魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第三十話 別荘にご招待(前編)
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 「ここがバニングス家の別荘よ」

 

 「「「「「「「「「「おお〜〜!!」」」」」」」」」」

 

 俺達は今、アリサの招待によってバニングス家が所有する私有地に来ている

 

 「大きい!別荘すごく大きい!!」

 

 「それに人もいないから静かですね」

 

 「それはそうであろうユーリよ。ここら一帯はアリサの私有地らしいからな」

 

 「『私の私有地』じゃなくて『バニングス家の私有地』よディアーチェ」

 

 「おにーちゃん、はやくうみにいこ!」

 

 「ルー、まずは荷物を置きにいかないといけないから海に行くのはもう少し後だ」

 

 上から順にレヴィ、ユーリ、ディアーチェ、ルー、俺の順に口を開く。

 

 「あれ?勇紀君達って荷物持ってきてたの?」

 

 「なのは、私達の荷物はユウキのレアスキルで収納してるから今ここには無いですよ。別荘の部屋に着いたら出してもらうつもりですから」

 

 「荷物を収納するレアスキル?勇紀君はそんなレアスキルも持っとんのか?」

 

 「何てゆうか勇紀がいたら凄く便利だね」

 

 「(もしかして以前にイレイン達を回収した時の能力の事かな?確か((王の財宝|ゲート・オブ・バビロン))だったよね?)」

 

 なのは、シュテル、はやて、アリシアも何か話してるし、すずかも何か考えてるようだ。

 

 「レヴィ、凄くテンション高いね」

 

 「まあ、アリサから招待受けて楽しみにしてたからな」

 

 俺の隣に来たフェイトがレヴィの方に視線を向けながら言う。

 もっとも、楽しみにしていたのはレヴィだけじゃなく俺、シュテル、ディアーチェ、ユーリ、ルーテシアもだが。

 俺達がアリサの別荘に招待されたのは四日前の事だった………。

 

 

 

 〜〜回想シーン〜〜

 

 夕食を食べ終え、風呂から上がって部屋でマンガを読んで過ごしていた俺。そこへ

 

 コンコン…

 

 扉をノックする音が聞こえる。

 

 「ユウキ、私ですけど少し良いですか?」

 

 シュテルの声だった。

 

 「良いぞ」

 

 「ではリビングに来て貰えませんか?」

 

 「リビングに?」

 

 「はい、ユウキ以外は皆リビングに居るので。そこで話しますから」

 

 「ん、分かった」

 

 そう言って読んでいたマンガを本棚に戻し、俺は扉を開けると目の前にシュテルが立っていた。服装も既にパジャマになっている。

 俺はシュテルと肩を並べ、リビングに行く。

 リビングにはシュテルの言う通り、俺以外の全員が揃っていた。

 ルーテシアがソファーの表面を手で叩く。『自分の隣に座れ』という事なんだろう。俺がルーテシアの隣に座るとシュテルが用件を切り出す。

 

 「実はアリサから『別荘に遊びに行かない?』との連絡がありまして」

 

 「「「「「「別荘?」」」」」」

 

 リビングに居る面々の声が重なる。

 

 「はい。二泊三日、アリサの家が所有する私有地の別荘で過ごさないか?と。せっかくの夏休みなので皆と遊びたいらしいです」

 

 「二泊三日ねえ。いつから行くんだ?」

 

 「今週の土曜日から行くと聞きました」

 

 「今日は火曜日ですから四日後ですね」

 

 「ええ、それでどうします?」

 

 「僕は賛成だよ!!いっぱい遊びたい!!」

 

 「我も構わぬ。特に予定は無いからな」

 

 「私も良いですよ」

 

 「私には関係の無さそうな話ね。しっかり楽しんで来たら良いと思うわよ」

 

 レヴィ、ディアーチェ、ユーリは参加する気満々だ。メガーヌさんは家に残る。

 

 「ユウキはどうですか?」

 

