東倣葵童詩 3 |
東倣葵童詩 〜 The Ballad of East and West.
青い瞳の巫女と今どきの妖怪による些細な話。
3話
カタリナが来てから半年ほど経っただろうか。
夏の暑さも和らいで、ようやく彼女の服装でも快適な季節がやってきた。
秋の神社といえば紅葉だが、残念ながらこの神社は針葉樹ばかりで
そういうものには期待できそうに無いのが参拝客不足に拍車をかけていた。
都会といっても朝は静かなものだ。もうすぐ彼女がやって来るだろう。
境内から鳥居の方を眺めていると、鳥のような不自然な鳴き声が聞こえてきた。
淀 「何の音だ。」
神社のすぐ前には交差点がある。
音の発生源はどうやらこの交差点の信号機らしい。
しかし、私が様子を見に行くと音は鳴らなくなってしまった。
この信号機にそんな機能は無かったはずなのだが・・・
そんな事を考えていると、見慣れた人間が手を振りながら横断歩道を渡って来た。
カタリナ 「おはよう! 外にいるなんて珍しい。
待っててくれた?」
淀 「ん? まあそんなところだ。」
カタリナがやってきたので一旦神社に戻る事にしたが、神社に戻る途中
彼女は気になる事を口にした。
カタリナ 「ねえ、この信号も音が出るようになったね。」
淀 「この信号も?」
カタリナ 「うん。 近くの信号はみんな音が出たり出なかったりするよ。
この音は目が見えない人の、渡っても良いって合図なんだけど
何で鳴らない時があるのかな。」
淀 「・・・」
カタリナ 「ヨド?」
そういう事か。
私の事といい、カタリナはそういうものには人一倍鋭いようだ。
しかし、それが彼女にとって都合の良い事ばかりでは無い。
淀 「よーく聞け。 あれは妖怪の仕業だ。」
カタリナ 「え、ほんと!?」
淀 「しかし関わってはいけない。ああいう機械に棲みつくような新しい妖怪は、
古くからいる私のような妖怪とは性質が違うのだ。」
カタリナ 「えー。」
新しい妖怪。
今でも生まれては消えてゆく実体を持たない妖怪は数多く存在する。
しかし、その中から稀に強力な妖怪が出現する事もある。
そのような妖怪は、我々とは違い人間の悪意から生まれたものばかりだ。
ほとんどが意味も無く人間の命を奪う為だけに存在している。
人間が、他の人間を殺す為に創りだしたもの。 それが現代の妖怪の実態だ。
淀 「とにかく、あの信号機には気をつける事だ。
交通安全だぞ、交通安全。」
カタリナ 「うーん・・・わかった。」
カタリナは残念そうな顔をしていた。
神社の境内では特に変わった様子も無く、彼女はいつも通り仕事を終えた。
カタリナ 「じゃあまた明日ね、ヨド。」
どうやら彼女は隠し事が出来ない性格らしい。
いつもよりよそよそしい態度で帰っていくので、気配を消して後を追う事にした。
夕方の交差点。
薄暗い横断歩道でカタリナが信号が変わるのを待っている。
彼女は手前の信号機をじっと見ていて、あまり前を見ていないようだ。
そしてあの音が鳴り始め、彼女は歩き出した。
しかし、向かいの信号はまだ赤いままだ。
淀 「待て!」
私は急いでカタリナの手を引いた。
目の前を自動車が走り去る。 彼女は驚いて固まってしまっていた。
これがあの妖怪の手口なのだろう。
カタリナ 「ヨド!」
淀 「まったく、いわんこっちゃない。
世の中、お前の思っている妖怪ばかりとは限らないのだ。」
カタリナは少し悔しそうな顔をして帰っていった。
信号機の妖怪は何故こんな所にやって来たのか。
外から神社の様子を見ると、前よりもその存在がはっきりと
認識できるようになった気がするが、その事も関係しているのだろうか。
・・・ただひとつ言えるのは、神社の巫女に手を出した
あの妖怪には然るべき制裁を与えなければならないという事だ。
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・オリキャラしかいない東方project系二次創作のようなものです。 | ||
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