やっつけ小話 <MONO EYE GIRL RHAPSODY 1>
[全6ページ]
-1ページ-

 

 

 

 

 

 中二病 それか厨二病って言うのはまぁ どこの中学高校でもそれを発症させてる人は居るもんだと思う。

 現にネットとかでも黒歴史や厨二な思い出を晒してるし。 つっても全部が本当のやつじゃなくて釣りとかも多いんだろうけど。 それでも痛いことやってる それかした人は必ず居るもんだ。

 

 おれの中学でも まぁ、居る。 てか居た。 卒業してからこうして語ってるから過去形な。

 

 美術部のなかのオタなのが漫画 しかもほんとに厨二全開な拙いのを描いて、それを漫画雑誌の大賞に応募して『弱冠十四歳の受賞者』『現役中学生連載作家』みたいになる妄想を言ってたりとか。

 窓から校庭見下ろして「ふっ 呑気なもんだ…」とか言ってるのを聞いたりしたり。

 雷鳴ってる中「…来たか」って言ったかと思ったら休み時間とはいえ人を押しのけてどっか走って行ったやつもいたな。忍者走りっぽいかんじで。

 

 包帯や革のグローブとかのファッション面でのもまぁ居た。 黒い革のグローブとか暗殺者っぽいのはおれも同意だけど裏の世界の住人っぽいことをこれ見よがしに言うのは ね。寒いだけだ。

 包帯腕に巻いて「ぁ これは…… いえ 貴女は、巻き込めない。」って言っちゃったぼっちの一人の女子とかも居た。 実際は何も無いみたいだけど。

 

 って、思えばなんでこんなのばっかが周りに多かったんだろ。 類友? ほっとけ。

 確かにおれもそりゃもう妄想はした。 ノートとかに武器や技の名前とかを辞書片手に考えたりとか、ぼーっと窓の外の雷空眺めてたらいきなり雷が自分に落ちて雷を操る能力に目覚めるとか、カタカナモチーフの暗号を作ったりとかあぁもうこれ以上は恥晒すだけになるからやめとく。 因みにおれは人前でなんかやるとかのことはしなかった。 ってか出来ん。そんなアグレッシブな性格は持ち合わせてない。

 

 

 そんなおれが中学在学中に見たことを今から話そうと思う。

 

 今でもよく覚えてる ってかあんなの忘れようが無い出来事。  ……ところで『中学在学中』って後ろから読んでも同じだな。

 

 それとおれのスペック。

 中背細身の成績平均。特徴無しは自覚してる。どこにでも居る普通の少年ってやつ。

 こういうのってたいがいは普通のとか言ってる割には上の下ぐらいの顔してるけど、おれは正真正銘の地味面。二次元の常識は当てはまらん。

 

 良く言っても『人畜無害』程度の、ただの男子。

 

 

 

 

  < 〜MONO EYE GIRL RHAPSODY〜 1 >

 

 

 

-2ページ-

 

 

 ・

 

 

 事の発端は中学二年から三年に上がったとき か。

 新しいクラスには小学校からの付き合いの連中とか 中学入ってからよく話すようになったやつも居てまぁそれなりに居心地はよかった。 中にはDQNなやつらの仲間の女子も何人かいたけど、まず関係ないだろうから気にしなきゃいいだけ。

 

 で、そんなクラスの中に一人、ちょっと変わった子が居た。

 

 その子は去年もおれと同じクラスで、口数はあんまり多くない女子。成績はよかった。 根暗とかじゃないけど、積極的とか社交的とか、そんな感じではない そんな子。

 背は平均ぐらいの痩せ型で髪型は綾波。 顔のランクは悪くない むしろいいかんじ。 修学旅行の好きな子言い合いの場があったとして、そこで名前を出せば『あ〜なるほどな』って過半数は思うぐらいのレベルではある。

 

 でも上で言ってるように、積極的に話してくるような子じゃないからかモテるとかの話は聞かない。 美人でもモテない人ってのはこういう理由があるんだろうな。

 いや実際のところ性格も悪くないとは思ってる。 前にハンカチ落としたのをおれが拾って渡したら、小さく笑ってちゃんと「ありがとう」って言ってくれたから。

 

