魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第二十七話 テスタロッサ姉妹の想い
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 「話はユーリから聞いたで勇紀君!」

 

 久遠と再会した翌日、俺ははやてに呼び出され翠屋に来ていた。

 昼休み、給食を食べ終えた俺に一通のメールが届いた。

 はやてからのメールで内容は

 

 『聞きたい事があるから学校終わったら翠屋に来てくれへんかな?』

 

 だった。

 聞きたい事って何だろうか?と疑問に思いつつも授業を受け、放課後になったのでこうして翠屋にやってきた。

 いつものテーブル席には聖祥組の六人……と銀髪コンビ。

 何でコイツらも一緒にいんだよ?と思いつつも俺は皆のいる席に近付いて行く。近付くたびに西条、吉満の表情が変わってこちらを睨みつけてくるが、俺はそんな二人を無視し、近くの席に座る。

 それで冒頭のはやてのセリフに戻る訳だが…

 

 「ユーリから?」

 

 「そや!テストでええ点数取ったらご褒美出るらしいやんか!」

 

 「昨日、ユーリちゃんが言ってたんだよ」

 

 はやてとすずかがやや不機嫌そうにしながら口を開く。

 

 「まあ確かに約束したわな。『来週の期末テストの結果次第で褒美やるぞ』って」

 

 昨日シュテル、レヴィ、ディアーチェの三人は晩ご飯食べて風呂から上がるとすぐに部屋に籠もって勉強してたし。レヴィが勉強してる光景は初めて見た。

 

 「何でそんな大事な事黙ってたん!?」

 

 「そうだよ!もっと早くに教えてくれてたら私もテスト勉強にもっと力を入れてたんだよ!」

 

 「そんな事言われても…昨日決まった事だし」

 

 「じゃあ何でもっと早くに決めてくれへんかったんよ!?」

 

 無茶言うなよ。

 

 「おいモブ!んなこたぁどうでもいいんだよ!シュテル達は何処にいんだ!?」

 

 「そうだ!俺の嫁達が何処にいるのか正直に吐きやがれ!」

 

 「何勘違いしてやがる西条!シュテルもレヴィもディアーチェもユーリも俺の女だ!!テメエなんかが好かれてる訳ねえだろうが!!」

 

 「はあっ!?テメエこそ寝ぼけてんじゃねえぞ吉満!!アイツ等がお前の事なんか好きになる訳無いだろうが!」

 

 ……毎回毎回五月蠅い二人だな。

 

 「そもそも何でアイツ等ここにいるんだよ?」

 

 「アイツ等私達を尾行してここまで着いて来たのよ。いつもみたいに声を掛けて来ずに一定の距離を保ったままね」

 

 うんざりした表情でアリサが答えてくれる。それは世間一般で言うストーカーなのでは?

 

 「お前等に『逃げる』という選択肢は無かったのか?」

 

 「そりゃ全力で走ればあの二人を撒く事はできるよ。……二人を除いて」

 

 アリシアが答えながらある方向に視線が向く。

 

 「にゃはは…運動音痴でごめんなさいなの」

 

 「足が完治してなくてすいません」

 

 視線の先にいるなのはとはやてが申し訳なさそうに答える。

 

 「「おい!!何なのはとはやてを悲しませてんだモブ!!!」」

 

 えー…。俺のせいになるのかよ。

 

 「アンタ達もう帰りなさいよ!」

 

 「何言ってんだアリサ。お前等だけ残したらこのモブが何するか分かったもんじゃないだろ」

 

 「西条、勇紀が何かするような事は無いよ」

 

 「優しいなフェイトは。こんな奴を庇うだなんて。でもコイツは庇う価値の無いクズ野郎なんだ」

 

 ((西条|コイツ))は一体、俺の何を知ってそんな言葉を口にしているんだ?

