真・恋姫†無双 〜胡蝶天正〜 第一部 第01話 |
この作品は、北郷一刀の性能が上方修正されています。はっきり申しましてチートです。
また、オリジナルキャラクターやパロディなどが含まれております。
その様なものが嫌いな方はご注意ください。
「・・・・・・時が・・・・・・来たようだな。」
全身から力が抜け、意識が希薄になっていく。
最早今こうして横たわっているのが夢なのか現世なのかも曖昧になってきている。
「・・・・・・感慨深いものだと思っていたが、案外そうでもないものだな。」
今まさに黄泉路へ旅立とうとしている自分の人生を振り返ってみてはいるが、呆気無くそれを受け止めてしまっている自分に少し呆れてしまっている。
しかし、人生を振り返るとどうしてもあの《胡蝶の夢》の事が頭を過ぎる。
うら若くも気高い、あの英傑達と大陸を駆け抜けたあの胡蝶の夢を・・・。
自分が歩んできた長い道のりに後悔は無いが、夢の最後の夜にあの寂しがりやの女の子を置いて去ってしまったのには未練がある。
(あの娘の傍に居る事は出来なかったのか?)
そう想ったことは1度や2度ではない。
こちらの世界に戻ってきてからもあの世界に帰る方法を探して文献を漁ったり、秘境の奥に棲む神仙のような者にも会いに行った。
また、あの世界に帰る事が出来たときの為にこちらの世界の技術や智謀、自分一人でも多くの人々を守れるだけの武を学んだ。
結果としてそれはこの国や貧困に喘ぐ国、情勢が安定していない国の多くの人々を救う事に繋がったが、結局あの世界に帰る事が出来ず、自分自身の生涯の目的は果せずに徒労に終わったと言える。
「・・・後の事は遺言も残してある・・・・・・あいつ等に任せておけば心配ないだろう」
遺言など無くとも自分が手塩にかけて育てた者達が後の事を滞りなく取り計らうと思うが、こういう時に自分のまわりの心配をしてしまうのは昔からの性分である。
「どうせ最期なのだから・・・・・・自分の事だけ考えていれば良いのにな・・・・・・。」
そう、最期なのだ。
自分の気持ちの整理をする事ができる最後の機会。
だが、自分の気持ちなど我生涯を振り返れば解りきっている事である。
春蘭、秋蘭、
桂花、
季衣、流琉、
凪、真桜、沙和、
霞、
風、稟
天和、地和、人和
そして
華琳
私が最も愛している誇り高き王で寂しがり屋の女の子。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう一度・・・・・・・華琳に・・・・・・・・会いたかったなぁ・・・・・。」
世界を又にかけた現代の英傑、北郷一刀はその破天荒な生涯とは対照的に屋敷で一人、静かに息を引き取った。
「・・・・ここは」
自分の意識がプツリと途切れて、恐らく死んだのであろうことは解る。
目の前に広がる光景が余りに異質なのはそれに起因するものなのだろう。
「死後の世界というには、余りに何も無さ過ぎじゃないか?」
そう、今自分が居る場所には文字通り《何もない》のだ。
壁も空も光も、辛うじて地面らしきものがあるので上下という概念は失われていないが、目で確認する事が出来ないので下がどうなっているのかは解らない。
「にしても、どうしたものかなぁ。あの世なら案内人や先に来た人でも居そうな気もするがそうでもないみたいだ。」
