リテラエルネルア「第七話」
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 あの二人の戦いから一夜明け、翌日。

 会議室で暁はスバルとティアナ、なのはを前に機嫌悪く立っていた。 対して三人は椅子に座っているものの暁の威圧感に圧され体を縮めていた。

 他の隊長陣やメンバーも居たが触らぬ仏…いや『神』になんとやら…、巻き込まれないように距離をおいている。

 当事者の構図が蛇に睨まれた蛙に見えるのは暁の背後に阿修羅が見えるからだろうか……、もちろん実際に見えるわけではないがそう感じてしまう。 だが手にしている『ある物』が異彩を放っていた。

 どういうわけか部屋の片隅にある椅子が見事に壊れていた。

 「んで、お前ら頭は冷えたよな」

 「「……はい」」

 「うぅ…」

 「よし、なら一発ずつやってから説教だ」

 手にしている物で素振りしながら三人に宣告する。

 「ちょ、ちょっと待ってください神崎さん!?」

 「一発ずつってそれでやる気ですか!? そのハリセンで!!」

 三人は暁が手にしている『超危険ハリセン・仏陀切』を見て動揺していた。

 たかがハリセンで、とは思うだろうがそこは暁のマッドの才能の現れか威力が半端ない。

 先述の片隅にある残骸、それがこのハリセンの威力を裏付ける。

 「まだわからん様なら三発ぐらいいこうかと思ったが、それは余りにも可哀相だから一発でいこうというわけだ」

 「「一発でも十分過ぎる威力だと思うんですけど!?」」

 「というかホントにハリセンですかそれ!?」

 スバルとティアナは一字一句見事なタイミングでハモった、それはもう素晴らしいステレオで。流石長年コンビを組んでる仲だ。

 確かにハリセンにしては……というかハリセンとは考えられない威力を有している。

 流石にそのハリセンを使って暁の力で叩かれた時は命に関わるだろう。

 「大丈夫、威力は抑えるし瀕死になってもこの注射で復活させるから」

 黒い……、会議室には日差しも入り電気もついているのに暁の周りには黒く…闇が漂っていた。 しかも手にしている殺傷力を持った伝説のツッコミアイテムと、どす黒い液体が入った注射器が恐怖を二人に与えていた。

 「「「そういう問題じゃないですってぇえ!!!」」」

 六課宿舎に三人の悲痛な叫びが響き渡った瞬間だった。

 

 

 

 

 時は遡り昨日の戦闘。

 「――――トリガー!!」

 暁の身に秘められたる魔の力の一部を解放し、迫り来る魔力砲に身構える。

 やがて魔力砲は当たり、地響きと砂埃が舞い上がり辺りを覆う。

 「………」

 あの手応えなら直撃だろうと着弾点を見入っているなのは。

 

 「まともに喰らいやがった、あいつッ…!!」

 

 「フェイトさん、神崎さんが!?」

 

 「なのは…、いくらなんでもそこまでしなくても…」

 

 見学していた者たちはBJを着衣できない暁に対して最悪のパターンを想像し、各々表情を青くする。

 

 「きゅ〜……。 !? きゅくきゅ〜!!」

 

 そんな中一番早く異変に気づいたフリードが主であるキャロに対し訴える。

 

 「ど、どうしたのフリード…きゃっ!?」

 

 そのフリードに対しどうしたのか聞こうとしたら風が吹き荒れた。

 

 それはSLBの着弾点からこの風は吹き荒れていた。

 

 「な!?」

 

 「ウソっ!?」

 

 「冗談だろ!?」

 砂煙が晴れると暁は健在だった。しかも無傷の状態でだ。

 

 リミッターは掛かっていても全力を出した自身が持つ最高の技だ。

 

 倒せはしなくてもかなりのダメージは与えた。と、なのははそう思っていたが実際にはダメージを与えた様子は見られなかった。その結果に暁と言う存在を畏怖した。

 なにか盾を連想出来そうなモノが暁を護るように前面に来ていて主を守っていた。

 「なかなかの威力なんだが――」

 前面に来ていた盾が暁の肩あたりに移動する。 一見すると巨大なショルダーアーマーのようにも見えなくはない。

 「―――今度は俺の番だな」

 ゾク――!!

