IS x 龍騎?鏡の戦士達 Vent 45:戦い終えて |
学年末が近付き、学園を去る者も新しく来る者もいた。そんな中、一夏には一つの途方も無く大きな悩みがあった。と言うのも、マドカ、数馬と共に次期生徒会役員に任命されてしまったのだ。三人とも露骨に嫌そうな顔をしたが、最早時既に遅し。決定は覆らないそうだ。そして卒業式ではそれぞれの学年主席と生徒会長が挨拶をする事になっている。三年は布仏虚、二年は楯無、そして一年は、一夏だった。
(めんどくせ・・・・何で俺が・・・・それに俺人前で喋るの苦手なんだよ・・・何も用意してないし。ああ、もう!どうにでもなれ!)
上級生から順に喋って行くので、結果的に一夏が最後になった。
「一年主席と(結果的に)なってしまった織斑一夏です。俺としては学園にいた期間が先輩方や同級生の皆さんと比べると短かったので特に言える事はないです。まあ、最初はおっかなびっくりだったのですが、楽しめました。俺達は、世界に喧嘩を売ると言う途方も無く無茶苦茶な事をして、生き残って戻って来ました。でも、今でこそ笑い話になりますが、やっぱり怖かったし、辛かったです。マドカも司狼さんも、他の仲間や俺も、何度も死にかけました。皆さんはISがスポーツの為の道具だと思っているかもしれませんが、それは違います。本来作られた目的は宇宙探査の為ですが、これは立派な、人を簡単に殺す事が出来る((兵器|モノ))です。それを十分に理解して励んで下さい。特に新入生の方々。色々と大変でしょうが、もし問題が有ればいつでも生徒会室に来て下さい。大抵は役員が誰かいます。俺の((部屋|こしつ))の鍵も開いていますので、相談位は請け負います。あくまで相談だけです。んじゃ、先輩方は就活を、新入生は学園生活に慣れる事を頑張ってください。」
拍手と共に式典が終わった。制服のボタンの交換等のお馴染みの儀式を終えた後、皆はそれぞれ休みの為の荷造りを始める。女尊男卑が無くなって余り経たない為油断は出来ないが、新たに個室を造設してある為、その問題は解消された。
「ふう・・・・終わった。」
「ああ。しかし、まさか生徒会役員にされるとはな。」
一夏とマドカは現在生徒会室に私物やその他の荷物を運び終えた所で一息入れていた。
「まあ仕方無いだろう、マドカ。まだマシだ。俺は部活はやる気にはなれないからな。引っ張りだこになるのは嫌いだよ。しかも、副会長なんて面倒な仕事押し付けられたしな。」
「同じく。私は布仏と同じ書記だ。数馬は確か・・・・会計だったな。名前の通り数字には強い奴だし、ぴったりだろう。私としては、新たな機関を取り入れたいのだがな。監査官を。」
「監査?」
「確かに女尊男卑と言う名の火は消えて無くなった。だが、まだ火種が世界中で燻っている。当然((学園|ココ))も例外ではない。いつまた((再炎上|バックドラフト))が起こるか・・・・女尊男卑廃止の反対運動なんてされたら、幾ら生徒会とは言え他の業務がある。対処、処理が間に合わない。」
マドカは手にしていた新聞の見出しを指でトントンと叩いて示す。正にその反対運動が諸外国だけでなく日本でも起こっている事が書かれていた。
「だが、もし女尊男卑廃止に反対する奴が入ったらどうなる?内側から全てが崩されるぞ?せめてミラーモンスターに監視させるか、((会社|ウチ))のエージェントを何人か送り込むのが確実だと思うが。」
部品を布で磨いて傷が付いていないか点検をしながらそう言い返した。
「確かにそうかもしれないが、エージェントを送り込んだ時点で圧力をかけていると言われる始末だ。今は現状維持に専念した方が良い。火種は少しずつ確実に消して行く方が良いと私は思っている。」
二人の間に沈黙が流れ、一夏は((分解|フィールドストリップ))して手入れをしていたパラオードナンスを組み立てて、スライドを引いた。ジャキン、と言う薬室に銃弾が送り込まれる音が響く。一夏はそれを腰背面ののホルスターにしまい、袖に仕込んだトーラスジャッジと左腰の大口径リボルバーを引き抜き、銃弾が入っているか確認した。
「さじ加減てのは難しいな。いっその事楯無に頼んだ方が良いんじゃないか?隠密行動はあちらさんの家柄としては十八番だろうし。」
「うむ・・・・」
一夏が淹れたお茶の入ったティーカップを取って一口啜った。
「もうすぐ休みだな。どうした物か・・・?」
「私は、兄さんが育った家を見てみたい。」
マドカの言葉に一夏は僅かに眼を見開いた。考えてみれば、自宅に戻った事は殆ど無かった。今まではずっと社宅か企業の部屋で過ごしていた。掃除もしばらくしていない。
「そうか。分かった。良いぜ。ただし、お前にもちょっと手伝って貰う。まだ戻ってないから、暫く掃除もしていない。俺一人じゃ一日中掛かってしまう。」
マドカは軽く頷き、二人はモノレールでIS学園を出ると、停車していた白と黒の二台のバイクに跨がり、長らく戻らなかった一夏の家に戻った。だが、この時一夏は知らなかった。先回りをしている者達がそこで待ち伏せていると言う事を・・・・
