いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した
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 第七十九話 俺達の聖戦

 

 

 

 時は二月十四日。バレンタインデー。

 

 三年B組。俺の通う学校で俺は教卓に上がり男子生徒に向かって檄を入れる。

 

 「諸君!君等が欲しいものは何かね!?」

 

 「「「「「((愛|チョコレート))!!」」」」」

 

 「それは与えられるものか!?」

 

 「「「「「否!断じて否!」」」」」

 

 ちなみに教室内はカーテンで閉め切って外界。とはいっても教室という空間なんだけどね…。

 

 「「「「「((愛|チョコレート))は…奪い取るものだぁああああああああああああああああああああああああ!!!」」」」」

 

 ユゥウウウウウッ、アッ、ショォオオオオオオッッック!!

 

 「おらおらっ!イケメンどもチョコを寄こしやがれぇええええっ」

 

 俺が教室の扉を勢いよく開け放つと共にB組男子の皆が外に飛び出す。

 これから始まる凄惨とも言える狩りが始まるだろう!

 

 「「「「「ひゃっはー!イケメン狩りじゃあァアアアアアッッ!!」」」」」

 

 今の俺達は血。ではなく、チョコに飢えた餓鬼。

 イケメン共!覚悟しろ!

 今の時期にチョコを貰うお前達は後々ももらい続けるだろうっ。

 それは俺達の未来貰えるかもしれない((愛|チョコレート))すらも奪い尽くす!

 これは俺達、非モテ男達の、((聖戦|ジ・ハード))だ!

 

 「滅っ!」

 

 ドスッ!

 

 

 

 だが、この世に((悪|ボケ))がある限り、((正義|ツッコミ))もまた存在する。

 

 碧の瞳に、黄金の髪を揺らせて。

 その容姿端麗な躰からはリア充オーラを漂わせたツッコミ女王。

 

 アリサ・バニングス。

 

 彼女の拳が俺の鳩尾を貫き、俺を後方に押し飛ばす。

 その勢いに巻き込まれ、同志たちはまた一人また一人と倒れていった。

 俺達の聖戦は、かくもあっさりと終結していった。

 

 …だが、覚えているがいい。

 この世にイケメンがいる限り、第二・第三の((非モテ|俺))が現れるだろう。その時こそ、イケメンの最後だ!

 

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 「学校であんな馬鹿な真似をするからもらえないのよ」

 

 アリサからありがたいお説教を聞いている沢高志。精神年齢二十二歳です。

 馬鹿な真似をしなくても貰えたためしがないです。

 まあ、前世は中学・高校は男子校だったから仕方ない…のか?

 まあ、もらえたらもらえたで怖いよね…。

 …男子校だから。

 

 「確かに。…あれは。…ねぇ」

 

 「…にゃはは」

 

 アリサとなのはは呆れながら俺の方を見るけど、俺は後悔していない。

 だって…。

 

 「アレをしないとバレンタインデーを迎えた気がしなくって…」

 

 俺にとっては一種の通過儀礼という奴です。

 青春の発露という奴だ。

 

 「いや、お正月で初日の出を見る。みたいに言わないでよ」

 

 さすがにツッコミ女王。

 俺の一言一言につっこみを入れるのは流石だ。

 

 「というか、昨日、アリシアからチョコレート貰っていなかった?」

 

 バレンタインデー、初体験のフェイトは昨日八神邸で食べたチョコレートを思い出していた。

 八神家では必殺料理人シャマルさんを除き、主・騎士全員がバグった。

 フェイトの電気ショックで全員が((あっち|・・・))側から((現世|・・))側に戻って来れました。

 その時、俺はこっそりとAEDフェイトと心の中で呼んだのは内緒だ。

 

 ちなみにAEDとは一度、電気ショックで((心臓を止めた|・・・・・・))後に心臓マッサージで規則正しいリズムの心拍を刻むための物です。

 AEDを使ったら必ず心臓マッサージを行いましょう。

 

 「それはそれ。これはこれ。学校で貰うのと家で貰うのではこれまた違った青春の味がするんですよ」

 

 前世の俺の青春は塩味。

 …やだな、涙なんかじゃないよ。

 …転生した人生では((桃色|ピーチフル))な青春を味わいたいですな。

 

