IS?インフィニット・ストラトス?黒獅子と駆ける者? |
episode87 本当に望む事
「どういうことだ・・・颯?」
隼人は颯の言う事が分からなかった。
「俺を殺したくないっって…」
「・・・私・・・思い出したの」
「・・・・」
「私は・・・兄さんを倒すために兄さんの細胞から作られた劣化コピーに過ぎない。戦うための兵器として生まれた・・・戦闘機人だってことを」
「・・・・」
「私はただの・・・殺戮の人形でしかないと」
「ち、違う。お前はそんなんじゃ――――」
「違わないよ!」
「っ!」
「兄さんは私を気遣ってそう言ってくれるけど・・・それで私が戦闘機人じゃないって事実が変わることじゃない」
「颯・・・」
「それに・・・不安なの」
「・・・・」
「私・・・兄さんと一緒に居ると、いつか兄さんを手に掛けてしまうかもしれない。みんなも・・・」
「・・・・」
「そんなの・・・嫌・・・兄さんや・・・リインフォースさんも・・・を殺したく・・・ない」
颯は涙を流して訴える。
「颯・・・」
「だから・・・だから・・・私を・・・破壊して」
「っ!?何を馬鹿なことを言っているんだ!そんなこと、出来るわけないだろ!」
「でも、そうでもしないといつかは兄さんを殺してしまうかもしれない!!」
「・・・っ!」
「兄さんや仲間たちを・・・殺したくない。だから・・・私が居なくなれば、そうならなくても済むから・・・」
「・・・・」
「こんなことに・・・なるなら・・・私なんか・・・兄さんに会わなければ・・・生まれてこなかったら良かったんだ!!」
「・・・・」
隼人は俯くと、少し前に出る。
「颯・・・」
「っ!」
颯は体を震わせた。
「そんな・・・そんな悲しいことを・・・言うなよ」
「・・・・」
「生まれが異なるのは分かっている。俺とお前は違う所はある」
「・・・・」
「だが、それでも、大人しくて、優しくて、甘えん坊なお前を・・・俺は知っている。戦闘機人としてじゃない。一人の人間として」
「・・・・」
「だからな・・・必要ないとか、殺してくれとか・・・そんな悲しい事を・・・簡単に言うなよ」
「兄さん・・・」
「それに、それが本当にお前が望んでいることなのか?本当のお前はそれでいいのか」
「わ、私は…」
「…この世に必要の無い命なんか無い。命より価値のある物なんか無い」
「・・・・」
「どんなことがあるにせよ、お前は一つの命を得て・・・こうして生きているんだろう。戦うためじゃない。生きていくために」
「・・・・」
「俺だって・・・一度は失った命だ。それが再び命を得てこうして生きている」
「・・・・」
「何かの為に再び命を得て、こうして生きているのかもしれない」
「・・・・」
「どんなことがあろうが、例え颯に命を狙われることになろうとも、俺はそれでも構わない」
「・・・・」
「お前が敵だとしても、俺の命を狙う者だとしても、それでもお前は・・・俺の・・・大切な妹だ」
「・・・兄さん」
「俺・・・不器用だから、最初はぎこちないかもしれない。でも、ちゃんとした兄として、そうなるために、努力する」
「・・・・」
「だから・・・殺してくれとか、必要の無いとか、そんな・・・そんな悲しいことを・・・言わないでくれ!」
そして隼人は右目から涙を流す。
「兄さん・・・私・・・私・・・」
「教えてくれ。お前の本当の気持ちを。心の奥で思っている・・・お前の本当の望みを・・・本当の気持ちを」
「わ、私は・・・私は――――」
颯は涙を流して泣きじゃくる。
「私は・・・兄さんと・・・一緒に居たい。ずっと・・・ずっと・・・一緒に・・・居たい。だから・・・だから―――――
―――――助けて!」
「・・・あぁ。任せろ」
