戦国慕歌路絵巻 風雲!鏡音伝 最終話 未来の記憶
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〜前話の末文より〜

 

少女:・・・私は“勇気めぐみ”。そう、あんたらが良く知っている“めぐみ様”だよ!

 

<戦国慕歌路絵巻 風雲!鏡音伝 最終話 未来の記憶>

 

(来たときの神社の手前の広場)

 

レン:お恵さんが・・・めぐみ様??

リン:つまり真のラスボス・・・、もしかして、と、“灯台もと暗し”だったって事?

めぐみ:未来の技術の粋を集めた“変身能力”。なめて貰っては困る。“お恵”の姿で江戸城にいたのは、情報収集と安全な生活場所の確保だったのだ。司令塔が最終ポイントにいるとは限らないのだよ・・・

 

 ブーン

 

 なんと、めぐみも光の剣を所持しており、右手で柄を掴むと光の刃を出して、リンレンに向かって構えた。

 

めぐみ:プラズマソード・・・。計画を全て潰された今、せめてこれでお前達に一矢報いたい・・・

 

 ジャキ!

 

 レンも天叢雲剣の光の刃を出現させ、同じくめぐみに向かって構えた。

 

レン:俺達はこれから帰るんだ。こんな所で死ぬわけにはいかない。たとえお前を倒してでも、この先に行かせて貰うぞ!

 

 しかし役小角は刃を出さなかった。それどころか、要所要所で語っていた“真意”を口に出し始めたのだった。

 

役小角:待ってくれ、レン、それと、めぐみ様。お互いにここで戦っても何も生まれないのです。レンよ、私は幾度か君に話したはずだ。“彼女を救ってくれ”、“彼女は可哀想な人なのだ”、と

レン:役小角さん! だってこいつ、僕たちに攻撃意志があるんですよ!

役小角:大丈夫だ。めぐみ様、刃を納め、まず話し合いをしましょう。めぐみ様にとっても“重要な事情”があったのですから

 

 シュン

 

 レンも刃を納めた。そして、めぐみもプラズマソードの刃を納め、そして、手の力がなくなったのか、力無げに柄を落とし、最後にはぼろぼろ泣きながら、しゃがみ込んでしまった。

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めぐみ:リン、レン・・・。最初に会ってから“あなた達の世界の時代”を検索してみた。大きな戦争、天変地異、いろいろな事があったけど、あなた達の住む世界・・・国だけなのかもしれないけど、おおむね平和よね・・・

 

 めぐみは涙を拭い、“重要な事情”を語り始めた。

 

めぐみ:・・・でもね、こっち側、『私たちの世界』、その未来。つまり、“私が来た時代の私が住んでいるこの国”はね・・・、破滅寸前なのよ

役小角:・・・

ネル、ハク:・・・

てと:(´・ω・`)

レン:え・・だって、この時代からは考えられない・・・

 

めぐみ:“この時代”のこんな状態だから、この世界の未来は破滅へと進んでしまったのよ。この世界の歴史はあなた達の歴史とは全然違うのよ!

役小角:めぐみ様・・・

めぐみ:「統制の取れない国造り」、「力無い指導者」、「従属心のない国民」・・・。それはあなた達も同じだったのかもしれないけど、こっちの世界の“他国”はね、甘くなかったのよ。あなた達の歴史で起こった戦争の数と比較にならない数の大規模な“戦争”を仕掛けてきたの。こっちの世界で規模を大きくした理由は簡単なのよ。この国は“陰陽術や召還術”、他国は“錬金術”、そして事もあろうにこの国の要人は、極度に発達した他国の“科学技術”をまねて、“科学の力”まで手に入れた・・・

役小角:つまり私やネル達や、ヘリやタンク、そして君たちが倒してきた陰陽師達。全部、この“融合した文化の力”で作られていたのだ

 