 シュテルに尋ねられるが、俺も特に予定は無いし宿題も順調に片付いていってる。

 

 「別に問題は無いな」

 

 「ではこの家の事はメガーヌに任せて全員参加という事で」

 

 シュテルがそう言って締め括ろうとしたが

 

 「わたしもうみにいきたい!」

 

 ルーテシアが元気の良い声を出す。

 

 「ルーもですか?」

 

 「おにーちゃんたちとあそびたい」

 

 「ですがルーが参加出来るかはアリサに聞かないといけませんし、管理局員であるなのは達にメガーヌの娘だとバレたら面倒な事になるのでは?」

 

 「どうだろうな。なのは達も管理局員である以上、ゼストさんの隊が全滅したっていう情報ぐらいは知ってるかもしれないがゼストさんやクイントさん、メガーヌさんと面識が無い以上、当人達の顔を知ってるとは思えん。少し調べたらすぐ分かる事だけどアイツ等がそんな事調べても意味は無いから、まず調べる様な事は有り得ない」

 

 つまりメガーヌさんの家族構成なんて知る訳無いだろうから、娘であるルーテシアを連れて行くのは多分大丈夫だと思う。

 とはいえ情報ってのはどこから漏れるか分からない。ルーテシアがメガーヌさんの娘ってバレると一緒にいる事を説明するのも面倒だし、何よりメガーヌさんの生存がバレるのはもっとマズい。

 

 「一応、万全を期すならルーを連れて行かないのが一番なんだが…」

 

 「ルーよ。大人しく留守番しておいてはくれぬか?」

 

 「や!おにーちゃんたちといっしょにいく!!」

 

 ディアーチェの言葉も聞き入れず、『自分も一緒に行く』と主張するルーテシア。

 

 「ルーテシア、お母さんと一緒に留守番しておきましょう?」

 

 「やー!やー!」

 

 メガーヌさんの言葉にもひたすら『やー!』と首を横に振って拒否するルーテシアを見て他の皆もやや困った表情を浮かべる。

 

 「おにーちゃんは?おにーちゃんもいっちゃだめっていうの?」

 

 突然俺に振ってくるルーテシア。

 

 「…うーん。ルーを連れて行けるかはアリサに聞かないと分からないなら、アリサの返事次第かな。ただ…」

 

 「「「「ただ?」」」」

 

 「個人的にはルーを連れて行ってやりたいと思うな。『万全を期すなら』とは言ったけど、やっぱルーにも楽しい思い出を作ってほしいし」

 

 メガーヌさんが家に残るとはいえ俺達が外泊してる間、遊ぶ相手が減るのはルーテシアも嫌なんだろうな。

 

 「まあ、俺が常に認識阻害掛けておくからなのは達にバレる可能性は低いだろ」

 

 「……分かりました。ならルーが参加出来るかどうかアリサに聞いてみます」

 

 「そうしてくれ」

 

 シュテルは携帯でメールを打ち始め、アリサ宛に送信する。

 程無くしてメールは返ってきた。

 

 「別に良いそうです。一人や二人増えた所で問題は無いと」

 

 「だってさルー。皆と海に行けるぞ」

 

 「ほんと!?わーい」

 

 バンザイのポーズで大喜びのルーテシア。

 

 「ゴメンなさいね勇紀君。ルーテシアが我が儘を言って」

 

 「別に良いですよ。認識阻害でなのは達にバレないっていう自信はあるつもりですから。いざとなったら俺とシュテルで何とかします」

 

 「私もですか?」

 

 意外だと言わんばかりにシュテルが口を開いた。

 

 「この中で一番冷静なのがシュテルだからな。突発的な出来事にも落ち着いて対処できるだろうし」

 

 「い、いえ…そんな事は//」

 

 若干頬を赤くして照れてるシュテル。

 

 「だから俺がルーから離れている時はシュテルに任せようと思う。シュテルなら信頼出来るし」

 