そして隼人の右目の瞳が黄色に変化するとバンシィの左目が黄色に変化して、サイコフレームが半透明の緑に光り輝いた。
「必ず助ける出す!どんなことがあろうと!!」
隼人はスラスターを噴射して飛び出した。
「っ!」
颯は周囲に出していたビットを隼人に向けて飛ばした。
隼人は避けずに向かって行き、エクスカリバーを振るってビットを切り裂いて行った。
「っ!」
その間にビットがバンシィに直撃して爆発したりかすれるが、隼人は諸共せず一気に飛び出した。
そして颯はスピアを振るうが、隼人は左手を前に突き出してスピアを掴むと、エクスカリバーを振るってスピアを真っ二つに切り裂いた。
「っ!」
颯は胸部のビームキャノンを放ったが、隼人はそのまま左拳を突き出してビームをぶち破ってキャノンを殴りつけて破壊した。
「くっ!うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
隼人は蹴りをして颯を吹き飛ばした。
「っ!」
颯は体勢を立て直したが、その直後に動きを止められた。
「っ!?」
するとギラーガの周囲にはブラスタービットが配置されてビームチェーンで手足を縛られていた。
「これは・・・」
そして颯は前を見ると、隼人はエクスカリバーの残ったカートリッジをすべてリロードした。
「颯・・・ちょっとばかり激しくなるからな。我慢してくれ」
「う、うん」
「・・・・」
そしてエクスカリバーを大きく振り上げてサイコフレームが光り輝く。
《ISブレイカー・・・・・発動》
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そしてエクスカリバーを振り被って勢いよく振り下ろしてギラーガを切り付け、その直後にエクスカリバーを振り上げてギラーガにV字に切り付けた。
「う、うぅ・・・ああああああああああ!!!」
その直後に痛みが体中に走り、そしてギラーガにヒビが入って行き、粉々に砕け散った。
「・・・・」
「っ!」
隼人はエクスカリバーを捨ててとっさに颯を優しく抱き止めた。
「・・・・」
「・・・に、兄・・・さん」
颯はゆっくりと顔を上げて隼人の顔を見る。
「私・・・私」
そして隼人は颯を優しく抱き締める。
「分かっている。何も言わなくていい」
「に、兄さん!!兄さんっ!!うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
颯は涙を流して泣き出した。
「ずっと・・・守ってやるからな」
隼人も涙を流した。
「・・・・」
シスターは周囲の様子を見ていた。
(さすがにこれ以上は無理ですわね。多少予定とは違いますが、王も第二の覚醒をやりましたからね。最低限の目的は達せたと言えましょう)
そして胸部と背中のキャノンを放ってシャルロットの足元の海面に直撃させて水しぶきを上げた。
(ウェンディ)
(姉ちゃん。目的の物はもう手に入れたよ)
(ではしばらく交戦を交えて道を切り開き次第撤退するわ。ウェンディは合図と共に離脱を)
(了解っす)
「おんどりゃぁぁぁぁぁ!!」
そして鈴は海中から勢いよく飛び出るとビームトライデントを振り上げてウロッゾを真っ二つに切り裂いた。
その直後にドラゴンハングを射出して浅いところに潜っているウロッゾを掴むとそのまま引き上げて後ろに居るウロッゾにぶつけた。
そして簪が両腰のライフルを連結させて高出力ビームを放ってウロッゾを二機撃破した。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
箒は勢いよくビームサーベルを振るうが、ノーヴェはビームサーベルを振るって刃を交えた。
