単一の幸福を求めて…第12話
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第12話 迷探偵?袁術

 

白斗

「………ふむ」

 

白斗は袁術の居城に来ていた。

 

白斗

「客将といっても戦がないと暇だな、勝手に治世に口出しするわけにもいかないしな……」

 

袁術の客将になったものの荊州の黄巾党は既に撃退されている為に、戦も無く暇をもてあましていた。

 

白斗

「しかし、袁術の過酷な徴税はなんとかしないとな……。 ふむ、俺が率いることになった部隊の様子でも見「……のじゃ〜〜!!」」………ん?」

 

袁術から一軍の指揮を任されたので部隊の様子を見に行こうとしたその時、どこからか叫び声らしきものが聞こえた。

 

白斗

「この声は………袁術か?」

 

声が気になったので部隊を見に行くのを止め、俺は声のした方に足を向けた。

 

 

袁術

「無いのじゃ〜!無いのじゃ〜!」

 

白斗

「…………」

 

声のした部屋は扉が開いており、そこには予想どうり袁術がいた。

部屋をキョロキョロと見回し、ウロウロと歩き回っている。

 

白斗

「探し物か?……ん?あれは……」

 

見れば袁術は手に蜂蜜を入れる瓶を持っている。

 

白斗

「あの瓶は確か……大量に飴を入れた瓶だったような……」

 

客将になった際にあげた蜂蜜入りの飴を気に入った袁術に頼まれて、厨房を借りて同じ物を大量に作り、丁度良い大きさの瓶があったので、飴を一杯に詰めて袁術に渡したのだ。

 

白斗

「まさか…もう全部食べたのか?数十日は保つ量だと思っていたが……まったく」

 

俺は溜め息をつきながら袁術に食べ過ぎを注意しようと近づく。

 

袁術

「むう……飴が無いのじゃ〜」

 

白斗

「袁術?」

 

袁術

「ふぇっ!?……なんじゃ単副か、びっくりするではないか!」

 

白斗

「その瓶って飴を入れたやつだろ? もう全部食べたのか?」

 

あきれた風に袁術に問い掛ける。

 

袁術

「違うのじゃ!妾が食べたのではない!いつの間にか無くなってたのじゃ!」

 

白斗

「……どういう事だ?」

 

袁術

「わからぬのじゃ……あんなに一杯あったのにの」

 

白斗

「気付かずに食べたんじゃないか?」

 

袁術

「そんなわけないのじゃ!……食べる量は多かったがの」

 

そう呟く袁術の目が泳ぐ。

 

白斗

「…………ちなみに一日何個食べたんだ?」

 

袁術

「………………ニ十個じゃ」

 

白斗

「多いなっ!?」

 

一日五個の計算をしていたが、袁術はその四倍の数を食べていた。

 

白斗

「虫歯になるから一日五個だと言っただろう……」

 

袁術

「うっ……すまぬのじゃ……美味しくてついつい食べてしまうのじゃ」

 

てへっと可愛いく返事をする袁術。

 

白斗

「はぁ……喜んでもらえるのは嬉しいけどな、ちゃんと守らないともう作ってやらないぞ?」

 

袁術

「それは嫌なのじゃ〜!」

 

袁術は半泣きになっていた。

 

ちなみに袁術とは飴を作る交換条件として、ある程度対等に話すことを許されている。

 

白斗

「ふむ…それはいいとして、本当に袁術が食べたんじゃないんだな?」

 

袁術

「まだ疑っておるのか!妾は嘘などついておらぬぞ!」

 

袁術が俺の目をじっと見つめる。

 

白斗

「分かった、分かった。 しかし、そうなるといったいどこに?……」

 

紀霊

「おお!袁術様に単副殿、こちらに居られましたか」

 

袁術と話してるところへ紀霊殿がやってくる。

 

白斗

「これは紀霊殿、どうかしました?」

 

紀霊

「先ほど張勲殿が袁術様を探しておられましたぞ?」

 

袁術

「む?七乃がかや?」

 

紀霊

「はい、ところで袁術様達は何を?」

 

白斗

「それが……飴が無くなったみたいで」

 

紀霊

「飴、ですか?」

 

袁術

「そうじゃ!紀霊、まさか…お主が犯人か!」

 

紀霊

「はいっ!?いえいえ滅相もない!」

 

白斗

「こらこら、紀霊殿は何か心当たりはないか?」

 