めぐみ:でもね、技術があっても、“使う人間の能力と意識”が発達してなければ、何にもならなかったの。幾度となく繰り返された戦争で、国を守るために戦って、そして死んでいった“真に心技体のある者”はどんどん減っていった。そういう人の力で、毎回の戦争で勝ち負けはなかなか決まらなかったけど、国はどんどんボロボロになっていき、残った人間の中に“護る者”が減っていったため、戦争が起こるたびに、この国の“勢力”はどんどん衰えていき、他国の侵略規模は広がっていった・・・

役小角:私たちが来た“時代”では、もうこの国の勢力は、ほとんど無いに等しく、残った人間達はこの国にいるにも関わらず、レジスタンス規模に成り下がって、他国が残した技術や資源を奪って、この国内で抵抗していたのだ

ネル:でも、その抵抗力もどんどん減っていき、全滅寸前になったところで、めぐみ様は決心したんです

めぐみ:そう、過去のターニングポイントの時代に行き、私たちの時代の技術で作った“支配者や力ある者”を残し、この国の国力そのものを過去の時点で極度に上げて、まだ技術で格段に劣る“他国”へ攻め入り、過去の時点で潰し、歴史を変える・・・と。信長はその人物自体の好戦的な性格、そしてカリスマもあったため、それをフラッグシップヒューマンとしたのだ。しかし人間では寿命があるため、“永年生き続ける指導者”、“暗殺されない肉体”にするため、機械兵器である“あの”信長の姿になったのよ

ハク:他の私たち全員も、めぐみ様と一緒にこっちに来て、いろいろやっていたわけなの。あの秀吉とは結局馬が合わなかったけど

 

めぐみ:信長の支配力は上がっていき、自国内の戦乱をおおかた納め、この国の強い霊力を持つ人物すら制御できるまでになっていた。もう少しで“他国に攻め入る”事ができる・・・・そう思ったときに、あなた達が喚ばれてしまったわけ。そのあとは、知っての通りになっていって、今に至ったわけ

レン:そ、そんなこと言ったって、俺達だって元の世界に帰らないといけなかったし・・・

リン:そっちの事情もわかるけど、こっちにだって事情はあったのよ

めぐみ:信長も言ったかもしれないけど、自分たち“二人だけ”が歴史の迷い子にならないようにする事と、私たちの世界が救われる事、天秤に乗せたらどっちが下に傾くと思う?

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役小角:めぐみ様・・・。私は貴方に考え直して欲しいと思ったから、この場にいることに決めたんです。あの信長や私たちでは、この国をこの時点から極度に強化する事は、やはりできません

めぐみ:なにを言っているの! この時代にあるこの国の陰陽術に私たちの技術を加えれば、まだ錬金術も科学技術も発達してない他国を陥落させることなど、簡単な事ではないか!

役小角:貴方は先ほど、できない理由を自分でおっしゃっていませんでしたか? “「使う人間の能力と意識」が発達していなければ、何にもならない”、と

めぐみ:う・・・・

役小角:あの信長は確かに単体武装としては、優秀だと思います。しかし、自国の支配、他国との戦争となれば、人間の力無しで為し得ることはできません。あの機械だけでできている“安土城”を使ったとしても、人間の能力が未熟なこの時代では、あなたのもう1つの目的でもある“この国の人間の力の底上げ”をする前に破綻してしまいます

めぐみ:負けて死んでいく人間は“弱かった”、それだけだ! 生き残ったものこそ“進化して強い人間”になっていくのではないか!

役小角:最後まで生き残る前に、この国の人間は誰もいなくなってしまいます。そして残ったのは私達が持ち込んだ“機械”だけ。これは、“強い人間が住む強い国”ではなく、“全人類に対して脅威を与える機械だけの国”ではないですか?

めぐみ:そ、それは・・・

役小角:私がレンに願い、そしてレン達の力を確認し、そして再び復活した後、自身も協力してこの“破滅の展開”を阻止するため、貴方に刃向かったのです。貴方は可哀想な人です。破滅の未来を救うために建てた計画で、もっと破滅的な未来にしてしまう寸前だったのですから

 

めぐみ:未来から一緒に来た時の貴方は、そんな考えでは無かった。なにが貴方をそんなに変えてしまったの?

