魔法少女リリカルなのは聖伝 〜ヒーローズサーガ〜 |
過去の作品は此方です。
ステージ2:http://www.tinami.com/view/494108
ステージ1:http://www.tinami.com/view/488611
プロローグ:http://www.tinami.com/view/485896
ステージ3(前)
『…良いのか…今回の事は?』
『少なくとも、放って置ける訳がねぇだろう』
『うん。それは分かるけど…“四度目”だけは絶対に避けないと』
『『ああ』』
傷だらけで倒れているフェイトを見つけた総矢は飛行可能なダブルオーの姿で急いで彼女を連れて自宅まで戻ると念の為に運び込んだ拠点キューブでの精密検査を終え、彼女が目を覚ますまでまだ時間が掛かるだろうと考え、キューブの設備を使って調査に動いていた。
(…三人とも…あの時、あの場所に他に誰も……動物も居なかった。それから、少なくともこの街に敵の出現は無かった…それで良いのか?)
改めて確認すると三人のヒーロー達は揃って肯定の意思を示す。
『そうなると、彼女が襲撃されたのは他の世界になるな』
『…確かに。こっちの世界に敵が現れたのに、オレ達が誰も気付かないって言うのは変だからね』
『…だが、昨日のヤミーの出現と同時期と言う可能性は………いや、これは無いな』
己の出した答えをそう否定するダブルオーにゼロとオーズも同意する。
(それに、あそこに一緒に行動している筈の使い魔も居ないのも変だからね)「…やっぱり、襲った相手は幹部級か…」
『その可能性は高いだろう。その事に対する調査の結果、ミッドチルダと地球で何人か行方不明者が出た。地球の方はまだ分からないが、管理局の情報ではミッドチルダの方は全員が局員の子供ばかりだ。『セラヴィー』ならもっと早く詳しい事も分かるだろうが…』
ダブルオーの言葉に思わずずっこけそうになる。こうも考えが的中するとは思わなかった。なお、セラヴィーとはダブルオーの仲間の『ソレスタルビーイング』に所属しているMSで『セラヴィーガンダム』と言う。
間違いなく行方不明者は全員が『転生者』だろう。何らかの目的を持って彼女と接触した結果、最悪全員が悪意に乗っ取られて幹部級の敵に変わってしまったのだろう。
『…詳しい事は分からないが十人に満たないとは言え、大人数だ。恐らく、何らかの方法で『時の庭園』の座標を知って、そこに向かった転生者達が…』
「…悪意に乗っ取られて、最悪な事に幹部級が大量発生した可能性が有ると…」
『…否定できない…』
『否定して欲しかった』としか思えない。一対一でも苦戦する幹部級を相手に、数で上回られている状況で相手にしなきゃならないのは………総矢にしてみれば悪夢以外の何物でもない。
「…この世界の終末も近いな…」
『ちょっ!? 恐竜グリードみたいな事言わないで!!!』
「いや、思いっきり諦めたい心境だからな…。…紫のメダルが来てくれれば戦力になるだろうし…」
『って、おい!』
『いや、あれって『無欲』だから! 終末思想じゃないから!』
頭の中に響く三人のヒーローズとそんな漫才を繰り広げているだけ、まだ余裕があるとしか思えない。
だが、現実的に連戦か同時になるかは別にしたとしても、複数の幹部級を相手に戦うと言う未来が確定してしまった以上、状況は最悪としか言えない。
「…単純に悪意に侵されてない転生者が襲った可能性は…」
『…無いな。寧ろ、そう言う連中は悪意を引き寄せ易い』
『耐えられたとしても、戦っている最中に乗っ取られると思う』
ゼロとオーズの言葉が総矢の考えを否定する。特に怪我程度でさえ物語に影響を及ぼしかねない行動は、それを行う思考から『悪意』に侵され、其処から悪意に乗っ取られる。
…この世界の滅びを望む悪意にとって、元々が悪意の元になった世界、又は近い世界の住人であった転生者達は魂の器として極上の器だ。
結果的にこんな状況に陥っているのは、転生させた神にも想像できなかった事なのだろうが…。
「…うわ、つまり確定って所か…」
『そうなる。だが、オレ達も出来る限りのサポートはする。それでも、戦うのは総矢、お前自身だ』
「分かってる」
オーズのプトティラコンボ、ダブルオーのオーライザー、ゼロのウルティメイトイージスと言った切り札になりうる最強の手札だけでなく、他の力と技の多くが使えないのは総矢自身の力不足にある。
オーズの、ダブルオーの、ゼロの、力の器となっている総矢自身の力が及ばない為に、多くの能力が制限されていると言う訳だ。辛うじて使える強力な必殺技も下手に使うと殆ど力を使い果たしかねない。
「…今の力で戦える相手なら良いんだけどな…」
少なくとも、最初に戦った唯一の幹部級を思い出しながらそんな事を呟くが、それは叶わぬ願いだろうと言う事は分かってる。