 まあそれはいいとして、その子がちょっと変わってるってのはそんなことじゃない。 そんなぐらいでわざわざ『ちょっと変わってる』なんて言うことはしない。

 

 その子…仮に呼び方を『モノ子』とするとして、モノ子を最後に見たのは三学期終わりの春休みに入る前。 その時はべつに何も無い、今まで通りのモノ子だった。

 

 けど新学期が始まって、始業式が始まる前に新しいクラスに入ったときにおれはちょっと変わった そう、『春休み前とちょっと変わった』モノ子を見た。

 クラスに入ると知ってる顔が何人か居て、

 「よぉまた同じクラスな。」「なぁ春休みの宿題全部やったか?」

 とか言ってきたんだけどおれはそいつらよりもモノ子の変化が気になった。 真ん中あたりの席に座ってモノ子は本を読んでたんだけど、

 

 そのモノ子は左の目に眼帯を着けてた。 白い医療用の眼帯で、モノ子はそう目立つ子じゃなかったけどどうしても眼帯ってのは目を引いてた。

 

 

  あぁそれと一応言っておくけど、おれはそれまでモノ子が好きとか、そんなことは思ってなかった。 この書き方だとおれはモノ子が好きだから気付いた みたいになってるかもしれないけど、まぁ可愛い部類だからちょっとは意識してた ぐらいの程度。

 

 

 近くを通る生徒もちらちら見てはいても、なじみの無い新しいクラスメイトは当然として同じクラスだった女子も眼帯のことを聞いたりする奴は居なかった。 まぁ仲がいいわけでもない子がいきなり眼帯してても、怪我なら余計に聞き辛いから聞かなかっただけなんだろうけど。 

 

 そのあと始業式が終わって体育館から戻ってきて、クラスの中がわいわい言ってる時だった。 おれはモノ子が近くを通った女子と話しているのを、モノ子の後ろの自分の席で聞いた。

 「モノ子さん、目 どうしたの?」

 「うん、ちょっと怪我して。」

 「大丈夫?」

 「ん 平気。 もう痛くないから。 ありがと。」

 それぐらいで女子はすぐ他のところに行った。 それだけだったけど、おれはやっぱり怪我だったんだって、なんとなく可哀相になった。 

 

 それからしばらくはモノ子の眼帯になんとなく目をやるのが続いた。たぶんクラスの他の奴らも同じだったと思う。

 最初のほうにも書いたように、モノ子は見た目はいいほう。 だけどあまり話すことが無くてしかも今の眼帯だから余計に人が寄りにくかったんだろうな。

 あと担任や科目ごとの先生達がモノ子の眼帯について何か言うところは無かった。 ただ全然気にして無いってわけじゃなくて、時々担任が廊下でモノ子の目のことを聞いてたっぽいところは何度か見たけど。

 

 

 そんなこんなで一ヶ月が経った。

 一ヶ月もすればなんとなくグループが出来ると言うか 仲良くなってくるぐらいの頃。 

 おれはまぁその、今までのやつらと一緒。 少し話す知り合いは出来たけど新しい友達とかはまだだった。 でもコミュ能力の欠如を『孤高の一匹狼』みたいな脳内設定で現実を歪曲視するやつよりはましだ。

 

 で、モノ子は変わらなかった。 前々からと同じで、自分から積極的に誰かと話すとかはしてなかった。 それでも話しかけられればちゃんと答えるところも変わってなくて、そんなところを把握し始めたっぽい女子も何人か出始めてた。

 

 それと眼帯も変わってなかった。 目の怪我が普通の怪我と治る時間が違うのかは分からなかったけど、一ヶ月してもモノ子は眼帯のままだった。

 

 まぁその頃にはおれも、眼帯には慣れたみたいで気にすることはなくなってた。

 

 

 

 

-3ページ-

 

 

 

 ・

 

 