 「そ、そこまで言ってくれるなら私もユウキの期待に応えないといけませんね//」

 

 「ああ、期待してるよ」

 

 シュテルなら大丈夫だろう。

 

 「ふふふ(ユウキが私を指名してくれた。これは私が一番役に立てるって事ですよね)」

 

 「「「むう〜〜〜……」」」

 

 頬が緩んでるシュテルとは対称的に頬を膨らますレヴィ、ディアーチェ、ユーリの姿が目に入った。

 

 「ルーテシア、勇紀君の言う事はちゃんと守るのよ」

 

 「はーい!」

 

 「じゃあ俺はもう部屋に戻るな」

 

 リビングにいる皆にそう告げて俺は自室に戻るのだった………。

 

 

 

 …で、今日はアリサの別荘に行く当日の朝。

 俺達はアリサから『臨海公園の入り口前に午前9時集合』との連絡を受け、臨海公園の中、入り口がよく見える日陰の場所で待っている。

 てかまだ俺達長谷川家の面々以外に誰もいないので

 

 「暇だなー」

 

 レヴィが俺の心中を代弁するかの様に呟いた。

 

 「まさか我等が一番乗りとは思わんかったな」

 

 「てっきり他の誰かがもう来てると思ったんですけどね」

 

 「…いや、集合予定の時間より((1時間も早い|・・・・・・))んだから誰もいないのは当たり前だと思うんだが」

 

 「ユウキの言う通りですよディアーチェ、ユーリ。もう少し遅く家を出ても問題無かったんですから」

 

 呆れた表情で俺とシュテルが言う。

 そう、公園の時計を見ても時間はまだ8時を回った所だ。

 俺達の中で今日を一番楽しみにしていたレヴィが朝食後、『もう家を出て待ち合わせ場所に向かおう』と言ったのが始まりだった。俺とシュテルは『まだ家を出なくても大丈夫だ』と何度も言ったのだがレヴィがあまりに駄々をこねるので仕方なく家を出た。

 で、臨海公園に来た所、当然ながら集合場所には誰もいない。朝から犬と散歩してる人やランニングをしてる人を数人見かける程度だ。

 

 「ルー、お茶ですよ」

 

 「ありがとう、しゅてるおねーちゃん」

 

 シュテルは朝からルーテシアの世話をしている。

 

 「ねえユウ、僕退屈なんだけど?」

 

 「知らんがな」

 

 「むーーー!」

 

 「唸るなよ。『早く待ち合わせ場所に行こう』って言ったのはお前なんだから」

 

 「だって、皆待ち遠しくて早く集まってると思ったんだよ」

 

 「気持ちは分かるが1時間も前に集合場所に来ようなんて思うのはお前ぐr「あーーー!勇紀達だーーーー!!」………何だ?」

 

 遠くから俺の名前を呼ぶ声がするので振り返ると金色の髪をツインテールにしている二人の女の子がこっちに向かってくるのが見えた。一人はゆっくり歩いてきてるがもう一人は凄い勢いで走っている。

 …そうだった。レヴィは見た目が((妹|フェイト))、中身が((姉|アリシア))ソックリな奴だった。なら((姉|アリシア))がレヴィと同じ様な考えや行動をする事も理解出来る。

 

 「ほらユウ!待ちきれなかったのは僕だけじゃなかったんだよ!」

 

 「…だな。今回はその事実を認めるわ」

 

 こっちに向かってくるアリシアを指差しながらレヴィが言う。俺とレヴィはそんな会話をしてる間にもアリシアはグングン距離を縮めてきて

 

 「たあ〜〜〜〜っ!!」(ピョンッ)

 

 「そうそう抱き着けるものではないっ!!」(ヒョイッ)

 

 「へぶうっ!?」(ベシャッ)

 

 飛びついてきたアリシアを躱す。アリシアはそのまま重力に引かれ、地面に向かって見事なダイブをかました。

 

 「アリシア、いきなり抱き着こうとするな」

 

 「……………………」

 

 「まだ朝とはいえ、そこそこ暑いんだから抱き着かれたら余計暑く感じるだろ」

 

 「……………………」

 

 「アリサの別荘に行くのが楽しみなのは分かるが、少しはしゃぎ過ぎて周りに迷惑を掛けるのだけは止めろよ?」

 

 「……………………」

 

 俺がアリシアに注意を促すが肝心のアリシアはピクリとも動かない。

 地面にダイブした際の打ち所が悪かったのか?

