恋姫†無双 関羽千里行 第2章 12話 |
第2章 12話 ―反董卓連合―
黄巾の一件以来、俺たちは周辺の安定や内政と地盤固めに奔走していた。黄巾の首謀者を倒したというのはこちらが意図的にうやむやにしたのであまり広まらなかった。しかし、近隣の街の間では俺たちが七千の軍勢で3万の黄巾を打ち破ったという噂が広まり、街の保護を求める声や協力関係を築きたいという旨の使者が増えるようになった。
そんな少しゆったりとしつつも忙しい時間が流れる中、ある日大陸を揺るがす1つの報告が入った。漢王朝の皇帝、霊帝死去。国のトップが亡くなったのだから国中に衝撃が走るのは当たり前だが、事はそれだけに留まらなかった。朝廷の空いた席を奪い合う後継者争い。弁太子を擁する外戚で大将軍の何進一派と劉協を擁する宦官たち。その権力争いで宦官たちにより何進が謀殺されるも、今度は挙兵した袁紹らによって宦官はほぼ壊滅させられてしまう。かと思えば、自分たちの身を守るために宦官たちが呼び寄せていた董卓によって献帝が即位され、朝廷の実権を握られてしまう。
このように目まぐるしい権力争いの末、ある意味董卓が実権を握ったことで事態は収束したのだが、都での董卓の専横に業を煮やした袁紹は反董卓を掲げて諸侯に檄文を飛ばした。その檄文は俺たちにも届き、俺たちは袁紹を発起人とする反董卓連合に参加するかどうか会議を始めたところであった。
一刀「えーと、話はいってると思うから最初に訊いておくね。俺はこの連合参加したほうがいいと思うんだけど、みんなはどう思う?」
愛紗「私は賛成です。」
この世界の董卓が俺の知っている董卓ならこの連合と一連の事件はどこかで仕組まれたものであるはずだ。しかし、俺をこの世界に送ったのが左慈だったことを考えると、またあの白装束の連中が噛んでいるとは考えにくい。かといって檄文の中に書いてあるように本当に彼女が朝廷を牛耳っているとは思えない。となると、今回の件には全く別の勢力による暗躍も視野に入れるべきだ。ともかく、彼女たちを守るためにもこの連合に参加してうまく立ち回る必要がある。愛紗も俺と同じ意見なのだろう。真っ先に賛成を唱えた。みんなの雰囲気をみても反対する者はいなそうだ。
一刀「そうか...じゃ軍師としての意見を聞かせてもらえるかな。」
雛里が少しビクッとしたがすぐに平静を取り戻して、
雛里「前回の黄巾の動乱ではどの諸侯も大した功績は残せませんでした。私たちの勢力が首謀者とされる張角を捕えたということにはなっていますが、首標を提出したわけではありません。なのでその信憑性が曖昧になっているせいで諸侯はわかりやすい成果を欲しがっています。諸侯はこぞってこの反董卓連合という餌に飛びつくでしょう。袁紹さんはそこらへんも込みでこの連合を発起したのかもしれません。」
うーん、あの袁紹がそこまで考えてるとは思えないけど...恐らく董卓に皇帝を独占してると思って勝手に嫉妬しただけじゃないかな...そうも考えるが今は雛里の意見をしっかりと聞くことにした。
一刀「この一件が片付けば群雄割拠の時代が来るだろうからね。少しでも天下に羽ばたこうって考えている連中はみんな参加するだろうな。名声があれば今後いろいろ有利だからね。」
雛里「流石ご主人様、その通りです。つまりこの連合に参加する諸侯の中には、今後私たちの前に立ちはだかる方たちもいるはずです。そういう方たちのことを知っておくためにもこの連合に参加する意味は大きいでしょう。また、この戦いで功を立てておけば今後を有利に運べるというのは私たちも同じです。」
確かに、前の世界にいなかった雛里や祭のような人物がいることを考えても、諸侯の勢力を探っておくことは重要だ。前の知識だけを頼って今後に臨めば、知らない事象に出会った時に対処を間違えることもありうる。それに名を上げることは結果的に俺たちがより多くの民を助けることにもつながるはずだ。
一刀「そうだね。じゃあ反対意見がなければ、連合に参加しようと思うけどいいかな?」
愛紗「はい。」
霞「異議なーし。」
華雄「無論賛成だ。」
思春「私も賛成です。」
祭「儂も賛成じゃ。」
星「反対する理由がありませんな。」
雛里「私はもちろん賛成です。」
方針は決まった。あとは...