紀霊

「そうですねぇ……そういえば、張勲殿と話している時に、何やら口をもごもごさせておりましたな」

 

白斗

「もごもご?……まさか……飴か?」

 

袁術

「うぬ〜もしや七乃が犯人か!」

 

そう言うと袁術は走りだした。

 

白斗

「袁術!?紀霊殿、張勲殿は何処に?」

 

紀霊

「ふむ、先ほどは中庭の方にいましたが?」

 

白斗

「分かりました。 おい、袁術!そっちは逆方向だぞ」

 

俺は先に行った袁術を追いかけた。

 

 

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袁術

「七乃っ!」

 

張勲

「お嬢様? そんなに慌ててどうしたんですか?」

 

張勲殿は紀霊殿の言っていたとおり中庭にいた。

 

袁術

「どうした、じゃと?お主、妾の飴を食べたじゃろ!」

 

張勲

「えーなんのことですか?私じゃないですよー」

 

袁術

「本当かや?」

 

袁術が疑いのまなざしで張勲を見つめている。

 

張勲

「本当ですよー、いやだなぁ、もうお嬢様ったらー」

 

張勲は否定しているが…………怪しいな。

 

白斗

「張勲殿、口の周りが飴でべとべとだぞ?」

 

張勲

「えっ!?本当ですか!!」

 

張勲殿が手の甲で口の周りをごしごしと擦る。

 

白斗

「…………」

 

袁術

「…………」

 

張勲

「…………あ」

 

中庭が静粛に包まれるが、

 

袁術

「やはりお主が犯人かーーー!!!」

 

張勲

「ひゃーっ!ごめんなさ〜い!」

 

袁術の怒りが爆発した。

 

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袁術

「どうして妾の飴を取ったのじゃ!」

 

怒り爆発の袁術をなんとかなだめ、張勲殿がなぜ勝手に食べたのかを聞くことにした。

 

張勲

「だってーお嬢様がいつも美味しそうに食べてたから私も一ついただいたんですよー。そしたら、凄く美味しくてもう一つ、もう一つ、と食べてたらいつの間にか無くなってました♪」

 

張勲殿はあははーっと笑いながら言う、袁術の方を見ると俯いて……震えてる?

 

張勲

「あのー……美羽様?もしかして怒ってます?」

 

張勲殿も様子がおかしいと気づいたのか、袁術に訪ねるが……

 

袁術

「当たり前であろうが!七乃っ!お主、主である妾の物を勝手に食べるとは何事じゃ!!」

 

再び袁術の怒りが爆発した……

 

袁術

「しかも、あの飴は単副が妾のためにと作ってくれたものじゃ!それをお〜ぬ〜し〜は〜〜」

 

張勲

「ひえーっ!でもでも、単副さんが悪いんですよ?お嬢様の分だけ作って私のが一つも無かったんですから!」

 

何故かいきなりこちらに矛先が向いた。

 

白斗

「俺のせいだって言うのか?」

 

張勲

「そうですよ!単副さんが私の分もきちんと用意してくれていれば、私もお嬢様のを食べずにすんだんです」

 

フフンッと満足そうにそう語る張勲殿、確かに理屈はそうだが……

 

白斗

「そもそも欲しいと言ってくれれば張勲殿の分も作ったんだが……」

 

そうなのだ、俺は袁術に頼まれて作る前に張勲殿もいるかと聞いていた。

だが張勲殿は『飴なんていらないですよ〜♪』と言った。

俺は『飴なんて』と言う言葉に表面上は何でもない風に装ったが、内心イラッとしたからよく覚えている。

 

白斗

「張勲殿も言っただろ?飴『なんか』いらないって」

 

あえてなんかを強調して言った。

 

張勲

「あれー?そうでしたっけ?」

 

張勲殿は目線を逸した、………忘れてたのか。

 

袁術

「妾も覚えておるぞ!確かにお主はいらぬと申しておったのじゃ」

張勲

「うううー、美羽さまぁ〜〜〜〜……」

 

袁術

「ふんっ!泣いても許してやらんのじゃ!」

 

張勲

「そんな〜〜〜……」

 

泣き崩れる張勲殿。

なんか可哀相になってきたな……

 

白斗

「なあ、袁術」

 

袁術

「……なんじゃ?」

 

白斗

「張勲殿を許してやったらどうだ?」

 

袁術

「いやじゃ!」

 

白斗

「……ダメか?」

 

張勲

「……………」

 

袁術

「むぅ……しかたないの、単副に免じて今回は許してやるのじゃっ」

 

張勲

「お、お嬢さまぁ……」

 

袁術

「ふみゅぅ………。や、やめよ……七乃っ」

袁術をきつく抱きしめる張勲。

なんとか丸く収まったか?