役小角:このレンとリンの力だと思います。この世界のこの国の人物には、この驚異的な私たちの力に抗える力がなかった。しかし、この二人は違っていた。目的は偶然一致しただけだが、彼らなら、そして彼らに引きつけられていった仲間なら、もしかして・・・。その“可能性”を感じ取って機動停止した私が、次に復活したとき、前の“デフォルト思考ルーチン”が消えて、メモリーに残っていた“可能性を信じる”思考ルーチンに切り替わり、この私となった、そういう事だと思います

めぐみ:可能性・・・・確かに今のこの状態は、その可能性が実を結んだ結果よね・・・・あなた達を除く、私の手駒は全部消滅したわ。歴史は変わらない・・・。だから知っての通り、帰った先の未来のこの国にも、もう、驚異を作る資材はなにもない・・・・

 

 めぐみはクッと口を噛みしめた。

 

めぐみ:“どっちにしろ破滅の未来を迎える”事、“このままの状態でもあの未来になる”事・・・・。役小角、自分で言うのも何だけど、やっぱり私は“可哀想な人”のままなんだね・・・。どうすることもできない・・・。未来を変えることも、この時代を変えることもできない

 

 めぐみの頬をまた涙が流れていった。

 

めぐみ:そうね・・・でも役小角が言う“機械だけの破滅的な国”にならなかった事、礼を言うよ。“あの未来”よりひどい世界にならなかった、私の“国を救いたい”という希望に沿うことだもんね。それだけでも、これから未来に帰る私たちへの、いい土産になったよ。有り難う

 

 めぐみは神社の方へ向かおうとして、振り向こうとした時、熟考していた役小角が声をかけた。

 

役小角:めぐみ様・・・これはまだ“可能性“の段階ですが、未来の国を救う手段、残されてますよ

めぐみ:え?

役小角:確かに私たちが存在する“この世界”の住人では、どうすることもできなかった。しかし、それ以外の存在、言うなれば“特異点”なら、もしかして“未来を変える事ができる”、そうは思いませんか?

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 めぐみは、“特異点”の言葉に反応して振り返った。

 

めぐみ:特異点?

役小角:つまり、レンとリンの事です

レン:え!? 俺達!?

リン:私たちですか!?

役小角:君たちは、私たちから考えれば、この世界とは違う“異世界”から来た、別の存在。つまりこの世界から見ると“特異点”と認識されている存在のはず。実際、この事件を“律に反して解決した”中心人物だった

レン:それは偶然目的が一致しただけで・・・

リン:私たちに“国1つを救う力”なんて・・・

 

役小角:君たちの“三種の神器“、あれは君たちだけしか使うことができない。これはなにを意味するか、わかるかな?

レン:え?

役小角:昔も、今回のようなことがあって、君たちの世界からこちらに来た人間がいたから、後世の力になれるように作られたんじゃないかな? 敵であったこの世界の未来人と、君たちの世界からの渡来人が協力して

レン:そ、そっか。過去の神器とか言っている割に、ビームセーバーやビームシールドだったし・・・・

リン:でも、この3つで国なんて救えるんですか?

 

めぐみ:・・・敵国の“錬金術”に「等価交換の原則」ってのがあるの。「何かをしたければ、“等価”の物を差し出せ」っていう厳しい原則が。まぁ陰陽術でも科学技術でも、“必要霊力”とか“質量保存の法則”があるから、同じなんだけどね

役小角:めぐみ様、気づかれましたか。この“三種の神器”は、“国を1つ救う事”とほぼ等価なんですよ

レン:え゛!? これが?

役小角:でも“等価”ではない。“残りの対価“が必要となるわけです

めぐみ:それは私たちの住む“この国の全国民”が対価として差し出す“覚悟”、そういうわけですか

 

役小角:この国は、まだごく一部しか他国と関係を持っていません。この後“文明開化”が起こり、“戦争”が訪れるのだが、その前にこの時代の時点で“完全鎖国”を行ってしまうのです

レン:そ、そんなこと、この3つでできるわけ無いじゃないですか! 剣と盾と勾玉ですよ!?