 

 でだ。 ここで別の話を出しておく。

 学期初めからの一ヶ月、学校では他の面でもちょっとしたことがあった。

 

 まず、最初に話題にも出した『厨二病』が流行した。 春ってのはなんだろ、そういう季節ってのは年齢関係ないのか。

 桜の木が植えてあるんだけど、その下で落ちる花びらを人の流れの中見上げて「さらばだ 名も無き桜花よ…」とか作った声で言ってたやつを見たし、

 吹奏楽部なんだろうけど昼休みに校舎の中庭で給食も食べずにトロンボーンを吹き鳴らした女子も居た。少なくとも彼女は大勢の観客は得られていた。 大柄なデブスだったけど。上手くも下手でもなかったけど。

 友達から聞いた話だと、他校でも十八禁ゲームの完全にアウトな歌詞の主題歌を給食の時間に校内放送で流した勇者と言う名の強者と書いて大馬鹿と読むやつが出たとか。これは黒歴史に入るんだろうな。

 そんなのがちらほら。  これを読んでる人達の中にはむしろ笑えない覚えがある人も居るんじゃなかろうか。 ほら恥ずかしがらずに言ってみ。笑ってやるから全力で。

 

 そうなるとどうしても出てくるのが、それらをネタに…時にはタチ悪く、からかう奴ら。

 友達同士でちょっといじるぐらいならまだいいんだけど、そう交流も無いのに絡んできて鬼の首でも獲ったみたいにしつこく言ってくる奴らは本当にうざい。

 特に邪気眼的なのを発症してるのは天敵とも言える。あのコピペがいい例。

 

 うちの中学にも運悪くそういう奴らは居た。 学ランで腰パンとかリップ何本も持ってきてたりとか、おれ私いろいろやってます な自慢し合ってたりとか。これはこれでまた違った黒歴史になるんだろうけど、それはそいつらの話になるだろうからおれの知ったことじゃ無い。

 

 で、一回昼休みに他のクラスの前の廊下を歩いてるとそのクラスの中から何人かの声がした。

 覗いてみればいかにもおれからすれば関わりたくないDQNっぽいのが数人で、一人のヒョロい男子に絡んでた。

 それを聞いてると まぁそのヒョロ男子、 厨二病 邪気眼型を発症してた。 作った口調で、腕に巻いてる包帯への言及を流しているらしかった。

 「ふん 貴様らにわざわざ見せてやる義理も無かろう……」

 「いいからみせろよ『堕天使のなんとか』wwww。」

 

 ……あ痛たたた だった。 やっちゃってた。 包帯の部分を手で押さえて、顔は絡んできた奴らのほうは見ないでいたけどクールなんじゃなくて動揺してるだけなのは明らかだった。

 それが次第に包帯をむりやり解くことをしだした。 ヒョロ男子はそれに抵抗したけど、首をホールドされて動けないところに他のが腕の包帯を解こうとした。

 でも結んである包帯をすぐに解くのは無理だから手間取ってて、その間もヒョロ男子はなんか言いながら暴れて、しまいには団子になって倒れこんだ。

 その隙にヒョロ男子は立ち上がって、涙目 ってか実際に泣きながらよく分からないことを言い残して走って逃げていった。 余談だけど、そのヒョロ男子は何日か学校に来なかったとかなんとか。

 

 同情しながらもコピペやスレ内容みたいなのが本当にあるんだな とか考えたんだけど、おれはその時にあることをもしかしてのレベルでだけど思いついた。

 

 

 そう、モノ子だ。

 

 

 

-4ページ-

 

 

 ・

 

 

 モノ子らしくないっちゃらしくないけど、当時のおれはそう考えた。 学期初めからずっと眼帯してるけど、あれって厨二病が出てるんじゃないかっておれは思った。

 眼帯なんてのは厨二病の象徴みたいなアイテムだし、ネットでも眼帯着けてた黒歴史晒してるのはよく読む。

 もしかしたらモノ子も何かの拍子に目覚めて眼帯をし始めたんじゃないか? おれはそう思うようになった。

 

