真・恋姫†無双〜赤龍伝〜第111話「寒中水泳です!そして、お風呂なのです!」 |
真・恋姫†無双〜赤龍伝〜第111話「寒中水泳です!そして、お風呂なのです!」
思春「おい、起きろ」
赤斗「ふぇ? うぅ、うーん ……思春?」
予想していなかった人物に起こされた赤斗は、眠い目を擦りながら身体を起こした。
窓から外を見ると、まだ暗い。
赤斗「……どうしたの?」
思春「出かけるぞ。すぐに用意しろ」
赤斗「え、出かけるって……何処に?」
赤斗は嫌な予感でいっぱいになった。
辺りが少し明るくなった頃……。
赤斗「何で……僕はここにいるんだ?」
赤斗が思春に連れられてきたのは、以前泳ぎの特訓をした河原だった。
赤斗「思春さん、いったい何をするおつもりですか?」
嫌な予感がした赤斗は、何故だか敬語になる。
思春「決まっている。泳ぎの特訓だ」
赤斗「はいーーー!? 何で!? いきなり何で!? 特訓は終わったんじゃないの!!」
思春「大きな声を出すな。だいぶ間が開いてしまったが、あの特訓は蓮華様の頼み。途中で止めるわけにはいかないからな」
赤斗(……憶えていてくれたんだ)
前回、特訓をしてから、許貢の残党による襲撃事件や赤壁の戦いなど色々とあって、赤斗は泳ぎの特訓などすっかり忘れていた。
だが、蓮華の頼みだからといっても思春は忘れずに憶えていてくれた。
その事が赤斗はとても嬉しく思った。
赤斗(だけど……)
赤斗「…………忘れていてくれても良かったのに」
思春「何か言ったか?」
赤斗「いえいえ何も……」
思春「だったら早く服を脱いで準備をしろ」
赤斗「うっ…」
赤斗は後ずさる。
思春「おい」
凄みをきかせた声で思春が赤斗を止めた。
赤斗「は、はいっ」
思春「まさか、逃げるつもりじゃないだろうな?」
赤斗「あははは……まさか、これは……戦術的撤退だよ!」
そう言うと赤斗は走って逃げだした。
思春「ふっ、お前がそういった行動にでるのはお見通しだ! 明命っ!!」
明命「はっ!」
思春の呼び声とともに木の上から明命が姿を現し赤斗の前に立ち塞がった。
赤斗「み、明命!? い、いつの間に!? 尾行されている気配なんてなかったはず!」
明命「簡単です! 赤斗様と思春殿が来る前から、ここで気配を消して潜んでいたのです!」
赤斗「くっ…」
まさに前門の虎、後門の狼という図式が出来上がっていた。
思春「これまでだ。観念するんだな」
赤斗「……でもさ思春」
思春「何だ?」
赤斗「こんな寒いのに、泳ぐのはどうかと思うけどなぁ」
今日の陽気は比較的暖かいとはいえ、異常気象のせいで真冬のような日が続いていた。
思春「……?」
赤斗「何でそんなに意外そうな顔されるかな?」
思春「泳ぐのに暑い寒いが関係あるのか?」
赤斗「……え?」
思春「船上の戦いに季節など関係ないだろ」
赤斗(…………そうだった。思春は江賊出身だったんだ。真冬だろうが何だろうが思春なら……泳ぐ)
赤斗「はあー……それで何で明命までいるの?」
明命「はい。今度、泳ぎの特訓をする時には、私も協力すると以前にお約束したので、思春殿にお願いして、今回は参加させていただきました」
赤斗「そういえば、そんな約束したような……」
明命「……ご迷惑でしたでしょうか?」
赤斗「い、いや、えっと、そういうわけじゃ……ないんだけど……」
明命「申し訳ありません。わ、私差し出がましい事を……」
そう言いながら、明命は半泣きになっていた。
赤斗「そ、そんな事ないよ。明命が来てくれて嬉しいよ!」
明命の半泣きに赤斗は動揺していた。
明命「本当ですか?」
赤斗「本当だよ…」
思春「そんなに明命が来て嬉しいのなら、早速始めようではないか。明命も準備しろ」
明命「はい♪」
嬉しそうに明命は準備を始めた。
赤斗「うっ……」
思春「まさか、まだ逃げるつもりじゃないだろうな?」
赤斗「…………」
嬉しそうに準備をしている明命を前にして、赤斗は再び逃げ出す訳にはいかなくなっていた。