 

 「やあ勇紀君、いらっしゃい」

 

 不意に第三者の声が聞こえてきた。

 士郎さんだ。

 

 「あ、ども。お邪魔してます。ついでに注文していいですか?」

 

 「ああ、僕も注文を聞きにきたからね」

 

 「じゃあ、チーズケーキとカルピス下さい」

 

 「チーズケーキとカルピスだね。少々お待ち下さい」

 

 士郎さんが店の奥に行く。

 

 「勇紀君、マイペースだね」

 

 「見て分かるだろすずか。あの二人がいる限り話が進まん。ケーキ食ったら俺は帰るつもりだ」

 

 俺もテスト勉強しておかないと。

 …いや、しなくても余裕だけどしてるフリはしとかないと。それに今日は宿題も出てるから早く帰って片付けておきたい。

 

 「今すぐ帰れモブ。テメエはこの場に必要無えんだよ」

 

 「ついでにお前も帰れ西条。なのは達が一緒にいたいと思ってるのは俺なんだよ」

 

 ……つーか本当に五月蠅いなコイツ等は。

 俺は席を立ってカウンター席の方に移動する。近くの席にいると銀髪二人が絡んできて厄介事極まりない。

 移動した俺の後をついてくるはやてとすずか。それぞれ俺の両隣に座る。

 

 「何でついてくる?」

 

 君達来るとアイツ等に絡まれるじゃん。

 

 「せっかくだし、もっと色々お話したいなと思って」

 

 「さっきの続きも聞きたいしな」

 

 「話したいならまずあの二人をどうにかしてくれ」

 

 ほら、お前等がこっち来たからスッゲー睨んでるんだよ。

 

 「なのはちゃん!アイツ等にスターライトブレイカーぶちかましたってや!!」

 

 「ふええっ!?」

 

 「そうだなのは!あのモブ野郎にお前の一撃を叩きこんでやれ!」

 

 「はやて、すずか。そこにいたら危ないから俺の側に来るんだ」

 

 「えっと…えっと。だ、誰にスターライトブレイカー撃てばいいのかな?」

 

 「とりあえず落ち着けなのは!」

 

 混乱してスターライトブレイカーを撃つ事を前提にしているなのはを落ち着かせないと俺の身が危ない。

 何もしてないのに((収束魔法|ブレイカー))なんて受けたくねーぞ。

 

 「そうだよなのは!まずは結界を張らないと」

 

 「姉さん!?そういう問題じゃないよ!!」

 

 「「結界なら俺に任せろ!!」」

 

 銀髪コンビが結界を発動させようとする。

 

 「((唯我独尊|オンリーワンフラワー))!」

 

 俺は咄嗟に((唯我独尊|オンリーワンフラワー))を展開し西条と吉満の魔力を封じる。

 

 「「なっ!?俺様の魔力が!?」」

 

 銀髪コンビは魔力が使えない事に混乱している。

 

 「あれ?席を移動したのかい?」

 

 士郎さんがカウンターの奥から戻って来た。どうやら注文していたチーズケーキとカルピスを持ってきてくれたようだ。

 

 「向こうは騒がしいので」

 

 「成る程ね。それよりご注文いただいたチーズケーキとカルピスです。ごゆっくりどうぞ」

 

 「ありがとうございます」

 

 早速俺はチーズケーキを口に運ぶ。

 …味覚が低下して味を感じられないのが残念だ。ケーキを頼む意味が無いのだが、何も頼まないのは冷やかしに来たみたいで失礼だからな。

 ケーキを口に運びながら騒がしかった連中の方を見るとバインドでぐるぐる巻きに縛られている銀髪コンビの姿があった。

 

 「ふう〜、良い事した後は気持ちが良いねえ〜」

 

 爽やかな笑顔で言うアリシア。こいつが二人を捕縛したのか。

 

 「「むぐぐ…んう〜〜〜〜!!!!」」

 

 口元もバインドで封じられているため二人が何を言っているのか分からない。

 

 「アリシアちゃん。どうせやからソイツ等どっか適当なところに転移させといてや」

 

 「おお〜、ナイスアイデアだよはやて。じゃあ早速…」

 

 二人の足元に魔法陣が展開され、何処かへと強制転移させられた。…アリシアは転移魔法使えるのか。

 

 「これで五月蠅いのも消えた事やし安心してお話出来るな勇紀君」

 

 「その前にアリシア。あの二人を何処に転移させたんだ?」

 

 「ん?…ん〜、無人世界?」

 

 何故に疑問形?

 

 「というか無人世界は駄目だろう。アイツ等転移魔法使えんのか?」

 

 「冗談だよ冗談。転移先はアースラの訓練室だから」

 

 ホントだろうな?

