IS x 龍騎?鏡の戦士達 Vent 16: 独創と独力と |
そして、トーナメント当日。一夏は既にピットで待機していた。
「(司狼さんは強過ぎるから不参加か・・・)あーあ・・・・まさか一回戦で当たるとはなあ。データには一応目は通しておいたけど。まあ、心強いパートナーがいるから余り心配はしてないが。もう大丈夫なのか?」
「ありがと。大丈夫だって行ったら嘘になるけど・・・・僕はもう迷わない。」
シャルロットの眼は決意に満ちていた。
「それで良い。今回の相手は簡単に落とせる。どちらもかっとなれば冷静な判断を出来なくなる。お前は箒の相手をしてくれ。出来るだけ早く片付けて欲しい。ラウラに関しては、策を打ってある。二人相手なら絶対に勝てる必勝法があるからな。結構えげつないから使いたくないけど。(コピーとコンファインってやっぱりずるいよな・・・・後フリーズか。)」
使えるカードを確認してそう思い、黒とオレンジのISは上空に舞い上がった。
「一戦目で当たるとは、手間が省けたな。そこのアンティーク共々スクラップにしてやる。」
「生産の目処がまだ立っていないルーキーに言われたくないね。いきなり喧嘩腰で来るなんて、ドイツ人は随分と沸点が低いんだ。」
試合開始のブザーが鳴ると、一夏はDDウィングの矢をラウラの足元に放ち、一気に接近したが、動きを止められた。
「開始と共に先制攻撃。分かり易いな。」
「そりゃどうも。レールカノンでさっさと俺を攻撃すれば?このチャンスを逃せば、次は無いよ?」
ガキン!
「くたばれ!」
だが、後ろからシャルロットの銃撃を食らい、AICが解除される。
「ナイスだ。」
DDウィングから再び矢を放ち、地面に落ちた物も加えてそれらが全て爆発した。ベアリング弾も放たれ、ラウラと箒にダメージが与えられる。
「シャルル、箒を頼む。」
「オッケー。」
ガルムとレイン・オブ・サタデイを構えて箒を迎え撃つ。
「相手が一夏じゃなくてごめんね。」
「な?!馬鹿にするな!!」
だが、ラピッドスイッチの猛攻と止めのグレネードランチャーにより、箒は試合開始から数分後であえなく戦闘不能となった。一夏はその間適当にラウラをあしらっていた。
「箒は?」
「お休み中だよ。」
「オッケーここからが本領発揮だ。」
再び一夏は飛んで来るワイヤーブレードを回避しながら突っ込んで行くが、やはりAICで動きを封じられる。
「無駄だ。この停止結界の前では、お前」
「お前忘れてないか?これはタッグ戦だ。今の状況は一対二。AICは対象に集中していない限り発動出来ない。タイマンなら恐らく負けるだろうが、今の俺には関係無い。俺の相棒がいるからな。」
ニヤリと笑い、後ろからシャルルが重機関銃デザートフォックスを構えてラウラに銃弾を浴びせる。それによってAICを解除され、零落白夜で重い一撃を与えた。
「もう一押しだ。」
シャルルが再びラピッドスイッチで迎撃を開始するが、ワイヤーブレードで捕縛され、銃弾もAICによって止められる。更にはレールカノンからの攻撃を受けんとしていたその時、
『Guard Vent』
「だから、何度も言わせるな。俺達はチームで戦ってる。それを分からないお前は、俺達には勝てない。」
一夏がウィングウォールでそれを塞ぎ、シャルルを縛っていたワイヤーを断ち切った。
『Confine Vent』
「(馬鹿な・・・・AICが使用不能になっただと?!何だ、これは?!)図に乗るなあああああ!!!」
AICを無力化されると分かるや、プラズマ手刀を展開し一夏に飛びかかる。だが、一夏は少しも慌てずにダークバイザーを構え、更にウィングランサーを召喚すると二刀流で斬り結んだ。ワイヤーブレードも器用に回避し、タイミングを計り始める。
「シャルル、準備は?」
「オッケーだよ!」
「幾ら第三世代でも、コイツを食らえばちっとは効果があるだろう?」
「何?!イグニッションブーストだと?!(シールドピアース!)」
飛んで来るシャルルは右手に構えたグレイ・スケールをラウラの腹に叩き付け、追撃の手を緩めない。リボルバータイプのパイルバンカーなので、二発、三発、四発とクリーンヒットして行く。
(私は・・・・負けるのか・・・?!こんな所で・・・・嫌だ・・・・私は・・・)
『力ヲ望ムカ?何者ヨリモ強イ、比類無キ力を欲スルカ?』
(力・・・・そうだ・・・・寄越せ・・・・私に力を寄越せ!!)