 

 「…おいアリシア、大丈夫か?」

 

 未だうつ伏せになっているアリシアが心配になって起こそうとしたら

 

 「とおうっ!」

 

 突然掛け声と共にガバッと起き、立ち上がっておでこを手で擦りながら俺を睨む。

 

 「酷いよ勇紀!何で避けるの!?」

 

 「((誰かさん|レヴィ))みたいに突然抱き着こうとしてきたからつい…な」

 

 「私はレヴィと違うんだから抱き留めてくれてもいいじゃん!」

 

 「抱き留める理由にすらなってねえよ!」

 

 そもそもいきなり抱き着こうとするな。

 

 「隙あり!!」

 

 ギュウッ!

 

 「ぬあっ!?」

 

 一瞬の隙を衝かれ、力強く抱き着かれた。

 

 「はふう〜♪やっぱ勇紀を見たら抱き着かないと落ち着かないね♪」

 

 「どういう理屈だよ」

 

 溜め息を一つ吐いてから引き剥がそうとしたら

 

 ピトッ

 

 俺とアリシアの首筋に何かが添えられた。何だろうと思ってアリシアを見ていた視線を動かしてみると金色の魔力刃らしきものが見えるじゃないか。

 …確認するまでもなくその魔力刃の発生先はバルディッシュだと理解した。で、恐る恐る顔を上げ、正面を向く。何時の間に距離を詰めてそこに居たのか、そのデバイスの持ち主が立っていた。

 

 「……………………」(ニコニコ)

 

 フェイトは素晴らしい笑顔を向けていた。ただ、笑顔なのだが瞳からは光が消えているので恐怖しか感じられない。ただでさえ暑くて若干汗を掻いていたのに今では滝の様にドバドバと噴き出している。『このまま脱水症状で倒れるんじゃないか?』と心配してしまう程に。アリシアはフェイトの方を向いていないにも関わらず、俺と同様で汗を大量に掻きながら小刻みに震えている。

 

 「…姉さん、あんなに勢いつけて飛びつこうとするなんて何を考えてるの?勇紀が怪我をするかもしれなかったんだよ?」

 

 「は…はい」

 

 「折角皆で楽しい旅行をするっていう時に怪我人が出たら、皆に迷惑が掛かるんだよ?」

 

 「お…仰る通りです」

 

 「なら今後、こういう行動は控えてね。それと…」

 

 「???」

 

 「いつまで抱き着いているのかな?」

 

 そう言ってバルディッシュから出てる魔力刃が更に首筋に押し当てられる……ってか軽く喰い込んでる!?フェイトさん!!俺にまで魔力刃が喰い込んでるよ!?

 

 「!!離れます!!離れますとも!!」

 

 言うや否や横っ飛びで俺から離れるアリシア。その様を確認したフェイトは魔力刃を消しバルディッシュを待機モードに戻す。再びこちらに向き直ったフェイト。

 

 「勇紀、その…ゴメンね。姉さんが迷惑を掛けて」

 

 瞳にはちゃんと光が戻っており表情も俺を心配する様な表情になっている。

 さっきの笑顔の時に感じたプレッシャーは今は微塵も感じられない。

 …フェイトにあんな一面があったのが意外過ぎるんだが。

 

 「勇紀?」

 

 「!!い、いや…気にしなくていいから。それより助かったよフェイト。ありがとな」

 