 

 「何でそんな人を疑う様な目で見るのかな〜?ホントにアースラの訓練室に飛ばしたから安心してよ」

 

 「…まあ後でクロノに確認取ればいいか」

 

 「それより姉さん。もう少し周りを気にしてよ」

 

 「そうだよアリシアちゃん。他にお客さんがいないから良かったけどもし誰かに見られていたら大変な事になっていたかもしれないの」

 

 「ええ〜!?私良い事したのに責められるの!?なのはもフェイトもあの二人にはうんざりしてたじゃん!!」

 

 あの二人を追い出した事を褒められると思っていたんだろうなアリシアは。

 しかしなのはとフェイトの言う事は尤もだ。もし今の光景を一般人に見られてたらどう言い訳するつもりなんだ?

 まあ全ては今更って感じだがな。先程からの会話には『結界』やら『魔力』やらの単語が飛び交っていたし。せめて認識阻害ぐらいは使っておこうぜ。

 

 「向こうの事は置いといてや。勇紀君、テストで良い点取ったらどんな褒美貰えるん?」

 

 「私も気になってたんだ。勇紀君、教えてほしいな」

 

 「別に大したものでもないぞはやて、すずか。頭撫でてやるだけだし」

 

 「「え?」」

 

 「何それ?褒美って言えんの?」

 

 すずかの隣に来たアリサが口を挟む。

 

 「俺としてもよく分からん。シュテル達はそれで良いみたいだし」

 

 何か欲しい物でもあるなら買ってやってもいいと思ってたんだがな。

 チーズケーキを食べ終えた俺はカルピスを飲む。

 

 「そういえば私達も明後日と明々後日は期末テストなのよね」

 

 どうやら聖祥も期末テストらしい。

 

 「お前等勉強はしなくていいのか?」

 

 そんな俺の問いにアリサは自信に満ちた表情を浮かべ

 

 「ふふん。この私にとってはあの程度の授業内容に遅れを取る訳無いじゃない」

 

 堂々と言い切った。つまりは復習しなくても余裕って事か。

 

 「他の連中は?」

 

 「「理系なら大丈夫!(なの!)」」

 

 なのはとフェイトは理系に関しては自信があるらしい。まあ、魔導師だからそっち方面には強いって事か。

 

 「じゃあ文系は?」

 

 「「……………………」」

 

 そう聞いた瞬間、地面に膝を付きorzの体勢になる。

 え?そこまで悪いの?

 

 「勇紀、この二人に文系は鬼門も同然なんだよ」

 

 アリシアが答えてくれる。

 

 「アリシアはどうなんだ?」

 

 「文系でアリサと肩を並べられるのは聖祥では私だけだよ」

 

 「じゃあ理系は?」

 

 「……………………」

 

 その場でorzポーズになるアリシア。…苦手なのか理系。

 お前、本当にフェイトと正反対だな。見た目はソックリなのに。

 

 「はやてとすずかはどうなんだ?」

 

 二人に聞くが、はやてもすずかも何やら考え込んでいるらしく俺の言葉が届いていないようだ。

 さっきから静かだと思ったら…。

 

 「この二人はまあまあといったところね。クラスの平均点前後の点数をキープしてるわ」

 

 二人の代わりにアリサが答えてくれた。

 平均点前後か。少なくとも悪くはないようだ。

 

 「(ゴクゴクゴク)………ふう〜。ご馳走様でした」

 

 カルピスも飲み終えた俺は財布からお金を取り出し

 

 「士郎さん、会計お願いします」

 

 「ああ、少しだけ待っててくれるかい?」

 

 「分かりました」

 

 士郎さんは俺の目の前にある空になった食器を持ってカウンターの奥へ行ってしまった。食器を洗うんだろうな。

 

 「…なあ勇紀君」

 

 先程まで何か考え込んでいたはやてが口を開く。

 

 「あのな…今度のテストでわたしもええ点数取ったらご褒美が欲しいんやけど…」

 

 「……お前もか?」

 

 「だってズルいやん!王様達ばっかいい思いして」

 

 「そうだよ!私だって勇紀君からのご褒美欲しいよ」

 

 はやてに続きすずかまでがねだってくる。

 二人の欲しい物ねえ…。

 

 「何か新しい本でも欲しいのか?」

 

 真っ先に浮かんだ候補が本だった。二人共読書好きだし。

 

 「そうやない!わたしも頭撫でてもらいたい!」

 

 「私も!テスト頑張るからもし良い結果が出たら撫でてほしいんだけどいいかな?」

 

 「私も今回は真剣にやるから結果出せたらギュウって抱きしめてね?」

 

 頭を撫でてほしいというはやてとすずか、そしてギュウっと抱きしめてほしいというアリシア。

 ………………ん?アリシア?