「着いた。ここだ。」
「意外とシンプルな作りだな。」
「そうか?あんまり考えた事無かったな。まあ、とりあえず入ろう。」
ドアノブに手をかけたが、鍵は開いていた。千冬が帰っていると言う事は考え難い。幾ら学年の終わりとは言え、彼女は教師だ。まだ仕事が残っている。仕事をすっぽかして帰宅すると言う事は緊急自体でもない限り考え難い。何より、彼女の靴が無い。
「開いている・・・・?馬鹿な・・・」
「ピッキングの形跡は無いな。合鍵を予め持っていたのだろう。」
「ったく、人の家に土足に上がるとは・・・・」
一夏はパラオードナンスを瞬時に引っ張り出し、安全装置を外した。コートの内側に入っているサプレッサーを銃口に嵌めると、中に入る。耳を澄ませたが、物音一つ聞こえない。
「私は一階を見回る。兄さんは上を。」
「分かった。」
一夏は二階に上がって行き、扉を蝶番から吹っ飛ばす程の勢いで蹴り開けて部屋を片っ端から調べて行く。二階には誰もいない。影に隠れるのを防ぐ為に全ての部屋の電気を点け、再び下に降りた。
「マドカ、どうだ?」
だが返事は無い。パラオードナンスをしまうと、左腰の改造した357マグナムとトーラスジャッジを引き抜いて撃鉄を起こした。威力だけならそれらの方が上だ。リビングへ通じる扉のすぐ近くに電気を点ける為のスイッチが有る。それを軽く叩き、部屋に転がり込んだ。突如クラッカーの音がして、紙テープが体に掛かる。すると、
「「「「「「「一夏、お帰り!!!!!」」」」」」」
不特定多数の揃った声が言った。
「何・・・・?」
一夏は何が何だか分からず、相変わらず銃を下ろさない。
「マドカ、どう言う事だ?」
「すまない、皆に頼まれてな。どうしてもやりたいと言って聞かなかったのだ。それに、色んな面で負け続けているから、一泡ふかしてやりたいと言っていた。私も最初は反対していたが、兄さんの驚く顔が見れると言われて、つい・・・・」
「悪いな、俺もちょっと驚かせたくなっちまった。
一夏の視線は専用機持ち達と弾の間を彷徨っていたが、楯無がチラリと目を逸らすのを一夏は見逃さなかった。それを見て一夏は小さく舌打ちをする。
「(丸め込まれたか・・・・)全く、声がしなかったからてっきり何か起こったのかと思ったぞ。危うくお前らを撃ち殺す所だった。」
銃をホルスターにしまい込み、地面に座り込む。テーブルの上には様々な料理が所狭しと並んでおり、ラッピングされた箱も幾つか壁の端に置かれていた。
「これでやっと終わったね。」
シャルロットがジュースの入ったグラスを手にラウラの隣に座って言った。
「うむ、そうだな。今は現状維持に専念する位か。」
ラウラもグラスの中を覗いて答える。
「やっと帰って来たね、一夏。お帰り。」
「おう、ただいま。で、俺がいない間何か変わった事は?」
「あ、うん。それがね、薫子のお姉さん渚子さんって言って雑誌記者なんだけど、貴方達にインタビューをしたいんだって。」
簪の労いの言葉を受けてジュースの入ったグラスを貰うと、一夏の質問に楯無が答える。
「貴方達、と言うと?企業にいる全員は無理だぞ?数馬は今新しい武装のテスト中で、後会計の仕事も手伝ってるし、三緑さんは司狼さんの警護、シュヴァルツェア・ハーゼは役員会の警護と搬送されている物資の運搬、そして憲司さんと協力して各国の政府を遠目に監視している。手が空いてるのは今この場にいる俺達位だ。それに、ATLASの事に関しては箝口令を敷かれてるから詳しい事は話せない。話したら最後司狼さんに首斬られるからな。」
「うーん、そっかー。残念。まあ、駄目もとだったしね。他にも雑誌のモデルやって欲しいとも言ってるけど・・・・?ギャラもちゃんと払うって言ってるし。」
「それなら別に構いはしない。」
「あ、私もやりたい!ラウラもやろうよ。」
「う、うむ・・・・まあ、良いか。」
「俺は兎も角、マドカはそう言うの苦手だっただろ?」
「克服しようとは思っているのだが・・・・カメラの前に立つのはあまり、な。」
「じゃあ、良い機会だ。行こうぜ。漁って辺りで良いか?」
「オッケー、掛け合っとくわ。後、マドカちゃんから聞いたけど、監査機関の方は私に任せて頂戴。理事長に掛け合っておくわ。さてと、今は楽しみましょう。遅くなったけど、お帰りなさい兼一夏君の誕生パーティー、始めましょ。」
和洋折衷の飲食物の乗ったテーブルから少しずつ色々と摘み、始まった。
説明 | ||
戦い終えてー、朝が来た?♪今回は戦闘はなしです。ちょっと休憩してもらいます。 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
1380 | 1310 | 3 |
タグ | ||
IS 仮面ライダー龍騎 | ||
i-pod男さんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |