ソードアート・オンライン ロスト・オブ・ライトニング 第四話 風妖精の少女
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デュオ視点

キリト「ユイ、こっちか?」

 

ユイ「はい。丁度あそこです!」

 

デュオ「よし。」

 

キリトの胸ポケットからユイが指を差した森の中を目指し、俺とキリトは飛ぶ。

俺は感覚で随意飛行を習得したが、キリトはまだ左手の飛行操作スティックを使って飛んでいる。

2人は目的地と思われる場所へ向かって下降していく。

だが、キリトは着地する体勢に入っておらず、スピードも落としていない。

 

デュオ「ちょっと待て、キリト!」

 

キリト「えっ・・・?うわぁぁぁ!?」

 

キリトはガサガサという音とともに、転がっていった。

 

デュオ「やれやれ・・・」

 

デュオは溜息をつきながらキリトを追う。

すると、木が少し少ない広場のような場所に出る。

そこで、一方的というか卑怯な戦闘の光景を目にした。

新緑色の瞳に、金色の長いポニーテール。布主体の軽装備に身を包み、長刀を携えた((風妖精|シルフ))の少女一人を、赤いヘビーアーマーを装備し、長大なランスを構えた((火妖精|サラマンダー))の男三人が半円状に取り囲んでいる。

当事者たちにとっては緊張感のある場面だったのだろうが、キリトが乱入してしまったことで、視線がキリトにいっている。

 

キリト「うう、いてて・・・着陸がミソだなこれは・・・」

 

キリトは頭を押さえながら立ち上がると、反省するように呟いた。

 

デュオ「何やってるんだよキリト。着地ぐらい・・・」

 

少女「何してるの!早く逃げて!!」

 

俺が言いかけた時((風妖精|シルフ))の少女が叫んだ。

見ると、((火妖精|サラマンダー))たちはこちらを攻撃するかどうか考えているような状態になっている。

立ち上がったキリトは手をポケットに突っ込むと、そこにいる全員を見渡してから口を開いた。

 

キリト「重戦士三人で女の子一人を襲うのは、ちょっとカッコよくないなぁ」

 

サラマンダーA「何だとテメエ!!」

 

少女の方に槍を構えていたサラマンダー二人が、その台詞に反応した。

槍を構えたまま空中を移動し、俺たちにランスの切っ先を向ける。

 

デュオ「あ〜あ・・・どうするんだキリト、かなりご立腹のようだぞ。」

 

首をポキポキと鳴らしながら言うと、サラマンダーが言ってくる。

 

サラマンダーB「初心者がノコノコ出てきやがって、望みどおりついでに狩ってやるよ!」

 

牽制に一人残し、サラマンダーの二人がこちらに突進してくる。

 

デュオ「どうする?」

 

キリト「もちろん・・・」

 

短い会話の答えは、行動で示した。

顔の直前まで迫ってきたランスの切っ先を、片手で掴んで受け止める。

 

少女「えっ・・・?」

 

サラマンダーA「な・・・!?」

 

サラマンダーB「嘘だろ・・・!?」

 

デュオ「残念ながら現実・・・いや、仮想現実です。」

 

頬に笑みを浮かべてそう答える。

驚くシルフの少女とリーダー格のサラマンダーを他所に、俺たちは掴んでいたランスごと突撃したサラマンダーを放り投げる。

 

サラマンダーA&B『うわあああああぁぁぁ・・・!?』

 

俺と同時にキリトが投げた仲間に、俺が投げたサラマンダーが激突し、二人は錐揉みしながら地面に落下した。

それを見てから、キリトはやや戸惑ったような顔で棒立ちになっている少女に訊ねる。

 

キリト「えーっと、その人たち、斬っていいのかな?」

 

少女「そりゃ・・・いいんじゃないかしら・・・少なくとも先方はそのつもりだと思うわよ・・・」

 

デュオ「今更、許してくださいって言っても遅いだろ・・・」

 

キリト「それもそうだな・・・んじゃ失礼して・・・」

 

キリトは剣を抜くと、少し腰を低くして剣をだらりと垂れ下げ構える。

一見気合いが入ってなさそうなフォームだが、次の瞬間

ズパァン!という空気の破裂するような音が鳴り響き、サラマンダーを切り裂いた。

その姿勢は剣を振り下ろした低い姿勢となっていて、一瞬遅れて立ち上がりかけだったサラマンダーの片方が、死亡エフェクトを残して消え去る。

そして、サラマンダーが消えた場所には、炎が残る。

俺も、キリトの後に続くように一瞬で移動すると、真正面からもう1人のサラマンダーに斬りかかる。

 

デュオ「余所見は危ないよ。」

 

抜剣と同時に、右上から剣を振り下ろし、今度はその軌跡を辿るように振り上げる。

だが、2撃目は手応えが無かった。

2人目のサラマンダーも赤い炎に包まれ四散し、小さな炎が残った。

 

キリト「あんたも戦う?」

 

立ち上がったキリトが、残ったサラマンダーに訊いた。

 

サラマンダーC「いや、やめておくよ。もうすぐ魔法スキルが900なんだ。((死亡罰則|デスペナ))が惜しい。」

 

キリト「正直な人だな。」

 

キリトがにやりと笑うと、俺もシルフの少女に問う。

 

デュオ「君はどうする?あいつと戦いたいなら邪魔はしないけど・・・」

 

俺の問いに苦笑しながら、彼女は答える。

 

少女「あたしもいいわ。次は負けないからね。サラマンダーさん。」

 

サラマンダーC「正直、君ともタイマンじゃあまり勝てる気はしないけどね・・・」

 

重戦士は燐光とともに森の向こうへと飛び去って行った。

少し時間が経ち、二つの残り火が消えた。

 

少女「で・・・あたしはどうすればいいのかしら・・・?お礼を言えばいいの?逃げればいいの?それとも戦う?」

 

少女はそう言うと、腰の長刀に手を掛ける。

少女とは逆に、俺とキリトは剣を鞘に収める。

 

デュオ「ご自由に・・・ちなみに俺たちに戦う気は全くないんで。」

 

俺が答えると、キリトが難しそうな顔をしてから言った。

 

キリト「うーん、俺的には正義の騎士が悪漢からお姫様を助けた、っていう場面なんだけどな・・・」

 

少女「えっ・・・?」

 

キリトの言葉に、少女はキョトンとした様子になる。

にやりと笑うとキリトは続ける。

 

キリト「感激したお姫様が涙ながらに抱きついてくるとか・・・?」

 

少女「な・・・ば、馬鹿にしてるの!?」

 

予想外の答えに、少女は少し顔が赤くして長刀を握り締める。

 

デュオ「キリト、浮気すると後で嫁に殺されるぞ・・・」

 

キリト「そんなんじゃないさ。」

 

忠告してやると、キリトは悪びれる様子も無く笑った。

 

ユイ「そんなのダメです!!」

 

キリト「あ、こら。出て来るなよ」

 

キリトの胸ポケットからら、ユイが飛び出した。

ユイはしゃらんしゃらんと音を鳴らしながら、キリトの周りを飛び回る。

 

ユイ「パパとくっついていいのは、ママとわたしだけです!!」

 

少女「ぱっ・・・パパ・・・!?」

 

少女は刀から手を放すと、ユイのことをまじまじと見つめて訊いてくる。

 

少女「ねぇ、それってプライベート・ピクシーってやつ?」

 

キリト「えっと?」

 

少女「あれでしょ、プレオープンの販促キャンペーンで抽選配布されたっていう……。へえー、初めて見るなぁ。」

 

ユイ「あ、わたしは……むぐ!」

 

キリトはユイの口を塞ぐと、適当に誤魔化す。

 

キリト「そ、そう、それだ。俺クジ運いいんだ・・・」

 

リーファ「ふう〜ん・・・」

 

少女は俺とキリトを交互に見た

 

キリト「な、なんだよ」

 

デュオ「どうした・・・?」

 

少女「いや、変な人たちだなあと思って。プレオープンから参加してるわりには、装備は弱そうだし、かと思うとやたら強いし・・・」

 

キリト「ええーと、あれだ、昔アカウントだけは作ったんだけど始めたのはつい最近なんだよ。ずっと他のVRMMOをやってたんだ。」

 

半分真実で半分嘘を言うキリト。

 

少女「へえ〜・・・それはいいけど、なんでスプリガンがこんなところをうろうろしてるのよ。領地はずうっと東じゃない。インプもサラマンダー領の向こう側じゃん。」

 

キリト「み、道に迷って・・・」

 

キリトのその言葉に、少女は吹き出した

 

少女「ほ、方向音痴にも程があるよ・・・!!君たち変過ぎ・・・!!」

 

キリト「そ、そうかな・・・」

 

デュオ「まあ、スプリガン領は大陸のほぼ反対側だしな・・・」

 

キリト「なるほど・・・」

 

少女「まあ、とにかくお礼を言うわ。助けてくれてありがとう。あたしはリーファっていうの」

 

リーファはお礼と自己紹介をしてきた。

 

キリト「俺はキリトだ。で、この子はユイ。」

 

キリトが自分とユイの紹介紹介を終えると、俺も軽い自己紹介をする。

 

デュオ「俺はデュオ。よろしく。」

 

リーファ「こちらこそ、よろしく。」

 

ユイは軽く会釈すると飛び立ちキリトの肩に座った

 

リーファ「ねえ、君たちこの後どうするの?よかったら、その・・・お礼に一杯おごるわ。どう?」

 

キリト「俺はいいけど、デュオは?」

 

デュオ「俺もいいぜ。」

 

キリト「じゃあ、お言葉に甘えてお願いしようかな。」

 

リーファ「じゃあ、ちょっと遠いけど北のほうに中立の村があるから、そこまで飛びましょう。」

 

キリト「あれ?スイルベーンって街の方が近いんじゃ・・・?」

 

キリトがそう口を挟む。するとリーファは呆れ顔でキリトを見る。

 

リーファ「ほんとに何も知らないのねぇ。あそこはシルフ領だよ。」

 