 

 

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白斗

「そういえば、張勲殿。袁術を探してたみたいだが何か用事があったのか?」

 

張勲

「……そうでした!お嬢様、そろそろ昼餉の時間ですから探してたんですよー」

 

袁術

「おおっ! そういえば、ちとお腹がすいたの」

 

ふむ、昼めしか……

 

白斗

「なら俺が何か作ってやるよ」

 

袁術

「なんと!? 単副は料理も出来るのかや?」

 

白斗

「当たり前だろ?飴は誰が作ったと思ってんだよ……、料理と裁縫はひと通り母親に教わったよ。」

 

張勲

「……確かにそうですよねー」

 

白斗

「美味しいもの作ってやるよ、何が食いたい?」

 

袁術

「おおっ! さすが単副じゃのっ。では、妾は焼売が良いのじゃ!」

 

白斗

「了〜解、焼売に餃子、春巻きも作ってやる」

 

袁術

「なんとっ!? では、では蟹玉も食べたいのじゃ!」

 

白斗

「ああ、いいぞ。その代わり残すなよ?」

 

袁術

「わかっておるのじゃ、のう?七乃」

 

張勲

「はいはーい。今日はお腹いっぱい食べましょうね」

 

こうして俺は袁術、張勲と共に厨房に向かった。

 

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袁術

「はふぅ〜〜、妾は満足なのじゃ」

 

張勲

「そうですかぁ〜、それは良かったです……」

 

袁術

「なんじゃ、元気がないのぉ。まだお腹が減っておるのではないのか?」

 

張勲

「いえ…そういうわけじゃないんですけどねぇ……」

 

結局、袁術は全てを食べきることはできず、殆どを張勲殿が食べていた。

 

白斗

「随分食べたみたいだが……大丈夫か?」

 

張勲

「はい……なんとか……」

 

……見るからに苦しそうだな。

 

袁術

「ふむ、単副よ、ちょっとよいかの?」

 

白斗

「ん? どうした?」

 

袁術

「特別に妾の真名を呼ぶことを許すのじゃ」

 

白斗

「む?」

 

張勲

「えぇっ!?」

 

袁術

「妾の真名は美羽じゃ、ほれ七乃も」

 

張勲

「あー、私もなんですねぇ……」

 

袁術

「当たり前であろう?主の妾が許したのじゃ、おぬしも教えるがよい」

 

張勲

「はーい、私の真名は七乃ですー」

 

白斗

「……いいのか?俺は客将だぞ?」

 

袁術

「妾が認めたのじゃ、黙って受け取るがよいぞ」

 

張勲

「私もいいですよ、単副さんには助けられましたしねー」

 

白斗

「わかった、有り難く頂くよ。俺の真名は白斗だ、これからはそう呼んでくれ」

 

袁術

「改めてよろしくなのじゃ、白斗!」

 

張勲

「よろしくお願いしますねー、白斗さん」

 

白斗

「こちらこそよろしくな、美羽、七乃」

 

こうして、俺達は真名を交換した。

 

余談だが……後日、改めて蜂蜜入りの飴を二人分作り持っていったのだが、それもすぐに無くなったのだった。

 

 

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あとがき

 

今回は白斗視点で書かせてもらいましたが如何でしたか?

今回のが自分の中で一番しっくりきたので次からもこの書き方でやっていこうと思ってます。

 

ではまた次回〜!

 

久々!オリキャラ紹介第6弾!

 

今回は袁術陣営の良心、紀霊殿です。

 

姓 :紀   名 :霊

字 :???真名:???

 

袁術軍で古参の老将

 

元は将軍だったが高齢の為、副将となった。

若い頃は三尖刀の使い手だったが副将となった際に手放し、今は一般兵の鎧に身を包み、剣を使って戦っている。

 

 

説明
真・恋姫無双の二次創作です。

主人公はオリキャラです、苦手な方は御遠慮下さい。

皆様お付き合いありがとうございます。


※またまた文章の書き方を変更致しました。ややこしくてすみません、適当なところで全話編集しようと思います。
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真・恋姫†無双 真・恋姫無双 白斗 袁術 張勲 紀霊 

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