【獣機特警K-9】分かたれた道 |
ラミナ市郊外のオープンカフェレストラン。
男は鮮やかな赤色のスープ、ボルシチをかき込んでいた。と、そのスプーンを持つ手が止まる。背後に気配を感じたからだ。
「よお、久しぶり」
ボルシチを食べていた男…アレクは、背後の男に声をかけた。振り返らずに。
「探したぜ。探偵さんに大金積んで、やっとこの場をセッティングしてもらったんだ。そんなにビビらなくていいぜ。今日は非番で、武器も持ってない。通信機だってオフにしてある。何か頼めよ、ヴァシーリ」
「…」
ユキヒョウ型ロボットの男…ヴァシーリは黙ったままだ。彼も振り向かない。
「ここのボルシチ、美味いぜ。本場のコックが作ってるんだとさ」
「…」
「…ナタリアの得意料理だったよな。しばらくは食えなかったけどな、精神的に」
アレクは思い出にふけるようにつぶやいた。突然、口調を変える。
「…『赤い牙』。テラナー系移民排除を掲げる、いわゆる『牙系』テロ組織の中でも、一番過激で危険なトコ。今、お前はそこに雇われてんだろ」
アレクの背後のヴァシーリの気配が変わった。
「皮肉なモンだよな。『赤い牙』って、例の事件起こした『ファンガルドの牙』の直系の後継組織なんだぜ」
「…」
ヴァシーリの沈黙が、明らかな敵意を帯びたものに変わる。
「一応提案しとくけど、出頭って手もある。お前が持ってる『赤い牙』の情報を提供すれば、刑は軽くなる。司法取引ってヤツだ。ま…」
スプーンを手持ち無沙汰にくるくるともてあそびながら、アレクは続けた。
「今のお前に、その選択肢はないだろうな」
「…」
ボルシチの最後の一滴まですすり終わったアレクは、椅子から立ち上がった。
「俺、行くわ。ここ、当たりだから、また来ようかな。フィーアと一緒に」
ヴァシーリの横を通り抜ける瞬間、アレクは独り言のように言った。
「次にクロスヘアにお前を捉えたら、俺はトリガーを引く」
ヴァシーリは振り向きもしなかった。
説明 | ||
随分間が空いたけどアレクとヴァシーリのお話の続き。 アレク http://www.tinami.com/view/376898 (名前だけ)フィーアちゃん http://www.tinami.com/view/372570 |
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