魔法戦記リリカルなのはmemories 閑章 第八十ニ話
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 城を完全に落とすのは攻撃を開始させてから一時間もかからなかった。

 不意打ちの攻撃に全く気付かず、対抗する準備も何一つ用意できていなかったのだから当然の結果と言えばその通りだった。

 もし、この戦争の様子を誰かが見ていたのならば、誰もがこういうだろう。聖王家を敵に回し、怒らせたらただで済まないと。

 現状、力をかなりつけていた国をの本拠地を一時間もせずに完全に破壊していたのだから、そう殆どの人はそう思うだろう。

 しかしオリヴィエはこれで終わったとは思っていない。拠点としていた城を落としはしたが、アンビュがこんな事で死ぬような人間ではないと思っていた。

 またそれ以前に、オリヴィエはあの城の中にベスカが居るという事も考えていたため、城は壊滅させたけどもなるべく城の崩壊で人を亡くす事は避けていた。

 聖王のゆりかごではなく、本物のティルヴィングがあればさらに細かく操作することが出来たかもしれないが、生憎本物のティルヴィングは今後またこのような事が起きないようにするためにとシエルフィに預けてしまっている。この場にないものを考えたところで意味がないと、オリヴィエはすぐにティルヴィングに対する思考を止めていた。

 

 

 とりあえず今は城は落としたけども、どうなっているのか確認すために、聖王のゆりかごからの攻撃をやめ、様子を確認していた。

 そして舞っていた砂埃が徐々に落ち着き、聖王のゆりかご内に居るオリヴィエからも人が倒れていたりする姿とかを確認することがようやくできた。

 だが、その中の一ヶ所だけ((歪|いびつ))なところが見えた。一人が誰かを担いで、その周りに四人の騎士がおり、そのさらに周りは他よりも多い人が倒れていた。

 すぐにその四人の騎士が夜天の書の守護騎士だと把握し、まだ把握できていない中央の人間は主であるアンビュ・エメジスタだと理解する。

 だが、一体誰を担いでいるのかとその時オリヴィエは思ったが、砂埃が完全に落ち着いた後に見たその中央の人間の正体に、オリヴィエは驚いた。

 

「……な、なんで、ベスカがアンビュを担いでいるんだ?」

 

 よく見ると、ベスカ付近に夜天の書が浮遊して開いてあるいる事に気づき、そして、彼らの回りに居た人間から魔力を収集している事に気づいた。

 

「仲間を犠牲にしてでも、ページを集めたいというのかっ!?」

 

 様子を見てそう理解したオリヴィエは怒りが増し、ベスカに対してすぐにコンタクトを取ることにした。ベスカが拒否することも考えられたが、オリヴィエはそんな事をまったく気にしなかった。

 

『……オリヴィエ聖王女、いきなりどうしたのですか?』

 

 だがベスカはそのオリヴィエのコンタクトに応対していた。

 オリヴィエは何事もなかったかのように話しかけているベスカに対して、さらなる怒りが湧いてくる。

 

「ベスカ……貴様どういうつもりだ!! どうして、貴様が夜天の書のページを埋めることに賛同している!!」

『…………』

「私の質問に答えろ!! 貴様は聖王家を裏切り、エメジスタの仲間になったとでもいうのか!?」

 

 だが、ベスカは何も答えない。唯オリヴィエの言葉を聞いているだけだった。その間にも周りの人間から魔力を収集し、夜天の書のページを埋めていってた。

 そして少しすると、ベスカはその作業を止め、オリヴィエの質問に答えるのだった。

 

『……聖王家を裏切ったと言えばその通りですが』

「やはり貴様――!!」

『ですが、私は別にエメジスタの仲間になったつもりは一度もないですよ。唯利用させてもらっただけです』

「利用だと?」

『えぇ、私がオリヴィエ聖王女にスパイとして活動させてもらいたかったのはそのためです。なるべく自由に行動できる方が楽にできましたので』

 

 確かに、ベスカがエメジスタの仲間ならばこの場所を教えるわけがない。教えればこのような参事になる事はベスカには目に見えていた筈だし、裏切ったとしてもその情報はすべて本物だった。

 ならばベスカは何のために動いていたのか。最初、スパイとして行動するとオリヴィエが認めなければ、ベスカは自由に行動することが出来なかったという事だが、目的が全く把握できていなかった。