何処かに行くあても無ければ周囲が見えないので呆然と立ち尽くしていると、突然目の前が閃光で明るくなり、漆黒の世界が白に染まった。
そして
「ご〜〜主人様〜〜〜♪!!!!!!!」
目の前に筋肉達磨の気色悪い化け物がくねくねと面妖なしなを作りながら現れた。
「寄るな!!この化け物!!!!」
しなを作りながら抱きつこうとするその化け物の顎目掛けて、膝と腰を入れたロシアンフックを手加減無しで叩き込む。
「ブルアアアアアァァァァァァ....!!!!」
カウンター気味に決まったのもあり、化け物は足の踏ん張りが利かずに数メートル先まで転がり、その場で何とも形容し難い音を立てて悶絶している。
正直見ていて気分が悪くなる。
「ブルゥ!!・・・・ブウェ!!エ゙ゥ!!」
「気色が悪いなぁ、何なんだコレは」
そんなことをぼやいていると落ち着いたのか化け物はゆっくりと起き上がり、顎を摩りながらフラフラと倒れそうになりながらもこちらに近づいてきた。
「んもぅ!ご主人様ったら、出会いがしらに熱烈なアタックをかけてくれるなんてぇ。貂蝉、カ・ン・ゲ・キ☆」
「てめぇの様な化け物にご主人様呼ばわりされるおぼ」
「だーれが目を合わせただけで寿命が10年縮むほど気色悪いドクダミの怪物ですってぇーーー!!!!!」
「そこまで言ってねぇよ!!!」
言われてもいないことをこの筋肉達磨はまさに化け物のような形相で抗議してきた。
第一こんな化け物に俺は面識は無いしご主人様と呼ばれる言われも・・・・ちょっと待て、さっきこの化け物とんでもない事口走らなかったか?
「なぁ、今お前の口から信じたくもない言葉が聞こえたんだが。もう一度名前を言ってくれないか?」
「ドゥフフ・・・私の名前に興味津々〜♪ホ〜ント私って罪な漢女ね♪」
目の前の筋肉達磨が頬を赤らめながら体をクネクネさせているのを目の当たりにすると吐き気を催してきて、思わずどつきまわしてしまいたくなる。
「じょ、冗談よぅ、私の名前は貂蝉。外史の管理者と呼ばれる存在ぃよん♪」
「・・・・・・。」
信じられない、信じたくない。こんな筋肉達磨の化け物があの絶世の美女、貂蝉の名を冠しているのは何かの間違いだと思いたい。
こんなモノをもし華琳が見たら正気を保てずに即倒するに違いない。
そんなことを考えつつも、一刀は幾つかの疑問を貂蝉に聴いてみる事にした。
「ここは何処だ?黄泉の世界にしては何もない空間が広がっているが、お前は知っているのか?」
「ここは外史と外史の狭間。世界と世界の間にある本来は何も存在しない世界のことよ」
外史と外史の狭間だと?さっきこいつは自分のことを外史の管理者と言っていたがそれと関係しているのか?
「外史とは何だ?お前は先ほど《外史の管理者》と言っていたが、ここの管理もしているのか?」
「ここは私のような管理者の控え室のような場所。外史とは、正史の中で発生した想念によって観念的に作られた世界のことよ。ご主人様が生まれ育った世界も、あの子たちと駆け抜けた世界も正史の想念によって発生した外史の一つと考えてもらっていいわよ」
「・・・なんだと?つまり俺は誰かが作ったり考えたシナリオ通りに動く操り人形に過ぎないというのか?」
自分が歩んできた生涯も、彼女たちと共に駆け抜けたあの日々も全て誰かが思い描いた筋書き通りに動いてたに過ぎないと言うのか?
冗談ではない!俺は、俺達は誰かを楽しませる為に戦い、愛し合い、駆け抜けたわけではないのだ!
