単一の幸福を求めて… 第14話 前編 |
第14話 黄巾討伐 前編
荊州での黄巾党の暴乱は孫策たちの活躍によって終息の兆しをみせていた。
しかし、それは一地方での出来事に過ぎなかった。
大陸の各所に飛び火した黄巾党の暴乱は次々と燃え上がり大陸を覆った。
暴乱が暴乱を呼び、暴力が暴力を呼ぶ。 ……阿鼻叫喚の地獄絵図と化した大陸の大地は、明けることも知らぬまま、多くの人々の命を吸い取っていった。
その暴乱を鎮圧しようと、漢王朝が大動員をかけて官軍を形成し、黄巾党と対決したのだが……
黄巾党の数の多さ、そして何よりも官軍の腰抜けぶりによって、黄巾党は各地で勝利を謳い、その規模を膨らませていった。
しかし、そんな官軍不利な情勢の中、各地の諸候たちが目覚ましい活躍を見せる。
許昌に本拠地を置く曹澡。 袁術の従姉にして河北を抑える袁紹や、幽州の公孫賛が活躍すれば、義勇軍を結成し、各所で連戦連勝している劉備が頭角を顕す。
そんな英雄たちの活躍により、黄巾党の勢いも次第に衰えを見せ始めていた。
そんな中―――黄巾党の本隊を討伐せよ、と朝廷から命令が下される。
袁術は孫策に使者を送った、黄巾党の本隊と決戦し、撃破せよ――――そんな無茶な命令を携えて。
美羽
「―――というわけでの。今こそ黄巾党を殲滅する時機じゃと思わんかの?」
孫策
「時機はそうでしょうね。……だけど私の兵だけじゃ無理よ」
美羽
「なんと。最近、民たちに英雄とか祭り上げられておるようじゃが、その期待を裏切るつもりかの?」
孫策
「そういうこと言ってるんじゃなく。……単純に兵数が足りないから無理だって言ってるのよ。 黄巾党本隊の兵隊は、どう少なく見積もってもザッと二十万。対する私の兵は、どう多く見積もっても一万がせいぜい。これじゃ話しにならないわ」
二十万対一万、か。確かに話しにならないな、孫策の軍だけで相手をすればの話しだが……
孫策
「ただ……各地方に散っている旧臣たちを呼び寄せても構わないのなら、撃破することも可能でしょうね……」
美羽
「ふむ。ならば認めてやるのじゃ。さっさと呼び寄せてすぐに出陣せい」
孫策
「……了解。袁術ちゃんはどうするの?」
美羽
「朝廷からの命令じゃ。妾も出るぞよ」
七乃
「私たちは万全の準備を整えたあと、西進して黄巾党の別働隊を撃破するんです。孫策さんはお強いですから北方で黄巾党の本隊と戦ってくださいね♪」
孫策
「無茶を言ってくれるわね……」
美羽
「孫策ほどの将ならば、強い敵の方が良いじゃろ。頑張って名声を得るが良いのじゃ」
孫策
「……とりあえず有り難うと言っておくわ」
美羽
「うむ、苦しゅうないぞ」
孫策
「じゃあこれで通達はお終い?」
七乃
「そうですね。あとはいつ頃出陣するかの報告をお願いしますぅ」
孫策
「それは後で伝えるわ」
美羽
「分かったのじゃ。他に質問は?」
孫策
「無い」
美羽
「では下がって良いのじゃ。……妾を喜ばせる戦果を期待しておるぞ」
孫策
「……ふっ」
玉座の間から出ていく孫策と視線がぶつかるが孫策はこちらを無視して無言ですれ違う。
白斗
「……良かったのか? 美羽」
七乃
「何がじゃ?」
白斗
「孫策の兵……いや、まあいい。 俺はどうすればいい?」
美羽
「当然、妾達と共に別働隊の討伐に出るのじゃ」
白斗
「了解だ」
それだけ聞くと、俺は玉座の間から退出する。
白斗
「孫策が出陣してからの出陣になるか……。する事もないし、寝るとするか」
俺はやることも無いので用意されている寝室に向かう。
白斗