 まぁそれでも、本当に怪我をしてることも考えられる。 眼帯を外したところは見たこと無いし、まだ怪我が治ってない可能性もあった。

 だけどその可能性を、おれはもちろんだけど他の奴らも忘れる出来事が起きた。

 

 

 ある日、三連休明けのわいわい言ってる朝のクラスにモノ子が入ってきた。 そしたら気付いた奴はおれも含めてモノ子を見た。

 

 モノ子の眼帯が変わってた。 今までは市販の白い医療用眼帯だったんだけど、モノ子は黒い眼帯をしてた。 黒い革で出来てるらしくて、片目のゴーグルみたいな構造になってるしっかりとした眼帯だった。 正直かっこいいとかおれも思った。

 

 でもそんなモノ子に眼帯のことを訊くやつは出てこなかった。 学期初めと同じように近くを通った時にちらちら横目で見るのは居ても、話しかける奴は居なかった。

 

 なにせ三連休前にも眼帯少女は他にいたからだった。 他のクラスの女子がモノ子に影響された かどうかは知らないけど数人、眼帯をし始めてた。

 しかもそれだけなら良かったのに、オタらしい厨二な女子グループがモノ子に目をつけたらしく、何度か接触していたことも悪い影響になってたんだと思う。同類とでも思ったんだろうな。 つってもモノ子がその女子達に関わってるところは見たこと無いんだけど。

 

 そんなわけで、モノ子はまた一人になってた。 またってよりは元に戻っただけなんだろうけど。

 時たま話していた女子達も、モノ子が厨二な女子グループに関わったらしいことが知れていてしかも今日の眼帯だからか遠巻きになってた。

 

 おれの友達も昼休みになったらモノ子の事を言ってきた。

 「なぁ モノ子の眼帯よくね?」

 「まぁあの漫画の眼帯っぽいけど お前まねすんなよ。」

 「しねぇよバーカ。 あれじゃね? 邪気眼とかのかっこつけ。」

 

 このやりとりが、クラス内でのモノ子への見解だった。 わざわざ目立たせるみたいな眼帯を着けてきてるってことはつまりそういうことなんだろう ってこと。

 

 ただモノ子はそういう目的の奴がするようなわざとらしい仕草や振る舞いは一切無く、やっぱりいままで通りのモノ子でしかなかった。

 担任の先生も気付いて朝のホームルームの後にモノ子を廊下に呼んで話をしたみたいだった。でもほんの少し話しただけでお咎め無しになっていた。

 

 こういうのって大概は『こういう生徒』ってことで諦めて放置するのがセオリーなんだろうな。普通は。

 

 まぁ結局おれも周りと同じように、モノ子は厨二病を発症したんだって思うようになった。

 

 

 

 

 そして、事態は急転を迎える。

 

 

 

-5ページ-

 

 

 ・

 

 

 「ねぇモノ子さぁ、なんでそれ目にしてんの?」

 学期初めから一ヶ月と更に十数日、モノ子の眼帯が黒いのに変わってから何日かの、ある日の昼休みだった。

 

 本を読んでたモノ子にクラスのDQN女子と他二人が絡んできた。 おれは友達の席でどうともない話題で話してたけど、DQN女子がモノ子に絡んでるってことでクラスに居た大半がおれも含めて注目した。

 「怪我なら普通のでいいじゃん。 そんなのなんで着けてんのww?」

 「漫画のまねとか? だったら寒っむww。」

 たぶんずっと眼帯をしていて、しかもその眼帯を変えたモノ子をいじる標的にでもと考えたんだろう。

 

 でもモノ子は椅子に座って本に指を挟んで閉じたまま、淡々とDQN女子達を見るだけでどうとも反応はしなかった。

 

 「どうせなんも無いんでしょ? ジャキガンとかあるんなら見せてよ。 ほら。」

 