 

 「いやー、アリシアさんも今回は頑張っちゃうよー♪」

 

 いつの間にか立ち上がって自分の拳をグッと握りながらやる気を出しているアリシアの姿が視界に入った。

 …まさかコイツも参加すんのか?

 

 「ちょ!?ちょい待ちやアリシアちゃん!何でアリシアちゃんもやる気になっとんのや!?」

 

 「そ、そうだよ!アリシアちゃんには関係無い事だよ」

 

 はやてとすずかがアリシアに詰め寄る。が、当の本人は

 

 「だって、面白そうじゃん」

 

 の一言で返す。

 

 「『面白そうじゃん』って…。アリシアちゃん、そんな軽いノリで参加すんの止めてや」(ヒソヒソ)

 

 「…まさかアリシアちゃんも勇紀君の事…その…」(ヒソヒソ)

 

 「さあ、どうだろうね?あのバカ二人より好感がもてる事は確実だけど」(ヒソヒソ)

 

 何か三人共小声で話してるみたいだけど

 

 「おい((妹|フェイト))。((お前の姉|アリシア))がまた暴走してるみたいなんだが?」

 

 「ゴメンね勇紀。私には姉さんを止められないよ」

 

 「…そうか」

 

 …まあいいか。

 

 「褒美はどうでもいいとしてテストの点数で競うのはアリシアの言う通り面白そうね」

 

 不意にアリサがそんな事言い出した。おいおい、まさかとは思うが

 

 「決めたわ!勇紀、期末テストで勝負よ!!」

 

 やっぱりか。

 アリサは何かにつけて勝負したがるな。

 

 「拒否権は?」

 

 「有る訳無いじゃない」

 

 デスヨネー。

 

 「…はあ〜。もういい、好きにしてくれ」

 

 「ふふん。手加減はしないからそのつもりでいなさい」

 

 へいへい。

 

 「ついでになのはとフェイトも参加ね」

 

 「ふえっ!?」

 

 「私も!?」

 

 そしてどんどん無関係な他人が巻き込まれていく。

 

 「ここまで来たらもう一人や二人増えたって変わらないでしょ」

 

 「それはそうだけどな」

 

 結局、聖祥組の六人もテストの結果を争うのに参加する事が決まってしまった。

 何故こうなった?元は身内だけでの課題だった筈なのに………。

 

 

 

 「いやー、テストが楽しみだねフェイト!」

 

 「そ、そうだね…」

 

 現在帰宅中。

 俺を挟んで左右にいる((金髪|テスタロッサ))姉妹が会話をしております。

 

 「勇紀だって嬉しいよね?私の頑張り次第でハグ出来るんだよ」

 

 「いや別に」

 

 「何で!?しかも即答!?流石のアリシアさんも傷付くよ!!」

 

 「お前を抱きしめて何の得になるよ?」

 

 「そりゃー女の子特有の甘い匂いを間近で嗅げるとか身体の柔らかさを堪能できるとか…」

 

 「分かった。今ここに銀髪コンビ呼んでやるから思いきり抱きしめてもらえ」

 

 俺は周囲に人の気配が無い事を確認して足元に魔法陣を展開させる。

 ViVidの合宿でキャロがアインハルトを呼び戻した召喚魔法を使おうとすると

 

 「お願いそれだけは止めて!!」

 

 全力で俺の腕にしがみつき懇願するアリシアだった。涙目になってまで止めてくる。

 そこまで嫌なのか……。

 

 「あはは…」

 

 そんなアリシアを見てフェイトは苦笑いしか出来なかった。

 

 「む〜、勇紀は本当に西条・吉満とは違うよね」

 

 「…俺をあの二人と同列にしないでほしいんだが」

 

 全くもって失礼極まりないぞ。

 

 「私、アイツ等が近寄ってくるだけでもう気分が鬱になるんだよね」

 

 「……………………」

 

 西条、吉満よ。お前等もうリカバリー不可能な程に嫌われてるぞ。

 