「…時の庭園の情報は…」
『…セラヴィーならどうかは分からないが、オレでは正確な座標が解らなければ無理だ』
ダブルオーには即座に切り捨てられる。何とか敵の情報が解らないかと思ったが、それは無理そうだった。
「…ホント、悪神早く倒されないかな…」
『親父達も頑張ってるんだけどな』
『…流石に苦戦しているようだ…』
現在戦闘中のサポートメンバーも含めたヒーロー連合軍に対してそんな事を思う総矢だった。救援が来れば少しは楽に戦えるのだし。まあ、その軍団と戦っている相手に対しても多少は哀れに思うが。間違いなく、揃っているのは神の一人や二人倒せそうなメンバーなのだし。
『ん?』
「どうした?」
『拙いな、昨日の白い魔導師の所に敵が向かっている。恐らくだがジュエルシードを狙っているんだろうが、今回は数が多い。MSだ』
付け加えるならば、拠点キューブからある程度地球の様子も伺う事が出来る。少なくとも、昨日を集中させるのなら街一つ程度の探査は簡単に出来る。念の為にこの世界の重要人物であるなのはの様子を危険が無いかと調べて貰っていたのだが…。
「MSか…急ごう」
幹部級意外ならばそれほど強く無い敵が多いのだが、相性によっては苦戦する相手でもある。
…そして、もう一つ付け加えると何故かMSの中には『魔力』によるダメージを軽減・反射する敵も居る。ダブルオーが言うにはIフィールド等の対ビーム用の技術の応用らしいが。…この世界の魔力がMSのビームと近いと言うのが判明した瞬間だった。
疑問の多くは残るが、対魔力用の能力を持ったMSは魔導師を相手にするのに最も適切な戦力と言える。
まだ目を覚まさないフェイトを放置していくのは心苦しいが、それでも今は危険が迫っているなのはの安全が最優先と考えを纏める。
拠点キューブから出て自宅との出入り口である押入れから飛び出す姿は何処か滑稽だが、今はそんな事を気にしている暇は無い。
「…変える事出来ないかな…?」
………訂正、気にする暇は有ったらしい。
『だが、心理的にあの方法が一番安全らしい』
「…そりゃそうだけど…」
態々押入れに閉じこもる奴もいないだろう。そんな事を考えながらダブルオーに変身すると飛び出していく。
「『トランザム!!!』」
ダブルオーと総矢の声が重なるとダブルオーの姿となった総矢の体が赤く輝く。『トランザム』…ダブルオーの姿での切り札の一つだが、何気にこれは一番使い易い。力の殆どを使い果たすのは発動後に全武装での連続攻撃を叩き込む『トランザムコンボ』であり、通常発動させる分には何も問題ない。…制限時間後のリスクは変わらないのだし…。
GNソードUを構えながら上空に存在していた空中戦用MS『エアリーズ』と『AEUイナクト』を時にソードモードで切り裂きながら、時にライフルモードで打ち抜きながら、撃墜していく。
『…敵の動きが妙だ。陽動の可能性も考えた方が良い』
「分かってる」
過去の戦いで分かった事だが、それぞれの敵の種類との相性以外にも得意な戦場も変わってくる。
ダブルオーの場合はトランザムさえ使わなければ長時間の空中戦が可能となる。もっとも、トランザム使用後は一定時間戦力が落ちるが戦えない訳では無いが。
それ以外にも、ゼロの場合は何故かMSを相手にした場合相性的に不利になる部分があると言う理由もあるが。
「…最悪は両面作戦…って所かな?」
『…オレ達は一箇所しか守れないか』
「そう言う事」
別働隊が地上から向かっているとするなら、空中に展開している部隊は総矢達に対する囮と言った所だろう。
だが、考え方を変えれば地上と空中の二箇所からの同時攻撃と捕らえれば、地上と空中の両部隊は共に囮であると同時に本隊でもある。
何よりもこの時点での高町なのはでは弱いとは言え、怪人やMS、怪人・宇宙人と言った敵を倒せるとは思えない。まあ、未来の時間軸ではどうなるかは分からないが。
だからこそ、囮であるとは言えそれを無視する訳にもいかず、確実に敵の全滅をさせる必要が有る。
「ラスト!」
そう叫びながら最後の一体をGNソードUで十字に切り裂く。まだトランザムの制限時間は来ていない。ならば、それを利用して少しでも早く向かう事を優先すべきだ。
(…ダブルオー、このまま目的地まで急ぐ。着き次第オーズに交代…ゼロは念の為に切り札として待機で)
『了解した』
『分かった!』
『任せろ!』
ヒーロー達から三者三様の返事が返ってくる。
「急ぐぞ!」
双麻の意思に応える様に赤く光るダブルオーはスピードを上げる。
説明 | ||
悪意によって滅びを迎える未来を回避すべく、三人のヒーロー達は一人の少年に力を託す。 | ||
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