一刀「よし。じゃああとは誰が行くかだな。俺は当然行くけど...とりあえず希望を聞いてみようか。いきたい人は手を挙げてくれ...」
全てを言い終わる前に全員が一斉に手を挙げた。それを互いに確認した彼女たちは我先にと俺に詰め寄ってきた。
愛紗「私は一刀様の護衛がありますので。当然連れて行っていただけるんですよね?」
星「主、私を連れていかないとあのことをここで...」
愛紗「なにっ!?」
霞「愛紗を連れていってウチを連れていかへんなんてことはないよな?」
愛紗「おい、星。あれとはなんだ。」
華雄「戦となれば私の武は必要であろう?」
愛紗「おい、星!」
思春「一刀様を危険な目に会わせるわけにはいきません。」
愛紗「無視するな!」
祭「前は後衛だったしのう。今回は前衛をやらせてくれるんじゃろうな?」
愛紗「クッ、仕方ない...一刀様、あのこととはなんですか?」
雛里「あわ!わ、私は軍師なので色々と役に立つと思いましゅ!」
愛紗「一刀様!」
ナニモキコエマセンヨ?
一刀「なんとなくこうなる気はしてたけど...じゃあみんなで行くか。」
星「そうなると、我らがいない間にここの守りはどうするのですかな?」
何やらブスッとしている人がいるが気にしないことにする。
一刀「それに関しては大丈夫だと思うよ。今近隣の村とはお互いの村を守り合うっていう協定を結んでるし、何より諸侯はみんな連合に参加するしね。その間に悪いことしようって奴もそんなに大きな勢力はもててないだろう。ここらの村のどこかを襲えば全部の村をまとめて相手にすることになるから、小さい賊ぐらいじゃ動けないだろうさ。」
これも俺の世界での知恵だ。意見の食い違いがあっても、皆自分たちが襲われたくないというのは同じだ。そこを利用してお互いが守り合う協定を結び合うことで安全を確保できるだけでなく、協定を通じて徐々に交流も増えるというこの一石二鳥の案は雛里にもお墨付きをもらった。もちろんそれ抜きでも協力してくれる村もあり、それはとてもありがたいことだ。
星「なるほど。」
一刀「一応用心のために、何かあった時はこっちにすぐ連絡をよこすように言っておこうか。とりあえずそんな感じで後は遠征の準備だな。」
一同「応っ。」
会議もこれで終わりかと思ったその矢先、
愛紗「一刀様...?」
一刀「!さ、さーて、俺はちょっと遠征の準備のためにも街の警邏に行ってこようかな!じゃそういうことで!」
シュタッ!
愛紗「ちょっと、一刀様!遠征と警邏は何も関係がないではありませんかぁ〜!」
ダダダッ!
