真・恋姫†無双 転生一刀劉璋録 第9話 |
第9話 蠢く陰謀、呉対蜀
一刀達が南蛮から帰ってきて数日が経ったある日。
蜀と呉の国境付近で興行をしていた張三姉妹と袁術&張勲。
「あら?」
「どうしたんじゃ? 七乃」
「お嬢様、あれですよ、あれ」
張勲が指差す方には兵達が動いている姿があった。
「あれって……」
「蜀の人達ね」
「どうしたんだろう? こんな国境付近で…」
「呉の方に向かっていく?」
するとそれを見ていた呉の兵達が当然のようにやって来る。
「止まってください、ここから先は呉の領土です。
一体何の目的でこの先に入ろうと……」
すると蜀の兵と思われる人達は出てきた呉の兵達を殺し始めた。
「な、な、な、何あれ?」
「なんで蜀の人達、呉の人達を殺してるの?」
「そんなことより急いで街に急ぐわよ。一刀様達に報告よ!」
「急ぎますよ、お嬢様!」
「急ぐのかえ? 別にそこまで急がなくても……」
「急ぐの!」
張三姉妹達は急いで一刀達のいる街へと向かった。
張三姉妹達がいなくなってすぐ、蜀の兵達は呉の兵達を皆殺しにした。
そしてその蜀兵達に近づく一つの影。
「よくやった」
その影の正体は張世平だった。
すると蜀の兵達は姿を変え、張世平のような白装束に白い頭巾をしたものへとなった。
「これが我らの使命……」
白装束の兵達はその場から姿を消した。
「さてと、あとは……」
張世平は蜀の兵が身に着けていたりするものをその場に出し、地面に落とす。
「これで完全に蜀の兵……いや、北郷一刀のせいになる。
そして呉と蜀は争う。そして争いは………ふふふ、これでいい。
争い、争い、死ぬがいい! 北郷一刀!!」
張世平はその場から姿を消した。
自分達の兵が皆殺しにされたことはすぐに孫策達の耳に入った。
「なんだと? 国境付近の兵達が皆殺しにされていた?」
「はい!」
斥候がそのことを知らせた。
「宣戦布告もなしに奇襲とは蜀の連中め……」
「姉様! すぐに兵を集め蜀に……」
「………」
「雪蓮様?」
孫策は妹の孫権に甘寧の言葉を聞いても黙っていた。
「え、ああ、ごめんなさいね」
「何か考え事でもしてたのですか?」
「まあちょっとね。私は反董卓連合でその蜀の王の劉璋に会ってるのよね。
その時の印象としては、自分から攻める奴じゃないのよね…」
「確かにな、私も雪蓮と一緒に劉璋を見たが、今回のようなことを起こす奴とは思えないな」
「それでは今回のことは…」
「別の者の仕業と見ていいだろうな」
「ですが……、我々の兵が殺されたのです。何もしないわけには……」
「そうだ、ここで引き下がっていては曹操に消息の分からなくなった劉備に見くびられる。
それに劉璋が絡んでいないと確定しているわけではない」
「では……」
「軍を出すわよ。蓮華、祭、亞莎、準備して」
『はっ!』
孫権達は軍の準備をする。
「冥琳、いざと言う時のこと、頼んだわよ」
「…任せろ」
張三姉妹達の情報はすぐに一刀達の耳にも届いた。
「そいつらは本当に蜀の兵だったのか?」
「間違いないよ! あいつら蜀兵の格好してたもん!」
「格好か……」
「一刀様、そのような命令は……」
「出すわけないだろ! 俺が攻めたりするのは反対だってことは君達も知ってるだろ!」
「そ、そうよね……」
一刀の迫力に押される一同。
「しかしお館様、これでは……」
「確実に俺達、蜀のせいにされるな」
「どうしますか?」
「相手は攻めてくるだろう……。防衛だ、自国防衛のために兵を集めてくれ!」
『はっ!』
それからすぐに兵達は集まった。
「皆に聞いてもらいたいことがある。
何者かの策謀によって呉兵が蜀兵に殺された」
『え?』
その言葉を聞いて兵士達は驚く。
「当然、俺はそんな命令は出してないし、ここにいる兵士達はそんなことをしてないだろう。
俺はこれはどこかの誰かの仕業だと思っている。
しかし、今重要なのはそこではない、呉が攻めてくると言うことだ。
つまりは攻めてくる以上、防衛をしないといけない。
誰かの策略に乗せられて防衛は皆にとっては不満だとは思う。
けれど相手はそれを聞いてくれないだろう。
皆、すまないけど、防衛のために力を貸してくれ!」
一刀は頭を下げてお願いする。
「劉璋様が頭を……」