「(この前、捕縛した黄巾党からの情報では、本隊は約三十万、別働隊は約八万、多く見積もったとしたら十万はいるだろうな。 俺が楽をするには少々厳しい数の差だな……。)」
別働隊とはいえ一筋縄ではいかない。そんなことを思いながら、俺は寝室に向うのだった。
袁術が孫策を呼び出して、十日が経過した――――。
孫策から出陣するという報告があった二日後、俺達は黄巾党別働隊との決戦の為、西に向かう。
現在は銀色の大軍を率いて行軍の真っ最中である。
白斗
「さて、まずは初戦だな」
七乃
「そうですねー、でもお城からたくさん兵を連れてきましたから大丈夫ですよ♪」
美羽
「名門袁家の兵は無敵なのじゃ!」
白斗
「気楽だねぇ〜、敵の本拠地に着く前に出城に籠ってる黄巾党を片付けないとな」
美羽
「そうじゃの。ところで白斗よ。おぬし、なぜにそんな駄馬に乗っておるのじゃ?」
行軍の中、俺はあえて見栄えの悪い貧相な馬に乗っていた。
白斗
「やはり駄馬に見えるか? それほど悪い馬じゃないんだがな」
俺はゆっくりと馬の背を撫でる。
白斗
「なんか高い馬に乗ってると、もったいなくて大事にするだろ。だが、戦場ではそんなこと言ってられないし、いざってときは馬を捨てないとな。だから、気兼ねなく乗り捨てられる安い馬が丁度いいんだよ」
美羽
「そういうものかの?妾にはよく分からんのじゃ」
白斗
「まあ、美羽は乗り捨てるようなことはないもんな」
見れば美羽は七乃と同じ馬に跨がって手綱を完全に任せている。
美羽
「妾には七乃がおるからのぅ」
七乃
「はーい、お嬢様の手綱はわたしにおまかせですよ♪」
なぜか別の意味に聞こえるのは気のせいか?
兵士
「申し上げます!」
美羽
「どうしたのじゃ?」
兵士
「前方に大部隊を確認!戦闘中のようです!」
白斗
「黄巾党か。どこの部隊が戦ってるんだ?」
兵士
「はっ!どうやら官軍のようです」
白斗
「官軍、ね……。状況はどうなってる?」
兵士
「黄巾党の数が多く苦戦しているようです。既に本隊は撤退を開始していました。」
白斗
「本隊が既に撤退だと?……他の部隊は残ってるのにか?」
兵士
「そのようです」
白斗
「官軍の指揮官は馬鹿じゃないのか……」
紀霊
「単副殿どういたそうか?」
兵をまとめていた紀霊殿がこちらに近づき意見を求めてくる。
白斗
「ふむ……。腐っても官軍だ、救援を出さないで後々問題になるのもな、面倒だが助けに行きますか」
俺は戦場を観察する。中央は比較的に被害は少なそうだ……、右軍も少し危ういがまだ大丈夫だろう。問題は左軍だ、敵の勢いに押されて今にも崩れそうだ。
白斗
「七乃は美羽の本隊と共に中央に加勢して敵を支えてくれ、紀霊殿は右軍の救援を、俺は今にも崩れそうな左軍に向かう」
七乃
「おまかせくださいー」
紀霊
「了解した」
――――右翼、官軍張遼の部隊
兵士
「張遼さま! 本隊は既に撤退、呂布隊、華雄隊、共にもう限界です!」
張遼
「ちぃっ! アホ何進め……無茶な作戦で部隊壊滅させただけで自分はさっさと撤退かいな」
兵士
「どういたしましょう?」
張遼
「どうしようもないわ! もうええ、お前ら、ウチの指示に従い! 責任はウチが取る! 撤退や!」
兵士
「よろしいので?」
張遼
「かまへん! この戦力差じゃどう考えても無理や」
兵士
「はっ! 総員、撤退! 撤退ーーーっ!」
張遼
「……けど、別働隊いうからたいした数や無いと思うたけど十万もの大群やないか……別働隊どころか、本隊と変わらんで……?」
???
