スペースネット「synchro⇔spirit」
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「あ、改めて自己紹介します。本日よりISNAエージェントになりました、エージェント名 クーヤ。本名、碧風((空弥|くうや))です。よ、よろしくお願いいたします!!」

「碧風って……」

「そうさ、妹だ」

美空博士は席を立つと棚の一つへと歩いていき、何かを取り出した。

「空弥、彼女らが一緒にミッションを行うエージェントだ。粗相無いようにな」

「う、うん、お姉ちゃん」

空弥は陸葉と海菜を見る。

「先ほどはすみませんでした。まさかお二人がそうとは知らなかったものですから」

「気にしないで下さい。もう終わったことですし」

「そーですよ! それより、これからヨロシク!」

「は、はい!」

「よろしく頼むよ2人共、年上だけど、気兼ねせず話してくれた方が空弥も楽だろうからね」

「「え?」」

陸葉と海菜は2人揃って美空博士を見て、空弥を見た。

「ど、どうしました?」

その視線に空弥はビクッと驚く。

「えっと……失礼ですが、お年は?」

「え? えと……16、ですけど……」

「「!?」」

2人に衝撃という稲妻が走った。

「見えないだろう?」

「「はい」」

美空博士の問いに即答する程だ。

「うぅ……よく言われますけど、さすがにショックです……」

空弥は落ち込み過ぎて壁に手を当てて肩を落としてしまった。

「こらこら落ち込むな空弥、これからエージェントとして活動するんだぞ。その性格を治すんだって言ってたじゃないか」

「う、うん、そうだったね……よーし、これから頑張っていくぞー!」

「まぁ先はかなり長いだろうけどな」

「はぅ!?」

予想外の口撃に膝から崩れそうになる。

それを見た2人は、『あぁ、そういう関係か……』と思っていた。

「ほら、空弥のビームシールドだ。手に合わせてみな」

「う、うん、ありがとうお姉ちゃん」

空弥は美空博士からビームシールドを受け取り、左手にはめてみる。

「うわぁ……」

ピッタリとはまった。

「眺めてるところ悪いが空弥、2人にあのアイテムを見せてあげるんだ」

「う、うん」

空弥は腰の右側についていたホルスターからアイテムを引き抜き、両手の上に寝かせて置いた。

見た目は拳銃のライフル。しかしシリンダーは無く、その部分にはひし形をしたパーツが花弁のように四つくっついている。ひっくり返した裏側も同じ模様だ。

「コレが、スピリットガン……対洗脳者用の技を持つISNAの最新アイテム……」

「やっぱりカッコいいー!」

「最新とは言っても、まだ試作機のそれしかないけどな。このミッションが成功したら、量産が決定する。成功はすなわち洗脳者の解放速度増加につながる、願わくば成功を祈るよ」

美空博士は再び席に座った。

「ではまず、ここパープル星でテストをしてもらおう。場所は2人なら知っているだろう、あの洞窟だ。ほら、一応通信バッジの選別をしておこう」

机の引き出しを開くと、その中にあった通信バッジを、陸葉と海菜はすでに持っているから3つ、持っていない空弥には5つ渡す。

「先に言っておくが、今回は仲間を呼ぶのは止めておけ、まぁ最悪ピンチならやられる前に呼べばいい。その辺の判断は……そうだな、ウミナ、君に任せる」

「はい、任せて下さい」

3人の中で一番統率力がありそうな海菜に、リーダーを任せた。

「よし、ではミッション開始……の事前テストだ。もしここでダメなようなら、計画段階からやり直しだが、まぁ気を張らず頑張ってくれな」

「「「……」」」

『そんなこと言われたら……』3人の気持ちが初めて予想外の内に揃った。

 

 

一抹の不安を持たされたまま、3人は研究室を後にした。

 

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「うわー、やっぱり寒いね!」

パープル星。そこはレインボー星系の中で、最も寒い星。

地表のほとんどが氷に閉ざされた天体で、その寒さの為建築物や施設も氷がついている。

ポラーイにも街の四ヶ所に発熱所があり、それで街の中は暖かさを保っているが、一歩でも街を出れば、氷点下だ。

そんな場所にある、氷山の一つが洞窟となっている。3人はそこへ訪れていた。

「ここで何をすればいいの?」

「スピリットガンのテストだけど、とにかく奥まで行ってみましょう。まだ洗脳された人達がいるかもしれないし」

ISNA本部があることもあり、洗脳された人が最も少ないのがここパープル星。しかし全てではなく、こうした洞窟の奥にはまだ屯っていたりするのだ。

洞窟の中、3人の会話が響き渡る。

「では空弥さんは、パープル星で育ったんですか」

「はい、物心ついた頃には回りは宇宙人の皆さんがいました」

「でもパープル星で産まれたら、パープル星の人を宇宙人って呼ぶのはおかしくないかな?」

「え……そ、そうでしょうか?」

「まぁ、地球人という呼び方は出来ませんから……パープル星人、でしょうか」

「おー、何かカッコいい響き」

「ですが、地球人も広く見れば宇宙人ですし、パープル星で産まれたという保証も無いので、問題は無いかと」

「なるほどー、そういうことらしいですよ、空弥さん」

「えっと……あの、お二人共、少し良いですか?」

「はい?」

「なんですか? 空弥さん」

「その……これから一緒にミッションを行っていくのですし、出来れば私のことは、空弥と呼び捨てで呼んでくれませんか?」

「……」

「……」

「あ、あの、無理にとは言いませんので、その方が、私も安心出来るといいますか……」

「分かりました。性格上たまにさん付けで呼んでしまうかもしれませんが、極力頑張るようにします。なのであたしも呼び捨てで、空弥」

「あ……ありがとうございます、海菜さん……いいえ、ありがとう、海菜」

「じゃあわたしは、くーやちゃんって呼んでいい?」

「ちょ、陸葉、それはさすがに」

「ふふ、もちろん良いですよ。私も陸葉ちゃんって呼びますから」

「まぁ……本人がそう言うなら」

「さぁ行こうー!」

「はい!」

 

