魔法少女リリカルなのはStrikerS〜二次創作〜 第27話 「自分、機動六課より」 |
「・・・ゃん!」
「うーん・・・?」
「・・・ちゃん!」
「うーん・・・」
どこからか声が聞こえる
それも、どこかで聞いたことあるような・・・
女の子の声だ
それもまだ幼い・・・五歳か六歳くらいの
「・・・いちゃん!」
でもなんだかとっても懐かしい感じがする
ずっと会ってないような・・・
「おにいちゃん!」
「ん?げふっ!」
半分夢うつつで、まぶたをゆっくり開けたがお腹に走 った強烈な痛みのおかげで一気に目が覚めた
「わかったわかった!起きる!起きるから!」
「はやくおきないとちこくするっておかあさんいって るよ!」
「わーかった、わーかったって」
すると女の子はドタドタと慌ただしく走って部屋を出 ていった
音から察するに階段を下りていったのだろう
「まったく、こう毎朝毎朝飽きないなぁ・・・あいつ 」
不満を言いながらも俺は学校のジャージに着替え、昨 日のうちに調べておいた教科書をカバンに突っ込み部 屋を出た
窓の外を見ると青空が広がっていた
今日は絶好の部活日和になりそうだ
〜一階、リビング〜
「おはよ〜」
「あ、やっと起きた。早く食べなさい。遅刻するわよ ?」
「わかってるって」
「ほら、二人は幼稚園の準備」
「「はーい!」」
一階に降りると、食卓には父さんが座っていて新聞を 広げていた
母さんは弟と妹の身支度に追われ、俺はご飯をよそい 、椅子に座った
「そういえば、高校どこに行くか決めたのか?」
「うん。やっぱりあそこにするよ」
俺が椅子に座ると、父さんが新聞を畳んでそう言って きた
「そうか・・・、まぁお前ならやれるさ」
「ふふ、やってみなくちゃわからないよ」
「私は一人暮らしの方が心配です」
俺も中学三年、進路を決めなくてはいけなかった
父さんと母さんと話し合って、先生からの紹介もあっ てか行く高校を決めた
父さんも母さんも許してくれた
「おにいちゃんどこかいっちゃうの〜?」
「やだやだ〜」
弟と妹がだだをこね始めた
「大丈夫、いつでもあえるよ。それに、遊びに来たら いつでもデパートに行けるぞ〜」
「ほんと〜?じゃあ遊びに行く〜!」
「いく〜!」
二人に心配ないと告げると、心底嬉しそうにしていた
どうやら遊びに来る気満々らしい
「それじゃ、行ってくるわ」
「いってらっしゃーい。頑張ってね」
「「いってらっしゃ〜い」」
「おう、行ってらっしゃい。そうだ二人とも、今度の 日曜遊園地行くぞ!」
「「やった〜!」」
「ふふ・・・」
俺はそんな光景に少し笑いながら玄関の扉を開けるの だった
ーーーーーーーーーー
「・・・ん」
なんだか・・・懐かしい夢を見たような気がする
とっても暖かくて、それでいて安心できるような
「うーん・・・」
辺りを見回すと、少し薄暗いような、というより誰も いない
いつの間にか眠ってしまったらしい
ここはどこなんだろう・・・?
「ん・・・ん?」
目をこすると、手に色んなものが貼り付けられている のがわかった
絆創膏だった
もっと上を見てみると、腕には包帯が巻かれていた
反対の腕と手も同じような感じだった
「よいしょっと・・・いてて」
上半身を起こすと、体中の傷という傷が開いたような 気がして、チクチクという痛みが襲ってきた
「こんなに・・・」
よく見ると、体中絆創膏と包帯だらけだった
・・・そういえば、なんで俺はここに寝ているんだろ う?