赤斗「うぅ…寒い」
服を脱いでトランクス1枚になった赤斗。
結局、寒空の下、寒中水泳をするはめになった。
思春「準備できたみたいだな」
赤斗「…まあね」
目の前には服を脱いで、さらしと褌のみの姿になった思春と明命がいる。
はっきり言って目の毒だ。
思春「始めるか」
明命「はい!」
赤斗「…そうだね」
張り切る思春と明命だが、それとは裏腹に赤斗は、まったくやる気が出ない。
明命「赤斗様、がんばりましょう!」
赤斗「……そ、そ、そうだ!」
思春「今度は何だ?」
赤斗「準備運動!! 準備運動をしないと!! こんなに寒い時に、準備運動なしで入るのは危険だよ!!」
明命「そうですね。準備運動は大切ですね」
思春「はぁー。わかったから早くしろ」
赤斗「じゃあ、ラジオ体操を……」
明命「裸字尾体操…ですか?」
赤斗「僕の国の一般的な体操なんだ。明命たちにも教えてあげるよ」
明命「いいんですか! ありがとうございます!」
赤斗「いやーこれぐらい…」
思春「早く始めろ!!」
赤斗・明命「は、はい!」
思春に怒られ、赤斗はラジオ体操を始めた。
赤斗「最後に、深呼吸…すぅーー、はぁーー」
ラジオ体操を一通り終えて深呼吸を行う。
明命「すぅーー、はぁーー」
思春「すぅーー、はぁーー。これでいいな? 訓練を始めるぞ」
赤斗「いや、えっと今のはラジオ体操第一で、これからラジオ体操第二を……」
思春「………………い」
明命「い?」
思春「…………い」
赤斗「い?」
思春「……いい加減にしろーーっ!!」
叫び声とともに思春は赤斗を河へと投げ飛ばした。
赤斗「うわぁぁーーーっ!」
バッシャーーーン。
大きな水飛沫が上がった。
明命「せ、赤斗さまっ!!」
思春「さあ、今度こそ始めるぞ」
明命「……思春殿」
思春「どうした?」
明命「赤斗様が浮いてきません」
思春「なっ、またか!」
思春は慌てて河に飛び込み赤斗を引き上げた。
明命「赤斗様! 赤斗様!」
思春「うぅ、ゲホッゲホッ」
思春「まったく。泳げないのは相変わらずだな」
赤斗「思春こそ相変わらずスパルタ。…うぅ寒っ」
明命「すぱるた?」
赤斗「厳しいってこと」
思春「ふん。そう言う事ならスパルタで大いに結構だ。前にも言ったはずだ。やるからには手は抜かないと!」
赤斗「ははは……本当に相変わらず」
明命「赤斗様は本当に泳げないんですね」
赤斗「……まあね。だから、海とか河とか船とかは、本〜〜当に苦手なんだよ」
明命「でも、赤壁では船の上で戦っていましたよね?」
赤斗「あ〜。あの時は必死だったし、龍の眼を使った直後だったから、昂っていたのかもしれないね」
明命「なるほど」
思春「ほう。必死な時は船が大丈夫だったのか。なら、今までの特訓の時は必死になっていなかったのか…」
赤斗「いや。それは違う! 必死になったからって、泳げるものじゃないと思うぞ!」
思春「そういうものか?」
赤斗「そういうものです!」
思春「なら、どうしたら泳げるようになるのだ?」
赤斗「さあ? それは僕の方が聞きたいよ」
明命「あのぉ…よろしいでしょうか?」
赤斗「何だい?」
明命「赤斗様は子供の頃に溺れたから泳げなくなってしまったんですよね?」
赤斗「うん」
明命「ならば、水への恐怖心を無くすことから始めませんか?」
思春「それがいいかもしれんな」
赤斗「水への恐怖心か…」
赤斗(あの事故のトラウマが簡単に克服できるとは思えないけど…)
赤斗「しょうがない。もう覚悟を覚悟決めるか! 思春、明命!」
思春「うん?」
明命「はい!」
赤斗「僕がんばるよ。だから、指導をよろしくお願いします」
泳げない自分の為にわざわざ来てくれた思春と明命。
その二人の為にも赤斗は特訓を受ける覚悟を決めた。
思春「やっと、その気になったか。なら気が変わらぬうちに始めるぞ」
赤斗「応っ!」
ようやく泳ぎの特訓が始まった。
だが、一時間後……。
焚火の前では、動けなくなった赤斗が横たわっていた。
明命「大丈夫ですか?」
