IS x 龍騎?鏡の戦士達 Vent 36: 去った後 |
「はあ・・・・・・」
生徒会で、箒、鈴音、簪、楯無、そしてセシリアの五人が何度目か分からない溜め息をついた。誰も授業に身が入らず、意気消沈としていた。今でも部屋は通夜の様にどんより重い空気に包まれている。
「あれから、かなり経つな・・・・もう二週間か・・・・」
「もっと経った気がするわ・・・・・」
「そうですわね・・・・・」
(早く戻って来て・・・・一夏・・・)
「(一夏君、どうしてるのかな・・・・?ミラーワールドを通って会える訳でも無いし、居場所が分からないんじゃね。)あーもう、ほら!こんな所でうじうじしててもしょうがないでしょ?それに会えないって言っても、今生の別れじゃないんだからさ。定期的に((連絡|メール))は来てるんでしょ?それだけでもあり難いと思った方が良いとお姉さんは思うけどなー。」
内心自分も胸が張り裂けそうな程寂しい気持ちで一杯なのにも関わらず、扇子を広げた。『根性見せろ!』の文字が書いてある。
「教室に戻りなさい。授業さぼったら先生に殴られるわよ?」
簪以外の全員がノロノロと退出した。
「お姉ちゃん・・・・・」
「分かってる。でも、私も会いに行く事は出来ないのよ。それに連絡を取るって言っても大した時間じゃないわ、今や世界の半分が彼らを本気で追いかけ回してるから、私達の所為で足がついたら只じゃ済まないの。」
制服の胸の内ポケットに入っているアビスのデッキを握り締めた。
「でも、良かったわね。最後にデーと連れてってもらえて。」
「デートって・・・・そう言う訳じゃ・・・・」
「あら、迎えに来てもらって買い物して、外食して戻って来たなら充分デートよ?本人がそう思ってるかどうかは兎も角、ね。」
二人の間に沈黙が生まれた。
「一夏は、さ・・・・・私のヒーローみたいな存在なんだ。ミラーモンスターに食べられそうになったのを、助けてくれたし。でも、またいなくなっちゃって・・・グスッ。」
流れ落ちる涙を乱暴に拭った。
「また、会えるよね・・・?」
「そうね、簪ちゃんが強く願えばいつかまた戻って来るんじゃないの?貴方のヒーローなんだし。それまでは、私が簪ちゃんを守るわ。」
キイィイイィィイイイィイイイ・・・・
「早速来たわね・・・・暫く食べさせてなかったし・・・・簪ちゃん、見てなさい。これが、一夏君と同じ、人を守る為に戦う力よ。」
デッキを前に突き出し、Vバックルが出現した。突き出した手の指を鉤爪の様に曲げると、顔の左側へ持って行く。
「変身!」
鏡像が重なり、鮫をモチーフにした水色のライダー、アビスへと変身を遂げる。
「内緒よ?」
それだけ言うとミラーワールドに飛び込んだ。そして見たのは、大量のイナゴの様なミラーモンスター、クラウド・ローカストだった。
「仕方無いわね。」
カードを二枚引き抜き、立て続けにバイザーの口に当たる部分に装填して行く。
『ソードベント』
『アドベント』
アビスバイザーから放たれる高圧水流を牽制に使いながらもアビスラッシャーの剣、アビスセイバーを振るって切り込んで行く。後ろからはアビスラッシャー、アビスハンマーがそれぞれ援護してモンスターを倒しては捕食を繰り返していた。ようやく最後の一匹を倒し終えると、更なる大群を引き連れた二体のモンスター、アクロホッパーとエアロバッターが現れた。
「嘘でしょ・・・・」
アビスは呆れ返り、アビスセイバーを地面に突き刺すと再びカードをベントインした。
『シュートベント』
そしてアビスハンマーの物と同じキャノン砲、ディープバスターが現れた。それによる砲撃で数を減らして行ったが、親玉には全く当たらない。その強靭な脚力を活かした跳躍で悉く回避されるのだ。契約した二体の中では動きが速いアビスラッシャーですらまるで反応出来ない状態である。
『ユナイトベント』
