魔法少女リリカルなのはStrikerS〜二次創作〜 第26話 「逃走!訓練場より」
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「はぁ・・・はぁ・・・」

 

まるで猛獣に襲われている草食動物のように、俺はホ ログラムで再現されているコンクリートジャングルの 中の道路を逃げ回っていた

 

走るたびに地面から土埃が撒い、俺は足を必死に動か す

 

それはというのも

 

「・・・ダンテくん」

 

「うわっとと!うわ!」

 

後ろから迫る、俺の走った後の地面に次々と降り注ぐ なのはさんの魔法から逃げる為である

 

なのはさんは次から次へとバレーボールのような大き さの魔法を俺にめがけて撃ち込んでくる

 

その威力は、手加減など微塵もなかった

 

「・・・すばしっこい。当たらない・・・」

 

「はぁ・・・、・・・はぁ」

 

俺は無我夢中で走り続けた

 

なのはさんに一度でも捕まったらアウトだ

 

「・・・!そこ・・・!」

 

「な!?、うわ!・・・ぐ!」

 

だが、逃げるにも限界がある

 

俺はなのはさんが撃った一発に、直撃はしていないも のの地面に当たった衝撃でビルの窓に突っ込んでしま った

 

室内をこれまたスーパーボールが弾むかのようにバウ ンドし、オフィスらしきものを再現したのであろう、 椅子をなぎ倒しながら勢いはそのままに壁に激突した

 

「い・・・いたい・・・、い・・・いてて・・・い、っ つ」

 

いつぞやのように、今度は瓦礫を押しのけて上半身を 起こした

 

天井からは、おそらく俺が廃ビルに突っ込んだせいだ ろう土埃がパラパラと落ちてきた

 

「う・・・、く・・・」

 

俺はなのはさんたちやフォワード陣たちが持っている ような超高性能なデバイスとやらは持っていない

 

シャムが作ってくれた翻訳デバイスはあるけどとても 戦闘には向かない

 

ということで、体の安全を守ってくれるバリアジャケ ットなるものを一切使うことが出来ないのだ

 

つまり・・・、今現在体を打ちつけた俺は全身傷だら けなのである

 

「・・・いたい」

 

そのまま壁によしかかって右腕を見てみると、切り傷 だらけで血が流れていた

 

ポタポタと地面に落ちる

 

「なのはさんは・・・今どこに・・・」

 

体のことは心配だけど今はそれどころじゃない

 

なのはさんを探し出さなければまた攻撃を食らってし まう

 

「くそ・・・」

 

どうやら口の中まで切れてるみたいだ

 

床に吐き出して俺は一歩前に出て外を覗き込みなのは さんを探した

 

その時だった

 

「なんじゃありゃ!?」

 

俺が見た先には、おびただしい数の桜色のボールがこ ちらに迫ってくるのが見えた

 

「・・・!」

 

あれからは絶対に逃げられないと悟った俺は、痛む腕 で銃を握りしめ空中へ向けた

 

そしてマシンガンも顔負けの連射力で一つ一つ撃ち落 としていく

 

やはりこの力、戦闘力、あの甲冑のやつが言っていた ことと何か関係が・・・?

 

そして何とか全部撃ち落としたと安心して銃を下ろし た瞬間だった

 

「ぐっ!?」

 

全て相殺したと思っていたボールが、完全にわざとタ イミングをずらして一つだけ飛んできた

 

俺は完璧に油断しきっていたのでそれをモロにくらい 、またさっきの壁まで吹き飛ばされてしまった

 

「う・・・!ごほっ!ごほっ!」

 

地面に手をついて四つん這いになり咳き込む

 

あのタイミングをずらした技

 

さすが命の現場で働いてるだけはある

 

「く、どこ・・・に?」

 

そうだ、今は考えている暇はない

 

早くなのはさんから逃げない・・・と

 

そう考えた俺が顔を上げると、そこには目から光が失 われた見たこともないなのはさんが立っていた

 

「な・・・なのはさ・・・!ぐっ!がっ!?」

 

俺はなのはさんに首根っこを掴まれて立たされ、首に なのはさんのデバイスを押し付けられた

 

「やっと見つけたよ・・・ダンテくん。やっと・・・ 」

 