「劉璋様、頭を上げてください!」
「そこまで言われたら我々としては頑張るしかありません!」
「例え誰かの罠であろうと我々と劉璋様なら突破できます!」
「我々はそう信じています!」
「みんな……ありがとう」
一刀は自分がいかに慕われているかをかみしめ、それに応えれるようにしようと思った。
それから一刀達は軍を率いて国境線へとやって来る。
「あそこがその呉の兵達が襲われた場所か?」
「そうじゃ」
一刀は張三姉妹に袁術達を連れてきていた。
「……」
一刀は遠目から現場を見ていた。
「一刀様?」
「死体がない」
「死体なら呉の方で回収されたと思いますけど……」
「……そうか、あったなら冥福をって思ってたんだけどな…」
そこに呉の軍勢がやって来る。
「あれは呉……」
「旗印は……『孫』」
「孫策がいるのなら話をしたいが……」
一刀は一人で前に出る。
「一刀様! 危険です!」
綾が止めようとする。
「いや、大将が一人で出る以上、あちらもいきなり矢を撃ってくることはまずしないだろう」
「しかし……」
「大丈夫だ、俺を信じろ」
一刀は一人で前に出た。
それに合わせるかのように孫策が一人で出てきた。
「劉璋! 布告もなしに我が国の兵を殺すとは…血迷ったか!?」
「そんなわけがないだろ! 俺は兵の誰一人にもそんな命令は出していない!
ましてや殺す命令など、俺は出さない! 我が国の基本方針は防衛のみ! その方針に従わぬものが居れば即刻追放処分にしている!
これは何者かによる陰謀だ! こちらに侵略の意思はない!」
「たわけたことを……、もはや開戦しているのだ! 覚悟を決めろ!」
孫策が戻る。
「………孫策!」
一刀が大声で呼ぶも孫策は振り返らない。
「死んでしまった呉の兵達に対して冥福を!」
そう言って一刀も陣に戻っていった。
「一刀様」
「見ての通り、会談は失敗だ。………」
一刀はうつむく。
「お館様…」
「……皆、防衛を頼む!」
「「全軍……突撃!!」」
一刀と孫策の号令と共に両軍はぶつかり合う。
「っ!」
「はあっ!」
一刀も前線で戦うもお互いの兵力は五分五分であるために簡単に勝負はつかないかに思えた。
そんな時であった。
「うわああああああ!!」
突然孫策軍の横から何者かの攻撃を受ける。
「何事だ!?」
「た、大変です!」
「りょ、りょ、りょ、呂布が現れました!」
「何!?」
なんと孫策軍を襲ったのは呂布であった。
「数は?」
「それが呂布一人のようです」
「呂布が一人で……」
「だが油断は出来ん。奴は一人で黄巾党の兵達を千人倒したと聞いている。油断していればこちらが壊滅される」
「………」
「雪蓮、まさか呂布と戦いたいと言うではあるまいな?」
「本当はそうしたいけど、さすがに今は自重するわ。
冥琳、これは撤退すべきよね?」
「ああ、兵力自体は互角だが、呂布が来たとなると均衡が崩れる。
撤退もやむを得ないな」
「仕方ないわね、全軍撤退せよ!」
呉軍はその場から撤退していく。
「撤退する……」
「一刀様! あちらの方に呂布がいるとの知らせが……」
「呂布が?」
呉軍が撤退していくと遠くにだが呂布の姿が見えてきた。
「確かに呂布だ」
呂布は頷くとその場から立ち去っていく。
「何しに来たんだ? あいつは……」
「まさか我らの手助けを……」
「呉軍を攻撃してこちらを攻撃しなかった以上、そう捉えるのが妥当ね」
「でもなんであたし達を助けに…」
「………」
「美咲?」
「いえ、理由を考えていたんだけど、思いつかなくてね……」
美咲はこの時嘘をついた。呂布が助けに来た理由をなんとなくだが理解していたいのだ。
美咲だけでなく綾に千歳も同じで、一刀の幼馴染の三人には分かることである。
その理由、それは一刀の涙と優しさであることを……。
呉軍撤退と呂布が立ち去ってすぐに一刀はすぐ近くの街の城に入っていた。
「一刀様、どうしました?」
「呉軍はまた攻めてくるかな?」
「今回は呂布のおかげでどうにかなりましたけど、また攻めてくるでしょうね」
「………」
「それが何か?」
「どうすれば孫策を納得してもらえるか……。こちらから侵攻すればまだどうにかできる。けど俺はしたくない……、それは最終手段であると同時に最悪の手段だ。