 いいように言われるモノ子をかばおうとする奴は居なかった。 女子も あとおれも。

 あーいうバカってのはおれもウザいと思うタチだ。 でも行動できるような人間じゃなかった。最初に言っただろ、『良く言っても人畜無害』って。

 それに中学生だった。 変な噂を勝手に立てられることが嫌だった。

 結局、おれはその他大勢のモブでしかなかった。

 

 モノ子はそれでも応じようとはしなかった。 それどころか、

 

 「気にしないでいいよ。 それに言う通り、なにも無いから。」

 からかう目的の『なにも無い』ってことをあっさり言った。 邪気眼系のやつは何かあることをほのめかし続けるもんだから、おれはちょっと混乱した。

 そしてこのいつまでも平静な態度で流されるのが気に入らなかったらしく、

 

 「いいからそれの下見せろって言ってんだろ!」

 癇癪でも起こしたのか、声を荒げて同じクラスのDQN女子はモノ子の机の脚を蹴った。

 机がずれて結構大きな音がして、教室が静かになって少し間が空いた。

 

 そしたらモノ子は小さく息を吐いて、言われた通りに眼帯を上に引き上げて外すと隠れていた左目が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でもそこには斜めの傷とか紅い目だとか、紋章みたいな瞳とか は無くて、普通の目と瞼と眉しかなかった。

 

 その時おれは、正直がっかりした。

 怪我とかが無いなら安心するべきなんだけど、でもどこかで非現実に憧れてて、不思議な感じの女子がかっこいい眼帯で隠してる目がなにか特別なものになってることを期待してた。

 特殊な能力じゃなくても、目立つかっこいい傷が出てくることを期待していた。酷い話だけど。

 

 周囲も同じことを考えてた奴はいただろうけど、その時の教室ではモノ子が『痛いこと』してたっていう微妙な気まずい空気のほうが大きかったと思う。

 

 「なんだww ほんとに何も無いのにそれしてたんだww?」

 「うっわこれ黒歴史確定ww。」

 DQN女子の馬鹿にした声がした。馬鹿にしたニヤけ顔が心底ウザいと思った。

 それでも周囲の奴らと同じように、助けに入ることはやっぱり出来なかった。頭の中で颯爽と庇いに入る想像しか出来なかった。

 

 でもモノ子はそんな笑い声には反応せずに、席に座ったまま外した眼帯を机に置いて改めてDQN女子を見上げると、

 

 左手で隠れていた左目の上瞼を押さえて、下瞼には右手の親指を目尻側に 人差し指を眉間側に当てた。

 

 よく分からないことを目の前でされてDQN女子達はモノ子に注目、周りの奴らもおれもモノ子を居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしたらモノ子は左手の指で上瞼を大きく上げると、右の人差し指を下瞼目尻側に押し込んだ。 要は目に指を突っ込んだ。

 

 「!?」

 …みんな、こうリアクションしてたと思う。DQN女子達なんかは分かりやすいぐらいに目が見開かれてた。

 

 押し込んだ指に押し出されるみたいにモノ子の右目は浮き上がった。飛び出したって言ったほうが的確かもしれない。

 そしてモノ子が突っ込んだ人差し指と、同じ右手の親指の二本の指で浮き上がった目を摘まむようなかんじで支えるみたいにすると、

 

 目は遂に外に出た。 指に摘ままれるみたいに持たれて完全に離れた。

 すぐに左目を閉じて右目だけになったモノ子は、手に持ったそれを自分の机の上に置いた。

 

 机の上に置かれたのは半分に切られたような目だった。いわゆる義眼ってやつ。

 よく想像する球じゃない、半球状のやつだった。 詳しくは検索すれば一番分かりやすい。半分の目玉が真上を見てた。

 義眼が無くなった左目はちょっと強めに閉じられてて、でも瞼が凹んでた。その瞼も中に何も無いせいか歪だった。

 

 「これでいい?」

 モノ子は普通にしていた。 席に座ったまま片目を閉じて、右目だけでDQN女子達を見上げていた。

 半泣きになるでもなく、怒りを押し殺した風でもなしに、ただただ平然としてた。

 