「今まではそうだったのだけれど、これから起きる事は違うと言えるわね」
「・・・・・・どういうことだ?」
「本来は外史を支持する人たちが、その外史に想念を寄せる事によって新たな外史が生まれるの。でも、ご主人様の外史を支持する人たちがあまりにも多くの想念を寄せすぎて正史になろうとしているのよ。」
「つまり、俺が今まで居た世界がそっくりそのまま正史になると言う事か?」
「違うわ。正確にはこれからご主人様が向かう新しい世界が、ご主人様を支持した人たちの想念を全て受け止めて正史となるの。つまり、これからご主人様の歩む道が正史となるのよ♪」
なるほど、俺はただの物語の登場人物からはれて普通の人間として歩む事を許されると言うわけか。
ならばここで聞くべき最優先の疑問は…。
「俺がこれから行く世界はどんな世界なんだ?」
俺のこれまでの生涯が外史として肯定されたのだから、それに起因する内容の世界なのだろうが・・・・世界中を飛び回って人々を助けた世界が肯定されたのか。
それとも…。
「ご主人様がこれから向かう世界は《胡蝶の夢》の世界よ♪」
「・・・・本当・・・なのか?」
「本当よん♪ご主人様はこれから可愛い女の子たちと三国の乱世を駆け抜ける人生を歩む、あの懐かしい世界なのよ♪」
嬉しさのあまり泣きそうになった。また彼女と会う事が出来る。
あの寂しがり屋の女の子と。
「でも、今回は外史ではないのだから前にご主人様が送り込まれたような、突然荒野の真ん中に現れるなんてことはありえないのよ」
「じゃあ、どうやって向こうの世界へ行くんだ?」
「行くのではないわ。ご主人様は正史に《誕生》するのよ」
「生まれ変わるということか?」
「そう、ご主人様が前に訪れた世界よりも十数年前に生まれる事になるわ。突然何もないところから人間が現れるなんて正史では絶対にありえない事だもの」
「そうか・・・。ということはこれから会う華琳達は俺のことを知りもしないという事か・・・。」
「行くのが嫌になったかしら?」
「馬鹿を言え、また彼女たちに会えるんだからこんなに嬉しい事はない。それに今回は大局に逆らったからと言って華琳の前から消え去るなんて事は無いのだろう?」
「そうね、突然人間が何もないところから現れるなんて事は無いのと同じで、目の前から人間が忽然と消えるなんて事は正史ではありえないわ♪」
「それを聞いて安心した。もう二度とあんな思いをするのはごめんだからな」
正直なところ、俺のことを何一つ覚えていないのは寂しいが、もう一度彼女たちと共に歩む事ができるのだから、また一からやり直せば良い。
今度は消える心配もないのならこの程度安いものだ。
「今までの人生で得る事が出来た知識や経験を持ち込めないのは残念だが、生まれ変わるのならしょうがないかな・・・」
「あら、その点は心配ナッシング♪」
「へ?何でだ?生まれ変わるんだから知識や経験なんて赤ん坊が持ってるわけないだろう?」
「ご主人様を支持する人たちの想念が強いから正史で生まれ変わるご主人様もその影響を色濃く受けてしまうのよん♪生まれ変わったご主人様が肯定された今のご主人様と違う存在になるのを防ぐ為の強制力というものね♪形としては前世の記憶を持って生まれてくる子供や生まれつき超人的な力を持っている子供っていうのが居るでしょう、アレの延長線よん♪」
なるほど、ただ生まれ変わるだけでは外史を肯定し、支持した者達の望んだ形の正史になるとは限らない為、
生まれ変わった俺は今の記憶や知識と言ったものを受け継ぐと言うわけか。
まさに転生だな。
しかし、これはありがたい事だ。今まで自分があの世界に戻ったときの為に学んできた事を活用できると言うのだから。
俺のこれまでの人生も無意味ではなかったと言う事だ。