 朝のホームルームが終わって次の授業が始まるまでの短い休み時間の間に俺の周りに聖翔美少女((四人組|カルテット))が集まる。

 周りの男子は羨ましそうに見てくるが、残念。俺はロリじゃねえからお前達の気持ちに共感できない。

 

 「ふ、ふーん。…そ、そうなんだ。そんなにチョコが欲しいのなら土下座をすればあげないでもない…」

 

 「是非ともこの私に貴女様のチョコをお与えください」

 

 高志はTHE・土下座を繰り出した。

 

 「はやっ!?速いよ高志君!そこに誇りは無いの!?」

 

 ははは、なのはさんや。そんなに驚くことかね。

 女子から貰ったことが無い俺にとって願ってもない提案ですよ。

 そのアリサの言葉に俺の誇りと躊躇いというものなんて…。

 

 「無いね!」

 

 女の子からチョコを貰ったことのない俺は、胸を張って言えます

 

 「そ、そこまでして欲しいものなの?」

 

 「例えそれが義理でも本命でも悪戯でも、夢や妄想。犯罪や幻覚だとしても貰えるというのであれば貰う。それに、お前達みたいな美少女からならなおのこと」

 

 若干引き気味のすずか。

 俺はお前達みたいに美形でもなんでもないからね…。

 

 「び、美少女って///」

 

 「わ、私達はそんなんじゃないよっ」

 

 なのはとフェイトは顔を赤くして否定するけれどそれを他の女子に言ってみろ。町中を追っかけまわされるぞ。

 

 「て、あんた。いつもは私達の事を子ども扱いするくせによくそんなことが言えるわね」

 

 「俺はロリじゃねえからな」

 

 それでも欲しいチョコレート。

 ギブミーギブミーチョコレート。

 もらえた分だけ男のステータスになるのだ。

 貰える者と貰えない者の差はそれだけに大きいんだよ。

 

 「という訳で、土下座をしたのでチョコレートをください」

 

 ちなみに土下座は進行中です。

 

 「…で、そこに戻るわけね。…あのね、こんな場の雰囲気であげるわけないでしょ」

 

 アリサは目頭を押さえながら呆れる。

 

 「酷いぞアジサバ!男の土下座をなんだと思っていやがる!男の土下座はな、そんなに安いものじゃないんだよ!」

 

 「真っ先に売り払ったのは誰かしら?」

 

 「((それは私です|It‘s me))」

 

 真っ先に売り払いました。

 だって、テンションが変な方向に上がってしまいましてですね。

 そんな時にあんな((土下座|ふり))を要求されたら…。のるしかないでしょ!

 

 「…はぁ、もらえないのか」

 

 「…まあ、当然よね」

 

 まあ、あちら側もこんな状態で渡したら周りの男子から土下座をされながらたかられるだろうし…。

 

 「…タカシ。…あの、これ」

 

 と、俺が考えていたらフェイトから可愛くラッピングされた小さな箱のような物を渡された。

 同時にオオッと教室にいたクラスメートからもどよめきが起こる。

 

 「フェ、フェイト。これは…?」

 

 俺は渡された物が信じられないのか僅かに声と体を震わせながらフェイトから受け取った((ブツ|・・))を尋ねる。

 

 「…う、うん。今まで私や母さん。アリシアを助けてくれたお礼のチョコ。…受け取ってくれる?」

 

 ッッッッッッッ!?!??!

 

 「にゃあああっ!?高志君が急に泣きだした!?」

 

 「しかもすごい量だよ!」

 

 「そんなに嬉しいの?!」

 

 確かにうれしいものがある!そりゃあ、フェイトみたいに清純派美少女から貰えればハッピーだ!だけど、だけど…!

 

 「本当に俺が貰っていいのか!?」

 

 だって、俺。フェイトをある意味騙していたんだよ!しかも、フェイトが本来いるはずの場所を奪っているようなものなんだよ!しかも、それを助長するようなこともしたんだよ!それなのに…。それなのにぃいいいいいい!

 

 「う、うん。タカシには何度も助けてもらっているし」

 

 「で、でも…」

 

 (…ねえ、タカシは私に引け目を取らなくてもいいんだよ)

 

 フェイトが急に念話で話しかけてきた。

 

 (最初はタカシの事を嫉妬していたよ。なんで私がそこにいないんだろうって…。だけど、タカシはタカシなりに私達の事を気遣ってくれているんだって…)

 

 「っ!」

 

 (ほら。顔に出ている。分かりやすよね)

 

 フェイトは俺の手を取って、優しく微笑む。

 

 「え、あ、そのう…」

 

 「タカシに受け取って欲しいんだ。私の気持ち」

 

 (本当に…。ありがとう)

 

 ぶわわっ。

 

 ふぇ、フェイトッ…。

 お前ってやつは、お前ってやつはぁあああああ!

