でトリックエースを発動し、全速力で迷宮区に入った。
途中、キリトとアスナを追い抜いたが、気付いたのはキリトだけでアスナは気がついていなかったようだ。
迷宮に入ってからは、トリックエース、ソードマスター、ハイパーガードの3つを使い分け、
出現するモンスターを片っ端から木っ端微塵に斬り倒して行った。
正直なところ、この戦闘中の感覚は結構気に入っている。
しばらく歩いていくと徐々にだがオブジェクトが重くなってきている。
それにマップデータの空白もあとわずか。そろそろボス部屋が発見されてもおかしくない頃だ。
そして俺は回廊のつきあたりに、灰青色の巨大な二枚扉が待ち受けているのを発見した。
デュオ「これは間違いなくボスだな。どうするか・・・」
スタイルチェンジを多用して【スローコントローラー】や【エクスプローラー】を使えばおそらくすぐに倒せるだろう。
だがそうすると別のプレイヤーが来たときに、俺がユニークスキル使いだとバレてしまう。
どうしたものかとしばらく考えていると後ろから声をかけられた。
?「何してるんだデュオ?」
俺が振り向くとそこには、キリトとアスナが立っていた。
デュオ「キリト、アスナ。いや、この部屋がな・・・」
俺は親指を立てて、後ろにある巨大な扉を指す。
アスナ「キリト君・・・これって・・・」
キリト「多分そうだろうな・・・ボスの部屋だ。」
キリトがそう言うとアスナはギュッとキリトのコートの袖を掴んだ。
アスナ「どうする・・・?覗くだけ覗いてみる?」
キリト「ボスモンスターはその守護する部屋からは絶対にでない。ドアを開けるだけなら多分大丈夫だろう。」
デュオ「転移結晶の用意もしておこうぜ。」
俺たちは右手に剣、左手に転移結晶を持って、ボス部屋の扉を開けた。
内部は完全な暗闇だった。
俺たちの立つ回廊を満たす光も、部屋の中までは届かないらしい。
冷気を含んだ濃密な闇は、いくら目を凝らしても見透かすことができない。
次の瞬間、部屋の両側にある燭台に二つの青白い炎が灯る。
キリト「な、なんだ・・・!?」
アスナ「き・・・キリト君・・・」
アスナがキリトの右腕にしがみつく。
デュオ「・・・来るぞ。」
青い炎は部屋の中央まで真っ直ぐ向かい最後に大きな火柱が吹き上がった。
キリト「あれは・・・!?」
デュオ「ここ七十四層のボスだな。」
火柱の後ろから現れたのは、筋骨隆々で体色は青くねじれた太い角、それに山羊の顔。数々のRPGでお馴染みの姿。すなわち悪魔である。
実際この目で見ると心の底から恐怖が沸き起こってくる。
カーソルが出現、そこには((The Gleameyes|グリームアイズ))と表示されている。
キリト「グリームアイズ、輝く目か・・・」
キリトが呟くと、グリームアイズはそれが合図であったように剣を構える。
グリームアイズ〔ゴアァァァァァァァ・・・!!〕
そして唸り声を上げながら、こちらに迫ってくる。
デュオ「さてと、どうするよキリト・・・?」
俺は剣を構えて、キリトに話しかけた・・・が隣にキリトとアスナがいない。
キリト「うわぁぁぁぁぁぁ・・・!!」
アスナ「きゃぁぁぁぁぁぁ・・・!!」
すでに二人は逃亡を始めていた。
デュオ「ちょっと待てい!!」
俺も二人の後を追って走る。
グリームアイズがボス部屋から出てくることは無かったが、3人はかなり遠いところにある安全エリアまで一気に走り抜けた。
キリト視点
キリト&アスナ&デュオ『はあ・・・はあ・・・はあ・・・はあ・・・』
俺たちは3人揃って息切れしていた。
デュオ「逃げるならそう言えよ!はあ・・・危うく、俺一人でボス戦になるところ・・はあ・・・だっただろうが・・・!!」
キリト「悪い・・・」
アスナ「ごめんねデュオ君・・・」
デュオが文句を言うと俺たちは素直に謝った。
とりあえず息を整えてから
アスナ「やー、逃げた逃げた!」
アスナは床にぺたりと座り込んで愉快そうに笑った。
アスナ「こんなに一生懸命走ったのすっごい久しぶりだよ。」
キリト「俺もだ・・・」
デュオ「同感。まあ、アスナよりキリトの方が凄かったけどな。」
俺は何も言えなくなりアスナはそんな俺を見てくすくす笑っている。
少しして笑いが治まるとアスナが真面目な顔で言った。
アスナ「・・・あれは苦労しそうだね・・・」
キリト「そうだな。パッと見、武装は大型剣ひとつだけど特殊攻撃ありだろうな・・・」
アスナ「前衛に堅い人を集めてどんどんスイッチして行くしかないね。」
キリト「盾ありの奴が十人は欲しいな・・・」
デュオ「まあしばらくは、少しずつちょっかい出して、対策を練るしかなさそうだな。」
アスナ「盾あり・・・ねえ」
デュオ「ん?盾ありがどうしたって・・・?」
アスナ「いや、ちょっとね・・・」
アスナはそう言ってキリトを見る。
キリト「な、なんだよ」