キリト「だから・・・?」

 

デュオ「街の圏内だと別の種族はシルフを攻撃できないけど逆はありなんだよ。」

 

キリト「へえ、なるほどね・・・でも、別にみんなが即襲ってくるわけじゃないんだろう?リーファさんもいるしさ。シルフの国って綺麗そうだから見てみたいなぁ。」

 

リーファ「リーファでいいわよ、デュオ君もね。本当に変な人。まあそう言うならあたしは構わないけど・・・命の保証まではできないわよ?」

 

キリト「ああ、構わない。」

 

デュオ「危なくなったら逃げるとするよ。」

 

リーファ「じゃあ、スイルベーンまで飛ぶよ。そろそろ賑やかになってくる時間だわ。」

 

すると、リーファは左手を動かすことなく翅を広げたのでキリトは首を傾げた。

 

キリト「あれ?リーファも補助コントローラなしで飛べるの?」

 

リーファ「まあね。君たちは?」

 

キリト「俺はちょっと前に、こいつの使い方を知ったところだからなぁ」

 

デュオ「俺は最初からコントローラー無しで飛んでる。」

 

リーファ「デュオ君すごいね・・・まあ、随意飛行はコツがあるから。できる人はすぐできるんだけど・・・試してみようか?コントローラ出さずに、後ろ向いてみて。」

 

キリト「あ、ああ」

 

キリトが体を半回転させると、リーファはキリトの翅に触れる。

 

リーファ「今触ってるの、わかる?」

 

キリト「うん」

 

リーファ「あのね、ここから仮想の骨と筋肉が伸びてると想定して、それを動かすの。」

 

キリト「仮想の骨と筋肉・・・」

 

キリトは確認するように呟くと、背中の翅を振るわせ始める。

 

リーファ「そう!今のをもう一回!もっと強く!」

 

キリトの翅は振動数を上げ始めると、かなりの勢いで翅を振動させていく。

 

リーファ「えいっ!」

 

どんっ!という音とともに、リーファがキリトの事を空中へと押し出した。

本来ならばそこで浮くのだろうが、キリトの翅は浮くには充分すぎるほどの推進力を持っていた。

結果、リーファの一撃はキリトの翅のエネルギーを一気に解放してしまい、キリトはロケットのような勢いで、空中に飛び出したのだ。

 

リーファ「やばっ!!」

 

ユイ「パパ〜!!」

 

デュオ「やれやれ・・・」

 

二人の慌てた声と、一人の溜息の後、残った3人も空へと飛び立つ。

木々の間を抜け、森の上空へと出る。

 

キリト「うおわあああああ・・・!?たぁすけてくれぇぇぇぇぇ・・・!!?」

 

そこでは、飛行を制御出来ていないキリトが、右に左にとふらふらに飛び回るのが見えた。

それを見て・・・

 

リーファ「ぷっ・・・あはははははははははは・・・!!」

 

ユイ「ご、ごめんなさいパパ。面白いです〜・・・」

 

1人の風妖精と1人の小妖精は、同時に笑い出した。

空中でホバリングしたまま足をばたつかせて笑い、少し収まってくると……

 

キリト「ぎゃああああぁぁぁぁぁ・・・!?」

 

再び意キリトの悲鳴を聞いて、また笑う。

そんな事を何度か繰り返していると、呆れた俺はキリトの襟首を掴んで、捕獲した。

その後キリトは、リーファに随意飛行の訓練をしてもらう。

その間俺は、ユイと遊んで待っていた。

 

キリト「おお・・・これは・・・いいな!」

 

コツを掴んだらしく、キリトは感嘆の声を上げた

空中を安定して飛行するキリトが、不意にそんな事を叫んだ。

その顔には解放感が浮かんでいる。

 

リーファ「そーでしょ!」

 

キリトに並んで飛ぶリーファがそう叫んだ。

これまでの様子を見ているに、リーファはかなり飛ぶことが好きなようだ。

 

リーファ「慣れてきた背筋と肩甲骨の動きを小さくするよう練習してみると良いよ。あんまり大きいと((空中戦闘|エアレイド))のとき剣振り辛いから。じゃあ、このままスイルベーンまで飛ぶよ!ついて来て!」

 

キリト「ああ!!」

 

デュオ「OK!!」

 

夜空の中を、黒、緑、紫の三つの光が一直線に駆け抜けていった。

説明
シルフの少女の登場
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コメント
スターダストさんへ ところがチーターでも無ければ、運営側の人でもありません。キリトとデュオの2人掛かりでも全く歯が立たないほどの強さを持っています。(ロスト・オブ・ライトニングでは登場しません。)(やぎすけ)
チーター(×2)、おまけにチート装備有り・・・・うん・・・まず居たとしたら、同じくチーターだろうな〜となると、やっぱり運営側かな?(スターダスト)
本郷 刃さんへ 実はそんな人がいるんです。かなり後になって出てきます。(やぎすけ)
キリトとデュオに勝てるヤツなんてそうそういない・・・・・・あれ? 全然イメージできない!?(本郷 刃)
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