役小角:いや。今の時点での、特に“盾”が必需品だ

リン:役小角さん、本気なんですか?

 

役小角:その基本プロセスは、この国の被害が甚大になってきた未来で提案されていたのだ。しかし、他国の侵略具合がひどいこと、そして圧倒的に“霊力”が足りなかったので断念していた

めぐみ:確かに“アノ”プロジェクトは確実だとされていたけど、役小角が言った“完全鎖国”に異論を唱える者が多く出てしまった事も原因の一つだったんだけど・・・

役小角:誰しも“科学技術と錬金術”を封じられるのを恐れてましたからね

レン:な、なんか凄いこと言ってますが・・・

ネル:二人とも、それは“本当に凄いこと“なんだよ

ハク:確かにあれは凄い発想だよね

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役小角:はっきり言う。そのプロセスとは“この国全部を霊力で作った次元バリアーで包んで、別次元に持っていき、他国との関係を完全に絶ってしまう方法だ

レン:え゛゛゛゛゛!!!!!!

リン:それじゃ、錬金術どころか、海外との交流そのものがなくなってしまうんじゃないですか?

レン:海外旅行もできない、他国の科学技術も入ってこない、ってか、めちゃくちゃですよ!

めぐみ:・・・そのめちゃくちゃな“対価”を払わないと、この国の歴史を変えることはできない。そういう結論が出たから、私たちの時代で異論が続出してしまったんだよ

役小角:リン、レン。君たちの行動で、“この国が破滅へ向かう戦争から回避させる”という利点と、“全ての科学技術の導入と他国交流を断絶させる”という対価を払わせる事、2つが同時に起こる。だが、それしかこの国を救う方法はない

ネル:まぁ、違う世界の事情と割り切って、とっとと帰っちゃっても、破滅するのはこっちの世界だけだから、まぁいいっちゃあいいんだけどね

ハク:でも、どっちを選んでも“心残り”になっちゃうっていうのがネックなんだけどね

 

役小角:最後の選択になると思う。レン、リン、君たちは、この国の“どっちの未来”が、この国のためになると考える? 完全鎖国し文明も交流もなくなる世界で安全に生き延びる道を選ぶか、それとも、なにもせずに歴史通りに進め、文明は進化するが戦争だらけで破滅寸前まで至ってしまう世界で、生き延びるか?

ネル:ちなみによくある“どっちも選ばない”、“どちらの道でもない道を模索する”ってのは無しだからね。実際、そういう道は存在しないから

ハク:さすがに二人とも寿命があるし、他国とは戦争になるから、二人がリアル活動で頑張ってどうにかなるレベルじゃないからね

 

めぐみ:・・・酷な選択を選ばせてしまって申し訳ないと思うけど、“あの未来”になる位なら、完全鎖国でもいいと、私は思うわ

ネル:そうだな、あの世界は“生き地獄”だからな

 

レン:・・・・・・・・・・・・・・わかりました。“完全鎖国”を選びます。それでいいですね? めぐみさん?

めぐみ:問題ない。そして、“これに異論があると思う国民の意志を裏切る“事の罪、全てかぶろう

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役小角:よし。では手順を教える。まず、レンは天叢雲剣の柄の方を地面に突き刺してくれ

レン:はい

 

 レンは柄の上の方を強く握り、手前の地面に突き刺した。剣はしっかりと地面に刺さって動かなかった。

 

役小角:次にリン。君は八尺瓊勾玉のわっかの部分を、天叢雲剣の剣先部分に刺してくれ

リン:はい

 

 リンは勾玉の曲がってわっかになった所を剣先に刺して、剣の上に勾玉を固定した。

 

役小角:最後だ。レン、八咫鏡を体に戻し、天叢雲剣の刃に手のひらで触れて、八咫鏡の全ての力を刃に移動させて、“放出”と叫んでくれ

レン:はい

 

 レンは八咫鏡を袋から取り出し、再び霊力に戻して体にしみこませ、そしてそっと刃にふれて、その言葉を叫んだ!