 『ははは』と乾いた笑いを発しながらお礼を言う。

 

 「ううん、悪いのは姉さんだから」

 

 「そ、そうだな。フェイト、アリシアが暴走しない様にしっかり手綱を握っておいてくれ」

 

 「任せて。姉さんは私がちゃんと見張っておくから」

 

 拳をグッと握って宣言するフェイト。もしまたアリシアが暴走しようものなら問答無用でバルディッシュを振りかざすのだろうな。

 普段大人しい奴ほど怒らせると怖いって言うけど全くもってその通りだと実感したよ。

 

 「ただ、デバイスを起動させる際は周りをちゃんと見ておこうな。今は結界も認識阻害も使って無いんだから」

 

 俺達が此処に着いた直後とは違い、今は周囲に人が見当たらなかったので良かった。

 

 「あっ!そ、そうだね。気を付けるよ」

 

 フェイトも俺が指摘して気付いた様で若干意気消沈する。

 

 「今のフェイトの動き、見えましたか?」(ヒソヒソ)

 

 「ううん、全然見えなかったよシュテるん」(ヒソヒソ)

 

 「それよりも明らかにアリシアの態度が今までと違うな。以前、翠屋で抱き着いた時はやり過ぎて理由を聞く前に意識を落としてしまったからな」(ヒソヒソ)

 

 「それを言うなら先程からのフェイトの行動もですよ。以前ならアリシアのあんな態度を見ても苦笑する程度でしたけど今回はデバイスを使って無理矢理に引き剥がしましたよ」(ヒソヒソ)

 

 …何やら我が家の面々(ルーテシア除く)がヒソヒソ話をしているのだが。

 

 「…これはもう間違いありませんね」(ヒソヒソ)

 

 「だね。僕もそれしかないと思う」(ヒソヒソ)

 

 「ユウキめ。本当に面倒な事を」(ヒソヒソ)

 

 「またライバルが増えたんですね。しかも二人…」(ヒソヒソ)

 

 「「「「……………………」」」」

 

 「「「「はあ〜〜……」」」」

 

 何か四人揃って溜め息吐いてる。どうしたんだアイツ等は?

 そんな四人の方を見ていたら不意に俺の半ズボンをクイクイと誰かが引っ張ってきた。

 ルーテシアだ。ルーテシアはフェイトや、少し離れた位置にいるアリシアを何回か交互に見て

 

 「おにーちゃん、かみのいろがちがうれびぃおねーちゃんがふたりいるよ」

 

 俺に聞いてきた。フェイトはフェイトで俺の隣に来たルーテシアの方を見ている。

 

 「えっと…勇紀、この子は?」

 

 「ん?ああ、俺の家で一緒に住んでいる知り合いの人の娘さんだよ。ルー、このお姉ちゃんはお兄ちゃんやレヴィお姉ちゃん達の友達だよ。挨拶しような」

 

 「はーい!はじめまして、るーです。よろしくおねがいします」

 

 「初めまして。私はフェイトって言います。よろしくねルー」

 

 「へいとおねーちゃん?」

 

 「『ヘイト』じゃなくて『フェイト』だよ」

 

 「へいとおねーちゃん!」

 

 「フェ・イ・ト」

 

 「へ・い・と」

 

 何度か『フェイト』『ヘイト』のやり取りをしていたが一向にルーテシアの呼び方が直らず、結局フェイトの方が呼び方を訂正させるのを諦めた。落ち込んでるなあ。……ドンマイ、フェイト。

 ルーはちゃんと自己紹介を間違えず言えて俺は内心ホッとしている。今回は自分の事を『『ルー』で紹介しておこうね』と言っておいた。もしいつもみたいに『ルーテシア』とフルネームで呼ばせたら万が一バレた時に……ねえ。

 

 「私はアリシアだよ。よろしくね」

 

 「るーっていいます。ありしあおねーちゃん、はじめまして」

 

