超次元の外れ者(上) |
インターセンター・1番街・ワーカー宅
そこに一人の少年がいた。血は繋がってはいないが、自分を育ててくれた親がいた。
少年は、育ての親であるワーカーの帰りを待っていた。
8歳の頃に拾われてから2年、ワーカーの手伝いをしていた。
今、少年にとって彼の存在は、かけがえのないものになっていた。
「必ず帰る。帰ったら、どこかに遊びに行こう」と約束をして行った彼を信じて待っていた。
ピーンポーン
呼び鈴の音だ。
少年は彼が帰って来たと思い、笑顔で出迎えた。
だがドアを開けた先には、彼ではなく、葬式の後のような暗い顔をした彼の友達だった。
「あの・・・父さんは?・・・」
「・・・・・・ッ」
答えてくれない、否、それこそが答えだった。
「あ、あっ・・・あ・・・」
声にならなかった。状況を理解したのか、少年の目には涙が流れていた。
葬式は、行われていたのだ。しかもそれは他でもない彼の葬式だった。
(約束した・・・必ず帰るって・・・帰ったら、どこか遊びに行こうって・・・ッ!)
彼の友達の右手に握られていたもの・・・それは紛れもなく、彼がよく使っていた投剣だった。
この国だけの特産物。彼本人が設計したものであった。
それを見た少年は・・・
「あっ・・・ああっあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
泣いた。今までに無いくらい泣いた。涙は流れに流れた。狂うように。荒れるように。
彼の友達も堪えながら涙を流した。
・・・彼は・・・父は・・・ワーカーは死んだのだ。
少年は、しばらく泣いた後、泣き疲れたのか眠ってしまった。
両親の死によって欠けていたが、彼との生活でそれは元に戻っていった。
だがしかし、彼の死によって【また】欠けてしまった・・・
それから、7年・・・少年は【欠けたまま】成長した・・・
7年後・・・インターセンター1番街・ユウザ宅
ユウザ
「・・・・・・ッ!!」
起床、しかしいつもと違い、気だるさよりも疲労感が目立った。
ユウザ
(あの時の夢か・・・・)
悪夢を見ていた。しかもそれは実際起こった事だから余計に((性質|タチ))の悪かった。
携帯からメールの着信音が鳴った。
ユウザ
(誰からだろ・・・)
とりあえず携帯を開く。
時刻は11:43・・・寝過ぎと言われるレベルだ。
ユウザ
(え・・・っと宛名は・・・っと)
受信トレイ→新着メール→【おやっさんからの呼びだし】
ユウザ
「・・・・・・」
内容は・・・
「12時に来たれり」だけだった・・・
まあ場所は分かるし、この時間でもギリギリ間に合うだろう。
とりあえず、行ってみるほかあるまい。
ユウザは技術局に向かった。
というか・・・あたりの土地を買い取って無理やり立てた技術局のような何か・・・かもしれない。
11:57 インターセンター1番街・技術局(・・・のような何か)
おやっさん
「おーういつも通りギリギリに来おったか。ついにかわいこちゃんが釣れたか?」
ユウザ
「おっさんか・・・で?今度は何をさせたいんだ?また無茶な依頼じゃないだろうな」
技術局のおやっさん。インターセンターでは知らない者はそんなにいない(らしい)技術者。
武器作りに関する技術の腕は立ち、彼が作った武器は総じて高性能であるが、あまりの性能の高さに扱える者は少なく、特に「浪漫入り」と言われる武器は、戦争を起こしかねない位の性能である。
止めようとしても「契約書」を盾に作るのをやめない為、国から追放されたらしい。
インターセンターに流れ着いた後は、好きなように武器を作っている。
そして完成した武器は、彼に憧れている弟子たちによって商品化できるレベルにまで調節、量産して売っているらしい。