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階段を降りると、広めの部屋が一つだけあり、それ以上は先に進めない。つまりはここが最深部だ。

「2人共、ここまでで誰か見た?」

「ううん、だーれも」

「ここにはもういないのでしょうか?」

ここに着くまでの数十分、3人は誰とも会わなかった。

いくら少ないと言っても、それは異常な確率。

「……ひょっとしたら」

「グワッハッハッ! その通りだ!」

高笑いに振り返ると、そこには、

「キサマ等の後をつけ、ここで一網打尽にするつもりだったのだ!」

見た目はセイウチのような姿をした、ドドス。

「貴殿等の動きを予測し、常に目の行かない真後ろを取っていれば、尾行など容易い」

フェレットのように長い肢体に、刃のような腕を持つ、ビレット。

「エージェントというのはその程度の集中力なのか、それだからツノが小さいんだ」

頭上に4つに別れたものと、鼻の前に一つの、ツノを持つサイのような姿の、カリオス。

計三人の宇宙人が、唯一の道である階段の前に陣取っていた。

「道はふさいだ、つまりキサマ等はワシ等と戦う以外に道はないのだ!」

「あわわ……まさか尾行されていたなんて」

「グワッハッハッ!」

しかし、

「分かってたわよ」

「ナヌ?」

海菜は2人より一歩、三人へと近づいた。

「最初は勘違いの可能性も考えたけど、途中から確信に変わったわ。だからわざと、階段しか道の無いここへ来たのよ」

「フンッ、イジをはれるほどの威勢はあるようだな。だが今言ったように唯一の道をふさいだのだぞ、どうするという…」

「話長いわね、あたしもうこっちにいるわよ?」

「ナヌ!?」

ドドス達が振り向いた頃には、海菜は階段の手前へと移動していた。

「は、早いのです、海菜」

「あれでまだ通常の状態だからスゴいよねー」

急に移動した海菜に空弥は驚き、陸葉は見慣れたという風に呟いた。

「陸葉! 空弥! 今の内よ!」

「オッケー!」

海菜の合図に陸葉は飛び出した。

パワーグローブを付けた右手を握り、三人へと迫る。

「ちょうどいい、見せてもらうぞエージェントの力!」

陸葉の前に立ったのはカリオス。自らの武器であるツノを向け、陸葉を待つ。

「貴殿の相手は拙者だ。その速度、手合わせ願おう」

海菜の前にはビレット。刃のような両手を構え、海菜を挑発するように向ける。

「別に良いわよ、二人同時とかでも」

「不要だ。貴殿との速度勝負を望みたい」

「あっそ、それじゃ…」

 

そこからは刹那の間に事が動いた。

 

陸葉のパワーグローブに力が集まり、齢14の少女が出せる筈もない、宇宙人にも通用する攻撃力が発動する。

「パワー、シュート!」

 

ガッ!

 

「ぐあ!?」

真正面から受けたカリオスは、衝撃を受け止めきれずに吹き飛び、洞窟の壁にぶつかり派手な音を立てた。

「「!?」」

その光景をドドスとビレットは目で追う、

「よそ見してていいの?」

その前にいた海菜が動き、ビレットの懐へと飛び込む。

「しまっ…!?」

海菜のアイテム、両足に装備されたジェットブーツに力が集まり、速度を込めた上段蹴りがビレットの顎に突き刺さる。

 

「ジェット、ブースト!」

 

ビシュ!

 

「ぐ!?」

防御も回避も間に合わずビレットは直撃を受け、後ろへと倒れた。

 

「な、なんだと!?」

ドドスが驚きの声をあげる。

つい先ほどまで通路を封じて優位に立っていたというのに、気が付いたら後ろを取られ、瞬く間に仲間が二人が倒されていた。

「ウヌヌ……こ、こうなったら!」

考えたドドスの選択は、恐らく最善のものだった。

「一番弱そうなキサマを倒してやる!」

ドドスは孤立してあわあわしていた空弥へと向かう。

それを見た陸葉と海菜は同時に、しまった! と感じた。

ドドスはパープル星に住む宇宙人の中でも取り立て力が強く、駆け出しのエージェントでは苦戦を強いられる。

まさに駆け出しのエージェントの空弥では、勝てる筈がなかった。

「くーやちゃん!!」

陸葉が声を飛ばし、海菜が駆けつけようと足を動かす。

その時空弥は、立ち向かうべく、ホルスターからスピリットガンを取り出して、グリップを両手で握った。

 

その瞬間、

 

 

 

タァン!

 

 

「ヌァ!?」

ドドスは謎の衝撃を受けて移動を止めた。

「な、なに、今の?」

動きを止めたドドスを見た陸葉と海菜は、その正面に立つ原因を作ったと思われる人物を見る。

「……」

そこには、スピリットガンの銃口をこちらに向ける、顔を下げた空弥の姿。

その空弥が顔を上げる。

「……」

その目は、先ほどまでのあわあわしていたものとは違い、決意のこもった、戦うことを覚悟したものの瞳に。

言い換えれば、先ほどの空弥からは全く想像の出来ない目をしていた。

「……待っててね。すぐに、助けてあげるから」

年相応に聞こえる、誰かを助けるという言葉を聞いた陸葉、海菜、そしてドドスの3人は、揃ってこう思った。

 

 

 

 

 

 

え……あれ、誰?

 

説明
第二話 氷山での遭遇


月一ペースくらいでお送り出来ればな、と思っています。
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