ここまで、聞けばもう思い残す事は何もない。生まれ変わってまたあの世界を駆け抜けよう。
「解った貂蝉、もう大丈夫だ。それで、俺が生まれ変わるにはどうすれば良いんだ?」
「あそこに見える扉を開けば生まれ変わる事ができるわ、そうなればこの世界や私ともお別れね」
そういって貂蝉が指を差す先にはさっきまでは無かった両開きの扉が壁もないところにたたずんていた。
「お前はあの扉をくぐる事は出来ないのか?」
「私は外史の管理者であり剪定者、正史となる世界にまで干渉する事は出来ないわ」
「そうか、と言う事はお前と話をするのは俺にとってこれが最初で最期になると言う事か」
「そうなるわねぇ、そう思うと悲しくてしょうがないわ。ヨヨヨヨヨ〜ゥ」
「気持ち悪いから変なしなを作るな。一つ気になったんだが、俺を《ご主人様》と呼ぶと言う事はお前は恐らく違う外史の俺に仕えていたことがあるということだな?」
「ええそうよ、一番最初のご主人様が訪れた外史でお仕えしていた事があるわね。実は今のご主人様が訪れた外史でも町で会った事があるのよ♪」
「そうなのか?まぁ、会ってたとしても余り(の気持ち悪さで)覚えていないがな(記憶から抹消した的な意味で)」
「何か途中に良からぬ言葉が混じっていたような気がするけれど気のせいかしら・・・?」
「気のせいにしておいてくれ、まぁ今の俺自身に仕えていたわけではないのだから妙な話なのだが言わなければいけない気がするので言っておこう。今まで有難う、お前が居てくれたお陰で色々と助かったよ。」
「・・・ドゥフフ♪やっぱりご主人様は私が生涯で一番の殿方と見込んだだけの事はあるわね、惚れ直しちゃったわ♪」
そういいながら貂蝉は頬を赤らめ、舌なめずりをしながらこちらにバチン!いう音がしそうなウィンクをしてきた。
あまりの気持ち悪さに直視する事ができない。
「ご主人様、貴方は今まで周りに居る誰かの幸せの為に生涯を捧げる事になったのだから、今度は貴方自身が幸せになってちょうだいね♪」
「ああ、そのつもりだ。じゃあな貂蝉。」
そういいながら俺は扉を両手で開けると先ほどとは比べもにならないほどの強い光が全身を包み瞬く間に意識が薄れていった。
「ええ、さようならご主人様」
純白の世界には扉と共に消えた一刀の居た場所を、只一人で悲しそうに微笑みながら見つめる貂蝉だけが佇んでいた。
調度品が飾られた広めの部屋で、高貴な衣装を纏った落ち着きのない男が椅子に座っている。
「・・・・・まだか」
妻が身篭ったのを知ったのは昨年の秋、それからはちゃんと生まれてくるかを心配する妻を励ましたり日々の食事なども家のものに気を使わせた。
臨月を迎えてからはなるべく屋敷にいるようにし、いつ生まれても良いようにしてはいたのだが。
「やはり、いざ生まれるとなると落ち着かん」
もうすぐ我が子が生まれてくると考えると居ても立ってもいられず、妻が居る部屋へ行きたくなるが産婆や侍女が
「旦那様が居ては奥方様の気が散りますし、私共も御産のお手伝いが出来ません」
と言われては他の部屋で黙っている事しか出来なかった。
「あーいかんなあ・・・こんな・・・いかん いかん」
この前、陛下に納められた税の上前をはねようとしていた役人に腕絡めを掛けた後のような台詞が出てしまったが、今の自分はこんな言葉が出てしまうほどにソワソワとしていて情けない。
「霊帝陛下に仕える北家当主であるこの私がこんな事では示しがつかんな、気を引き締めなければ」
ガチャ
「旦那様、お生まれになりました」
「おお!!でかした!!それでおのこか!!?おなごか!!丈夫な子か!?喉は詰まらせてないか!?息はしているか!?こうしては居れん!!すぐに会いに行くぞ!!我が子よ!!!!」
「あ、あの、だ、旦那様?」
生まれた事を知らせに来た侍女に聞きたい事を捲くし立てると返答も聞かずに北家当主北景は嵐のような勢いで部屋を後にした。