『わあぁぁぁぁあ!!』
張遼
「な……っ! 何や、敵の増援か!」
兵士
「いえ! 旗印は袁と張! 恐らく、南陽の袁術の軍かと思われます」
張遼
「今頃か……っ! まあええ、ウチらはとっとと撤退するで!」
紀霊
「単副殿。部隊の展開、完了しましたぞ」
白斗
「よし。右翼の援護は紀霊殿にお任せします」
紀霊
「心得た」
白斗
「俺は左翼に向かう、単副隊は俺に続け! 黄巾党は数は多いが所詮は烏合の集、我等の敵では無い!」
兵士
「応っ!」
――――左翼、官軍華雄の部隊
華雄
「な……何だ?どこの部隊だ……」
兵士
「援軍でしょうか?かなりの数ですね……」
白斗
「この部隊の将軍はどちらか!」
華雄
「お、おう! ここだ! ここにいるぞ! 貴様らはどこの兵だ!」
白斗
「我が名は単副。袁術の客将をしている。そちらは?」
華雄
「ああ、我が名は華雄だ。本隊は既に撤退、こちらも苦戦しておったが、貴公らのおかげで何とか命を繋ぐことが出来た。礼を言う」
白斗
「礼はいいさ。ここは我らが引き受ける、官軍は急いで撤退して体勢を立て直してくれ」
華雄
「すまん。ならば、その言葉に甘えさせてもらう。張遼にも連絡せよ、撤退するぞ!」
白斗
「応っ、任せてくれ」
華雄
「総員、撤退せよ! 撤退だ!」
兵士
「撤退! 撤退ー!」
白斗
「…………ふぅ
(……本隊は既に撤退、ね。華雄殿には見捨てられた自覚はなし、か)」
兵士
「単副さま!」
白斗
「どうした。何かあったか?」
兵士
「はい。袁術様の部隊が……」
――――中央、袁術軍本隊
袁術
「名門袁家の兵の強さを見せつけるのじゃ〜!」
七乃
「さすがお嬢様!その無茶苦茶な采配ぶり、惚れ惚れしちゃいます!」
袁術
「にょほほ〜もっと妾を褒めるがよいぞ」
呂布
「………………邪魔」
陳宮
「まったくなのです!いきなり現れたと思ったら突撃してきて……。これではまともに戦えないのです!」
白斗
「何をやってるんだ、あの二人は……」
兵士
「どういたしましょう?」
白斗
「はぁ……。まあいい、中央を支えることは出来てるようだし当初の予定通り、こちらを蹴散らした後で中央の援護に向かうぞ。紀霊殿にも伝令を出してくれ」
兵士
「はっ!」
俺は自分の部隊に向かい、
白斗
「全員よく聞け! 今より、戦訓を授ける! 」
袁術軍兵士
「応っ!」
白斗
「まずは三人一組となれ! 一人の敵に三人で当たれば必勝だ! 一人は敵と対峙して防御! 一人は防御の横から攻撃! 最後の一人は周囲を警戒! 以上だ!」
袁術軍兵士
「応っ!」
白斗
「名門袁家の誇りにかけて、賊程度におくれをとるなよ!」
袁術軍兵士
「おおーーーーーーーーーーーっ!」
白斗
「退却してくる華雄隊をやりすごしたあと、全力で黄巾の軍に突撃だ! わかったか!」
袁術軍兵士
「応っ!」
白斗
「良し! 総員、突撃準備!」
号令と共に兵士たちが抜刀する。それと同時に、
兵士
「華雄隊撤退完了! 敵軍来ます!」
白斗
「敵は統率の無い暴徒の群れだ、片っ端から叩き潰せ! 総員、突撃ぃぃーーーーっ!」
袁術軍兵士
「うおぉぉーーーーーーーーっ!!」
袁術軍と黄巾党との初戦が今始まったーーー。
説明 | ||
真・恋姫無双の二次創作です。 主人公はオリキャラです、苦手な方は御遠慮下さい。 皆様お付き合いありがとうございます。 今回も結構長いです。 |
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コメント | ||
ゆっくり頑張ってね!!! それにしても白斗君がイケメンすぎるw(Necohachi) 前編が三つあるでござるw 続編期待してます!!!(Necohachi) |
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