そして箒を押し返すと両腕のビームバルカンを放ったが、箒はリフターと本体を切り離してかわすと、そのままリフターを飛ばすとウイングを左右に大きく広げて前方に衝角を展開してノーヴェに向かわせた。
「ちっ!」
ノーヴェは宙返りしてかわすと、その直後に箒が飛び出してビームサーベルを振るうも、ノーヴェはとっさに気付いてかわしたが、そのまま箒は右足のビームブレードを展開してガラッゾの左肩のフィールド発生装置を切り落とした。
「こいつっ!?」
ノーヴェは舌打ちしてとっさに後退した。
セシリアは砲撃元に接近してロングライフルを放ったが、ガデッサは攻撃をかわして大型ビームランチャーを放った。
セシリアはビームをかわしてドラグーンを向かわせるとビームを放っていくも、ガデッサはビームをかわしていくと、左手にビームサーベルを抜き放ってセシリアに接近した。
「くっ!」
セシリアは左サイドアーマーのレールガンの基部にあるビームサーベルを抜き放って刃を交えた。
そして直後にセシリアはガデッサを押し返して両腰のレールガンを展開して弾丸を放ったが、ガデッサはギリギリで身体をずらしてかわした。
「中々やりますね。ガンナーでここまでやるとは」
「っ!」
するとガデッサのパイロットより通信が入る。
「通信を・・・?」
「私はナンバーズNo09・・・ノイン。以後はお見知りおきを」
「・・・イギリス代表候補生・・・セシリア・オルコットですわ」
「覚えておきましょう」
「くっ!」
千冬はガーベラストレートを前に出して斬撃を防いだ。
サイレント・ゼフィルスはそのまま手にしているショートブレードに力を込めて千冬を押していく。
(さすがの私も鈍ったか。この程度でへこたれるとはな)
レッドフレームは全身装甲なので千冬の表情は見えないが、その表情には疲れが表れていた。
(情けないものだ。私がこうでは一夏のことは言えないな)
と、千冬は「ふっ」と笑いをこぼす。
「何がおかしい」
と、パイロットはその笑いに気付いていた。
「さすがの私も腕が鈍ったと、思っただけだ」
「・・・・」
「…私にも、意地と言うものはあるのでな」
「こんな時に何を・・・」
「こういうことさ」
そして千冬はサイレント・ゼフィルスを押し返すと、ガーベラストレートを逆手持ちにしてそのまま振り下ろした。
「くっ!」
サイレント・ゼフィルスはとっさにショートブレードを前に出したが、刀身はそのままガーベラストレートによって切り裂かれた。
「っ!?」
そして再度元の持ち方に変えて千冬はサイレント・ゼフィルスに一閃する。
「ぐっ!」
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
そして千冬は勢いよくガーベラストレートを振るい渾身の一撃をサイレント・ゼフィルスにぶつけた。
それによってサイレント・ゼフィルスはバランスを崩し、そのまま失速して海に墜落する。
(なぜだ・・・?さっきまで私が姉さんを押していたはず。それがなぜいきなり!?)
サイレント・ゼフィルスのパイロット・・・・マドカは状況が理解できなかった。
「お前の動きは単調なのだ」
「っ!」
そして首元にガーベラストレートの剣先が突き付けられた。
「私を真似してやっていたのだろうが、あのVTシステムより真似出来てないな」
千冬は冷徹な言い方でマドカに言う。
「だから、動きを見抜かれる。簡単にな」
「・・・・」
「投降しろ。抵抗しなければ手荒な真似はしない」
「・・・・」
マドカは密かにシールドビットを千冬に背後に迫らせようと念じたが――――
「っ!?」
しかしシールドビットはその場から動こうとはしなかった。
(なぜビットが!?)
