IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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「梢ちゃん! どうしてこんなことをするの!? なんとか言ってよ!」

 

「…………………」

 

フォルヴァニスを展開し夜の空を駆ける梢に蘭は手足を支えられていた。しかしフォルヴァニスはフォルヴァ・フォルニアスとなった時に瑛斗との戦闘で損傷していた。今も装甲や関節からは火花が散っていて、サイコフレームもなくなった今、なんとか操縦できる程度のボロボロの状態で飛行している。

 

「どこに向かってるの!? ねえ!」

 

「……合流地点」

 

梢は小さく言った。

 

「合流…地点?」

 

「…そこで私の上司が待ってる……私は、もう学園には戻らない」

 

「そんな…じゃあどうして私を連れて来たの!」

 

「…それは、私が自由に生きるため」

 

「自由に生きる…?」

 

「…私は自由になる。もう誰にも縛られない」

 

梢は、前を向いたまま蘭に話し始めた。

 

「…私は、父も、母も、そう呼べるものなんていない孤児だった。物心ついた時には、どこかの教会の真っ

白で何もない部屋で一人ぼっち。本ばかり読んでた…それから少し経って、私はどこかへ連れてかれた」

 

「……………」

 

「…たくさんの白衣の大人たちに囲まれて、なんだか分からない装置を頭に載せられて、私がどんなに泣き

叫んでも、誰も助けてくれなかった。ただ、持っている紙になにかを書き込んでいくだけ」

 

梢は、蘭を支える手にわずかながら力を込めた。

 

「…そんな毎日だったのに、そのどこかに今度は別の人達が来た。手に拳銃を持って、白衣の大人たちを殺

していった。最後に残った私は、その人たちに連れて行かれた。それで…今」

 

「……………」

 

梢の悲しみに染まった目を見た蘭は何も言えずにいた。

 

「…もう、こんな誰かに利用されるだけの生き方は嫌。私を縛るアイツを殺して、私は自由になるの。だか

ら、蘭」

 

梢は蘭の目を見た。

 

「…初めてできた友達にちゃんとお別れを言いたくて、あなたを連れてきたの。迷惑をかけて、ごめんね」

 

「……そんなの」

 

蘭は自分の手をギュウ、と握った。

 

「そんなの…悲しいよ」

 

「……………」

 

「梢ちゃんの事、私まだ全然知らないよ。けど…誰かを殺して自由になっても、苦しいだけだよ…!」

 

「…蘭」

 

 

バシュウッ!

 

 

梢の右真横。そこを見えない何かが通り過ぎた。

 

「…来た」

 

梢は停止し、振り仰いだ。

 

「戸宮! 蘭を返しなさい!」

 

甲龍を駆り、双天牙月を構えた鈴の姿を。

 

「蘭! 大丈夫か!?」

 

白式を展開した一夏に続き、箒、セシリア、マドカ、瑛斗、ラウラ、シャルロット、簪がやって来る。

 

「鈴さん! 一夏さん! みなさん!」

 

「蘭! すぐに助けるから待ってなさいよ!」

 

鈴は蘭に呼びかける。

 

「……………」

 

梢は右手のボルテック・フィストを最低出力で起動し、蘭の首に当てた。

 

「うっ…」

 

蘭は気絶し、ぐったりと動かなくなった。

 

「蘭ちゃん!?」

 

「……………」

 

そして気絶した蘭の顔に電気を帯びた左手を近づけて梢は鈴たちに告げた。

 

「…来るな。来れば、蘭を…殺す」

 

「あなた、正真正銘の悪党だったようですわね……!」

 

セシリアが呻く。

 

「…なんとでも言えばいい。私は、止まらない」

 

「待ちなさいよ」

 

動こうとした梢を鈴が止めた。

 

「アンタ、私との決着がまだついてなかったわよね」

 

「…………」

 

「私と勝負しなさい。アンタが勝ったら蘭を連れてどこへなりとも行くがいいわ。でも、アタシが勝ったら蘭は返してもらう」

 

「お、おい鈴?」

 

セフィロトではなくG-soulを展開した瑛斗が鈴の方を向く。

 

「どうよ? アタシとの一騎打ち。他の奴らには邪魔させないわ」

 

「……………」

 

鈴は牙月を肩に担ぎ、挑発するような口調で言う。

 

「鈴さん…何を考えていらっしゃるのかしら……」

 

「あんな安い挑発に乗るはずが…」

 

「…わかった。相手に、なる」

 

梢は鈴の提案を飲んだ。

 

「…ここじゃ戦えない。場所を変える」

 

「いいわよ」

 

鈴は梢に近づいていく。

 

「鈴、勝てるのか?」

 

一夏が鈴に問う。

 

鈴は一夏に笑った。

 

「勝てるかどうかじゃないわ。勝つの」

 

そう言って鈴は一夏たちから離れた。

 

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鈴と梢は近くの小島に降り立った。

 

「……………」

 

梢は蘭を木にもたれさせ、頭を撫でる。

 

 

ガラン! ガラン!

 

 

ふと後ろからなにか金属が落ちる音が聞こえた。

 

「アンタボロボロじゃない。これじゃ勝負は見えてるわ。だから、アタシの武器はこれだけよ」

 

鈴は牙月を構えた。足元には衝撃砲を装備した肩部の装甲が落ちている。

 

「…………」

 

「…アンタ、本当は蘭を殺すつもりなんて無かったんでしょ」

 

「……………」

 

梢は何も言わない。

 

「アタシとの一騎打ちをアンタも望んでたんでしょ?」

 

「…かもしれない」

 

「蘭って、アンタみたいな子を放っておけないタイプなのよ。良かったわね、蘭に会えて」

 

「……………」

 

「でも、アンタはそんな蘭の想いを踏み躙った」

 

鈴の目に攻撃色が差す。梢は腕に力を入れ、ソードを構えた。

 

「断言してあげる。アンタじゃアタシには勝てない。格の違い…見せてあげるわ!」

 

鈴の言葉の直後、二つの刃が激突した。

説明
自由への、逃走
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コメント
瑛斗に質問です。 仲間というかいつものメンバーにもう一人入るとしたらどんな子が良いですか?(男でもアリ) あと瑛斗の暴走は終わったんじゃ?(ゆってぃ)
マドカに質問です。 過去に一夏に怨みがあったそうなのですが、一夏と接触するまでマドカは誰に育てられたのですか? やはりスコール姉さんやオータム姉さんがマドカの親代わりの存在なのでしょうか?(カイザム)
布仏姉妹に質問です。 ズバリ、姉妹の中が良くなる秘訣とか、あるんですか?(グラムサイト2)
蘭に質問です。 もし梢じゃなくて自分の友達なら誰であろうと道を外れそうなら、とめますか?(グラムサイト2)
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