おやっさん
「わしがおまえさんに無茶をさせた事があったか?」
ユウザ
「前に設計図盗んだラステイションに大恥かかせてやれって依頼した奴がそれを言うか。」
ユウザは何度かこのおやっさんの依頼を受けた事がある。そのほとんどは、「浪漫入り」の武器の試運転である。
それ以外には、設計図を盗んで発表したラステイションに大恥かかせると言う依頼だ。
これは彼を雇っていた国の一つ、ラステイションが、彼の発明である人用プロセッサユニットの設計図を盗んで発表した揚句、電話にて、また雇ってやるから発表用のプロセッサユニットを作れと交渉してきたらしい。
そこでユウザは、常人には読めない設計図を利用してスパイのふりをして、
嘘の材料、嘘の製造方法を教え、形だけそっくりの爆弾を作らせ、発表会にて自爆装置を起爆。
その後あの設計図が盗作である証拠(録音した交渉の通信)を公に流して、商品広告も兼ねて実際に人用プロセッサユニットの性能を披露して、大恥をかかせた。
以上のように、彼の依頼は無茶苦茶なものばかりなので、ユウザしか引き受けないそうだ。
おやっさん
「良いじゃないか。その報酬にちゃんとしたもんあげたんじゃから。」
報酬とは、ユウザが付けている、白い人用プロセッサユニットの事である。
普段は普通よりも硬い防具程度にしか使ってないが、空も飛べるし、身体能力も向上するらしい。
ただしそれを使った時の負担は半端ないものであり、使えば大体死ぬというトンデモ武装だ。
そしてその力を今まで使った事のある者は一人だけだと言う。
ユウザ
「ちゃんとしたもんって・・・これは試作品だろ?」
そう、これには製品版もある。性能も抑えられているし、空を飛ぶにも身体能力の向上にも死ぬほどの負担がかからない物は、既に発売されている。
しかし、あまりの値段の高さに買う人がいないとか。
おやっさん
「製品版のよりか性能はうえじゃからええじゃろ。あの建国の英雄も使っていたもんじゃぞ?」
建国の英雄とは、ユウザの育ての親であり、インターセンターを創った人、ワーカーの事である。
ユウザ
(父さんがねぇ・・・ま、いっか。)「とりあえず、どんな用件だ?」
おやっさん
「そうじゃった。新しい武器を作ったから試してもらいたいんじゃよ。」
ユウザ
(まーたトンデモ武器の実験か・・・どーせ『浪漫入り』のやつだろうな・・・)
ユウザは諦めた。もし断れば、他の者に無理やり頼むだろう。
そうすれば冗談抜きで死人がでかねない。
ユウザに選択肢は無かった・・・
インターセンター1番街・技術局(のような何か)
おやっさん
「ほれ」
ポイッ
いきなり何かを投げてきた。
チャキッ
ユウザはすかさずそれを受け止めた。
ユウザ
「これは・・・トンファー?」
今手に持ってるのは殴打部分の両端が角ばった片刃の形をしたトンファーだった。
しかし刃は無く、鋭利なものではなかった。純粋な鈍器のようだった。
意外と普通な形だったから驚いたが、同時にユウザは感づいた。
「これは『浪漫入り』だ」と。
良く見たら、柄の部分にスイッチみたいなのがあった。
スイッチに目を向けていると・・・
おやっさん
「ほう、それに目を付けるとはさすがだな。それが浪漫機能の軌道スイッチだ早速試してみるか。」
そう言って出したのは、製品版の人用プロセッサユニットだった。
ユウザ
「・・・良いのか?」
技術局の弟子
「いいっすよ。どうせ売れませんし・・・」
表情は暗かった。調節に苦労したのに全然売れなくて酷く落ち込んでいるようだった。
おやっさん
「これを短い方に当てて、スイッチを押してみい。」
言われるがまま、短い方の先端部分を実験台に当てて、スイッチを押した。
ズドォンッッ!!