 「そんな!?姉さんはちゃんと呼ばれてる!?」

 

 あ……フェイトが更に落ち込んだ。『ズウーーーン』と擬音が聞こえるぐらいに。

 そんなorz状態のフェイトに近付く人物が一人。

 

 「その気持ち痛いほど分かるよフェイト。僕も未だに『レヴィ』じゃなく『レビィ』って呼ばれてるからさ」

 

 レヴィが落ち込むフェイトの肩に手を置き同情する。確かに長谷川家の中で正しい名前を呼ばれない唯一の存在だからな。

 

 「まあ、その…何だ。いつかはちゃんと正しい名前で呼んでくれるだろうから気長に待とうぜ」

 

 「「………うん」」

 

 それから残りの面子が集合場所に来るまでレヴィとフェイトは落ち込んでいたままだった………。

 

 

 

 それから集合時間の30分程前に八神家と守護騎士の面々、15分前にノエルさんが車ですずかとなのはを、それから5分程経って亮太がやってきた。そして誰かが集合場所に来る度にルーを皆に紹介した。

 ちなみに、亮太には俺から連絡して聞いた所、参加すると言って来たので俺経由でアリサに伝えた。

 そして約束の時間。公園の前に一台の大型バスが停車し

 

 「待たせたわね」

 

 中からアリサが降りてきた。

 

 「荷物を持って早く乗って。すぐに出発するから」

 

 「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」

 

 皆が荷物を背負う中、俺達長谷川家の面々(俺以外)は何も持たずに乗り込んでいく。既に全員分の荷物は((王の財宝|ゲート・オブ・バビロン))の中に収納済みだからである。

 皆が次々に荷物を持って行き、最後に俺だけがバスの外に残り、((ある方向|・・・・))を眺めていた。

 

 「何してんのよ勇紀!早く乗りなさいよ」

 

 「ああ…少し待て」

 

 俺は周囲に他の人がいないのを確認して認識阻害の結界を展開しつつ、アルテミスを2発撃ち出す。

 撃ち出したアルテミスは俺が眺めていた方向に飛んで行き、何かにぶつかって小さな爆発を起こす。認識阻害のおかげで誰にも今の爆発を見られてはいないだろう。

 

 「すまん、よっと」

 

 そしてバスに乗り込み、適当な座席に座った。全員が座ったのを確認して

 

 「鮫島、バスを発進させて」

 

 「かしこまりました」

 

 バスがゆっくりと発車する。窓から見える景色が少しずつ流れていく中

 

 「長谷川、先程魔力を使ったようだが何をしていた?」

 

 後方の座席に座っていたシグナムさんに声を掛けられた。その質問に魔導師一同は『うんうん』と首を縦に振っている。

 

 「何かサーチャーで見られてたんで撃ち落としたんですけど?」

 

 「サーチャーだと?」

 

 途端にシグナムさんが眉を顰める。

 

 「まあサーチャーから感じた魔力で誰かは分かってますし。そもそもこんな事する奴なんて二人しか候補が思い浮かびませんし。今回はその二人共サーチャー飛ばしてコッチ見てましたから」

 

 俺の発言にアリサ、すずか、亮太を除く全員がシグナムさん同様に眉を顰めた。もう誰が犯人か分かったんだろう。

 

 「何の事よ?サーチャーって何?」

 

 「サーチャーっちゅうのは特定の人物を監視したりするときに使う探索魔法の事やでアリサちゃん」

 

 「???何でそんな魔法が使われてるのよ?」

 

 「知るか。あの塵芥共の考えなど理解出来んしする気も無いわ」

 

 「塵芥共…もしかしてその魔法使ってたのって……」

 

 「多分すずかの想像通りだと思いますよ。そもそもここまで嫌悪感を示す相手等、限られているでしょう?」

 

 「……アイツ等」

 

 アリサが肩をワナワナと震わせている。

 

 「しかしよくサーチャーがあるのに気付いたね勇紀」

 