 「毎日『俺の嫁』『俺の嫁』ってしつこく言ってくるし…ホント、嫌になっちゃうよ。フェイトだってそうでしょ?」

 

 「そうだね。他の男の子と話そうとすると必ず絡んでくるし…」

 

 「前にも言ったけどアイツ等のせいで聖祥では男子の友達がいないんだよねえ〜」

 

 二人揃って『はあ〜』と溜め息を吐く。そういえば温泉旅行の時に言ってたな。

 

 「だからレヴィ達が羨ましいよ。あの二人みたいに絡んでくる男子がいないみたいだし」

 

 「うん。レヴィ本人も男の子の友達は結構いるって言ってたし」

 

 「アイツはしょっちゅう男子と一緒に運動場で遊んでるからな」

 

 昼休みに教室に残ってるなんて事はほとんど無いな。

 

 「おかげで今私達の男の子の友達って勇紀と大槻ぐらいなんだよねー」

 

 「???ユーノとクロノは友達じゃないのか?」

 

 『友達』というカテゴリーから外されてるなんてあの二人が不憫過ぎる。

 

 「あー…言葉が足りなかったね。『頻繁に会えて同い年』の男の子の友達って事だよ」

 

 「クロノは年上だし、ユーノは無限書庫で働いているから基本、地球にはあまり来れないし」

 

 「私達ぐらいの年なら男の子の友達がそれなりにいても可笑しくない筈なのに…」

 

 また二人揃って溜め息を吐く。あんまり溜め息吐いてると幸せが逃げていきますよ?

 

 「まあ、頑張って作れ」

 

 西条・吉満の目を盗んで男友達を作るのは並大抵の事では出来なさそうだろうが応援しておく。

 

 「うん。…………ところで勇紀、ちょっといいかな?」

 

 俺の言葉に頷いたフェイト。そして少し間を空け俺に聞いてくる。フェイトの表情は先程とは違い真剣なものになっている。

 

 「別に構わないけど何やら真面目な話みたいだし…認識阻害の結界でも張るか?」

 

 俺の提案にフェイトは頷いたので結界を張る。これで一般人には俺とフェイトが何気ない会話をしている様にしか聞こえないだろう。

 

 「これでいい。で、話したい事は何だ?」

 

 「…………勇紀はさ、クローンについてどう思う?」

 

 「はい?」

 

 「フェイト!?」

 

 俺とアリシアは同時にフェイトの発言に反応した。俺は『いきなり何言ってんの?』っていう感じでアリシアは『まさか話すの!?』っていう感じだな。

 

 「いきなりでアレなんだがクローンって言うとあのクローンだよな?遺伝子から同じ動物を造り出すっていう…」

 

 俺の言葉にフェイトは頷く。

 

 「『クローンについてどう思う』ねえ…。世間ではそこそこ知られてる技術だし哺乳類でも既に羊や猫で体細胞クローンの成功例があるからなあ」

 

 「その…羊や猫じゃなくて……造るのが人間だったとしたら?」

 

 凄く不安そうな表情で聞いてくる。

 

 「人間のクローン?う〜ん……世間では結構問題視されてるよな。特定の人物と全く同じのコピー人間を造り出すものとして。実際クローンに嫌悪感を示す者も多いし」

 

 「「……………………」」

 

 「でもそこに誤解があるんだけどな」

 

 「「え?」」

 

 「そもそもクローンなんていうのはあくまで元となる者と同じ遺伝情報を持つというだけであって単なるコピーなんてとても言えない」

 

 「「……………………」」

 

 「俺からすれば遺伝情報が全く同じでも、元となった人間とクローン人間はコピーどころかまるで別人にしか思わないな」

 

 「「……………………」」

 

 「第一、遺伝情報が同じっていうなら双子や三つ子のような一卵性多生児も全部クローンって事になるぞ」

 

 「「……………………」」

 

 俺の言葉をただ静かに聞いている二人。それから少ししてフェイトは口を開く。

 

 「勇紀はその…クローン人間が気味悪い存在だとかは思わないの?」

 

 「何でだ?結局クローンなんて少し特殊な生まれ方をした双子や三つ子って事ぐらいだろ?俺はそう思うけど」

 

 「そう…なんだ」

 

 「というか何でいきなりそんな話するんだ?」

 

 「そ、それは……」

 

 言いにくそうにしているな。目も泳いでるし。

 