赤斗「…ぅぅ」
赤斗は身体を起こして、ガタガタと震えながら焚火に当たった。
思春「情けない奴め」
赤斗「…も、申し訳…ない」
あまりの寒さに口が上手く回らない。
まずは水への恐怖心を取り除く為、浅瀬で特訓を開始したのだが、寒さと恐怖心の二つが赤斗の体力をどんどんと削っていった。
そして、一時間もしないうちに、全ての体力を使いきって倒れてしまったのだった。
明命「思春殿。今日はこの辺で止めにしませんか?」
思春「…仕方がない。これ以上やって、風邪を引かれても迷惑だからな」
赤斗「あ、ありがと…」
こうして、本日の特訓は終わった。
赤斗「ふぅーーーー♪ 温まるな〜〜♪」
すっかり冷え切った身体を温める。
城に帰ってきた赤斗が真っ先に向かったのは浴場だった。
明命「赤斗様。お湯加減は如何ですか?」
赤斗「み、明命っ!? な、何してんの!?」
突然、浴場に明命が現れた。
格好は特訓の時と同じ、さらしに褌姿だった。
明命「大変お疲れだったので、赤斗様のお背中をお流ししようかと思いまして」
赤斗「そんな事しなくていいよ」
明命「ですけど…くしゅん」
可愛らしいくしゃみが明命から出る。
赤斗「明命も早く温まった方がいいよ」
明命「ですが…」
赤斗「明命が風邪引いちゃうよ」
明命「……分かりました」
そう言うと明命はさらしを解き始めた。
赤斗「明命、何を!?」
明命「え? 赤斗様が仰った通りに、ご一緒にお風呂に入って温まろうかと…」
赤斗(し、しまった! こんな所で早く温まれって言ったら、一緒に風呂に入れって思って当然か! こんなとこを誰かに見られたら…)
思春「何をしている?」
最悪なタイミングで浴場に現れたのは裸の思春だった。
赤斗「思春っ!! どうして!?」
思春「風呂に入りにきたのだが………」
思春は裸になった明命と湯に浸かっている赤斗を見る。
思春「体力を使い切ったと思いきや、随分と余裕があるようだな」
赤斗「別にやましい事は…」
思春「ふん。どうだかな」
そう言って思春は浴場から出て行こうとした。
明命「待って下さい。思春殿も一緒に入りましょう」
明命が浴場を出て行こうとする思春の腕を掴んで止めた。
思春「何故私が一緒に!?」
明命「思春殿の身体も冷えてしまっています。だから早く温めたほうがよいのです。だから、一緒に入りましょう」
思春「ま、待て明命!」
思春の制止も聞かずに明命は、思春の腕を引っ張り、そのまま赤斗の入っている湯に入った。
同じ風呂に浸かる三人。
明命「……」
思春「……」
赤斗「……」
誰も一言も発しない。
だが、三人とも頭の中はフル回転を起こしていた。
明命(どうしましょう! 勢いで思春殿を巻き込んでしまいましたけど…この後はどうしたら良いのでしょうか!?)
思春(何故、私は風見と一緒に風呂に入っているのだ!? このような所を万が一蓮華様に見られたら……私は!!)
赤斗(まずい。この状況は明らかにまずい! どうする? さりげなく上がれば良いのか!? それとも……)
三人とも混乱して、正常な判断ができない状態に陥った。
一時間後……。
祭「ふふ〜〜ん♪」
鼻歌を歌いながら、祭が浴場に入ってきた。
祭「なっ!!」
そして、浴場で祭が見たのは、のぼせてしまいお湯に浮かんでいる赤斗・思春・明命の三人だった。
祭「まったく、お主らはいったい何をしとるんじゃ!」
赤斗・思春・明命「申し訳ありません……」
祭によって介抱された三人は、その後、一緒になって怒られたのは言うまでもなかった。
つづく
説明 | ||
タイトルは明命のセリフと思ってください。 10月25日:最後の部分をちょっとだけ変更しました。 この作品は、主人公も含めてオリジナルキャラクターが出てきます。 未熟なため文章におかしな部分が多々あるとは思いますが、長〜〜い目で見てくださると助かります。 |
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