Damage Level: D
Initializing......
Valkyrie Trace System.... Boot
「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
ラウラは突然叫び声を上げて、スライムの様に変形したシュヴァルツェア・レーゲンに包まれ、飲み込まれて行く。そして形を変えて行き・・・・
「あれは・・・・?!」
現れたのは、暮桜を纏った千冬とそっくりの黒い何かだった。
「VTシステムか・・・・よりによってあんな物を積んであるとは、ドイツ軍もエグい事をするな。まあ良いか・・・・あの野郎・・・・!!」
振り下ろされる雪平を受け止めるが、左腕に僅かな鈍痛を感じた。
「一夏・・・・?」
一夏の顔は怒り一色に染まっていた。眼は吊り上がり、瞳孔も開き、下唇を強く噛んだ所為で血が顎からポタリと滴り落ちている。
「シャルル、今の俺にはあいつを倒す為に使う零落白夜のエネルギーが足りない。相手もシールドエネルギーはもう少ないから、一極限定モードを使って全力の零落白夜で奴を叩き斬る。銃撃じゃダメージがあいつにも行き届くから、お前は下がってろ。」
「う、うん・・・・」
気迫に押されてシャルルは頷き、ラファールからコードを引き抜いてISを解除した一夏のウィングナイトに接続し、エネルギーを渡した。ラファールが消え、一夏の右腕にダークバイザーが現れる。そして変色した千冬もどきに向かってゆっくりと歩いて行く。
「ラウラ。織斑先生・・・いや、千冬姉に憧れる気持ちは良く分かる。俺も、千冬姉の力に憧れたし、ああなりたいと思った時期も当然あった。だがな!俺は千冬姉になれないって気付いた。千冬姉はお前じゃないし、お前も千冬姉じゃない!どう足掻いてもなれない!お前はお前だ!そんな物は・・・・只の紛い物なんだよ!!俺は千冬姉に命の重さを教えられた。その技は今でも覚えているが・・・・俺は俺だ。俺は、俺のやり方で・・・俺の力で、千冬姉を超えてみせる!!」
居合いの構えを取り、一気に駆け出すと、座頭市の逆さ斬りの如く逆手でダークバイザーを抜き、右斜め上に切り上げてから縦、最後に横一閃に切り裂いた。
「一閃、二断、((三斬|さんざん))・・・・」
中から零れ落ちたラウラを抱きかかえ、ゆっくりと地面に下ろした。
「お前自身で力を掴まなきゃ、何にもならないぞ。だから・・・・」
ラウラをそこに下ろし、一極限定を解除した。
「司狼さん。ドイツ、どうなりました?」
「案の定、だ。ナチスの糞敗残兵共、黒兎を捨てやがった。まあ、逃がしはしないけどな。これで、ヨーロッパの一部は確保した。俺達が査察とかに向かう事になってる。フランスの方はお前が頼むぞ、政府の((大統領|お偉いさん))には連絡入れといたからな。シザースの件、忘れるなよ。いざとなれば援軍を寄越しても構わない。」
「分かりました。」
チャネルを解除すると、ピットに戻った。医務室に直行すると、氷を貰って痣となっている部分を冷やす。
「織斑。」
「あ・・・・」
「全く、無茶をしたな、馬鹿者。左腕は只の痣らしい。骨も腱も異常は無いそうだ。」
「すんません、先生。」
「今は私達しかいない。普通で構わん。」
「じゃあ、千冬姉。あれ、VTシステムだよな?」
「・・・ああ。」
「暫くまともに話せなかったけど、大丈夫?」
「お前に心配される程私もヤワではない。お前こそちゃんとテストパイロットとしての仕事をしているのだろうな?」
「やってるさ。」
「そうか。ならば良い。お前の力で、私を超えてみせろ。」
「おう。いつかは、俺が千冬姉を守るから・・・・」
少し照れくさそうにそっぽを向いて、だがハッキリと言った。後ろ姿で見えなかったが、千冬の顔が少し赤くなった気がした・・・・
(全く。調子の良い事を言いおって、馬鹿者が。)
ラウラが運ばれて来ると、千冬は近くの椅子に座った。
「教官・・・・」
「お前のISにVTシステムが積まれていた。お前の願望が、あの姿とはな。私の弟が言った通り、お前は私にはなれないぞ?お前はお前自身の強さを見つけ出せ。何、時間はある。たっぷりと死ぬまで悩め、小娘。」
「はあ・・・・」
「お前はお前だ、ボーデヴィッヒ。それを忘れるな。」
説明 | ||
タッグトーナメント、開幕です。原作とは違い、一閃二断の我流をやります。 | ||
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