 恐怖。 その一瞬確かになのはは暁から放たれた殺気に悪寒し粟立てる。

 するとショルダーアーマーからいくつかのパーツが外れ暁の周囲に展開される。

 そのパーツは大小あり、その一つ一つはなのはに対し牙を向いているようにも思える。

 「レイジングハート!!」

 なにをするかわからないが、このままじゃまずい。 そう思ったなのはは愛機にディバインシューターを出来うる数を展開させ、発射した。

 「!?」

 暁に向けられて放たれた球体は彼の周りに展開しているパーツに切り裂かれ掻き消された。

 「じゃあ行くぞ」

 暁が呟いた瞬間、魔力が急激に放たれた。

 その衝撃が辺りの小さな瓦礫や砂埃を巻き上げ、再び暁の姿は見えなくなった。

 そこに一陣の風が吹くと目に見えるくらいの魔力のフレアを纏った暁が居た。

 

 「フィナーレだ」

 槍形態になったクラウ・ソラスを構え、ふわっと浮いたかと思うと急激な加速をだしなのはに向かう。

 【Master!!】

 目に見えるくらいの魔力を出している暁に驚いているとレイジングハートからの警告が出た。

 なのはの脳裏には先程シールドごと飛ばされた映像が浮かんだ。 しかし防御には自身がある、先程は全開ではなかった。 そう思い今度は魔力を全開して防ごうとした。

 ニヤリ――

 暁の表情が変わった。

 なのはそのことに気づく訳もなくシールドにありったけの魔力を送る。

 しかしシールドとクラウ・ソラスの先端が激突する瞬間、なのはの目の前から暁の姿が消えた。

 「消えた!?」

 「後ろだよ」

 「!? きゃあぁああ!!」

 背後から声が聞こえたので直ぐさま振り返ろうとしたが、襲い掛かった衝撃によってなのはは悲鳴をあげながら落下していった。

 激突すると思いシールドに集中し過ぎたなのはに暁は瞬時になのはの背後に回り込み、回し蹴りで落としたのだ。

 魔力のフレアによって背中に翼を形成し浮かんでいた暁、一際眼を引くのは暁の瞳が赤く光っていた事だ。

 「接続―リンク―」

 暁は自らの工房空間に接続し自身の周りに空間の歪みを展開する。

 短剣、長剣、大剣、刀、斧、槍……それにカテゴリー別けされている武器が計八つ、空間の歪みから出てきた。

 魔力が込まれているその武器がなのはに向けられている。

 暁は手を上にすると武器達が各々の殺気をなのはに向ける。

 「行け」

 命令と共に挙げた手をなのはに向けて振り下ろす。

 武器達は暁の命令に従いなのはに向かっていく。

 「うっ………。 !?」

 起き上がろうとした時に真横に大剣が刺さったのに驚くと次々と武器達がなのはの周りの地面に突き刺さっていく。 直後背後に何者かが着地する音が聞こえた。 もはやそれが誰とは言う必要はないだろう。

 「言っただろ?絶対的なアドバンテージは無いとな。 いい加減頭冷えたか?」

 背後に降り立った暁はクラウ・ソラスの先端部分をなのはの肩に置いた。

 「………はい」

 「オーケー、それじゃ説教といきたいところだがティアナが目覚めたらにしよう。

 お前ら一緒に説教だ」

 それで今に至る。

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 「―――ッたく。 お前ら何がしたいんだ、ホント。 スバルもスバルだ、相棒の暴走をとめなくてどうする」

 

 「え、だ、だって言っても聞かないん「だったら手綱でもしとけよ」……そっか」

 

 スバル、意外と阿呆だ。

 「なに納得してるのよバカスバル!! 神崎さんも人を暴れ馬のように言わないで下さい!!」

 

 「そのまんまだろうが…まだ地盤が固まってない時期に上へ上へ先走りしすぎなんだよ。 その結果が、これだ。 言っただろ?」

 

 「う……」

 

 今回の事は確かに焦り、不安から出た自分の過失だ、故にティアナ押し黙ってしまう。

 

 「あのぉ神崎さん?」

 

 今まで黙ってたはやてがその沈黙を破った。

 

 「なんだ八神」

 

 笑みが……妙に清々しい笑顔が恐怖を誘う。

 

 おまけにハリセンを握り直したのが見えたのではやてもたじろく。

 

 「いやぁ、模擬戦の内容みたんやけど。 神崎さんの使ったあのデバイスみたいなのなんなん?」

 

 デバイスみたいなもの…つまりは暁の使ったクラウ・ソラスの事だ。 そして以前皆が気になっていた事柄でもあった。

 

 「あれは俺の作ったものだ」

 

 そういった暁はハリセンと注射器背中に仕舞い、ペンダントに手を触れた。

 

 というか背中に仕舞い込むとは…その背中はどういう構造をしているのか…。

 

