東倣葵童詩 2 |
東倣葵童詩 〜 The Ballad of East and West.
青い瞳の巫女と今どきの妖怪による些細な話。
2話
あの人間も仕事に慣れてきたのか、境内の掃除も
大分さまになって来たように見える。
といっても他に仕事はほとんど無いのだが。
カタリナは暑苦しい格好で箒を振るっていたが、
疲れたのか箒を放り投げて私の隣に座り込んでしまった。
まだ夏本番というわけでは無いが、日差しは強く私でもかったるい。
淀 「こらこら、神社の備品なんだから放り投げるんじゃない。」
カタリナ 「熱い! ヨドも手伝ってよ。」
淀 「いつまでもそんな格好をしているからだろう。
今の神社じゃそんなものに意味は無い。
それに、知っているだろう? 妖怪は日の光に弱いんだ。」
カタリナ 「木の下だって別に変わらない!」
涼しい夜にやれば良いと言おうと思ったが、妖怪からそんな言葉が出るとは
我ながら現代社会に馴染み過ぎた感じがするのでやめにした。
せっかく目の前に人間がいるのだから、妖怪らしくした方が良いのだろうか。
カタリナ 「ハイビスカスがいっぱい咲いてるね。」
神社の裏にはアオイ科の植物が赤い花を咲かせている。
神社の主が植えたものだと言っていたが、私がここにやって来るまで
見た事の無い花だったというのは覚えている。
神社の主は葵と呼んでいたのでその名で覚えていたが
カタリナの言葉を聞く限り外の国の植物なのだろうか。
夏にかけて花を咲かせるのは知っていたが、今年は特に数が多いようだ。
淀 「ん? ああ、私は葵と呼んでいたが。
この神社には昔からある花だな。」
カタリナ 「アオイ? こんなに赤いのに。 青いのに赤いのか。
青いアオイは無いの?」
カタリナが何を言っているのか理解できなかったが、
私は植物には詳しく無いのでどのみち答える事はできないだろう。
どうやら彼女も同じらしく、この話題はすぐお蔵入りとなった。
すこし沈黙した後、私は彼女に聞きたい事があったのを思い出した。
本来なら、彼女がここに来た時に聞いておくべき事だったのだが。
淀 「そういえば、お前は何故こんな所で働こうと思ったんだ。
外の国から来た人間に神社など似合わないだろうに。
それに、わざわざそんな衣装まで用意して・・・」
カタリナ 「神社っていったらミコさんでしょ。 ミコさんはヨーカイを退治するんでしょ。
ミコさんになってヨーカイとか退治したいじゃない。」
目を丸くするとはこういう状況の事を言うのだろう。
たった1年の間に2回も大笑いするなんて思わなかった。
淀 「あはははは!」
カタリナ 「何がおかしい!」
淀 「あはは、まだそんな事を言う人間が居たなんてね。
・・・でも、おかしくなんか無い。 それで良いのさ。」
カタリナ 「馬鹿にされてる気がする。」
そう、私の古い記憶にある巫女はこんな感じだった。
ただ居るだけの巫女で良かったのだが、短い間に随分と巫女らしくなったものだ。
といっても現代の巫女とはほど遠いが・・・
淀 「・・・妖怪を退治する巫女か。
本当に、珍しい奴もいたものだ。」
もう何百年も過去に戻ったような、懐かしい気分だ。
この巫女になら、神社をまかせても良いのかもしれない。
そして、あの結界もいつかは・・・
神社の様子はいつもと変わらないようであった。
しかし、巫女がいる事でこれから少しずつ変わっていくのかもしれない。
私はカタリナが帰った後も、彼女がハイビスカスと呼んだ花を眺めていた。
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・オリキャラしかいない東方project系二次創作のようなものです。 | ||
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