そんな2人を見て、
星「全く、あの二人はいつも騒がしいことだな。」
祭「何、あの二人もまだまだ青いということじゃ。」
霞「それより星。あのことって何のことなん?」
星「いや、大したことではないから気にするな。」
華雄「なんだ。そう言われるとかえって気になるではないか。」
思春「おとなしく吐いてもらおうか。」
思春がおもむろに腰の剣を抜く。
星「おっと、ここにも可愛らしい乙女がいらしたか。」
思春「ぬかせ!」
ヒュン!思春の持つ鈴音が星の眼前の空を切る。対する彼女は造作もないといった様子でそれを交わすといかにも楽しそうに、
星「危ない危ない。それではさらば!」
思春「待て星!」
星「鈴の甘寧殿は、はたして私を捕まえられるかな?」
思春「死ねぇいっ!」
物騒な言葉を伴いつつも、二人もガヤガヤと広間を飛び出していく。
祭「やれやれ。しかしここにおると本当に飽きることがないのう。」
華雄「お前も混ざりたそうな顔をしているぞ。」
祭「そうか?...ふむ。では儂も北郷と愛紗の後でも追ってみるとするか。」
雛里「わ、私もお伴しましゅ!」
霞「ウチも行く〜♪」
それまで状況に押されてあわあわしていた雛里がそう叫ぶ。
祭「そうかそうか。では行くぞ!」
雛里「はひっ!」
霞「応っ!」
また三人広間を飛び出していく。
華雄「全く。これから戦だというのに、ここの連中はどうなっているんだ。」
そう口にする華雄も苦笑いを浮かべつつ、広間から駆けだしていくのであった。
その頃...
??「最悪ね。」
だだっ広い広間でただ一人、そうつぶやく彼女が見ているのは打倒董卓を掲げた檄文が各地に送られているという報告であった。
??「こんなもの送られて飛びつかない諸侯がいないはずないわ。袁紹だけでなく曹操や孫策、それに...あげればキリがないわ。対するこっちには兵隊はそこそこいても率いる将軍が殆どいない...こんなのどうすればいいって言うのよ。」
このまま戦えば勝機などないも同然だ。そうなれば、彼女が守ろうとしているあの娘が連合の連中にどんな目にあわされるか、想像するだけでも胸が苦しくなる。だからこそ、彼女はありったけの知恵を絞ろうと奮闘していた。
そこへ...
兵士「失礼します。使者の方がお見えになられたのですがいかがいたしましょうか。」
??「誰かしら...通して頂戴。」
兵士「はっ!」
現代編episode2
一鉄「ほむ。」
一刀・愛紗「...」
俺たちは今東京と行っても外れに位置するお爺ちゃんの別宅に来ている。普段は鹿児島にいるお爺ちゃんもこの時期には過ごしやすいとかでこっちにいるのだ。ちょうど家にいたお爺ちゃんは急に訪ねてきた俺たちに大層驚いていた。何年も行方不明だった孫がいきなり女性を伴って帰ってくれば驚くのも無理はないだろう。
一鉄「つまりはお前の隣にいる別嬪さんがあの三国志に出てくる関羽ということか?」
一刀「正確には違うんだけど...まあそうとも言えるかな。」
一鉄「ほむ。確かにその身のこなし、軍神と言われた関羽だと言われれば頷ける。」
愛紗「あ、ありがとうございます...」
愛紗はなんだかお爺ちゃんを目の前にして緊張しているようだ。いつもの堂々とした雰囲気も今は鳴りを潜めている。それなのにお爺ちゃんには愛紗の力量といったものが図れているようだ。案外、お爺ちゃんも並みの人間とは言えないのかもしれない。
一刀「じゃあ俺たちの話信じてくれるの?」
一鉄「まあ半信半疑というところじゃが。普通ならお前がそこの娘さんと今まで駆け落ちしていたと言われた方がまだ信じられよう。それはそうと、お前たちはこれからどうするんじゃ?」
一刀「それは...」
一鉄「お前たちの話からすると、あいつのところにはまだ行っておらんのじゃろ。あれはな...」
一刀「...」
一鉄「どこかできゃっきゃうふふの展開になってるんじゃないとかわけのわからんことを言って大して気にかけておらんかったぞ。」
ズザーッ!
