IS?インフィニット・ストラトス?黒獅子と駆ける者? |
episode90 代理として初の仕事
「・・・・」
そしてその者・・・バンシィは震えながらも顔を上げた。
身体中に被弾跡があり、両腕の武装も損失していた。
バンシィの視線の先には、自身とほぼ同じ姿をして赤い光を持った白い機体が浮かんでいた。
「く、くそ・・・ったれが・・・」
すると白い機体は手にしている剣を振り上げた。
「これで・・・満足だろう・・・」
「・・・・」
「・・・ユニコーン」
そして白い機体・・・ユニコーンは手にしている剣を勢いよく投擲した。
「――――!」
そして剣はバンシィの腹部に突き刺さり、そのまま鍔まで貫いた。
「――――」
そしてバンシィの赤いツインアイの光が消えた。
「これが裁きだ・・・バンシィ」
と、ユニコーンと呼ばれる者は目から一筋の涙を流した。
「っ!」
そして隼人は目を覚ました。
(またあの夢か・・・)
隼人は半身を起き上げると、息を整える。
そして時計を見ると、午前三時半を回っていた。
(何だって言うんだ・・・本当に)
そしてため息を付いて、横を見る。
隣のベッドでは静かに寝息を立てて颯とリインフォースが寝ていた。
(以前にも似たような夢を見たが・・・一体何なんだ)
そして再びベッドに寝る。
(今日は色々と大変な一日になるから、ゆっくりと寝るか・・・)
そうして隼人は目を閉じて眠りに付いた。
「・・・・」
それからして午前七時半を回ったときに隼人は既に寮の食堂に居た。
(眠い・・・夢から覚めるタイミングがいつも悪い)
隼人は大きなあくびをして、味噌汁を一気に飲み干して茶碗をトレーに一旦置く。
「大丈夫、兄さん?」
そして向かい側の席に座って颯も朝ごはんを食べていた。ちなみにメニューはトーストで、イチゴジャム付きであった。
「あぁ。大丈夫だ」
そしてお茶の入ったコップを飲み干して、トレーを持って立ち上がる。
「先に行っているからな。今日は朝から一時限目を使っての全校集会だからな」
「うん」
隼人はそのままトレーをカウンターに持って行った。
そして体育館には学園全生徒が集まっていた。
そんな中で隼人はステージの横で待機していた。
「さすがに緊張していますか」
少しガチガチ気味の隼人の様子に虚さんが声を掛けた。
「そりゃ、こんなにたくさんの人を前にして話すことなんて初めてですよ」
平然を保とうとしているも、どこか緊張味を帯びていた。
「確かにね。でも、楯無さんはまだ入院中だから、会長が直々に代理に選んだ隼人君がやらないといけないのは分かっているよね」
「はい」
「今日言う内容は確認したわね」
「昨日中で覚えました。今度の『全学年トーナメント』についてですね」
全校トーナメント・・・それは全学年が学年関係なくトーナメント方式で模擬戦を行う今学期最後にして一年の最後で最大の行事である。
「じゃぁ、私が言う合図で行ってね」
「分かりました」
そして虚さんはステージに出てマイクで生徒に伝えることを言い出した。
「それでは、次に生徒会長の言葉・・・でしたが、生徒会長は怪我により入院中ですので、代わりに生徒会長代理が話します」
そして虚さんのそれでステージ横から隼人が出てきた。
すると全生徒からざわめきが起きてきた。
そして隼人はステージにある壇に立って喉の調子を整えた。
「えぇ・・・。自分が生徒会長代理に就きました神風隼人です。生徒会長復帰までの間自分が学園を治めていきたいと思います。よろしくお願いします」
そう言って隼人は頭を下げると、拍手が帰ってきた。
「今日伝えることは、二週間半後に控えている今年最後にして最大のイベント・・・『全学年トーナメント』について話をしたいと思っています」
そして隼人は背後に投影型モニターを出して色々と表示させた。
「全学年トーナメントはその名の通り全生徒がトーナメント方式で模擬戦を行うもので、二週間以上を掛けたかなり大掛かりな行事となります」