時間制限と言うハンデがあるので手早く終わらせようと、アビソドンを召喚した。ノコギリで地面をえぐり出して二体を捉えようとしたが、ジャンプで一々避けられてしまう。体力を削られるばかりだ。だが、突然空から巨大な斧が回転しながらアクロホッパーに叩き付けられ、壁に激突した。そして凄まじいスピードで再びその斧を拾い上げてエアロバッターを薙ぎ倒すと、カードをその斧に装填する。
『フリーズベント』
その音声は間違い無くライダーの持つバイザーから発せられる物だ。エアロバッターの動きが文字通り((凍結|フリーズ))したかの様に止まる。
『ファイナルベント』
『グオォオオオオォオオオオ!!』
大型の二足歩行モンスター、デストワイルダーがどこからか現れ、固まったエアロバッターをその強靭な腕で捉え、引き摺って行く。引き摺って行く先は、巨大な爪、デストクローを構えた青と銀のライダー。エアロバッターにクローを突き立ててあっという間に倒してしまう。だが、アクロホッパーの姿はどこにも無い。
「ちっ、逃げられたか・・・」
低い声で毒突いた。
「貴方は、誰・・・?」
「タイガ。仮面ライダー、タイガだ。」
「タイガ・・・・助かったわ。ありがとう。」
「カードの力にばかり頼るな。そのままじゃ死ぬぞ。」
アビスを指差し、地面に突き刺さった((斧|デストバイザー))を引き抜くと、それを担いでその場から姿を消した。アビスも粒子化がこれ以上酷くなる前に現実世界に戻る。
「お姉ちゃん・・・・」
「大丈夫よ。ちゃんと倒して来たわ。だから、貴方も頑張りなさい。一夏君の背中を守れる位強くなってね。」
「うん!」
「はあ・・・・・フッ、フッ、フッ、フッ。」
そして放課後。箒は一人自主練をしていた。何度も何度も木刀で素振りをしている。だが、ちっとも心は晴れない。鍛錬で気を紛らわそうとしても、あの箱の中身が何なのかが分からないのだ。気になって頭から離れない。と言うのも、あの箱は数字が振ってあるキーが十個あり、暗証番号を入力しなければ開かない仕組みになっている。ありきたりな物からかなり捻った物まで色々と入力したが、全く開かない。パスワードを解読しようとしても、強力なプロテクトが掛かっているため不可能だった。唯一のヒントは『答えは俺と戦う相棒が知っている』と書かれたカード一枚だった。
「後、残っている物は・・・・」
もしやと思い、((961283|くろいつばさ=ダークウィング))と入れてみた。箱がカチリと音を発し、開かれた。中に入っていたのは、赤い水晶で装飾を施された簪だった。よく見ると、棒の部分は鼈甲で出来ている。もしかしなくてもこれはかなり値が張った物だろう。
『お前はお前だ。常にお前であれ。後、お前は無理し過ぎる傾向があるから気を付けろ。また会う日を楽しみにしている。』
ただ、短くそう綴られていた。だが、昔剣道の同門時代に撮影した写真が写っていた。箒は和やかに笑ってピースをしている一夏を見て赤くなっていた。それを見て、箒の顔も自然とほころんだ。懐かしくて、思わずその写真に写っていた一夏の顔を指先で撫でる。
(あの頃の一夏は、本当に強かった・・・・今ではもう、私如きでは手の届かない高みにいるのだろうな。)
同時刻、鈴音は封筒に入っていた手紙を何度も何度も見ていた。
『出来るだけ早く、お前の家族に会わせてやる。それまで待ってろ。』
ただそれだけだったが、それは鈴音にとっては驚くべき言葉だった。だが、何度も読んで行くうちに、彼ならば本当に出来ると思い始める自分がいる。
「馬鹿・・・・・早く帰って来なさいよ・・・・・約束、まだ果たしてないでしょ・・・?」
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さて、一夏達が去った後のIS学園は・・・? | ||
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