緋弾のアリア〜一般校の転校生〜 |
20弾
「キンジ。追い払っちゃったお詫びに着陸法の提案なんだけど」
「俺も一つあるがどうする?」
「んー。まず俺の聞いてくれるか?」
「分かった」
「まず、ほんとにできるか分かんないから。武藤君、この飛行機の必要滑走路はどのくらいか分かる?」
「まあ、エンジン2基でそいつなら…2450Mは必要になるぞ」
「なるほど…じゃあそこの風速教えてくれる?」
「風速?何でそんなの」
「いいからお願い」
「レキ、分かるか?」
レキもいるのか…クラスメイトとして恥ずかしいとこは見せたくないな。それにまだいろんな恩返ししてないし。
「私の体感では、5分前に南南東の風、風速41・02M」
レキもしかしてこの雨の中、外にいるのか?後で風邪ひいてないか聞いておくか。
「武藤君、風速41Mに向かって着陸しようとするとどのくらいになる?」
「2050だな。そのくらいは必要だ」
「ギリギリだな。どうしようかな」
10Mほど余裕があるけど。足りないかもだよな。
「どこに着陸するつもりなのよ。そんな直線距離とれないでしょ」
「武偵校の|人工浮島《メガフロート》。そこなら対角線を使って2061Mとれる」
「よくわかったなキンジ」
「たまたま同じことを考えてたからね」
[お…お前らまさか…]
「ああ、安心して。学園島につっこむわけじゃないよ」
そこにつっこんだらどんだけ被害が出るんだろ?
「空き地島の方だろ?」
「うん。そっちも同じ大きさだったよね」
[|人工浮島《メガフロート》に…か。理論的には可能だ……だがそれはあくまで理論上は、だ。そこは本当にただの浮島で、誘導灯さえない。しかも豪雨に、暴風。最悪な環境だ…そこに…]
「関係ない。それともすぐに替えの案はある?」
武藤君の言葉を遮り聞いてみる。
[そりゃ無いけど……でもそこは今、雨で濡れてる!2050じゃ止まれない]
「それ以外ないなら仕方ないでしょ。どうせ羽田に戻るだけの燃料もないだろうし、まだ封鎖中だろうしね」
「俺が何とかして止めるさ」
[くっそ。勝手にしやがれ!しくじったら轢いてやる!]
そう言って武藤君は電話を切ってしまった。
「怒らせたかな?」
「大丈夫だよ。あいつはいいやつだから」
「アリアこの飛行機はかなり低く飛んでる。間違っても建物にぶつけないでくれ」
「馬鹿にしないでよね。そんなことするわけないじゃない」
さってと。そろそろ|人工浮島《メガフロート》が見えてもおかしくないよな。どこだ?…………あれか……くそ随分暗いな。今の状態の俺でかなり暗いんだから、キンジ達には欠片も見えないだろうな。くっそどうしたらいい?
「キンジ、瑞樹。あんたたちなら大丈夫。武偵をやめたいなら武偵のまま死んだら負けだし、あんたがあきらめたら乗客皆が死ぬことになるわ。それに私はまだママを助けてないんだから!」
そうだな…そうだよなあきらめなけりゃ何とかなる!
そう覚悟した時、|人工浮島《メガフロート》に人影が見えた。そしてそれが誰なのかを理解した時、思わず笑いがこぼれた。
「ははっ!」
「どうした?」
「キンジ。武偵の皆っていい人たちだね。ほんとに…ほんとに感謝するべきだよ」
そう言った後、空き地島に光が見えた。それはとてもたくさんあって、着陸するには、十分すぎるほどで、すごく眩しく見えた。
[見えてるか!キンジ!瑞樹!]
電話がまたつながり、大雨の音と共に声が聞こえてきた。
「うん、十分すぎるくらいに」
[そうか…お前らが死ぬと、泣く人がいるからよぉ!俺、|車輌科《ロジ》で一番でかいモーターボードをパクって来ちまったんだからな! |装備科《アムド》の|懐中電灯《マグライト》も、皆無許可で持ち出してきちまったんだからな!全員の反省文、お前らが書けよ!]
[キンジ!。 機体が見えてるぞ!。 あと少し!。 もう少し頑張れ!]
いろんな人の声が聞こえてくる。皆、空き地島に来て誘導灯を作ってくれている。
「キンジ、これで失敗したら怒るからな」
「分かってるよ。ここまでしてもらってるのに失敗するわけにはいかない」
さてと、武偵憲章1条…仲間を信じ、仲間を助けよ。
あとは信じるよ、キンジ。
ザシャアアアアアアアアアアアアアア!!
ANA600便は人工浮島メガフロートに着陸する。それでも、雨にぬれているため、武藤君の言った通り2050Mでは止まれない。でも、俺にはそれをどうにかする方法が思いついてる。俺が思いついてるなら、キンジにだって思いつくよな!
思った通り、風力発電の柱がどんどん近付いてくる。そして……。
ガスンンンンンンンンンンンンッッッ!!
柱に翼をぶつけ、600便は機体を回すように滑りながら……止まった。
「いってぇ。キンジ、アリア、無事か〜?」
止まる時に思いっきり回ったせいで、体をあちこちにぶつけてしまっていた。
「ああ。大丈夫なんだが…少し助けてくれないか?」
どこか怪我でもしたのかと思い探してみると、そこには…アリアを抱っこしながらスカートをめくろうとする変態の姿だった。
「やだよ。そんな変態行為の助けなんて」
そう言い、痛む体を引きずるようにして俺は飛行機から出て行った。
説明 | ||
〜武偵殺し編〜 一般校から武偵校に転校してきた瑞樹。 初心者なのにSランクになったり、事件に巻き込まれてしまう。 |
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