理由が思い出せない
「・・・あ、そうか」
思いだした
なのはさんに喧嘩ふっかけて、追いかけまわされて、 吹っ飛ばされて、胸倉掴まれて、縛られて撃たれたん だ
よくよく考えたら、よく生きてたな・・・俺
「だから気を失ってたわけか・・・」
これなら合点がいく
ということは、ここは医務室か
なんか前にも同じようなことがあった気がする
「あとで・・・なのはさんに謝らなきゃ」
わざとではないとはいえ、俺がしでかしたことでこん なことになってしまったのだ
後で謝らなないといけない
「・・・何時だろ」
俺はよろよろとベッドから立ち上がり、医務室を出る ことにした
よくよく見ると、上半身だけじゃなく体中包帯と絆創 膏だらけだ
いかになのはさんとの戦いが壮絶だったのかを物語っ ている
これで生きていたのも非殺傷設定とやらのおかげだろ う
俺は机の上にあったホルスターを取って医務室を後に した
銃のグリップ部分も、少し血で汚れていた
ーーーーーーーーーー
「・・・だからなのはちゃんは教導を続けているの。 絶対に自分と同じ目に合わないように、無事に皆帰っ てこられるように・・・」
私たちはシャマル先生に誘われ、なのはさんの過去の 記録を見ていた
そこに写っていたのは、子供の頃のなのはさんが、自 分を省みず、ただひたすら任務に没頭する姿と、それ によって起きた体への負担から大怪我した姿と、必死 のリハビリに耐え抜きもう一度空を飛びたいと努力す る姿だった
・・・知らなかった
あのなのはさんにそんな過去があったなんて・・・
いつでも完璧に任務をこなすなのはさんにそんなこと があったなんて・・・
「ティアナ、確かに任務によっては自分の命を懸け、 貫き通さねばならない時もある」
映像が終わると、シグナム副隊長が話し始めた
「だがお前が放ったあの一撃は、仲間の命を懸けてま で撃たねばならないものだったか?」
私は・・・なんてことをしてしまったんだろう
いくら焦ってるからといって、仲間を・・・
私は、自分がしてしまったことの重大さを改めて悟っ た
自分がしてしまった行動の愚かさを知った
自然と・・・、後悔でもあり、悔しさでもあり、悲し さでもある涙がこぼれた
「あ、やっぱり見せちゃったんだ・・・」
「ごめんなさいなのはちゃん。もう・・・見ていられ なくて・・・」
部屋の入り口を見ると、任務から戻ったなのはさんた ち隊長陣がいた
午前の模擬戦の件もあり、出動命令が出たが私は待機 と言われたのだ
「まぁ、ティアナも反省したみたいだしね」
「・・・はい」
「この際だから・・・皆にも話しておこうかな。ね? はやてちゃん」
「せやな」
なのはさんの後ろから、八神部隊長が姿を表した
「これから話すのは、本当なら機密情報に該当するも のや。だけど、彼のことを本当に仲間だと思っている からこそ、皆にも話しておくことにした」
「彼の・・・ことですか」
キャロが八神部隊長に問い掛けた
「せや。彼・・・ダンテくんのことについてや」
ーーーーーーーーーー
俺は医務室を飛び出し、機動六課の廊下をふらふらと 歩いていた
俺が寝ている間に何かあったのだろうか?
職員の様子が少し慌ただしいような気がする
慌ただしいと言っても、周りの様子から事件そのもの は終わったみたいだった
被害も出ていないようだ
「・・・どこにいるんだろう」
俺はそんな職員たちを流しながら、ある人たちを捜し て歩き回っていた
他でもない、なのはさんたちだ
あのなのはさんとの戦いは、元はといえば俺が原因で 起こったことである
なんだかんだ言う前に謝っておかなくては
という理由でさっきからなのはさんを捜しているのだ が、一体どこにいるんだろう?
一向に見つからないのである
「・・・ん?」
そしてまたふらふらと歩いていると、ある部屋から聞 き覚えのある声が聞こえた
なのはさんの声だった
声からして誰かに何かを教えているようだ
ここからでは内容がよくわからない
俺は必死に足を動かし、その部屋の前まで行くことに した
やっとなのはさんに謝ることができる
〜ある部屋の前〜
「え・・・」
頭の中が真っ白になる
体から血の気が一気に引いていく
そんな言葉を聞いたことはあるけど、ここまで身にし みて感じたのは初めてだった
俺の中で何かが崩れていく
なのはさんはなんて言った?
はやてさんはなんて言った?
シグナムさんもなんて言った?
ヴィータさんもなんて・・・
・・・フェイトさんも
『ダンテくんは・・・にんげんではないんや』
にんげんではない・・・
人間ではない・・・
『でも・・・ダンテくんは』
はやてさんからハッキリ告げられた言葉に、俺はたま らずその場にへたり込んでしまった
はやてさんたちの様子から、その言葉が嘘偽りのない ものだというのがわかる
モニターらしきものには、それを証明するための証拠 のようなものがズラリと並べられていた
それを見たフォワード陣が息を呑む
・・・じゃあ、なのはさんもフェイトさんもはやてさ んもシグナムさんも
ヴィータさんもシャマル先生もみんなみんなみんな
・・・そういう目で見ていたんだ
いつもの言葉も、優しく接してきてくれたのも、俺が そういう存在だったから
珍しいから・・・逃がしたくなかっただけなのかな?