アスナ「キリト君、なんか隠し技があるでしょ」
キリト「いきなり何を・・・」
アスナ「だっておかしいもん!普通、片手剣の最大のメリットって盾装備できることじゃない。でも、キリト君が盾持ってるとこみたことないよ。わたしの場合は細剣のスピードが落ちるからだし、スタイル優先で持たないって人もいるけど、キリト君の場合はどっちでもないよね?・・・あやしいなぁ・・・」
デュオ「アスナ、その辺にしておけ。スキル詮索はマナー違反だろ。」
アスナ「あ、ごめんそうだったね。」
デュオ「そう言うこと。それじゃあ、俺は疲れたからもう帰る。」
デュオは2人に別れを告げると、ボス部屋とは逆方向の道を歩いていった。
アスナ「わ、もう三時だ。遅くなっちゃったけど、お昼にしましょうか。」
キリト「て、手作りですか・・・?」
思わず敬語になってしまう。
すると俺の反応にアスナは口を尖らせる。
アスナ「あ、何か考えてるでしょ!」
キリト「な、何も・・・それより早く食わせてくれ。」
アスナ「むう・・・!・・・はい。どうぞ召し上がれ!」
アスナはバスケットから大きな紙包みを2つ取出し、一つを俺に渡す。
キリト「いっただっきま〜す!」
俺は包みを広げると、大口を開けてかぶりつく。
キリト「う、うまい・・・!!」
俺はそれだけ言うと、アスナの作ったサンドイッチを夢中で頬張った。
最後のひとかけらを飲み込んでから俺はアスナに訊ねた。
キリト「おまえ、この味、どうやって・・・」
アスナ「えっへへ〜ん。一年の修行と研鑽の成果よ。アインクラッドで手に入る調味料ぜ〜んぶ解析して、これを作ったの。」
アスナはストレージから小瓶を2つ呼び出すと、片方をこちらに差し出してくる。
アスナ「こっちがグログワの種とシュブルの葉とカリム水。ちょっと舐めてみて。」
俺は瓶に入っているドロドロとした液体を指で掬い取ると、それを口に入れた。
キリト「っ!!マヨネーズだ!!」
俺が驚いているうちに、アスナはもう1つの瓶に指を入れて、それを掬い取る。
アスナ「で、こっちがアビルパ豆とサグの葉とウーラフィッシュの骨。」
アスナの説明にキリトが顔を上げた瞬間、アスナは指についている液体を弾いて俺の口に放り込む。
キリト「っ・・・!?」
それは醤油の味を再現した液体だった。
俺は一瞬固まった後、思わずアスナの指をくわえて、舐め回す。
アスナ「きゃっ!?あっ、やっ・・・ゆ、指まで舐めないで!!」
アスナは指を引き抜いてからこちらを睨んだが、俺の呆け面に軽く吹き出してから言った。
アスナ「さっきのサンドイッチのソースはこれで作ったのよ。」
キリト「・・・凄い。完璧だ。アスナ、これ売り出したらずっごく儲かるぞ。」
アスナ「そ、そうかな・・・」
アスナは照れたような笑いを浮かべる。
キリト「いや、やっぱりダメだ。俺の分が無くなったら困る。」
アスナ「意地汚いな〜もう!いつでも作ってあげるわよ!・・・毎日でも・・・」
アスナは最後に小声で付け足した。
そして、俺とアスナは自然に目が合い、見つめ合う形になる。
ゆっくりと距離が縮まっていき、そして・・・
?「おう、キリト。しばらくだな。」
いいところで邪魔をしてくれたのは、顔見知りのカタナ使いだった。
最前線ではよく会うし、ボス攻略では何度か共闘したこともある。
気のいい男だが、今だけは恨めしい。
キリト「まだ生きてたか、クライン。」
クライン「相変わらず愛想のねえ野郎だ。」
クラインが言った直後、上から声が聞こえてきた。
?「ああ、邪魔するなよクライン。もう少しでいいところだったのに。」
上から落ちてきたのは、先ほど帰ったはずのデュオだった。
デュオ「あ〜あ、せっかくいい雰囲気だったのに・・・」
キリト「デュオ、いつからそこにいたんだ・・・?」
俺は静かにそう言うが、返答しだいではただでは済まさないつもりだ。
それはアスナも同じのようだ。
さっきから剣を抜くか抜かないか迷っているように手を開いたり閉じたりしている。
?「あ〜、デュオ君、また盗み聞きしてたでしょ!」
デュオ「あれ?エルフィー。なんでここに・・・?」
エルフィー「私、風林火山に入ったの。」
たしかに、エルフィーのHPバーの横にクラインと同じギルドマークが表示されている。
デュオ「ふ〜ん。お前も物好きだな。」
クライン「物好きとは何だ!!」
エルフィー「そうだよ。みんないい人たちだよ。」
デュオ「クラインの顔はどうしようもないけどな。」
キリト〈それは同感である。〉
考えがバレたのか俺とデュオはクラインに1回ずつ足を踏まれた。
結局、その後いろいろあって、デュオがいつから俺たちの話を盗み聞きしていたのかはわからなくなってしまった。
説明 | ||
今回はキリトも主役 | ||
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