「なのはさん・・・?」

 

「ほら・・・こんなに怪我しちゃって・・・、早く医 務室に行かなきゃ」

 

「で・・・ですが、この状態じゃ行くも何も、いっつ ・・・!」

 

なのはさんは俺の首にデバイスを押し付けたまま、た ぶん先ほどのスバルさん達との模擬戦の時に怪我した のであろう

 

血が少し流れている手で、俺の頬にできた傷から流れ ている血をゆっくりと拭き取る

 

「ん・・・!っ・・・!」

 

血とはいえ水の一種、なのはさんの血が頬の傷に染み て思わず顔が歪む

 

それでもなのはさんは顔色一つ変えず血を拭き取った

 

「ほら・・・血も出てる・・・ダメだよ・・・?あん まりやんちゃしたら・・・」

 

「く・・・!」

 

「ダンテくん・・・いつもそうだよね。大切なことと か何も話してくれない・・・、みんな心配してるんだ よ?そんなに私達って信用ないかな?」

 

「・・・まだ、決心が・・・つかないんです」

 

「フェイトちゃんだってあんなにダンテくんのこと心 配して・・・、それなのにダンテくんはいつもいつも いつもいつも・・・」

 

『リロード』

 

突然なのはさんのデバイスからそんな声が聞こえたか と思いきや、デバイスから薬莢が飛んだ

 

次の瞬間なのはさんは俺から離れて、手についた血を 舐めとりデバイスを両手で構えた

 

「少し・・・頭・・・冷やそうか」

 

感情のこもっていない声が聞こえ、こちらに向けてい るなのはさんのデバイスの先端に光が集まっていく

 

俺は一瞬で理解した

 

なのはさんは、たびたび撃っていたあのバカでかい光 線を撃つ気なんだ

 

しかもほぼゼロ距離の射程で

 

俺でもわかる

 

あれをくらえば速攻終わってしまう

 

「ディバイーン・・・」

 

もう考えている余裕はない

 

「バスター!!」

 

『ディバインバスター』

 

次の瞬間、桜色の光が辺りを包んだ

 

ーーーーーーーーーー

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

煙が晴れ、辺りの視界が段々とハッキリしてくる

 

「・・・はぁ」

 

目の前に

 

『・・・標的を見失いました』

 

ダンテくんの姿はなかった

 

ーーーーーーーーーー

 

「あ・・ぶない、あぶなかった・・・」

 

俺は、さっきとは違うビルの中で壁にもたれて座り込 んでいた

 

いかにしてあの大火力の光線から逃げ出し、こんなと ころに座り込んでいるのかというと

 

なのはさんが光線を撃ち込む一瞬前に、体をあの早く なる感じに切り替え、すぐさま別のビルに逃げ込んだ のである

 

「まさか・・・上手くいくとは思わなかった」

 

ぶっつけ本番で、しかもあのシチュエーションで成功 するとは思わなかった

 

下手をしたら自殺行為になっていたのかもしれない

 

とりあえず結果オーライということにしておこう・・ ・今は

 

それよりも

 

「・・・上手くいってるみたいだな」

 

ビルの外から、何かに何かをぶつけているような爆発 音が聞こえてきた

 

これで少しは時間稼ぎができるだろう

 

ーーーーーーーーーー

 

「・・・!」

 

ダンテくんを見失ったあと、サーチをかけながら周囲 を捜索していると別のビルから赤い魔力弾が数発飛ん できた

 

「シュート!」

 

冷静にそれを撃ち落とし、私は捜索を続ける

 

そのビルに入りダンテくんを捜したけど、どこにもい なかった

 

『プロテクション』

 

「・・・!」

 

すると今度はまた別のビルから魔力弾が飛んできた

 

なるほど・・・時間差ってわけか・・・

 

ーーーーーーーーーー

 

「はぁ・・・」

 

俺はなるべく外には出ず、ビルからビルへと移動しな がら進んでいた

 

「本当に上手くいってるといいけど・・・」

 

俺は、ただビルを移動してきたわけじゃない

 

ビルを出るときにあれを使ったのだ

 

どんなものでも使いよう

 

上手く使えば役に立たないものなんてない

 

時間差で発射されるなら仕掛けておけばいいのだ

 