「・・・・・・旦那様は家でももう少し落ち着いてくだされば奥方様の心労が軽くなられるのに」
「奥様、お喜びください。立派なお世継ぎでございます」
ああ・・・・ついに生まれたのですね。
逆子だと聞きちゃんと生まれてきてくれるか心配でしたが本当に良かった。
産湯に使った息子の姿を見て、思わず胸をなでおろしてしまった。
「しかし、まだ予断を許しません。普通の赤ん坊はお生まれになると産声を上げるものでありますが御世継ぎが上げておられません。もしかするとお世継ぎは声を発する事が出来ないかも知れ」
「だー、あー、だー・・・・まー、だー、あー」
「キャーシャベッター♪」
「・・・申し訳ありません。心配しすぎたようです」
産婆の心配をよそに後ろでは侍女の((韓白 | かんはく))が息子を楽しそうにあやしているのが見える。
その光景を今しばらく見ていたいとおもう。
だが、呆けている場合ではない。早くこの子の名前を呼んであげなければ。
「韓白、わたくしにも息子を抱かせて」
「あ、はい!只今!」
わたくしを差し置いて息子を可愛がっていると思ったのか、慌ててこちらへ抱いてきた。
そこまで慌てなくても、別に怒っているわけではないのに・・・・・。
・・・そんな事よりも今は息子の名前ですね。
「あなたの名前は・・・姓は北、名は郷、真名は一刀・・・それがあなたの名前。字は大きくなってから自分で決めなさい」
貂蝉に言われて覚悟はしていたのだが、人間として一回りした後にまた最初に戻るというのは妙な感覚だ。
生れ落ちる瞬間に胸に激痛が走ったが、この程度なら昔紛争地域で食らったAKの弾のほうがよっぽど痛かったので我慢できた。
産湯につかりながら辺りを見回すと寝台で横になっている女の人を見つけた。前の世界の母親そっくりだ。
母親は産婆らしき人と何かは無しをしているが、聞き耳を立ててみると俺が生まれるときに痛みを我慢して産声を上げなかったので喋れないと思ってしまったようだ。
いけね、何か声を上げて安心させないと。
「だー、あー、だー(大丈夫だ!)・・・・まー、だー、あー(問題ない!)」
「キャーシャベッター♪」
生まれたばかりで舌が回らない上に首も据わってないのでうまく話す事が出来ないな。
まぁ成長するまでその辺は我慢するしかない。
それにしても、あどけなさが残るこの女の人、俺の世話役なのを見るに家に仕える侍女なのだろうが、やけに自己主張が強そうな感じだなぁ。
「韓白、わたくしにも息子を抱かせて」
「あ、はい!只今!」
御産が終わったばかりで動けない母親が俺を抱くために韓白とかいう侍女を呼んだ。
俺を産湯に入れながらあやしていた韓白は慌てながら乾いた布で俺の体を拭くと母親の元へ連れて行く。
そんな中、俺の耳元へ口を近づけて小声で囁いた。
「あ、あとで((○○○○○|ピーーーー))キレイキレイしましょうね♪ハァハァ」
ヤ、ヤベェ!この女の近くに居ると貞操の危機だ!
全力で逃げなければ!生まれて早々にスーパーピンチとか勘弁だぞ!!
何とか逃げるように算段を考えているうちに寝台へ連れて行かれ母親の腕の中に納まった。
「あなたの名前は・・・姓は北、名は郷、真名は一刀・・・それがあなたの名前。字は大きくなってから自分で決めなさい」
「・・・・・」
自分の名前を聞かされたとき、正直驚いた。
流石に前とほぼ同じ名前を付けられるとは思ってみなかったからだ。
だが、数十年慣れ親しんだ名前をほぼそのまま使えるのはありがたい。
違う名前で呼ばれてもすぐには反応できないからなぁ。
母から自分の名を聞き感慨にひたっていると、遠くから┣¨┣¨┣¨┣¨とまるで騎馬が突撃するような音を立てて誰かがこちらへ駆ける音が聞こえてきた。
バンッ!