戦えたから、ただ利用していただけなのかもしれない
これだけ大きい組織なんだ。十分ありえる
・・・逃げなきゃ
今度こそずっと遠くに
みんなの手が届かないところへ
シャムのことはどうしよう・・・
まぁ・・・なんとかなるか
落ち着いたら、謝っておくことにしよう・・・
利用されるだけ利用されるなんて・・・そんなの嫌だ よ・・・
俺はたまらなくなって、走ってその場を後にした
ーーーーーーーーーー
みんな、ただただその真実に驚いていた
ダンテが背負っているもの
それが、普段の様子からは考えられないほどに重いも のだということに驚きを隠せなかった
「でも・・・ダンテくんはダンテくん。人間であろう となかろうと、そんなことは関係ない。みんなには普 段通りダンテくんと接してあげてほしいんだ。それを わかってほしかった」
なのはの言葉に、はやてもシグナムもヴィータも頷く
「みんな、わかってくれたかな?」
「「「「・・・はい!」」」」
なのはの言葉にフォワード陣も頷いた
ダンテはダンテ
それは紛れもない事実だ
『ダンテ』は、この世に一人しかいないのだから
ーーーーーーーーーー
「はぁ・・・はぁ・・・くっ!」
機動六課の廊下を、俺は無我夢中で走った
自分の格好なんか気にせず、怪我のことなんか気にせ ず、ただただ続く廊下を走っていた
嫌だ嫌だ
なんなんだ?
なんでこんな目に遭わないといけないんだ?
ただでさえ被害者なのに
それでも頑張って今までやってきたのに・・・
なのはさんたちに任務に引っ張り出されることもあっ たけど、ほぼ毎日話したりするのが楽しくて、だから 頑張ってこられた
でもそれも・・・嘘かもしれない
本当は、俺をそういう風な目で見ていただけなんだ
嫌だ・・・もう嫌だ!
俺は目の前にあった扉を思いきりタックルでぶち開け て、その勢いで地面に倒れこんだ
そのまま見渡してみると、そこは日頃なのはさんたち が訓練している海上の訓練場だった
ただ何もない光景と、夜の暗闇がそこを支配していた
「・・・ぐすっ」
その上で俺は、膝を抱えて小さくなった
広い空間が、余計に自分を惨めにしているような気が した
ーーーーーーーーーー
「はぁ・・・はぁ・・・」
私は走っていた
機動六課の廊下を必死に
なぜか?
あるものを見つけてしまったからである
話が終わったあと、部屋からでる際に
「・・・うん?」
足下で、何か小さいものを蹴飛ばしたような音がした
カラカラと黒いプラスチックケースのようなものが壁 の端に当たって止まった
私はそれを拾い上げて見てみると
「これって・・・!」
それは、いつもダンテが持っていた携帯電話だった
これが部屋の前に落ちているということは・・・!
「・・・!」
私は、考えるより先に走り出した
少しだけ・・・嫌な予感がした
ーーーーーーーーーー
「・・・」
俺は一人、誰もいない訓練場の上で座り込んでいた
何かするという気力もない
考える気にもなれない
夜風が体に当たるだけだった
「・・・またあんたか」
後ろにいる何かに話し掛ける
「真実ヲ、知ッタンダネ」
「だとしたらどうする?俺を捕まえに来たの?」
「今ハマダ・・・ソンナ予定ハナイ」
後ろにいた奴・・・剣を背負った甲冑が、俺を襲う訳 でもなく、ただ歩いて隣までやってきた
普段なら取り乱しているだろうが、もうどうでもよか った
「ねぇ・・・教えてよ、俺もあんたも一体なんなの? 」
「・・・」
「あんたは、私の仲間にそんなことはしない・・・っ て言ったよね?じゃあ、俺とあんたは同じなんじゃな いの?」
「・・・」
「教えてくれよ・・・もう、自分が何だかわからない んだ」
「・・・言葉デ説明スルノハ難シイ」
甲冑が後ろに振り返り静かに歩き出した
「タダ・・・世間一般的ニ言ウノデアレバ」
甲冑から返ってきた言葉は、俺の予想を越えるものだ った
「私タチハ、''悪魔''トイウ存在ラシイ」
「・・・は?」
悪魔・・・?
神話に出てきたりするあれ?