 「いや亮太。バスの後方を見た時、視界に入ったもんでな」

 

 「君以外は誰も気付かなかったけど?」

 

 「これからの旅行に気分が浮かれていて注意力が散漫になってたからだろ?俺も実際、視認出来たのはたまたまだったし」

 

 後はサーチャーを隠す事無く飛ばしてたからだな。あんな簡単に発見されたらサーチャーの意味無いだろうに。

 

 「でもサーチャー使うなんておかしいよね?彼等の性格からしたらそんなの使うより自分から乗り込んできそうなものだけど」

 

 「えっと、あの二人は補習なんだよ」

 

 俺と亮太の会話に、前の座席に座っているフェイトが割り込んでくる。

 

 「「補習?」」

 

 「うん。今回の期末テストであの二人だけが赤点を取ったんだよ。しかも全教科」

 

 「「全教科って…」」

 

 俺と亮太は呆れるしかなかった。アイツ等、転生者だよな?生前が何歳だったのかは知らんが小学生のテストで赤点って…。

 

 「聖祥ではテストで30点を下回ったら夏休みの前半は補習だから…」

 

 「成る程、それで奴等はサーチャー使ってストーキングしてたと」

 

 「もし勇紀が破壊してなかったらバニングスさんの別荘にまで尾行されてたんだね」

 

 「それどころか確実にこっちに来てただろうしな」

 

 折角の夏休みなのにアイツ等に絡まれんのは御免こうむるぜ。

 

 「しかし車内で『魔法』とか普通に会話に交ぜてますけどいいのですか?」

 

 ユーリがある方向に視線を向けながら言う。視線の先にはバスを運転している執事の鮫島さんの姿があった。

 

 「心配いらないわ。鮫島は魔法の事知ってるし」

 

 「…何で知ってんの?」

 

 「アンタのお父さんが話したらしいわよ」

 

 父さああああああん!!何バラしちゃってんの!?

 

 「鮫島もウチで執事する前は裏の世界で生きてきたらしいわ。その時にアンタのお父さんと知り合ったらしくてね。それ以来、二人は親友らしいわ」

 

 だからと言ってそんな簡単に話していいもんじゃないと思うんだが…。

 

 「鮫島も『あの泰造のご子息なら納得です』って言ってたし」

 

 なんか嫌だなあ、そんな納得の仕方は。

 そしてこの世界の鮫島さんが元・裏の世界の住人とかいう事実。一体何があって執事に転職したのやら。

 

 「まあ、そんな訳で今更隠す必要も無いのよ」

 

 「…そうですか」

 

 まあ、いいか。認識阻害の魔法使わずに済むし。それにしても…

 

 「…眠い」

 

 バスの揺れが心地良くて眠気を誘う。

 

 「何だか眠そうだね勇紀」

 

 「今朝レヴィに叩き起こされてな。起きた時間は午前4時半過ぎだった」

 

 「4時半…」

 

 「おかげで今は超眠い」

 

 『ふあ〜』と欠伸をし、眠くなる俺とは逆にレヴィはテンションが高く、常に皆と会話している。何でアイツは眠くないんだ?

 

 「すまんが目的地に着いたら起こしてくれ」

 

 「あっ、うん。おやすみなさい」

 

 フェイトに頼んで俺は寝る。瞼を閉じるとすぐに意識が闇に沈んでいった。

 その後、フェイトに起こされ窓の外を見た時は周りの景色がすっかり変わっており、目的地に着いたのだと理解した。それでバスを降り、目の前にある大きな屋敷を見て冒頭の台詞に戻るのだった………。

 

 

 

 〜〜回想シーン終了〜〜

 

 〜〜一方、その頃〜〜

 

 「「あのモブ野郎!俺のなのは達に!!」」

 