 かといって他は平然となんかできるわけが無く、おれと話してた友達は『どういうことなの』ってな様子で見てたし、近くの女子は眉をハの字にして口を手で覆っていた。

 当然義眼が外れるのを直に見たDQN女子達はかなり衝撃だったらしくて、有り体に言えば引いていた。さっきまでの態度が嘘みたいに足も半歩退がっていた。

 

 モノ子はそんな中、次のことを起こそうとした。

 

 「それとも見たいのって、」

 そう言うとモノ子は凹んでる閉じた瞼を大きく開けようとしたのか、

 

 「この下?」

 

 左手の親指で目の下を押さえて 人差し指で瞼を上げて、眼窩を見せようとした。

 

 すると、

 「ぅ き キモいんだよ!!」「ふざけんなバーカ!!」

 怒るでもなく泣くでもなく、ただ淡々と義眼を取り出して見せたモノ子に恐怖を覚えたんだと思う。 引きつった顔での裏返り気味の捨て台詞を吐きながら、そこでDQN女子達は逃げ出した。

 かと思えば

 「ぅ おぼェェェェェッ」

 真っ先に逃げたはずの一人は教室の後ろ出口と廊下の境辺りでマジの嘔吐してる始末。 食ったばっかの給食がボタボタビチャビチャと胃液混じりにぶち撒けられる。 因みにその日のメインは麺だった。だから汁っぽかったんだろうか。

 言ってしまえばグロい、さっきの光景に耐えられなかった豆腐メンタルだったらしい。

 

 DQN女子の嘔吐を皮切りに教室後ろの出口付近は大騒ぎになった。

 廊下からは「うっわ吐いてる」「きったねぇ」とかの声がしてるし、教室側のDQN女子はかばっているのか内容の無いことを喚いてるだけだった。

 教室の中の奴らも助けるでもなく誰かを呼ぶでもなく、野次馬として嘔吐の現場にわらわらと。 貰いゲロするのも出てくる始末。

 その間にもわらわら人は集まって、出口の近くの曇りガラスの窓の外にも人が大勢透けて見えた。

 

 けどその修羅場の発端のモノ子は終始席に座っていただけだった。 モノ子はただ座ってるだけなのに、周囲が勝手に大騒ぎになっていってるのは今思うとかなりシュールだった。

 

 そんな中モノ子は机の上の義眼を取って、眼帯とあと筒みたいなのも持って教室の前の出口に向かうのを見て、なんでかは知らないけどおれはモノ子に訊いた。

 「お い、どこ行くんだよ?」

 かなり混乱と動揺があって変なかんじの接し方になってたろうけど、モノ子はおれを右目だけで見て普通に答えた。

 

 「これ洗いに行くの。 一回取ったら洗わないといけないから。」

 

 言いながらモノ子は義眼を持っている手を握ったままちょっと上げた。 話すモノ子は、普段と変わらないかんじだった。

 そのままモノ子は たぶんトイレに行ったんだろうな。教室の騒ぎは無視して出て行った。

 

 

 

 あとで知るんだけど、持ってた筒は保管と洗浄のための義眼ケースだったらしい。

 

 それと吐いたDQN女子はしばらく学校に来なくなったんだとか。

 

 

 

 

 

-6ページ-

 

 

 ・あとがき・

 

 

 やぁどうも、投稿もなんか久しぶりだなって思ってる華狼です。

 メインは恋姫なのにこれがまた全然進まない。 もう少しで全部詰められるのに。あと少しなのに。畜生。

 

 まぁそれはさておき。 今回出したこれはもうほんとに思いつきの産物です。

 『Mono Eye Girl Rhapsody』即ち『隻眼少女狂詩曲』。

 

 テーマは読んでの如く『中二病』ですが、世間的な中二病を取り上げた作品達とはちょっと違う路線と言うか。そんなかんじをめざしてみました。 

 中二病かと思いきや本物の隻眼少女でした って話です。 はい安直に中二呼ばわりした単純思考な人達ざまぁ〜 っていう、世間的な決めつけへの一種のアンチテーゼ ってところですかね。 ……いやそんな高尚なことは考えてませんでしたけど。

 若干のブラックを感じていただければそれ幸い。

 

 しかし今回の文体はスレへの書き込み風を意識してみたのですがいやはやどうにも一貫は出来ませんね。

 結局いつものような文体になってしまった体たらく。 もう癖になってるんでしょう。

 

 

 ところで『中二病かと思いきやマジモンでした』ってのはいいかもしれませんね。

 実際は本当に当人しか見えない存在が常に居て 包帯の下は本当に傷があって、でも周囲は普段から痛いことやってるように思っていて、当人もそれを自覚して沈んでる みたいな。

 

 新しいダーク ってかネガティブヒーローの誕生かもしれないなこれは。ヒロインでも可。

 

 

 とまぁ雑談はこの辺にして。 他に言いたいことは次回に持ち越しですね。

 ではまた次回で。

 

 

 

 PS

 

 そういや他の短編も放置しっぱなしだな…… 全部続きはもう構成終わってるんだけど。

 まぁ時々の気分で書いてるからしょうがないね。

 

 モノ子「あなた達も大変だね。 それもらっていい?」

 一刀「なにがしょうがないんだよそんなだからこっちも終わらないんだろ! 進一、それモノ子に取ってもらえる?」

 レミリア「でしょう? まぁそれも含めてしょうがないといえばそうなのでしょうけどね。」

 進一「いや、他人事みたいに言ってるけど出た以上モノ子も我が身なんじゃ… はい え こっち?」

 鏡「一意専心という言葉はすばらしいと思わないか? ほら如耶。」

 如耶「同感だな。あれこれやってようやく一つ などと程度の低さの露呈にしかならん。 ん 鏡殿 かたじけない。」

 寧「二足の草鞋は実力があってこそなんですよ? お皿邪魔なんであっちにやっときますね。」

 

 あぁもうなんでいろんなキャラが集合してるかな…… まぁ全部自覚してるんですけどね?

 

 倫琥「それやっはら尚の事タチ悪いれ? ヒック なんやまわり早いな〜」

 晶「あかんあかん、それも自覚済みやこの作者。 弱いだけやろアンタ。コップ一杯やんか呑んだん。」

 華陀「いやいや、終わらせればいいことだろう皆。」

 胡蝶「それも終わらせられれば の話でしょう。特に想奏譚の側は長いようですし。」

 慈霊「えぇ 終わりも見えない体たらくですから。 そちらも怪我には気をつけて下さいね。」

 

 霊夢「とまぁこんなのだけどこれからも宜しく だって。 これでいい?」

 

 はい棒読みご苦労さ

 鈴々「霊夢〜、これいらないなら食ベていいのだ〜?」

 霊夢「こっらあんた私のから揚げさわんないでよ!」

 フラン「あははは、どっか〜ん!」

 桃香「きゃあ ご飯が飛び散ったぁっ?」

 咲夜「おしぼりをどうぞ。 ですが頭が散らなかっただけ良しとして下さい。」

 忍「それって比較にならないような…」

 

 管輅「ところで皆さん、今から貂蝉が卑弥呼と舞いを披露しに来るなどと連絡が来ましたが」

 

 一同『追い返してっ!!!』

 

 

 以上、扱ってるキャラが集まった宴会場からの中継でした。

 お礼にその場に貂蝉と卑弥呼を作者特権で放り込んでやろうかと。

 

 

 更にPS

 

 健常な目に眼帯なんかしたら、即ちピント調整をしなくなるので目の筋肉が弱って視力が落ちるんだとか。

 中二病の後遺症は視力の低下 なんてのは洒落にもならないので止めたほうがいいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
恋姫が上手く纏まらないので生存報告を兼ねての投稿。 題名の如くやっつけで、しかし書きたい事をやってみた。世間の中二病ブームに私も乗っかるぜ。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
746 702 1
タグ
やっつけ小話 中二病 人によっちゃ笑えない 眼帯 

華狼さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com