「おお、我妻よ!無事生まれたと聞いて全速力で駆けつけてしまった!して、我が子はいずこに!?」
勢いよく扉を開けてけたたましい声を上げながら父親であろう男が入ってきた。こちらも前の父親そっくりなので少々面食らってしまった。
やっぱり、顔立ちとかは遺伝するから親も顔が似てくるのだろうか。
興味深い内容だが立証のしようが無い以上考えていても仕方ないな。
「・・・あなた、子供が生まれて嬉しいのは解りますが北家の当主がそんなに浮き足立っては家のものに示しがつきません。少しは落ち着いてください」
「・・・・・・・・はい、すみません」
「まぁ良いです。今日はめでたき日ですので苦言はこのくらいにしましょう。それよりもあなた、見てください立派な世継ぎですよ」
「本当か、でかした。初めて生まれる子がおのことは、これほど目出度いことは無い。よし、今宵の宴は存分に飲み祝おう!」
「それでは、御子様がお生まれになる前から旦那様が揃えておられました男児用の衣装をご用意したします。さぁ、郷様。こちらへどうぞ!ハァハァ」
い、いかん、いかんですよ!この女に連れて行かれると確実にヤられる!何とかして抵抗せねば!
しかし、前世の能力をすべて受け継いでいるとはいえ、まだ赤ん坊の自分に出来る事なんてたかが知れている。
仕方が無いので俺を抱きかかえた母がこのショタコンに俺の身柄を預けようとしている間に大声で叫ぶ事にした。
「アッ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z____________!!!(嫌だーーーッ!)」
「ヒャイ!」
「ど、どうしたのですか一刀?今まであんなにおとなしかったのに?」
「は、母から離れたくないのかも知れないな・・・誰かある!」
「ここに」
部屋の外に控えていたのか、落ち着いた面持ちの侍女が一礼しながら室内へ入ってきた。
「((韓鄒 | かんすう))、用意していた息子の服を持ってきてくれ、ここで着替えさせる」
「郷様のお着替えはわたくしめが!ハァハァ」
「アッ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z____________!!!」
「・・・・・・・・・・服を持ってきたらお前が着替えさせてくれ」
「かしこまりました」
目の前のショタコンとは違いしっかりと出来ている韓鄒という名前の侍女は父親に再びに一礼をして部屋を後にした。
「旦那様酷いです、郷様は私が産湯に入れて差し上げたのですから、初めてのお着替えも私がさせていただきたいです」
「いや、しかし・・・なぁ」
「私は郷様をこんなにもお慕い申し上げておりますし、心配には及びません。ハァハァ」
ペッ!
目を血走らせながら俺を触ろうとする(何故か股間を)ショタコン侍女韓白の手のひら目掛けて唾を吐きかけてやった。
「だー!(触るんじゃねぇ変態!)」
「ヒ、ヒドイ!郷様、何故私を毛嫌いされるのですか!?」
自分の胸に聞いてみろ。
俺は母親の腕の中で自力で体制を変え、いつでも韓白の行動に対応出来るよう用心した。
「どうやら完全に嫌われたらしいな、しばらくは他の者に一刀の世話をさせる事にしよう」
「旦那さまぁ、そんなご無体なぁ・・・・」
「仕方が無いだろうコレでは。そんな事より、お前は宴の準備を手伝ってきてくれ」
「はぃ、畏まりましたぁ・・・・でも、いつかは世話係に戻してくださいね」
「一刀のほとぼりが冷めたらね」
この屋敷で一番であろう要注意人物はがっくりと肩を落とし、トボトボと部屋を出て行った。
やれやれ、とりあえず当面の危険は去ったし、先ずは宴に来る大人の会話を盗み聞きして現状の把握からかな。
こうして、北郷一刀の新たな世界での第一歩がスタートするのであった。
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初投稿のうえに駄文です。 内容は魏ルート後の転生物となります。 一刀がチートだったり、パロがあったり、オリキャラが出たりしますがそれでも良い方はどうぞ見ていって下さい。 |
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帝に仕える家系…死亡フラグ満載でスタートですなぁ。曹・袁・荀・司馬・馬 ざっと考えただけでもこの辺りの家系とは絡みがありそうですね、続きが楽しみです。(@taka) ショタコンってレベルじゃねぇぞ。そして一刀、それは死亡フラグだ。(アルヤ) 正史である外史の始まりですね、続きを楽しみにしています♪(本郷 刃) |
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