 「あの…ね、実はわたs「ストップ!」……え?」

 

 フェイトが喋っている最中に俺は自分の言葉でそれを遮る。

 

 「別に無理してまで言わなくていいぞ」

 

 「私は別に無理なんて…」

 

 「してるって。声が震えてるだろ?」

 

 「う………」

 

 「フェイトが言いたい事は結構話の内容が重そうだけど、それって今俺が絶対に聞かなきゃいけない事か?」

 

 「そんな事は無いけど」

 

 「今すぐ俺に言わなきゃいけないって事も無いなら今ここで聞く必要は無いさ」

 

 「でも…」

 

 「俺が良いって言ってるんだから気にしない」

 

 そう言ってポケットから携帯を取り出し今の時刻を確認する。

 確認した後携帯を再びポケットに戻し

 

 「…そろそろいいか?帰ってテスト勉強と宿題をしたいんだが」

 

 話を打ち切って帰っていいか聞いてみる。

 

 「あっ、うん…ゴメンね。時間取らせて」

 

 フェイトが謝ってくるが俺は『気にするな』と答えておく。

 それから結界を解き二人に背中を向けて歩き出す。しかし数歩歩いたところで立ち止まり

 

 「フェイト」

 

 俺は振り返らずに彼女を呼ぶ。俺に呼ばれたフェイトの視線がこっちを向いてるのが背中越しに感じる。

 

 「周りが何と言おうが気にするな。お前は他の誰でもない((フェイト・テスタロッサ|・・・・・・・・・・・))なんだから」

 

 とだけ言っておいて再び歩き出す。

 …帰る前に神社に寄っておくか。

 久遠に来週の金曜までは遊びに来れないと言っておかないと………。

 

 

 

 〜〜フェイト視点〜〜

 

 勇紀の背中を見送ってからすぐ私と姉さんも自宅に向かって歩いていた。

 

 「しかしビックリしたよ。フェイトいきなりあんな事言うんだもん」

 

 「うう……反省してます」

 

 「いや、責めてる訳じゃないんだけどね」

 

 シュンと軽く落ち込む私を見て姉さんは苦笑している。

 

 「でも何で話そうと思ったの?」

 

 「その…何でかは分からないけど勇紀には隠し事したくないって思ったんだ」

 

 ホント、自分でもよく分からない。

 でも私は勇紀に話そうと思った。自分が普通の子とは違う……((造られた存在|・・・・・・))であると言う事。

 以前、温泉旅行で『PT事件』について話した時も私がクローンだって事だけは話さなかったし。

 

 「結局言えなかった…というより勇紀が聞かなかったんだけどね」

 

 「でも勇紀は気付いたんじゃない?」

 

 「やっぱりそうなのかな?」

 

 勇紀は同年代の子と比べ物にならないぐらい頭が良いってシュテル達も言ってたぐらいだから、あれだけの会話で私が言いたかった事にも気付いたのかな?

 私は未だに管理局の一部の人達からは『フェイト・テスタロッサ』としては見てもらえない。その人達が私を見る視線は『アリシア・テスタロッサのクローン』『もう一人のアリシア』としか感じないから。

 もしかして勇紀も私を見る目が変わっちゃうのかな。

 

 …………何でだろう?そんな事を考えたらすごく悲しい気持ちになっちゃう。

 勇紀にはそんな目で見てほしくないよ。

 

 「大丈夫。心配無いって」

 

 そんな私の心の中を読んだかのように姉さんが返事をする。

 

 「勇紀は『周りが何と言おうが気にするな。お前は他の誰でもない((フェイト・テスタロッサ|・・・・・・・・・・・))なんだから』って言ってたでしょ?」

 

 確かに別れる際に勇紀はそう言っていた。

 

 「多分フェイトが『管理局の一部の人から変な目で見られている』って事にあれだけの会話で察したんだと思う。その事実にフェイトがどんな思いをしてるかって事も。気付いたから言ってくれたんだと思うよ。『フェイトはフェイト。私のコピーなんかじゃない』って意味を込めて。決して同情とかじゃなくフェイトを一人の人間として認めてるって意味で」

 

 「そう…かな?」

 

 「そうそう!お姉ちゃんが保証します。だからフェイトは自分にもっと自信を持ちなさい」

 

 姉さんにそう励まされ、少し心が軽くなった。

 

 「…でもアレだね〜。自分の事を話そうとするなんてフェイトも好きな人には隠し事をしたくなかったって事なんだね〜」

 

 「???勇紀の事は好きだよ?」

 

 「違うよ。フェイトが思っている『友達として好き』っていう意味じゃなくて『異性として好き』っていう意味だよ」

 

 「異性?」

 

 「うーん、意味が理解出来ない?じゃあ勇紀と自分以外の女の子が並んで楽しそうにしている姿を想像してみて。シュテル達でもなのは達でも誰でもいいから」

 

 勇紀が自分以外の女の子と楽しそうにしてる姿?

