残念美人な幼馴染が勇者として召喚された 第10話 |
「例えば、この部屋の壁に描いてある絵・・・僕が描いたものなんだけど、君たちはどう思う?率直な感想を聞かせてもらいたい。」
リングにそう言われたので、改めて部屋のいたるところに描いてある絵画の数々を見つめる。
今にも動き出しそうな幻想の数々。・・・いや、もしかしたら、この魔法の世界にはこれらの幻獣が実際にいるんだろうか?それなら、元の世界に帰る前に一度は見てみたいものだ。
絵でありながら、これほどの存在感を持ち、いっそ神々しくも見えるこんな絵は今まで見たことがない。
「俺は好きだなこの絵。生き生きとしてて、今にも動き出しそうだし。」
「私も好きだな。向こうの世界でも、これほどの芸術家は歴史上何人もいないと思うよ。」
・・・凛音がここまで何かを褒めるなんて珍しいな。何かに興味を持っても、数時間後には飽きてしまう人間だから、俺が寝込んでいる間、二日もこの家に居たのなら、とっくにこの絵の数々に飽きてしまっていると思っていたのに。
「・・・そこまで褒められると恥ずかしいな。でも有難う。」
リングは恥ずかしげに頬をポリポリと掻く。まぁ、その瞳はずっと凛音の事を見ていて、顔も若干赤くしているから、中身は兎も角、見た目は絶世の美人である凛音に褒められた事が嬉しいんだろう。
・・・何かちょっとムカツクけど、ここは我慢だ。
「まぁ、君たちは僕の絵を褒めてくれたけど、中にはこの絵に何も感じない人もいるよね?だって、人の感受性というのは様々で、他人が好きな物が自分も好きになるとは限らないから。
僕は幻獣の事を絵に描くのが好きなんだけど、食べ物を絵に描くのが好きな人もいるし、風景画を描くのが好きな人もいる。
そんな風に、感受性というものは人によって様々だ。」
「確かにそうだな。俺も向こうの世界の美術館で、何十億円もする有名な絵画を見たことあるけど・・・正直、子供の落書きにしか見えなかったしな。」
だが、俺には落書きにしか見えないその絵を、何十億も掛けて欲しがる人たちは世界には沢山いるのも確かだ。
逆に、無名な画家の描いたあんまり上手くない絵を気に入る人もいるだろうし、本当に人の感受性というのは奥が深いというかなんというか。
「で、僕たちの使う((芸術|アート))・((魔術|マジック))というのは、その人の感受性を具現化したような魔法なんだ。
その人が芸術だと思う物や現象を、その人が芸術だと思う絵や彫刻や文章で具現化する魔法。
例えば僕は、幻獣種こそが最高の芸術だと思っている。そして、幻獣種を描く僕の絵こそが最高の芸術だと思っている。・・・だから、幻獣以外は具現化出来ないし、他人の描いた幻獣も具現化出来ない。」
・・・何て微妙な魔法なんだ・・・。制限がありすぎる上に、予め絵や文章にしておかないと発動出来ないから即効性もない。しかも、人の感受性なんて曖昧なものに頼っているせいで、他人との情報共有が不可能ときた。
「例えば、基本的な絵の描き方は教えられる。だけど、効果的な魔力の乗せ方なんかはその人によって違うから教えることが出来ないんだよ。
しかも、この魔法には、更に欠点があってね。」
「まだあるのか・・・。」
「例えば、料理が好きな人が居たとする。・・・でも、その人は態々魔法を使って料理を具現化するかい?料理自体が好きなんだから、自分で一から調理したいと思うだろう?
その人が一番好きなものを具現化する魔法なのに、それが完成するまでの過程をすっ飛ばす魔法なのさ。」
「・・・つまり、ボトルシップとかは作る過程が楽しいのに、その過程を全て飛ばして完成させてしまう魔法というわけか・・・。
成程、使い手が少ない訳だ。正直、アンタの『幻獣を生み出す魔法』みたいに、普通の方法じゃ不可能なものを生み出せる人じゃないとこの魔法を使おうとは思わないだろうね。」
凛音も納得したらしい。
「・・・で?」
と、そこで突然彼女の雰囲気が変わった。室内の温度が数度は確実に下がった。凛音の瞳は、全てを凍りつかせる程に冷たくなっている。・・・コイツのこんな目、始めて見たぞ。
「私たちを襲ってきた敵・・・バランとか言ったっけ?アイツは一体、何の魔法を使うのさ?・・・それと、そもそもの元凶である((リンドラ大臣|あの豚))の情報を教えてよ。・・・龍騎が起きたら教えるって約束だったよね?・・・・・・もう、我慢するのも限界なんだ。」
説明 | ||
口癖は「飽きた。」熱しやすく飽きやすい幼馴染と俺が、異世界に勇者として召喚された。・・・俺はオマケだったらしいが。・・・だけどさぁ、この『残念美人』を制御出来ると思ってる訳?最悪の場合、コイツに色々されて世界滅ぶんじゃないの?しょうがない、俺が手綱を握ってやるかね。 | ||
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