まだその最悪じゃない……と俺は信じている」
「……一刀様、私に提案が……」
「千歳」
「危険な賭けになりますけど……」
「聞かせてくれ」
そして翌日になり、呉軍は再び攻めてこようとしていた時であった。
一刀は再び一人で前に出た。
「何する気かしら?」
「孫策! 国の大将同士、一対一の戦い……つまりは一騎打ちを申し込む!」
『何?』
千歳が一刀に出した提案、それは一騎打ちであった。
何故そんなことを提案したのかと言うと理由は孫策の性分であった。
孫策は自分から戦うことが割と多い。つまりはある程度は戦い好きと言うことになると思った千歳は孫策とやりあうには同じ大将である一刀が適任だと思ったのだ。
そしてもしうまく一騎打ちをすれば、どちらの被害も最小限に抑えられ、蜀側が勝てば誤解も解けると判断したのだ。
もしも一刀が負ければ……。
「俺が負ければ、蜀軍は全面降伏する! そして俺も一騎打ちで死ななかった場合は自ら死ぬ!!
ただし俺が勝てばそちらも全面降伏してほしい! それだけでいい!
どうする!? この一騎打ち、受けるか? 受けないか?
受けるのならば、誰にも手出しはさせない! 昨日やって来た呂布がまた来たとしてもだ!!」
一刀は大声で叫ぶ。
「………雪蓮」
孫策は行きたくてうずうずしていた。
「……やっぱダメ?」
「当たり前だ。条件が明らかにおかしすぎる」
「それに蜀側は国境の兵士を殺した疑いが晴れてませんからね〜」
「ここでもしのこのこ行けば……」
「殺される可能性があると言うことだ、分かるな、雪蓮」
陸遜と周瑜が諭す。
「それは分かるけどさ……」
「孫策! 怖気づいたとは思えないが、どうした!?」
一刀は挑発とまではいかないが何とか一騎打ちさせようとする。
しかし当然のことながら孫策は乗ってこない。
(やっぱり……)
(ダメなのか……)
それを遠くから見ていた蜀の皆もそう思っていた。
「………全員、下がれ!!」
一刀は蜀軍側の方を振り向いて下がるように指示する。
「え?」
「で、ですが……」
「全員、街まで下がれ! 命令だ!!」
一刀は一騎打ちする最後の方法はその場に自分以外がいないことを証明することしかないと判断したのだ。
「……どうする?」
「……一刀様、いえ、一刀を信じるわ」
「それしかないかもしれないわね」
「…仕方ない、全員下がれ!」
綾の指示で蜀の兵士達は下がり、残ったのは将だけになった。
「お前達……」
「あたしとたんぽぽは入ってまだ間もないからな。
それにあたしとあんたは協力関係であって、部下じゃない…。だったら聞く必要はないだろ?」
「いくらあなたの命令でもそれは聞けませんわ、一刀様」
「そうじゃな、我らは先代のお館様の劉焉殿にお館様を頼むと言われたのじゃ。退くわけにはいくまい」
「幼馴染を置いて行くほど私達は薄情じゃないわよ、一刀」
「………皆……」
そこでようやく孫策が一人で前に出始める。
『雪蓮(姉)様!』
「雪蓮、お前……」
「あそこまでされて……ここで引き下がっては、王の名が廃る!」
雪蓮はとうとう一刀の前に一人で出た。
「やっと……来てくれた……」
一刀は涙を流す。
「何それ? 泣き落としでも狙ってるの?」
「いや、これでむやみに流れる血、失われる命が減ったと考えるとな……。嬉しいんだ、大丈夫だ」
一刀は涙を拭う。
「一騎打ちの妨げには…しない!」
一刀は刀を抜く。
「そう……それなら安心したわ」
孫策も剣を取り出す。
「………」
二人は対峙する。
「はあっ!」
先に動き出したのは孫策。
孫策は自分の剣『南海覇王』を上から振り下ろす。
「っ!」
一刀は刀を横にして剣を防ぐ。
「はあっ!」
一刀は何とか孫策を押しのけ、自分は後ろに下がる。
「でやあっ!」
一刀は次に横振りをし、孫策は剣を縦にして防ぐ。
「はあっ!」
「!」
孫策が動くよりも先に一刀の方が後ろに早く下がり、孫策の次の攻撃をかわす。
「危なかった、さすが孫策、王だけはある」
「そちらこそね」
お互いを褒めつつも実際のところ……。
(なにが王だけのことはあるよ、劉璋の奴、見た目と違って全然力があるじゃない。
それに…力だけじゃない、戦い方をよく理解している……。あの呂布くらい強いんじゃないの?)