一刀「そ、そうか...父さんらしいね...」
愛紗「ご、豪胆なお父様ですね...」
父さんの神経は図太い方なのでこのぐらいなら動じていないだろうとは思っていたが、まさか俺の状況まで言いあてられていたとは思わなかった。
一鉄「まあそういうことじゃ。だからお前も気が向いた時にでも顔を見せに行けばよい。ただ、あれの連れはお前が顔を見せに行ったら心臓を止めてしまうかもしれんがな。」
一刀「あはは、そうだね。」
初めにも考えたがいきなり会いに行くのは母さんが家に一人だった時を考えると得策とは言えないかもしれない。
今考えても、父さんと母さんは全く対局にいるといってもいいというほど性格が異なっていた。それでも二人の関係はこちらが度々辟易するぐらい円満なものだった。
一鉄「さっきの突拍子もない話を信じる奴もおるとは思えんが、お前らは身を隠さねばならんのか。」
一刀「確かに誰も信じないだろうけど、変に騒ぎ立てられるのも嫌だしね。」
一鉄「ふむ...じゃあ儂のところで暮らしてみるか?」
―あとがき―
こんにちは、れっどです。読んで下さった方は有難うございます。そして拠点の方にコメントいただいた方も有難うございます。それでは今回は前4回の拠点パートの反省も含めて書きます。
とりあえず初めに。一刀君に妹がいた...だと!?あれ、無印の時にそんな話あったか?あとで確認をとったところ...真...だと!?正直見落としていました。申し訳ありません。どうしようかとも思いましたが、そのままにしておくことにしました。今後もこのようなことがあるかもしれませんが、独自設定になることもあるということでご了承ください。それも含めて拠点書くのって大変だけど思いのほか楽しかったり。そして何より愛紗さん。夢に出てくるのは止めて下さい。心臓に悪いので。
そして今回から皆さんお察しの通り反董卓連合編にはいるわけですが...とりあえず霊帝うんぬんの話はうまくまとめられなかった気がします。もっと勉強しなきゃなぁ。そしてこちらもお察しの通り霞さん華雄さんがいない董卓軍にはてこ入れが入りそうです。そのまま普通に戦ったら勝てませんしね。恋姫作品でいつも思うのですが洛陽って水関、虎牢関通らないと行けないんだろうか...きっと2つの関には通りたくないけどなぜか通っちゃうみたいな魔性の魅力が!とかボケたらきっとベストアンサーをコメントに書いてくれる人がいるはず!なんて期待しています。そして例によって一刀君の御父君と御母上も独自設定です。現代編の方で絡むかはまだ検討中なのですが。
それでは今後もお付き合いいただけるという方は、末長く生温かい目で見守っていただけると助かります。ではでは。
説明 | ||
恋姫†無双の二次創作、関羽千里行の第12話になります。 一週間ぶりの更新です。 恋姫作品で誰も?が通る道、それが...水関。 あれ?違いましたっけ。 それではよろしくお願いします。 |
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コメント | ||
九条さん ああ、ほんとですね!有難うございます〜。(Red-x) 正確が異なっていた→性格かなーと(九条) 案外鈴々が董卓軍にいて恋と無双していたりして。で、桃香は軍師見習いとか?(竜羽) 董卓軍へのテコ入れですが、オリキャラ補強で行くなら正史では実は呂布以上の最強将軍で曹操軍を全滅一歩手前まで追いつめた徐栄と陥陣営で有名な高順を加えたらよろしいかと。将としてのタイプも華雄や霞とかぶせやすいかもしれません。(h995) 連合で各々の勢力にどの武人・軍師がいるかがわかるかな。ここが連合以降の話の分岐点になる。(レイブン) ??は詠だな。しかし今董卓軍のところに来る輩となると新勢力かはたまた既存キャラの暗躍か。(BLACK) 独自設定は大いに結構だと思います! ある意味、外史ってそういうものですし……。自分が一番イイと思ったものをそのまま書けばいいかと。(メガネオオカミ) |
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