次にモニターに別のデータを表示させた。
「今年から新たなルールを設立します。学年別トーナメントでは二人一組によるチーム戦でしたが、今回のトーナメントではより一層実戦に近く、生徒と生徒での協力性を補わせる為に、三人一組による模擬戦を行います」
そう言うと生徒たちからひそひそ話しがしてきた。
「今回の措置は今年に入ってから事件が多発しており、いつ一般生徒が戦闘に巻き込まれるか分からない状況です。そんな中でも協力し合う気持ちを持っていただきたいと言う思いから、今回の案が採択されました」
隼人はさっきまでのガチガチ感は何所に行ったのか分からないぐらい冷戦沈着で話していく。
「ちなみに学年トーナメントでは自己申請でコンビを組み、組めなかった人はくじで決まると言う方式でしたが、今回のトーナメントでは全生徒がくじを引いて組み合わせを決めさせていただきます」
すると再びひそひそ話がしてきた。
「それと、専用機持ちについてですが、専用機持ち同士が組むと戦力バランスが思い切って傾いてしまうので、今回専用機持ち同時が組むことが無いように最初から番号を割り当て一緒に組まれないようにしました」
そう言うと一部の生徒から小声で歓喜の声を上げる者が居ればガッツポーズを取る物も居た。
「くじは教室にてランダムで選んで番号が書かれた紙を渡します。専用機持ちに割り当てられた番号を除いてコンピューターでチームの組み合わせを決めます。結果は来週の月曜日にて判明します」
そして隼人は投影型モニターを消した。
「これで説明を終わります。最後に一言」
隼人は喉の調子を整えた。
「専用機持ちと組むようになった生徒はラッキーである・・・・とは限らない。以上」
「これで生徒会長代理からの話しを終わります」
そして拍手喝采の中隼人は頭を下げてステージの横に戻って行った。
「はぁ・・・緊張した」
そして隼人は教室の自分の席で呟いた。
「でも、驚いたな。まさか隼人が生徒会長代理になってことが」
と、エリーナが近くの席に座って隼人に言う。
失った右目には眼帯が付けられており、それ以外は特に問題はなさそうであった。
「成り行きってやつだ」
「そうかもな」
「ところで、シャーリーの容態はどうだった?」
「まぁ意識は取り戻したんやけど、どうも傷が深くて、ISにも激しい損傷もあるから、一時帰国しているんや」
「そうか」
「一応トーナメントまで戻るって話やけどな、最悪戻れないってことがあるかもって」
「・・・・」
「まぁ、トーナメントじゃ敵同士やな。その時はよろしくな」
「俺は別にいいが、お前は大丈夫なのか?利き目を失っているって言うのに」
「心配ない。トーナメントまでには左目でも精密射撃が出来るようにしておくから」
「そういう問題じゃないんだが」
「まぁ細かいことは気にせんでもいいで」
そうしてエリーナは席を立って自分の席に戻っていく。
「相変わらず楽天家だな」
そして隼人は次の授業の準備に取り掛かった・・・・
そして放課後
「さてと」
隼人は鞄を持って教室を出ると――――
「神風」
と、隼人が教室を出たところで外で待っていた千冬に呼び止められた。
「織斑先生。何か用ですか?」
「お前に用があるとうるさいやつが来ているのでな」
「俺にですか?」
「あぁ。時間が無いから、このまま来い」
「は、はい」
そして隼人は半ば強引に千冬に連れて行かれる。
そして隼人と千冬はエレベーターに乗り込み、下のほうに下っていく。
「織斑先生・・・この下は地下特別区画では?」
「あぁ」
「そこに生徒を入れていいんですか?」
「本来であれば入れることは無いのだが、状況が状況なのでな」
「・・・・」
「まぁ、生徒でもお前や更識であれば入れるがな」
「そうですか」
「そういえば、朝の全校集会・・・ガチガチだったな」
「そ、そうですか」
「まぁ人前で話すなどほとんどないからな。緊張するのは当然だ」
「はぁ」
「しかし、お前は本当にやつから絶大な信頼を寄せられているな」
「そうでしょうか」