嘘だ・・・
「嘘・・・だよね?」
「嘘ジャナイ、タダ・・・貴方ハ少シ特殊ナヨウダガ 」
「・・・そっか」
これなら体のことも説明がつく
「・・・オ客サンミタイダネ」
「へ・・・?」
甲冑が見た方向を見てみると、入り口のほうに見覚え のある金髪の女の人が立っていた
こちらを見て安心したような笑みを浮かべて
「ねぇ、あんたは一体・・・」
甲冑に視線を戻すと、そこにはもう甲冑の姿はなかっ た
「・・・」
俺は再び、海に視線を戻した
「こんなところにいたんだ」
俺の後ろから声が聞こえた
少しだけ振り返ると、そこには金髪の女の人、フェイ トさんがいた
「なんでここにいるってわかったんですか?」
するとフェイトさんは俺の横に座り、俺の左腕の袖を 捲った
見てみると、傷口が開いたのだろう、血が滴っていた
「六課の廊下に、血が落ちていたのを見つけて、それ を辿ってきたんだ」
「物好きですね、フェイトさんも」
「ダンテ。中に戻ろう?みんな心配してるよ」
袖を元に戻して、フェイトさんが俺の左手を握り締め てそう言った
「俺はもう・・・戻れないと思います」
「やっぱり・・・聞いてたんだね?」
フェイトさんの質問に、俺は無言で頷いた
「・・・秘密にしてたわけじゃなかったんだ」
「・・・」
「言ったら、ダンテが傷つくと思って・・・」
「だから・・・利用したんですか?」
「え・・・?」
「余計な事を言わなければ、いい戦力になるって」
「・・・違う」
「だから、いつもいい顔して近づいて・・・」
「違う!」
フェイトさんは立ち上がり、少し声を荒らげた
「そんなことない・・・!ダンテは大事な仲間だから 、だからいつも笑顔でいられた!戦力とか、そんなの 関係ない・・・ダンテはダンテだからだよ」
そう言うフェイトさんに、俺は一枚の紙を渡した
「なに・・・これ」
「もう・・・信用・・・できません」
その紙には、機動六課のバイトを辞めるという内容が 書いてあった
もう、迷惑をかけることはできない
「それを・・・はやてさんに渡してください」
フェイトさんは、悲しげな表情でそれを受け取り、読 み始める
「・・・わかった」
フェイトさんはそれを読み終えると、その紙をビリビ リに破り捨ててしまった
「ダンテ、私たちが言ったこと覚えてる?」
「え・・・?」
フェイトさんはまた、俺の隣に座りこんだ
「ダンテのいいところは、その優しさだって」
「・・・」
「やっぱり・・・優しいよ、ダンテ」
「・・・」
「この紙も、私たちにこれ以上迷惑をかけないように ってことでしょ?」
「さぁ・・・どうでしょうか?」
俺は、フェイトさんとは反対方向に目線をずらした
どうやら・・・フェイトさんにはお見通しみたいだ
「秘密にしてたことは謝るよ・・・ごめん。ごめんな さい」
フェイトさんがそう言って頭を下げた
まったくもう・・・
「あーあ、そこまで言われたら引き下がれないじゃな いですか」
「・・・ダンテ?」
俺は吹っ切れたように両腕を上に上げて立ち上がった
「せっかくはやてさんの目から逃れられるチャンスだ ったのにー」
「ふふ、はやてから逃げるなんて無理だよ無理。」
さっきまでの雰囲気はどこへやら
普段と変わらない会話に戻ってしまった
「そういえば、ティアナさんは?」
「大丈夫、ちゃんと和解したみたいだから」
「それなら・・・よかったです」
ティアナさんのことも無事解決したみたいだ
一応は、一件落着ってことでいいのかな?
「まぁとにかく、お腹も空いたし中に戻ろうかな」
「私たちのこと、信用してくれたんだね」
「まぁ・・・五分の一くらい?」
「う・・・反省しております・・・」
まぁ、そんなこんなでドタバタとした一日が終わった
はやてさんが、今日は機動六課に泊まっていけと言っ ていたのでご好意に預かり泊まらせてもらうことにし た
その際にはやてさんも謝ってくれた
なのはさんとティアナさんも後で俺の部屋まで来て、 今日の騒動について謝ってくれた
なんだか謝られてばっかりだったけど、みんなが
『人間でも人間じゃなくても、ダンテさんはダンテさ ん。大切な仲間です』
と、言ってくれた
そして俺は、いつの日の時と変わらずにエリオ君とキ ャロちゃんと一緒に眠るのだった
説明 | ||
あるところに少女がいました その少女は魔法とは縁のない生活を送るはずでした 続きです |
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コメント | ||
ダンテに必要以上の怪我を負わせたなのはに対して、何の処罰が無いのはおかしい。(神木ヒカリ) やっと壁を越えたって感じかな(カイ) |
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