 

レン:放出!!!!!!

 

 ギューーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!

 

 鏡そのものの霊力、そして、ビームシールドが吸い取った信長の核爆発の全エネルギーが刃に移り、光の巨大な流れが刃先から天に向かって流れていき、かなり上空で大きなバリアーのように広がり、数秒でこの国の全てを包んでしまった!!!

 

めぐみ:こ、これが・・・

役小角:・・・うむ。これで終了だ。この国から出ることもできないが、他国から入ることもできない、つまり違う次元にこの国そのものが移った

 

ネル:そうだね。じゃあ、そろそろ、“さよなら”、だ

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 なんと、ネル、ハク、役小角の姿が半透明に変わっていった。

 

レン:ネル! ハク! 役小角さん!? どうして!?

リン:・・そ、そっか! 未来の世界でも科学技術の導入がないんだから、科学を利用して作られているモノは・・全部消える!!!

役小角:そういうことだ

 

 レンは大粒の涙を流して、役小角に叫んでいた。

 

レン:役小角さん!! “こんな展開”になる事、なんで教えてくれなかったんですか!

ネル:教えれば、絶対やらなかっただろ?

役小角:私たち3体の存在が消えるのも、“対価”の中に入っているんだよ。わずかだがな

レン:いやだ! そんなのないよ! この国を救った人が消えちゃうなんて、おかしいよ! そんなの!

役小角:対価の交換は絶対だ・・・・

 

 消えかかっている役小角は、変化のない“てと”の方に振り向いた。

 

役小角:てと・・・、霊力だけで作られた君、そして、自国の両親から生まれためぐみ様だけ、このメンバーでは存続する事になる。“めぐみ様”の事、宜しく頼んだぞ

 

てと:・・・・はい。精一杯頑張ります。皆さん、今まで有り難うございました

レン:!!!!

リン:てとが・・・喋った・・・

ネル:歴史が変わると同時に奇跡も起こったようだね

 

 消えかかっている3人の姿は、もう霞のような状態になってしまった。ボロボロ泣いているレンは、役小角の側に来て、最後の瞬間を見届けようとしていた。

 

レン:役小角さん・・・・本当に・・・いろいろ・・有り難う・・・ござい・・・ました・・・。ひっく・・・・ひっく・・・

役小角:君は強くなった。帰った先、君たちの世界でも、何者にも負けない不屈の魂を持ち続け、素晴らしい世界を作ってくれる事を願うよ

ネル:この世界みたいな・・・歴史に、決して・・・しないで・・・くれよ

ハク:こんなの・・・ここだけで・・・十分・・・だからね・・・

 

 もう3人のセリフも消えかかっていた。そして・・・、

 

役小角:さらばだ。Good Luck!

 

 ヒュン・・・・・・・

 

 こうして3人の姿は完全に消えてしまった。

 

レン:う・・・う・・・・うわーーーーーーーん!!!

リン:ひっく・・・レン、泣かないで! 役小角さんに怒られちゃうよ!

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めぐみ:ぐすっ・・・・・。うん、よし、二人とも、私と“てと”は、そろそろ元の時代に帰るね

リン:そ、そうだね。“変わった歴史”の先がどうなっているかわからないけど、きっと前よりはいい国になっていると思う

めぐみ:はい。科学技術が無くなっちゃっているから、不便な生活になると思うけど、それでもいい国を作っていくよ!

てと:私も頑張りますよ

レン:ひっく・・・頑張ってね!

 

 “めぐみ”と“てと”は、神社の広場の中央に歩いていき、そして、めぐみは“お祓い棒”を取り出し、天に掲げ、叫んだ!

 

めぐみ:霊力最大! 元の時代へ帰還せよ!