 

 「俺の全力を持って、お前を幸せにしてやるからな!」

 

 がしぃっ。

 

 と、フェイトが痛がらないように力強く、だけど優しく抱きしめた。

 フェイトにとっては嫌かもしれないけど、今だけは我慢してほしい。

 だって、これ以上に自分の感情を表すことなんてできないから…。

 

 「公衆の面前で何やっているかぁああああああ!!」

 

 ゴリッ!

 

 「「「「「オオオオオオオオッ!!?!?」」」」」

 

 俺がフェイトを抱きしめたからどよめいたのか、それともアリサのアッパーが見事でどよめいたのかは分からない。

 アリサにぶっとばされた後に何とか立ち上がったがそこにはフェイトの容姿や性格に惚れた北海君をはじめ、クラスメートの男子がいた。

 

 「…団長。見損なったよ。我々チョコ狩団を発足して即座に裏切り行為に出るとは」

 

 肌黒の北海君は怒りで全身の筋肉が膨張しているのかいつもより肌黒に見える。

 

 「…退路は塞いだ。女子の目に入らないように教室から追い出した」

 

 迅速な指示を出す沖縄君はメガネの奥に映し出された真っ赤な瞳を怒りに染めて北海君に指示を出す。

 その素早さは外に追い出されたなのは達に、何かを言われる前に行うといったモノだった。

 その様子に俺も慌てて走り出そうとしたが膝に力が入らなかった。

 

 「…馬鹿なっ!?ダメージが膝に蓄積しているだと!?」

 

 常日頃からツッコミ慣れしているせいか妙に腰の入ったアッパーが思いのほかダメージだったようで…。

 

 「「「「「団長!貴様を断罪する!」」」」」

 

 「…くっ」

 

 「「「「「さあ、最後の晩餐を喰らうがいい!」」」」」

 

 あ、フェイトのチョコは食わせてくれるんだ。

 妙な優しさに少しだけ和んだ俺がいた。

 だが、俺はフェイトを幸せにしなければならないんだ。

 あんなに良い子なんだ。良い女だから。

 

 「俺はフェイトを娘にするまで死ねない!あいつは俺が可愛がるんだ!」

 

 『良い女』と書いて娘。

 プレシアが親馬鹿になるのも納得だ!

 

 「「「「「そっちかい!?」」」」」

 

 クラスメート達からツッコミ。何気に教室の外にいるアリサからもツッコミを入れられるが、その隙に俺はフェイトから貰ったチョコを味わい、力にする。

 がくついていた膝にも力が入る。

 

 「さあ、かかって来るがいい!俺達の((聖戦|ジ・ハード))はこれからだ!」

 

 

説明
第七十九話 俺達の聖戦
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コメント
孝(たか) さん。453145さん。コメントどうもです。残念ですが、今回は「MOGERUわいなー!みかんのごとく!」 みたいなことはありませんがきっちりばっちり対価は払っています。日頃の不幸と激戦で。通算するとマイナスに…。向こうの業界だとご褒美でショータイムな毎日を過ごしてます…。(たかB)
M O G E R O ! !(453145)
つーか、台詞だけ聞くと、どこのネゴシエーターだと思いましたね。ファイナルステージでも放つ気ですか!?てか、お前ら小学生の時点で愛に飢え過ぎだろうよ。将来が心配だよ…何時かチョコ狩り団がしっと団になりかねないな。まぁそうなった場合、しっとマスクが3馬鹿の誰かになりそうですけど…(孝(たか))
ああ、チョコ貰えたからこその女難なのか。何か(チョコ)を得る為には何か(プライド)を捨てなければならない。それが、等価交換の原則……重い言葉がちょっと仮名振りしただけでギャグになったw(孝(たか))
神薙さん。誤字修正しました。指摘どうもです(たかB)
まさかの勝ち組高志君www女運悪くてもちゃんともらえて良かったね!(神薙)
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魔法少女リリカルなのは コメディー 聖戦? 

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