 ここは聖祥大附属小学校のとある教室。そこにいるのは銀髪、整った顔立ち、オッドアイを兼ね備えた二人の少年。

 この世界のオリ主を自称する西条と吉満である。

 時間は丁度、バスを尾行していたサーチャーを破壊された直後である。

 二人は期末テストで全教科30点以下という成績を出してしまい、現在補習の真っ最中。教室の一番前の席に座らされ、黒板に書かれた問題の内容と解き方を先生が説明していた矢先の事だった。

 

 「西条君、吉満君、静かにしなさい!今は補習中なのですよ!」

 

 声を上げた二人を注意する補習担当の教師。だが、今の二人に教師の声は届いていない。

 

 「クソが!モブの分際でなのは達に手を出そうなんざ絶対に許さねえ!!」

 

 「あんなモブになのは達が自分から近寄る筈が無え!きっとなのは達は何か弱みを握られて嫌々付き合わされてるんだ!」

 

 声を抑える事無く二人は吼える。そんな二人に

 

 パシッ!…バシッ!…

 

 教師が出席簿で頭を叩く。

 

 「「ぎゃっ!」」

 

 「いい加減にしなさい!このままだとお昼までに今日の補習を終える事が出来ませんよ!それでもいいのですか!?」

 

 叩かれた部分を二人は手で擦る。

 

 「「何すんだよ先生!」」

 

 「いきなり大声を上げた貴方達が悪いのでしょう!?もっと補習に集中しなさい!」

 

 「「そんな事よりも俺のなのは達がモブ野郎に酷い目に遭わされてんだ!!補習どころじゃねえ!!」

 

 「訳の分からない事を言うヒマが合ったらもっと黒板の内容を理解しなさい!第一、高町さん達は貴方達にあまり良い印象を持っていないと思いますよ!」

 

 「先生、それは((吉満|コイツ))がなのは達に付き纏ってやがるからだ。なのはもフェイトもアリシアもはやてもアリサもすずかも俺と一緒に居たいと思ってるのに!」

 

 「寝言は寝て言え西条!なのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずかが俺に惚れてるのは一目瞭然だろうが!」

 

 「「……………………」」

 

 「「表出ろやゴルァ!!!」」

 

 バシッ!…バシッ!…

 

 「「うがっ!?」」

 

 再び教師の出席簿が二人の頭を叩く。

 

 「そんなに言い合う元気があるなら今日の補習は夕方まで行います!いいですね!?」

 

 「「はあっ!?」」

 

 二人は当然教師に猛抗議するが教師は聞く耳持たず、その日は夕方まで補習を受ける羽目になるのだった………。

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
聖祥は変態ばっかりかと思ったら、まともな先生もいた!ロリコン(担任)も矯正してくれればいいのに・・・無理かwww(海平?)
流石先生。よく見てらっしゃるw このまま指導してもらいたいものですなw(孝(たか))
銀髪2人にはもうさすがとしかいいようがないwwwwww(蓮斗)
さすが踏み台転生者www良い仕事をする。そんな君たちには青いツナギと兄貴をプレゼントしよう。(黒咲白亜)
さすが、自称オリ主(笑)の特典。(tenryu)
先生には是非ともあの二人を補修漬けにしてなのはたちに手を出せないようにしてもらいたい(夜の魔王)
銀髪コンビバカすぎるクロス「よいこはこんな子供、大人になるなよ!クロスお兄さんとのお約束」(クロス)
アホやんwww(KH天然パーマ)
銀髪コンビはもうどうしようもないね。亮太が呼ばれるくらいだから普通にしていればすぐ仲良くなれるだろうに。もっとも、下心アリアリでは無理だろうけれど。(chocolate)
銀髪達、頭悪すぎ(とま)
銀髪どもはお互いに潰しあってくれたら平和になれるのにね(二丁拳銃使い)
もう永遠に補習してろよ。シルバーブラザーズ(妖精の尻尾)
ざまぁwwwwww(古手雅樹)
そろそろ銀髪×2は捕まってもいいと思う(竜羽)
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