 

 ビューーーーン!!!! カサカサカサ・・・

 

 二人は、一瞬で消え去り、その場に起こった“つむじ風”で落ち葉が回っていた。

 

リン:行っちゃったね・・・

レン:・・・・・・・・・・ミクさん、ルカさん、僕たちも帰りますね

ミク:そうミクね。感傷に浸っていてもしょうがないミクからね

ルカ:神社に入りましょうか

 

 こうして4人は、名残惜しい感情もあるものの、帰らないと話にならないので、来た場所である“神社の中の鏡”の前に集まった。

 

***

 

(鏡の前)

 

 リンとレンは鏡の前に正座していた。ルカは印を結び、準備していた。

 

ミク:じゃあ、始めるミクね。ルカ、お願いね

ルカ:はい

 

 ルカは専用の陰陽術を唱え、その間、ミクは他の鏡の角度を変えていた。すると来たときに洞窟の小部屋で起こった“光の反射現象”が起こり、そして鏡に光が集まると、神社の境内が明るく光り輝いた!

 

ミク:それじゃあ、リン、レン、さよならミクね

ルカ:無理にこっちに呼び寄せちゃって、ごめんね。帰ってゆっくり休んでね

リン:ミクさん、ルカさん、本当に有り難うございました

レン:ここでのこと、絶対忘れないよ。有り難う!

 

 パァアアアア・・・・・・

 

 二人は光に包まれ、そして、来たときと同じように、意識を失った・・・・。

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(レン達の世界・来た時の時間・洞窟の最奥の部屋)

 

 洞窟は一瞬輝いた後、真っ暗になった。

 

レン:う・・・・う〜ん、え、えっと、リン、大丈夫か?

リン:う・・・・うん、大丈夫、無事、帰還できたみたいね

 

 足下には、行ったときにこの世界で落としてスイッチが“切”になっていた懐中電灯が落ちていた。

 

レン:・・・・とにかく帰ろうか

リン:うん。かなーり汚れているから着替えたら、私の部屋に来てくれない?

レン:そうだね。色々、話したい事もあるからね

 

 こうして、二人は懐中電灯をつけて、寄り添いながら洞窟を出たのだった。

 

***

 

(鏡音神社・夜・休憩部屋)

 

神主の二人の父:なんじゃ! 二人とも! 洞窟で地鳴りが聞こえたと思ったら、そんな汚れて帰ってきて!! 巫女服は仕事着じゃぞ!

リン:ごめんなさい。洞窟の埃をいろいろ被ってしまって

レン:すぐ着替えます

神主の二人の父:ん!? なんじゃ? なんか、凄い“迫力”を感じるんだが、なんかあったのか?

リン:ううん。何にもないよ。ね?

レン:ああ、何もなかったね

神主の二人の父:うむむ!? おまえたち、なんかもの凄く“親密”になってないか? 今まで喧々囂々(けんけんごうごう)として仲が悪かったはずじゃが!?

 

リン:別に? 普通だよ。とにかくこれで仕事は終了ね。着替えてお風呂入ったら、プライベートタイムに入るからね

レン:いいよね?

神主の二人の父:あっ、ああいいよ。なんか疲れてもいるみたいだしな

 

レン:それと・・・・、俺の巫女のお手伝いだけど、今日限りで終わりにするよ。俺も色々やることあるから

神主の二人の父:あ、ああそうなのか? まぁ、なんか理由はわからないが“男らしい顔つき”になったから、まぁいいか。リンも平等にこれで終了でいいや。二人とも、“お疲れ様”でした

リン、レン:そうだね、ほんと・・・・・

 

神主の二人の父:?

 

 こうして二人は、各自の部屋で着替えて風呂に入ったのだが、巫女服はすぐに洗濯には出さなかった。レンはパジャマに着替えた後、巫女服を持って、リンの部屋にこっそり入っていった。

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(リンの部屋)

 

 窓を開けたリンの部屋で、二人はパジャマ姿で、熱いコーヒーを入れたコーヒーカップを持ちながら、夜空を眺めていた。

 