孫策は体を奮い立たせる。
(だったらなおさら負けられないわね)
そして一刀は……。
(腕は申し分ない、その上人を斬る覚悟も……。
俺は甘えていたな。この一騎打ちで孫策を殺したくないって思いが強くて……。
実際に俺は殺したくない。けど殺す気でいかないと覚悟と気迫で負けてしまうかもしれない……)
一刀はそう思いながら、改めて刀を握る。
(来るわね)
孫策も改めて構える。
「はあああああ!!!」
駆け出したのは一刀であった。
一刀は走りながら刀を横にする。
「そこよ!」
孫策は斜め上から剣を振り下ろす!
「っ!!!!」
一刀はなんと走りながら自分の体を回転させて、勢いをつけ、勢いがついた刀で孫策の剣を弾き飛ばした!
「!?」
「!」
孫策の剣が地面につくと同時に一刀は刀を孫策に突きつける。
「俺の……勝ちだ」
「そうね」
孫策は観念したかのように息を吐いた。
「約束通り……」
「全面降伏……それで私はどうなるのかしら?」
「大丈夫だ。この一騎打ちは……俺達の誤解を解くためにやったようなもの。
最初っから殺す気は……、いや今の一撃は殺す気でやったけど……、俺自身は殺す気は本当にないよ。安心してくれ」
一刀は手を伸ばす。
「よく分からない男ね、あなた」
孫策はその手を取る。
こうして呉は全面降伏となった。
それを遠くから見ていた張世平と蘇双。
「失敗したな」
「まさか、一騎打ちで終わらせるとは思いもよらなかったな」
「それで次はどうするんだ?」
「劉備はまだ動かさん。曹操を動かす」
「曹操か、あいつなら俺達がやるまでもなく動くと思うぞ」
「いや、今回の孫策のように勝手に纏まられては困るからな……」
「操りに行くのか?」
「そうだな、別の外史で于吉がやったことを俺がやるだけだ」
「その外史の時は確か孫権に邪魔されたんだったな、ならば邪魔が入らないように俺が妨害しておくか」
「頼む、蘇双」
そして二人はその場から消え去るのだった。
おまけ
作者「第9話だ」
一刀「次は華琳か。無印と同じ展開になりそう」
作者「まあ流れは無印のものになってるな」
一刀「ところでお前ゲームはどうした?」
作者「エクシリア2か。先週投稿した後に1週目を一通りクリアしたぞ」
一刀「早っ」
作者「ネタバレである程度は知ってたせいか感動自体はしなかったな。全体的に暗い話だと思いはしたが…」
一刀「だったらネタバレ見るなよ」
作者「だって気になるだろ。興味ある作品はよ。
それにと言うか、どうも俺は最近は心の奥底から『感動』と言うものを感じたことない気がするんだよな」
一刀「それやばくね?」
作者「泣きかけたことなら最近でもあるけどな」
一刀「それは『感動』と言わないか?」
作者「さあな。そこのところはよく分からない」
一刀「そういえばお前、前にその『テイルズオブエクシリア』のネタを書いたことあったけど、2でも書くのか?」
作者「今のところ、書く予定はないな。そもそも秋山は分子世界の破壊とか世界破壊なんてしたくない奴だぞ。いくら世界を崩壊させる危険性だけじゃなくて、世界を破壊できる力そのものを持って、行使できる存在だとしてもな」
一刀「そこまでやばい奴だったのかよ、お前の分身」
作者「まあ、分子世界破壊とか消去を秋山の介入でどうにかすることは可能だけどね。
それと余談だけど、どうしても俺、あの主人公の骸殻って能力をデビルメイクライの『デビルトリガー』って言っちまうんだよな」
一刀「そのゲームのし過ぎ」
作者「いや、身内のプレイしてるの見てただけなんだけどね。どうも印象深かったようなんだ。
とりあえず今回はこの辺で。
それでは!」
説明 | ||
この作品は作者が最近見かけている「転生もの」の影響を受けて書いたものです。 | ||
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