スイッチを押した直後、実験台は粉々に爆ぜた。
驚いた顔のまま、ユウザはおやっさんの方へと顔を向ける。
おやっさん
「空間を圧縮、凝縮し、一点に一気に放つ事により、対象に強い貫通力、爆発力のある衝撃ダメージを与える。」
ユウザ
「反動が無かったんだけど・・・普通ならこれ、腕吹っ飛んでるんだけど・・・」
おやっさん
「反動共々放ってるからのぉ。完成するまで義手がもう逝っちまいそうじゃったわい。」
義手とは、おやっさんのではなく、ユウザの代わりに実験を手伝うロボットのだ。
ちなみにこれはリモコンで動く物らしい。しかしロボットは人形、感想を言わない。
だから最終調整は人間でやるらしい。元々人が使うための物だからだ。
おやっさん
「名前はステラファング。まあ早い話、トンファーの形をしたパイルバンカーみたいなもんだな。」
ユウザ
(いや、逆だろ・・・)
心の中でそうつぶやいた。ユウザはとりあえずもらっておく事にした。
ユウザ
(他のヤツよりかマシだからな・・・)
プラネテューヌ付近の森林
実験場所を屋外に移すことになったのは良いが・・・
ユウザ
(何故よりにも寄って大国のひとつ付近のここを?見つかったらただ事じゃあ・・・)
おやっさん
「お次はこれじゃ。」
ユウザ
「・・・?」
そう言って手渡したのは、銃身が大きく、グリップ部分の後ろにまで伸びている物で、銃口は角丸四角形の形をしている銃だった。撃つ弾は実弾ではないことだけはわかった。
聞けばエネルギー弾を放つ物らしく、撃ってみたらさっきのトンファーと同じく、反動が無かった。
普通の銃と同じように使えるようだった。あと永久機関やら何やらで弾切れはないらしい。
弾切れしない事と音が静かな事以外は意外と普通の性能なので驚いた。
おやっさん
「よし、通常モードは大体そんなもんだろ」
ユウザ
(通常・・・モード・・・?)
ユウザは嫌な予感がした
おやっさん
「よし、まずそいつに付いてるスライド部分を動かしてしてみい。」
良く見たらホントにスライド部分があった。
実弾を使うわけでもないこの銃に付いていてはおかしい物だった。
言われるがままスライドさせてみる。
ヴヴヴヴヴヴヴ・・・
何やら低い音が銃から出てきた。
ヴヴヴヴヴヴゥンッッ・・・・
と思ったら止んだ。その時・・・
おやっさん
「今じゃぁっ!!あそこに向かって撃てぇいっっ!!」
ユウザ
「え?・・・ええっと・・・ここか!」
一瞬迷ったが、とりあえずおやっさんが指をさした方向に向けて引き金を引いたら・・・
ドォゥゥゥン・・・・・ッ
轟音と共に、すさまじいほどのエネルギー弾が出てきた。(しかもまた反動が無かった。)
そして放たれたエネルギー弾の向かう方向に謎の飛行物体が・・・!!
ドグァァァァァァァァァ・・・・
弾は飛行物体に着弾し、爆発した。
ユウザはトンファーの時と同様、驚いた顔のまま、おやっさんに顔を向けた。
おやっさん
「溜め撃ちが出来る。しかも所要時間は3秒27!そこから放たれた弾は通常モードの約3大きく、約2倍速く、着弾すれば爆風が約5倍に膨れ上がる。威力は約10倍だ!」
グッと親指を立ててドヤ顔で言ってきた。それよりもユウザには聞きたい事があった。
ユウザ
「今当たったのって・・・何?」
おやっさん
「この時間になるとプラネテューヌの女神が仕事をさぼってちょうどあそこを通ると聞いたが・・・どうやら本当のようじゃな」
ユウザは固まった。
ユウザ
「じゃあ・・・今俺が撃ったのって・・・」
おやっさん
「女神以外ほかにいるめぇよ。」
ガッ・・・
ユウザは焦った表情でおやっさんのむなぐらを掴んだ
ユウザ
「何俺を実行犯にさせてるわけ?戦争でもおこしたいのか?おこしたいのか?」
おやっさん
「まぁきにするな」
ユウザ
「きにするわ!」
おやっさん
「まぁ幸いここは((人気|ひとけ))の少ない場所だから野良モンスターの仕業になるじゃろ。」
ユウザ
「・・・・・・・・・・(ホントかよ・・・)」
おやっさん
「それにあの女神は間の抜けた奴らしいから大丈夫だろ。」
ユウザ
(このジジィ・・・本当に戦争を起こしかねないな・・・)
とりあえず、通常モードは普通に使えるので、「浪漫入り」銃、メテオカノンを依頼報酬の一つとしてもらい、技術局を後にした。
その後ユウザはすぐにある場所に行った。
インターセンター3番街にある、モンスターギルド。そこの依頼を受けに行ったのだった。
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にわかの駄文ですが、良ければどうぞ。 | ||
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