東照権現と独眼竜は未来へ行く 第六話 |
時間はあっという間に過ぎて一週間後。
アリーナでは遂にクラス代表を賭けて家康VSセシリアの闘いが始まろうとしていた。
「おお、セシリア殿のISは綺麗な青をしているな。それに強そうだ。」
「『ブルー・ティアーズ』か。Ha!だが青は譲れねぇな。」
「お前ら呑気そうだけど大丈夫か?特に家康。と言うか何故バナナを食べている。」
ピット内でスクリーンに映る先に出たセシリアのISを見ながらバナナを食べている二人に突っ込む箒。
「大丈夫だ箒。ワシとワシの専用機はそんな簡単にやられる程弱くはない。」
『家康君!準備お願いします!』
「うむ、分かった!」
スピーカーから流れる山田先生の声に答えて家康は右手にはめたグローブを眼目に突き出す。
「来い!『東照』!!』
黄色い光が家康を包む。
光が収まり現れたのはあの何時もの戦鎧を着けた家康だった。
だが何時もと違うのは膝から下はISの様な脚の装備になっており最大の特徴は背に掲げた一つのハイフィン。
円になっているそれは内から外へ炎のように突起が出ており正に『太陽』だった。
「すげぇ…………」
一夏はそう呟き家康はゆっくりとカタパルトに向かって行く。
「行って来る。」
「Hey、家康。」
「家康。」
政宗と一夏の声に振り返る。
「「勝てよ。」」
「ああ!」
カタパルトに足を乗せて一気に飛び立つ。
「あら、逃げずに来ましたのね。」
セシリアはふふんと鼻を鳴らす。
家康の専用機、東照は直ぐにセシリアの情報を家康に送る。
ーーー戦闘待機状態のISを感知。操縦者セシリア・オルコット。ISネーム『ブルー・ティアーズ』。戦闘タイプ中距離射撃型。特殊装備有り。武器検索、六七口径特殊レーザーライフル『スターライトmkV』と一致。
(東照がワシに何を伝えたいか全く持って意味が分からんっ!!!)
勿論、遥か昔から来た彼には情報など無意味かもしれないが。
と言うか彼は外来語さえもヤバかったりする。
「最後のチャンスをあげますわ。」
「チャンス(意味的に)とは?」
「私が勝利するのは自明の理。ですから惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝ると言うのなら、許してあげないこともなくってよ?」
(ん?チャンスとはどう言う意味かを教えてくれるのではないのか?)
だが自分に向けられているのは挑発。
挑まれたらそれに答えないといけない。
そう思う家康は微笑する。
「悪いがもう二度と力に屈するつもりはないと誓った身だ。だからワシに本気で来てくれ。」
「そう?残念ですわ。それなら………お別れですわね!」
引き金を引きライフルから青いレーザーが放たれた。
一直線に放たれたそれは家康の頭を狙って飛ぶ。
そしてレーザーは家康の頭に………
「よいしょっと。」
…………当たらなかった。
当たる直前、家康は手甲、福禄鉄甲を展開してビームを殴った。
そう文字通り殴ったのだ。
殴られたビームは角度を変えて地面に当り粉塵を上げた。
「「「「………………えええぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!??」」」」
「うおっ、ワシそんなに変な事したか?」
「「「「いやいやいやいやいや!!!」」」」
「貴方、一体…………」
驚くセシリアに対し家康は己の拳を見つめる。
「絆…………」
「えっ?」
「それがこの世で一番強い力だとワシは信じている。」
福禄鉄甲で拳と拳を叩く。
「某、徳川家康!武器を捨ててお前に挑もう!!」
「なっ!………ふざけないで下さいませ!!」
ブルー・ティアーズのハイフィンから四つのビットが飛び出す。
ビットは家康に向かい囲むように浮いている。
「お、忠勝の武器みたいだな。」
「さあ、踊りなさい。私、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」
一斉にビットとライフルから弾雨のごとき攻撃が家康に降り注ぐ。
だが、家康は涼しげな顔をしてそれを避けまくる。
「ははは、忠勝との修行の日々を思いだすな。」
頭を狙われたら横に傾け避け、足を狙われたら膝を曲げて避ける。
もし避けきれなかったら手甲で叩き落とす。
最初こそ余裕の笑みを浮かべていたセシリアだったが楽々と笑顔で避ける家康に焦りが見え始める。
「クッ………何故当たらないのですか!?」
「いや?、ISは凄いなぁ。全方位見えるぞ。まあ、ワシは感覚でいけるがな。」
「無視しないで下さい!!」
「ふむ、そうか。ならもうそろそろ行かせてもらおうか。」
「え?」
突然、東照の太陽の形をしたハイフィンが光り輝きだした。
それに連なって家康にも黄色いオーラの様な物が見え始める。
ーーー敵ISに未確認エネルギーが発生!