「分かりやすいものだ」
「っ!」
と、後ろから声がしてマドカはハイパーセンサーで後ろを映すと、そこには颯を左腕に乗せて浮いている満身創痍のバンシィの姿があった。
「まぁ、抵抗することも出来ないがな」
「なに?」
そしてマドカはハッと気付く。
マドカが何度もスラスターを噴射させようとするが、サイレント・ゼフィルスはうんともすんとも動かなかった。
「ISのコントロールはこっちの手中にある。大人しくしてもらおう」
「馬鹿な…ISのコントロールを奪ったのか!?」
「・・・・」
「投降しろ」
「・・・・」
マドカは諦めたのか、そのまま俯いた。
「これでいいんだな、颯」
「うん。あの人も・・・ただ囚われていただけだと思う。超えるべき者とか、強さを求めるとか、そんな物に」
「・・・・」
「だから、開放してあげたかった。あの子も・・・私と同じだから」
「そうか」
そして隼人の右目の瞳が元の黒に戻すと、破損状況からバンシィはユニコーンモードには戻れなかったが、代わりに形状を維持したままサイコフレームの輝きが無くなった。
(どうやら・・・颯を助けることが出来たようだな。隼人)
そして千冬はサイレント・ゼフィルスごとマドカを引き上げると、隼人がブラスタービットからビームチェーンを出して拘束する。
(それに、気のせいだったか?さっき隼人の瞳が違うような気がしたが)
千冬は少し考えたが、すぐに諦めた。
「ごくろうだったな」
「どういたしまして」
「後は私に任せろ。神風は颯を最後まで守ってやれ」
「そのつもりです」
「やったじゃねぇか。隼人」
そして貨物船の甲板に転がっているウロッゾの残骸を踏みつけて隼人を見ていた。
(だが――――)
しかし輝春はある事が気がかりであった。
(無人機はもういないはずだが、なぜ連中はまだ粘っているんだ。まるで時間を稼ぐかのように・・・。稼ぐ・・・?)
そして輝春は今まで気がかりになっていたことを繋ぎ合わせていく。
(空中戦力を投入せずに探索に手間の掛かる水中戦力だけの投入・・・。専用機持ちを貨物船から引き離す。無人機が居なくなってからも時間を稼ぐ・・・)
「っ!まさか!」
そして輝春はとっさに貨物室のハッチの方を振り向いたが、直後にハッチが爆発して中から何かが飛び出てきた。
「まんまと引っかかってくれたっすね」
と、ウェンディは大きな長方形のコンテナを担いで貨物船を見る。
形状はシスターのクロノスと同型であるが、背中にキャノンではなくゼイドラと同形状のウイングを搭載しており、右手にはボードのような板状の武装を持っていた。カラーリングはクロノスとほぼ一緒であるが、黄色がオレンジに変更されていた。
「目的の物は確保したっすよ。姉ちゃん」
『ご苦労ですわ。あなたはすぐに離脱しなさい』
「了解っす」
そしてウェンディは後ろを向くとスラスターを噴射して飛び出した。
「逃がすか!」
輝春はすぐに飛び出すと右腕のシールドライフルを放ったが、ウェンディはいち早く気付いて右腕のボードで防いだ。
しかしそれによって弾かれたビームがコンテナをえぐって中身が見えた。
「っ!?」
そして輝春は隙間からあるものを見た。
その隙間から見えたもの・・・それは何らかのカプセルと思われるものが入っており、蓋には中の様子を見るための覗き窓があり、中には一人の人間が液体の中に浮かんでいた。
「何だ・・・あれは・・・!?」
そして呆然としている輝春にクロノスが左側から体当たりをしてきた。
「ぐっ!」
そして胸部のキャノンを放ってAGE-グランサの左肩に直撃させて吹き飛ばした。
その直後にシスターが撤退信号を放った。
「潮時か」
そしてラウラと刃を交えていたリアスはラウラを押し返した。
「05!」
「07・・・また会おう」
そして投げナイフを右手に五枚出して扇状に広げると、勢いよく投擲して爆発させた。
「くっ!」
爆発によって水しぶきが上がってラウラは視界を遮られた。
その間にリアスは一気に離脱して、他のメンバーも専用機持ちをあしらって離脱した。
「逃げられたか」
「く、くそっ・・・」
輝春は甲板に叩き付けられたが、ゆっくりと起き上がり、辺りを見回す。
(まんまとはめられたってわけか。情けねぇ話だ)
そして貨物室のあるハッチを見ると、ハッチは無残に破壊されていた。
(最初から仲間を忍び込ましていたのか。だがどうやって)
「だが、物資はやつらに奪われたか。こりゃ苦情が来るな」
輝春はため息をついた。
(しかし――――)
そして輝春はあの時見たものを思い出す。
(あれは一体・・・)
見るからに人がカプセルの中に入っていた。
(・・・まさか、な)
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ! |
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