 「それ自作なんですか!?」

 

 「まぁな、昔の武器にインテリジェンスソードっつう知力やら意思を持った剣が存在しててな、俺なりに創ってみたわけだ」

 

 「神崎さんの世界って技術力もこっちと似てるんやねぇ…。 しかも自作てことは神崎さんも技士やってたんか?」

 

 はやてがそう質問すると暁はあからさまな難しい表情をする。

 

 「いや、俺の世界の技術力でいえばコイツはオーバーテクノロジーだ。 故に使わないようにしてたが今回はそうもいかなくなってな。 技師かどうかと言えば技師でもあるな」

 「「「うっ…」」」

 

 ジト目で睨まれ三人は呻きをあげる。

 

 「まぁこの世界だとそのデバイスに近い存在だな。 まんま質量兵器ってわけじゃないし」

 

 「ならなんでそのオーバーテクノロジー技術を神崎さんはもってはるん?」

 

 はやての目が真面目に、探るような目で暁を見据える。

 

 確かに、もとの世界じゃオーバーテクノロジーとなる代物を彼は自作だと言った。

 

 「悪いが言えない。 時と機があればいずれ話すさ俺の正体と共に」

 「……ふぅ。 わかりました、ではその時になったらきちんと話ぃよ?」

 少しの間を置いて息を吐き出したはやては暁のその一言を信じようと思いこの話題を終わらせようとした。

 「んで八神、俺の処罰はどうするんだ?」

 「処罰? なんのことかいな」

 立場上暁は民間協力者であり、なのはは依頼主であるはやての関係者と交戦。 それに外したとはいえ最後に使われたのは質量兵器。

ここまでしてただでは済まないと思っていた暁は処罰を覚悟した。

 しかしはやては惚けるので暁は疑問符を浮かべた。

 

 「俺は質量兵器を使用し、あまつさえ依頼人の八神の関係者に剣を向けたんだぞ」

 「いや、だからなんのことや? 神崎さんはティアナとなのはちゃんの『ケンカ』を止めただけやろ?」

 どうやら戦闘は無かったことにするようだ。

 「あそうそう、そういや神崎さんに追加で依頼したいことがあったんやった」

 「依頼?」

 「そや、神崎さんに遺跡探索依頼や。 詳しくはこれを読んでや」

 はやては手に持っている荷物からファイルを取り出し暁に差し出す。

 どうやらそれで手を打とうということらしい。

 「期日は?」

 「特にあらへんよ、急ぎっていうほどのものでもあらへんから」

 暁は「了解した」とファイルを受け取る。

 「さて」

 

 「「「!?」」」

 

 暁が説教再開しようと背中に手を延ばし当事者三人がビクッと体を反応させたその時、緊急事態を知らせるアラートが鳴り響いた。

 「どないしたん!? ……うん、…空からガジェットが?」

 ガジェットが現れたと聞いて暁は眼を細めた。

 「………チッ、命拾いしたな」

 最後の方は呟くように言ったのだがそれをはっきりと聞いた者が。

 

 「「「(絶対ヤル気だったよ?)」」」

 

 ――と心で泣きながら不謹慎にもガジェットの存在に感謝した。

 

 そして、出撃準備を終えた一同はヘリポートでその時を待っていた。

 

 空中戦となるのでなのはとフェイト、ヴィータと暁が出撃することになった。

 

 先の模擬戦で空中戦も可能とわかったので空中での戦力として数えられたのだ。

 

 「ティアナは出動待機から外れておこうか」

 

 ティアナの心体の疲労も相俟ってか体調を考慮したなのはなりの判断だが……。

 

 「言うこと聞かない奴は要らないということですか?」

 

 ティアナはそれを逆手に取り険の入った声でなのはに聞いた。

 

 「自分で言ってて分からない? 当然のことだよ、それ」

 

 「………」

 

 また始まった。 模擬戦の時ほどではないが二人の売り言葉に買い言葉のやり取りに暁の表情に再び闇が入った。

 

 「お、おい神ざ…」

 

 それを見たヴィータが暁を止めに入ろうと暁の裾を掴んだが、振り向いたスイッチが入った表情に言葉を詰まらせ思わず手を離してしまった。 そして暁は背中に手を伸ばし目当ての物を取り出した。

 

 そうあのハリセン、『超危険ハリセン・仏陀切』だ。

 

 「―――私みたいな凡人は死ぬほど頑張らなきゃ強くなれないんです!!」

 

 出撃前だというのにまだ言っている二人のもとに近づく。

 

 「ティアナ……!!」

 