ブルー・ティアーズから警告の情報がセシリアに届く。
「あれは一体………」
「では行かせてもらうぞセシリア殿!」
腰を落として右腕を引き正拳突きの構えをとる。
狙うは右前方にある四つの内の一つのビット。
アリーナにいる全員は何を考えているんだ?という表情をしている。
だが家康は思いっきりオーラを纏った拳を突き出した。
「天道突き!!」
オーラは勢いよく放たれた暴風の如くビットに進みビットを粉々に破壊した。
「そ、そんな………!」
「虎牙玄天!!」
驚くセシリアを尻目に家康は一瞬でもう一つのビットに接近しボディーブローの様に拳を振り上げまた破壊した。
「家康、あんなに強かったんだな………」
「一見、ボクシングの様な構えだが正拳突きをしたからボクシングではないな。あの拳法は一体…………」
「拳法は徳川独特の体術だが、あのオーラは『東照』の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)だ。」
始めて目の当たりにする家康の実力に驚く一夏と箒。
本人は少々拳法を齧ってるとしかいっておらず、彼が拳を使う所は見た事がない。
「政宗、単一仕様能力って何だ?」
「俺に聞くな。ただでさえ授業精一杯なんだよ。」
「そんなお前らに今日の放課後に補習を入れてやろう。泣いて感謝しろ。」
「「Yes sir…………」」
別の意味で泣きそうな二人だった。
「織斑先生、家康のISの単一仕様能力は何ですか?しかもあのISは一次移行なのに単一仕様能力はあり得るのですか?」
「そ、そうだ千ふ………織斑先生。拳であんなに距離の離れた敵を狙ったり、あんなに素早く動けるなんて普通出来ないぞ。」
「あいつの単一仕様能力は『絆託生』と呼ばれ、『気』を操る能力だ。原理は分からんがあいつが纏っているオーラは気で、それを操り攻撃に転じたり、自身を強化して闘っているらしい。そして、あれが何故単一仕様能力を使えるかは私も知らん。」
あいつの仕業かもしれんがな、と千冬は心の中で呟く。
「そんな事って出来るのですか?」
「さあな。だが本人がやっているんだから出来るんだろうな。」
「すげぇな家康…………」
羨望の眼差しでスクリーンに映る家康を眺める一夏。
自分も皆を守る為にこんな力が欲しいと思っているのだろう。
その家康は今丁度、最後のビットを壊した所だった。
「一撃だ!」
最後のビットを壊し、セシリアに接近する家康。
だがセシリアはにやり、と笑った。
「かかりましたわ。」
セシリアの腰部から広がるスカート状のアーマー。
その突起が外れて動いた。
「おあいにく様、ブルー・ティアーズは六機あってよ!」
アーマーから伸びた方針からはレーザーではなくミサイルが飛び出した。
突然の事に家康は反応出来ず………
ドカァァァアン!!!
ミサイルに当たり、爆発に飲み込まれた。
「フフフ、男のくせに調子に乗って私に楯突いたのが悪いのです。」
もうすぐ煙が晴れボロボロになった姿が現れる。
そんな状態の家康を想像したのか笑みが零れる。
だが煙が晴れてもそこには家康の姿はなかった。
「なっ!?一体何処に………」
ーーー警告!警告!真下に高密度エネルギー!回避!回避!
「え…………」
「ハアァァァァァァ…………!」
下を見ると何時の間にか家康がそこにおり、そして、彼を中心に彼の家紋、三つ葉の葵の形をひた光がアリーナの地面全体に広がっていた。
「セシリア殿、素晴らしい闘いだった。今度はワシがお前にワシの全ての絆の力をぶつけよう。」
「絆………?」
「淡く微笑め葵の紋!葵の極み!!」
家康が拳を掲げると同時に三つ葉の葵から空へ光が放たれ、その光柱はセシリアを包んだ。
ブルー・ティアーズのエネルギーを一気に削り直ぐに装甲は解けてしまう。
そして、気を失う前のセシリアが見たのは家康から伸びた無数の糸。
それはアリーナにいるクラス全員、またはアリーナの外へと伸びていた。
(これが絆…………)
暖かく優しく包まれるそれはまるで母親に抱かれているのを彷彿させる。
(母様…………)
厳しくも優しくあった尊敬する母の事を思い出しながらセシリアは目を閉じた。
『試合終了。勝者、徳川家康。』
説明 | ||
家康VSセシリアの戦いです! | ||
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コメント | ||
カイザムさん>おお!お目が高い!確かにその組み合わせはあるかもしれませんよ?(鉄の字) とても面白かったです!! 筆頭だったら隻眼つながりでラウラと戦う予感がしますね!!(カイザム) |
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