俺は、ビルを出るたびにあの魔力弾をセットしてきた

 

そうすれば罠としても使える

 

それがギリギリの策だった

 

なぜか・・・戦術が浮かんでこないのだ

 

いつもはどんどん浮かんでくるのに、今だけはだけは 全く浮かんでこない

 

だから、これが精一杯だった

 

「よし、行こう・・・」

 

傷ついた腕を押さえながら、ビルの出入り口の扉に手 をかけて開けたときだった

 

「やっぱり・・・ここだったんだね・・・」

 

「う、うわぁ!」

 

そこには、デバイスを片手に持ったなのはさんが立っ ていた

 

「うん・・・悪くない戦術だったかな」

 

「あ、あぁ・・・」

 

俺はあまりの出来事にその場に座り込んでしまった

 

なんでだ?なんでここにいることがバレたんだ?

 

「うん、悪くはなかった。だけど、それは自分の居場 所も教えちゃうことになるんだ」

 

「・・・!まさか・・・!」

 

「そう・・・私はただ辿ってきただけ。ダンテくんの 魔力弾が発射される順番に」

 

そうだ、その魔力弾を設置してビルを出るということ は、自分が辿ってきた軌跡を相手に知らせるというこ とだ

 

しまった・・・やってしまった

 

「じゃあそろそろ・・・鬼ごっこは終わりにしよ・・ ・?」

 

「・・・く!」

 

「まだ逃げる気かな?」

 

「な!?」

 

俺はなんとかなのはさんからの逃走を試みるも、突然 手足が動かなくなり、地面に転がった

 

よく見ると、手足が桜色の帯で縛られていた

 

足は、足首同士を縛り付けられ

 

腕は、後ろに組まさるように縛られている

 

もう・・・逃げ場などなかった

 

『リロード』

 

なのはさんのデバイスからそんな声が聞こえ、再びデ バイスの先に光が集まっていく

 

「それじゃあそろそろ・・・頭・・・冷やそう?」

 

壁際に追いつめられ、どうすることも出来ない

 

もう・・・どうしようも・・・

 

ふと後ろのポケットに手をやると、何か固い小さなも のが入っていた

 

壁に背を向けている為、なのはさんも気づいていない ようだった

 

「ディバイーン・・・」

 

俺はそれの正体に気づくと、すぐさま取り出し急いで ボタンを押した。すると

 

ピー

 

という電子音の後に、一瞬光のリングみたいなのが地 面を這うように広がった

 

「バスター!!・・・あれ?」

 

なのはさんが技の名前を叫ぶも、光線が発射されるこ とはなかった

 

「なんで・・・あれ?」

 

そう、こいつの正体は俺しか知らない

 

『魔力が遮断されました。一定時間ダンテさんの周辺 では魔力を使用することができません』

 

「ダンテくん・・・何したの・・・?」

 

「・・・へへ」

 

俺は笑いを浮かべ、それを持っている手を前に差し出 した

 

魔力が遮断されるため、バインドも消えていた

 

「これは・・・」

 

「これを使うと、一定時間魔力が遮断されるんです。 これで・・・ゆっくりお話できますね」

 

手の中にあったのは・・・あの日、この場所でシャム がくれたスイッチだった

 

「ダンテくん・・・なんで邪魔するのかな・・・」

 

「ティアナさん・・・いっぱい練習してましたよ?」

 

そう・・・俺もあの時一部始終を見ていたのだ

 

ティアナさんとスバルさんが無茶したところも、なの はさんが砲撃を二回も撃とうとしていたところも

 

「それで無茶しても・・・意味ないんだよ」

 

『魔力の再供給が可能です』

 

なのはさんのデバイスからそんな声が聞こえたのと同 時に、またデバイスの先に光が集まっていく

 

このスイッチは、本当に数十秒しかもたないみたいだ

 

今度こそ本当に逃げ場がなくなった

 

「・・・終わったら」

 

「ディバイーン・・・」

 

「ティアナさんと、ちゃんとお話してあげてください ね・・・」

 

「バスター!!」

 

次の瞬間、桜色の光が・・・今度はちゃんと対象を、 包み込んでいった

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コメント
ダンテなりの選択、か。優しすぎるね・・・(カイ)
魔王降臨!(とま)
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