「あぁ。そもそも生徒会長助手に任命される時点でもかなりの信頼がある。それが代理となれば次期生徒会長に任命されると同じものだ」
「次期生徒会長ですか・・・」
そしてエレベーターは最下層に到着して、扉が開く。
(ここがIS学園でも最高機密の区画か)
隼人はチラチラと辺りを見回す。
「ここだ」
そして千冬がカードキーと暗証番号を押して扉を開けた。
「やぁやぁはっくん!久しぶりだね!」
と、そこには天才(天災)科学者(変人)こと篠ノ之束がいた。
「束さん・・・それに――――」
するとそこには一夏がなぜかいた。
「なぜ一夏がここに」
「あぁ。ちふ・・・・じゃなくて織斑先生に呼ばれて来たんだ」
「お前もか。でも、なぜ一夏もここに?」
「束がお前と一緒に呼べと言ってうるさいからな」
「はぁ・・・」
「しかし、なぜ束さんがここに?」
「いい質問だねいっくん♪実ははっくんに頼みたいことがあるんだよ」
「俺に?」
「うん。いっつもはっくんの頼みを聞いてあげているから、今度はこっちから頼みたいんだよね」
(そういやそうだった)
「珍しいな。お前から隼人に頼みとは」
「・・・・」
「聞いてくれるかな?できれば聞いて欲しいんだけど」
「・・・まぁ、内容次第で受けますよ」
「よかった」
「で、内容は?」
「うん!これを見よ!」
そして束はビシッと横のほうを指差すと、天井のライトが点灯した。
「これは・・・」
そしてそこにあったものは――――
一つの黒があった。
「これぞ幻の機体!白と並ぶもう一つの色!その名も・・・・・・・『黒騎士』!!」
「黒騎士?」
隼人は興味を持ってその機体を見る。
その名の通り全体黒い機体で、流形線の多い形状が多く、従来のISと装甲配置がほぼ同じであった。背中には大型のウイングスラスターが閉じた状態になっており、、頭に当たる部分には耳につけるデバイスと顔の上半分を覆いそうな仮面型のハイパーセンサーがあった。両肩付近には閉じた状態のユニットがあった。
「黒騎士って・・・名前からして白騎士を思い出しますね」
「そうだね。黒騎士は白騎士と兄妹機だからね」
「白騎士と兄妹機?」
「そうだよ」
「・・・そういえば資料で見た画像と比べると、なんとなく似ていますね」
「・・・・」
「でも、兄妹機なら、どっちが上なんですか?」
「黒騎士のほうだね。性能もこっちの方が高いし」
「こっちのほうが高い?」
「だったら、何であの時白騎士を公表したんですか?」
「まぁ、黒騎士は性能は高いんだけど、操縦性に難があって、今までお蔵入りになっていた幻の機体」
「そんな機体をなぜ今更?」
「実はね、紅椿の開発の最中で黒騎士にも大幅な改良を加えてね、展開装甲が無くても第四世代のISに匹敵する性能を得ているんだよ」
「なるほど。でも、更に操縦性が悪化したと」
「うっ」
図星だったのか束は言葉を詰まらせる。
「で、でも!黒騎士にはバンシィのデータを取り入れたから、これまでのISとは一線を覆すポテンシャルを発揮できるんだから!」
「なるほど。それで俺にテストパイロットを任せる、と」
「うん!黒騎士は並のパイロットじゃ使いこなせないほどじゃじゃ馬な機体だけど、はっくんになら使いこなせるよ」
「・・・・」
「早速テストをやるから、準備をしてくれるかな」
「・・・・了解」
そして隼人は少し離れて下に着込んでいるISスーツに着替えるために制服を脱ぐ。
「束・・・」
すると千冬が束に近付いた。
「なぜ黒騎士の封印を解いた」
「うん?」
「使いこなせないなどと嘘を言って。あれが過去に何を引き起こしたのか、お前は忘れたとでも言うのか」
「もちろん、覚えているよ」
「だったら・・・」
「心配ないよ」
「・・・・」
「当時の欠陥はもう取り除いているよ。今度こそ本当の完成品だよ」
「・・・・」
「大丈夫。はっくんなら使いこなせるから」
「お前と言うやつは・・・」
千冬は苛立った様子で束を睨む。
(一体千冬姉と束さんは何を話しているんだ?)
一夏は少し離れたところで様子を窺っていた。
「準備が出来ましたよ」
そしてISスーツに着替えた隼人がやってきた。
「それじゃぁ早速行ってみよう!」
そして扉が開いて、隼人は黒騎士に近づく。
(黒騎士、か)
隼人は少し黒騎士を見つめると、黒騎士に触れた
すると黒騎士は反応を示して、隼人の手の下から光を放った。
そして黒騎士は受け入れ態勢をとって膝を着いた。
「・・・・」
隼人は足から入れて、次に両腕を黒騎士の両腕に入れて背中を預ける。
そして両足と両腕のアーマーが閉じて、そのまま両腕と両足から二の腕と太ももに装甲が装着されて、隼人はそのまま立ち上がると腹部と腰部、胸部、両肩にアーマーが装着されて耳にデバイスが装着されて仮面型のハイパーセンサーが装着された。そして両肩の傍に閉じた非固定ユニットが浮遊した。
『うん。いい調子だね』
そして窓の向こうでは束がタッチパネルを操作して黒騎士の調子を見ていた。
『どうかな?何か異変とか無い?』
「問題ありません」
そして隼人は黒騎士のデータベースを出して武装を確認した。
(武装は左腕に搭載された複合兵装『フォートレス』に、格闘武装として『グラディエーター』か。少ないが十分なくらいだ)
そして隼人は左腕にフォートレスを展開して装備した。
左腕の下部に大型のユニットを搭載しており、先端は剣のように鋭く尖っており、左右に分かれる機構があった。そしてユニットの各所には展開しそうなラインが入っており、後部には一本の棒があった。
(結構大掛かりな武装だな)
そして右手に一本の剣を展開した。
片刃で刀身が少し長く真っ直ぐな剣で、刃の反対側の刀身の根元には前後にスライドするカバーが取り付けられていた。鍔は逆Vの字になっており、中央には円形のパーツがあった。
『バンシィのデータを元に黒騎士のグラディエーターとフォートレスにもカートリッジシステムを取りれてから、火力面でもその性能を発揮するよ』
「なるほど。通りで見たことのあるような機構だ」
そして左腕のフォートレス先端を後ろに向けて回転させた。
『それじゃぁこのままアリーナの方に行ってテスト行ってみよう!』
「このままって・・・」
『心配ない。後ろの扉からどのアリーナにも通じるIS一体が通れる通路がある』
「な、なるほど」
『このまま第三アリーナに向かえ。私達も後についていく』
「分かりました」
そして隼人は後ろを振り向くと、扉が開いて、PICを作動させて少し宙に浮くとそのまま前に進んで行った。
「それじゃぁ私達もレッツゴー!」
そして束たちもその後に付いて行った。
その頃
「本当に・・・厄介なものだね」
と、アルベルトは不機嫌そうに呟く。
「ベータを失ったのはこちらとしても手痛いものになりましたね」
隣でシスターがタッチパネルを操作して何かの処理をしていた。
「そうだね。ベータを失ったのは想定外だ。戦力も問題であるが――――」
と、アルベルトは目の前のカプセルを見た。
そのカプセルの中には、一人の女性が浮かんでいた。
「破壊の王が第二の覚醒をして、更にようやくこの子を手に入れたから、計画に支障は無い」
「そうですか。ところで、一体何なのですか?これは?」
「あぁ。シスターは知らなかったね。――――オリジナルの次に作られた『00』のことを」
「00?戦闘機人は全部で十体のはずでは?」
「確かに君にはそう言ったよ。だが、まだ居たんだよ。失われたナンバー・・・・『ロスト』がね」
「ロスト・・・?」
「そう。00ロスト・・・。何者かは分からないが、『タイプゼロ』のデータを基にして作られた事実上クラインより先に作られた戦闘機人だよ」
「クライン姉さまより先に?一体誰が」
「それは分からない。だが、ロストはあの男がどこかで回収して委員会に引き渡されて今までずっと秘匿されていたんだ。時間は掛かったが、何とかこちらの手に渡ってね」
「例の取引ですか?」
「あぁ。委員会は技術提供を条件にロストを渡してきた」
「しかしよろしかったのですか?擬似型ISコアの設計データを渡しても」
「構わないよ。それに設計図を理解できるほどの科学者が居なければコアを作るのは不可能だよ」
「なるほど」
「ロストはしばらくはまだ目を覚まさないだろうが、その間に色々と調べられる。それに伴ってロストより先に手に入れたこの機体の調整ができる」
と、その女性が眠りカプセルの横には、白い機体が静かに佇んでいた。
全身装甲のISで、額には一角獣を思わせる一本の角があり、シンプルな形状をしていた。そして何より形状に多少相違点はあって色も違うものも、その姿はバンシィと瓜二つであった。
「この機体は数年前に手に入れた機体ですけれど、確かずっと動くことが無かった欠陥機ではありませんでしたか?」
「確かにこの機体はずっと動くことが無かった。そもそもこの機体はロスト専用機として作られていたんだ。他の者では動かせないんだよ」
「そうですか」
と、シスターはどことなく不機嫌そうに答えていた。
(最近のドクターは物足りないですわね・・・)
シスターは内心でそう思っていた。
(行動の一つ一つが慎重すぎる。思い切って行動が起こせれば・・・)
そして自分のメモリー内のデータバンクを開いた。
(そういえば・・・最近世界で目撃させているアンノウンが居ましたわね。確かアンノウンは世界各地のパワーポイントで目撃されている)
そしてシスターはあるポイントを表示した。
「ドクター。少し用事を思い出したので、少し出かけますわ」
「珍しいね」
「えぇ」
「構わないよ」
「では」
そしてシスターはその部屋を出て行った。
説明 | ||
トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ! |
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