〜　第４0.5話 †旅行記 涼州修行編２†　〜

馬騰（ばとう）への謁見が終わり

正式に韓遂（かんすい）の副官になって数日が経った

覚える事多すぎて頭が混乱しっぱなしの毎日だった

ただでさえ韓遂は忙しいのにその中でも俺に仕事を丁寧に教えてくれた

少しずつだが、教えてもらう事も減ってきて

余裕が出てきた時の事だった

政務室でいつものようにお手伝いをしてると

「そういえば白虎（はくこ）君」

正式に仕官した後の食事で姓と名で言うと堅苦しいから

名前だけで呼ばせてもらうよ、というか上官だから当然の権利だけどね

といわれたので今は名で呼ばれている

「なんでしょう韓遂様？」

俺もちゃんとした上司なので殿じゃなくて様付けにすることにした

くすぐったいので殿でいいよと言われたが

こういうのはちゃんとしておきたいので譲らなかった

「いや〜初日はしてなかったから気にしなかったんだけどさ

　何で仮面してるの？」

「はっ・・・なるべく顔は傷跡がひどいので見られなくないんですよ

（本音を言うと顔を覚えられるのが嫌なだけだが）」

「まぁ確かに受付来た時は仮面の男なんて怪しいと思ったけど

　君は礼儀もしっかりしてたし、何より教養も武もあるからね

　しかし、僕は気にしないからつけなくてもいいのにな」

「そう言ってもらえるのは嬉しいのですが

　すいません、どうしても見られなくないんです・・・

　駄目というのなら他の仕官を探しますので」

「いやいや、僕の方こそ悪かったね

　初日だけでも仮面を外してちゃんと馬騰様に謁見してくれてよかったよ

　それに今君に抜けられたら僕の身体が壊れてしまうよ」

そう言って笑ってしんみりした空気を一蹴してくれる

こういう気遣いができる大人ってカッコいいよなー・・・

改めて、この軍で出来るだけの事はしておこうと心に決めた

別の日・・・

「白虎っ！今日こそ貴様を倒す！」

「分かりましたから、鍛錬しますよ?徳（ほうとく）さん」

「ええい！貴様はいつもいつもそうやって・・・！」

「（だってなぁ・・・毎回毎回同じ戦い方なんだもんな）」

そう武を見る時に戦ったやり方しかしてこない

力押しのみに頼る戦い方だ

一般兵やちょっとした将に密集した１対多数での場面でなら強いだろうけど

動きも鎧のせいでだいぶ遅いし

振りは確かに速いし突きも速いけどな

これなら夏候惇（かこうとん）にも負けるだろうし

同じ力系だった厳顔（げんがん）の方が数倍も戦いが巧いな

もっと身軽に動いた方がもっと強くなるのにな勿体無いぜ

そんなことを思いつつ今日も鍛錬に付き合っている

そして、今回も攻撃をトンファーで逸らして一本を取る

「ぐぅ・・・今日も駄目か」

「ふぅ、今日も悪いけど俺の勝ちですね」

「うう・・・何が悪いってのよ・・・今までこれで上手くいってたのに」

「うん？?徳さん何か言いました？」

「べ、別に何もいっておらん！私なんかに構わず早くいけ」

それと何故か俺にはずっとこんな感じでツンツンしてるのだ

う〜む・・・俺としてはここにいる間は仲良くしたいのだがどうしたもんか

「はぁ〜分かりました。それじゃお先に失礼しますよ」

「ふん、早くいけばよかろう仕事があるだろうしな」

本当に日に日にひどくなっていってる気がするな

中々ここまで嫌われた事が無いから結構凹むわ

肩を落としながら俺はその場を後にする

「・・・ば〜か」

とても小さいその言葉は俺の耳に届くことは無かった

そんな感じであっという間に１日１日が過ぎていく

さらに忙しくなる出来事が起きたのは

俺が仕官してから半月が経ったある日、慌しい伝令と共にそれはやってきた