リン:なんか、夢を見ていた気がするね

レン:でも、本当にあったことなんだ。僕の顔つきの変化、リンとの距離感が縮まった事が、何よりの証拠だよ

リン:三種の神器とか、記念、なんにも無くなっちゃったけどね

レン:いや、記念なんていらないよ。あの日々の記憶は、一生忘れない、いや、忘れられないよ

リン:凄い日々だったからね。それと、人間じゃなかったからわからないけど、消えちゃった3人、天国に行けるといいね

レン:そうだね。きっと天国でゆっくり暮らしていると思う。そう願いたいよ。めぐみさんと“てと”も変わった先の未来で頑張っていると思う

リン:そうね・・・。はは、なんか思い出しちゃった。最初、あっちに行ったとき、私、だだっ子みたいに泣いちゃっていたんだよね

レン:でも、意外にしっくり馴染んでいたよね、俺達

リン:帰れる手段が、アレしかなかったから、もうがむしゃらだったよね

レン:トリンでの旅、何度も遭遇した激戦、役小角さんとの出会い・・・

リン:ネル達との共闘。そうだ、レンが敵になった事もあったよね

レン:あー、あれは今でもちょっと話されると気が引けるんだよね・・・

リン:あ! ごめん!

レン:うん、大丈夫。それにしても、安倍晴明と芦屋道満のコンビ、そして最後の信長、強かったよね

リン:ギリギリの戦いだったからね。勝てて良かったよね

レン:そして、驚愕の事実の連続。最後は神器を使って歴史まで変えちゃったしね

リン:でもね、レン。私、そういうこと以外に、もう1つ、記念があるんだ

レン:え?

 

 リンはレンに寄り添ってきた。

 

リン:一緒にお風呂に入って・・・、そして・・・・

レン:そ、そうだね。あ、それに関係するんだけどさ。あれ以降、リン姉の事“リン”ってずっと呼び捨てにしていて、ホントごめん!

リン:ふふ、それからなんだ、逆に距離が凄く縮まった気がするの

レン:そういえばそうだね。なんか、こう、“深い絆が生まれた”っての?

リン:うん。あのイベントの後、凄く大変なことが立て続けに起こったけど、乗り越えられた理由の1つも、この絆なんじゃないかと思ったんだ・・・

レン:そうだね。パーティの面々は、向こうの世界でバラバラになっちゃったけど、“みんなから僕達に願っていること”って、「ずっと仲の良い姉弟でいること」、なんじゃないかと思うんだ

 

 リンとレンは右手と左手を握りあった。そしてリンとレンは窓の向こうに向かって話した。

 

リン:みんなー、大丈夫だよ! 私たち、ずっと仲良し姉弟でいるよー!

レン:だから、みんなも頑張れよー!

 

 この後、しばらく、思い出に浸っていた二人だった。

 

 星は今日も夜空で瞬いていたのでした・・・

 

(了)

 

CAST

 

巫女・鏡音リン:鏡音リン

巫女(?)・鏡音レン:鏡音レン

 

巫女・初音御貢(ミク):初音ミク

巫女・巡音流歌(ルカ):巡音ルカ

 

お恵(勇気めぐみ、めぐみ様):GUMI

 

陰陽師“役小角”:Prima

 

カラクリのネル:亞北ネル

深酒のハク:弱音ハク

人形の“てと”:重音テト

 

第六天魔王信長、神主の二人の父、その他:エキストラの皆さん

説明
○ボーカロイド小説シリーズ第9作目の” 戦国慕歌路絵巻 風雲!鏡音伝“シリーズの最終話です。
○巫女の鏡音姉弟(?)が主役の擬似タイムスリップジュブナイルです♪
○メインは和風の妖怪とか陰陽師とか出てくる、バトル物でもあります。

☆全ての謎の解明、そして、エンディングです。
☆今回は感傷的な終わりにしてみました。
☆長い話でしたが、お付き合いいただき、まことに有り難うございました!。
☆作中の“トリン”とは、トラボルタP様のリン曲“ソラトバズ”に出てくる、飛べない鳥の名前です。
ニコ動リンク:http://www.nicovideo.jp/watch/sm9293649
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Vocaloid 鏡音レン 鏡音リン GUMI 初音ミク 巡音ルカ 亜種 

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