 また、この時アンビュの守護騎士である四人が動かないのは、ベスカも夜天の書のページを集めることに賛同しているからである。目的が同じだからこそ殺しはせず、そうでなければすぐにベスカを殺して、ベスカから主を回収ていただろう。

 

「……貴様の目的はなんだ?」

『単なる好奇心です』

「好奇心だと?」

『オリヴィエ聖王女は多分この戦争で聖王のゆりかごを使うだろうと思いました。ならば、その聖王のゆりかごと同等の力を持ったものがこの世界に存在したらどうなるでしょうかと思ったのです。そこで私は夜天の書のプログラムを変えて、暴走させてしまえばいくのではないかと思ったのです』

「そんな事の為に、貴様はたくさんの人を殺めたというのか!?」

 

 ベスカがこんな事をしたのはたったそれだけの事だった。そのために無駄な人が死に、たくさんの人が利用されたという事にオリヴィエはベスカに対して怒りが次第に強くなっていた。

 これ以上、ベスカの個人的な理由で人を無駄に殺させることはさせたくない。そう思ったオリヴィエはすぐさまベスカに向けて聖王のゆりかごから砲撃を放つ。

 砲撃はベスカが居る方向へ直進し、地面にぶつかったところで爆発が起こり、またしても砂埃が舞った。

 さすがに今の攻撃をもろに食らえば生きている訳がないと誰もが思っただろう。だがオリヴィエは怒りに任せて放ったけども、こんな事でベスカが死ぬとは思わなかった。

 そして砂埃がまた落ち着くとやはりベスカはその場で立っており、変わったところと言えば開いてあった夜天の書が閉じてあった。

 

「……やはり効かぬか」

『さぁ、始めましょうか。聖王のゆりかごと私が改造した夜天の書、否闇の書のどちらかが強いのか!!』

 

 刹那、夜天の書は起動し始め、周辺の人を吹っ飛ばし、周りに倒れていた人たちは吹っ飛ばされていた。

 これは闇の書となっても知らされていない事なのだが、闇の書をあるコードを言えば封印を解放することが出来るようにされていた。

 八神はやてまでそのコードを知る者はベスカ家の人間以外知る者は居なかった。今ではそのコードも意味をなさないものになっているが、もし闇の書の事件の時にベスカ家が関わっていればめんどくさい事になっていただろう。

 

「くっ、こっちまで風が飛んでくるくらいなのかっ!?」

 

 聖王のゆりかご内に居るオリヴィエまでにも衝撃が感じられたことに驚き、また何が起こっているのか理解できなかった。

 ベスカが担いでいたアンビュが浮かび上がり、アンビュの体が姿を変えていった。

 変貌した姿は八神はやてがリィンフォースと名づけた闇の書の闇。その姿を見て、オリヴィエはベスカが何がしたかったのか理解する。

 

「なるほど。エメジスタもベスカによる被害者だという事か。唯利用され、挙句の果てにはベスカが変えたプログラムの実験材料にされたていうわけだな」

 

 別にエメジスタに同情しているわけではない。どうせエメジスタの事だからベスカが居なかろうと世界を治めようとしただろう。その場合はエメジスタの国と同盟を組まなかった他国同様、あっという間に倒されたとは思うが。

 要するに、この戦争を((大事|おおごと))にしたのはすべてベスカが関わっていたことだ。それなければこんな大きな戦争になる事はなく、今回みたいな何かなければ聖王家の勝利で終わっていたはずだった。

 

「……なにもかも、ベスカによって踊らされていたのか私たちは」

 

 苦笑いが浮かぶくらいだった。ベスカに対する怒りなどではなく、もはや自分に対する呆れからだった。どうして今まで近くに居たのに気づかず、一度も疑おうともしなかった自分に呆れていたのである。

 だが、たとえ踊らされたとしてもこれ以上はベスカの思い通りにはならない。何としてもエメジスタから変貌した女性を倒し、上手く行けば自分も生きて帰ることを望むのだった。

 

「さて、最後の戦いだ。何としてでもこの戦いだけは勝たなければならない!!」

 

 そして、オリヴィエはこの戦争を終わらせるべきと、闇の書の闇との戦いに挑むのだった。

説明
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

消されていた記憶とは、なのはと青年の思い出であった。

二人が会ったことにより物語は始まり、そしてその二人によって管理局の歴史を大きく変える事件が起こる事になる。

それは、管理局の実態を知ったなのはと、親の復讐のために動いていた青年の二人が望んだことであった。



魔法戦記リリカルなのはmemories ?幼馴染と聖王の末裔?。始まります。
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