 よく意味は分からないけど姉さんに言われた事を想像してみる。勇紀が他の女の子に笑顔を向けている姿を。

 

 ……………………。

 

 「どう?」

 

 「…なんだろう。胸の中にモヤッとした感じがする」

 

 『その笑顔を自分以外の人に見せないで!』って思ってる自分がいる。

 

 「それが答えだよフェイト。フェイトは勇紀の事を意識してる」

 

 私…意識してるんだ。

 

 「あうう…///」

 

 姉さんにそう言われて改めて自分の想いを自覚すると何だか恥ずかしくなってくる。

 

 「しかしこれでライバルがまた一人増えたかあ」

 

 「ライバル……って、もしかして姉さんも?」

 

 「そうだよ」

 

 姉さんはハッキリと言った。

 

 「勇紀の側にいると何だか心地良いんだよねー。それに何だかんだ言って私の我が儘にも付き合ってくれるし。で、気付いたらいつの間にか好きになってたよ」

 

 「我が儘言ってる自覚はあったんだ」

 

 「周りにいる子は皆強敵だからねー。それに加えて勇紀本人はかなり鈍いから強引にでも自分をアピールしていかないと」

 

 姉さんが言うにはシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、すずか、はやての六人は間違い無く勇紀に恋してるのだとか。

 うう…確かに私から見ても皆可愛い子だと思う。そこに姉さんも加わるなんて。

 

 「フェイトも勇紀が好きならちゃんと自分の事アピールしていかないと駄目だよ」

 

 「うん…。でも姉さん、姉さんはどうして私にそんな事まで教えてくれるの?」

 

 「そりゃー、フェイトは私の妹だもん。ライバルであると同時に大切な家族なんだから。悩んでいるなら一緒に考えて解決してあげたいって思ったからだよ」

 

 凄く良い笑顔で姉さんはハッキリと告げる。

 

 「でもライバルである以上、絶対に負けないからね!」

 

 「……うん!」

 

 姉さんの宣言に頷き、私と姉さんは『これでこの話は打ち切り』と言わんばかりに話題を変える。

 ライバルは多くて皆手強い。けど負けたくない。

 自分の気持ちに気付いた以上、私も勇紀に振り向いてもらえる様に少しずつでも自分をアピールしていこうと決意を固めた………。

 

 

 

 〜〜フェイト視点終了〜〜

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
銀髪コンビのウザさはもはや伝統ですな。そんでもって主人公の建築力はさすがわ神様転生オリ主というべきか(海平?)
相変わらずの銀髪コンビのウザさと主人公のフラグ建設能力。銀髪コンビはここまでされても照れ隠しだと思うのだろう、ある意味凄い。(chocolate)
トーマさん、掃除するだけならそれで十分だと思いますが、何かに利用できるんじゃないかと思いました。(青髭U世)
青髭U世さん言い方は悪いですが、ヤサカニノ勾玉と言う名の掃除技があるではないですか(頭翅(トーマ))
トーマさん、むしろ30匹どころか200匹いましたからね。スカさんに頼んで研究材料にすれば、排除できるし、一石二鳥じゃないかな?(青髭U世)
普通にストーカー被害で申告した方が良いかもw収容所から居なくなったりすると強制的に再投獄にできるからw(大雅)
トリプルブレイカ―のほうが清潔に処理できると思う。いつか誰かあいつらに制裁を加えてくれませんかね〜(竜羽)
スターライトブレイカー一発で足りるかな?Gは一匹見つけたら30匹は居ると思えだよ、片方はアイオニオン・ヘタイロイで増えるけど(頭翅(トーマ))
久し振りだったから忘れてたけど…銀髪コンビのウザさは絶好調ですね〜…アリシアさんGJ!(神薙)
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