 シグナムがティアナの肩を掴み、殴り付けようと拳を振るった。

 ―――がその拳は空を切ったのでシグナムはおかしく思った。 だが拳が空を切る前に乾いた音が聞こえたような……。

 

 「あぅぅぅ…」

 

 見ると頭を抑えながらうずくまっているティアナと近くにハリセンを持った暁が立っていた。

 

 「か、神崎? それで叩いのか?」

 

 恐る恐る聞いてみるが暁は反応しない。 代わりになのはに向かってもう一発。

 

 パァンッ!!――

 

 「きゃあッ!?」

 

 うん、実に良い音だ。

 

 「いつまで低レベルな言い争いしている、出撃だってのによ?」

 

 「はわ!?」

 

 うずくまるなのはの襟を引っ張りヘリに引きずり込む。

 

 「はう!? か、神崎さん、や、やめ………」

 

 「問答無用」

 

 ………………。

 

 「―――さて、フェイト、ヴィータ時間が惜しい。 急ぐぞ」

 

 なのはをヘリに連れ込んだと思ったらなのはの抗議の声が聞こえた。 が、それもすぐに止み、清々しい笑顔の暁が顔を出した。

 

 一体彼女になにをしたのか…。

 

 仲間の安否を確かめるためにも、ひいては自分の身を護るためにも素直にヘリに乗り込む二人。

 

 「ティアナ」

 

 暁の呼び掛けにビクッと肩を震わせながら暁の方に顔を向ける。

 

 「お前は自分が悲観するような凡人じゃない。 お前には自分の強さの傾向がある、いまはその傾向を見極める段階だ。 自信をもて」

 

 「え?」

 

 今、あの人は何て言った? そう思い聞き返そうとしたが扉が閉められヘリが離陸した。

 

 

 

 

 「―さぁて、今回の作戦はどうする?」

 

 ヘリの座席に座っている暁が眼を覚ましたなのはを含めた三人に聞いた。

 

 「なのは、大丈夫?」

 

 「うん、心配無いよフェイトちゃん。 さっきより調子が良いんだ!!」

 

 眼が覚めたと思ったら妙に元気で肌がツヤツヤしていたなのはを見てフェイトは心配した。

 

 先程なのはになにをしたのかと尋ねたが暁は会議室で取り出してたどす黒い液体が入った注射器で打ったという。

 

 なのははどうして寝てたのか分からないでいたが、知らぬが吉という事で胸の中にしまった。

 

 「んで、今回の作戦はどうすんだなのは?」

 

 「ん?と、神崎さんは一応近接も中距離も出来るとして。 大体どのくらい飛行持続出来ます?」

 

 遠距離だと魔術主体になるので燃費が悪いと言っていたので必然的にクラウ・ソラスによる近距離、双銃による中距離戦闘が暁の役割となる。

 

 「出力調整と戦闘の魔力消費量によるが、およそ二時間分ってとこだ」

 

 本来の力を出せば魔力の消費などなく長時間の飛行が可能だが今の状態だと枷があるのでこの時間が妥当だと判断した。

 

 「ならフェイトちゃんとヴィータちゃんが前衛、神崎さんが中距離にて前衛の支援射撃及び迎撃を。 私は後方火力支援します」

 

 「おう、まかせろ!!」

 今回の編成にヴィータが意気込み力強い返事をする。

 

 「了解だよ、なのは」

 

 「了解した」

 

 次いでフェイト、暁もなのはの編成に頷いた。

 

 「行くよ、レイジングハート」

 

 【Yes my master.】

 

 「行こう、バルディッシュ」

 

 【Yes sir.】

 

 「行くぜ、グラーフアイゼン!!」

 

 【ja.】

 

 三人は愛機を取り出し各々のバリアジャケットを着用する。

 

 「扉開けますぜ!!」

 

 バリアジャケットを着用したのを確認するとヴァイスはヘリの扉を開ける。

 

 気圧と高度、速度もあってか突風が襲う。 だが四人は平然と外を見据えていた。

 

 「スターズ1、高町なのは。 行きます!!」

 

 「ライトニング1、フェイト・T・ハラオウン。 行きます!!」

 

 「スターズ2、ヴィータ。 行くぜ!!」

 

 なのは、フェイト、ヴィータの順でそれぞれ大空という海に飛び込んだ。

 

 「さあ、大空でのパーティーと洒落込むとするか!!」

 

 暁も魔力のフレアで翼を形成し、自身も飛び立った。

説明
結構な期間をあけてしまい申し訳ありませんでした!!
ハーメルンにも投稿しています。
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