IS x 龍騎?鏡の戦士達 Final Vent:勝利を勝ち取り |
荒い息遣い、止めどなく流れ出る血、そして泥の様に重く、不快感を感じる意識。その中に、司狼はいた。壁を背にして座っているその表情は不思議と穏やかだった。足元には煙を上げて粉々に砕けたデッキが落ちている。ヴォルフのデッキだ。
「くそ・・・・何つーパワーだ・・・・あのファイナルベント・・・・俺まで余波を喰らっちまったか。こいつを、持ってて良かったぜ・・・・」
司狼の左手には、黒と金のレリーフがある赤いデッキが握られていた。もう一つの、リュードのデッキだ。コアミラーが破壊され始めると同時にオーディンと自分のデッキが破壊され、変身を解除されてしまう。持っていたデッキでリュードに再び変身し、ディメンジョンホールが閉じる前にどうにか現実世界に戻る事に成功したのだ。
「勝ったぜ・・・・やっと・・・・はははは・・・・はあ・・・」
血を流し過ぎて意識が朦朧とし始める。体の感覚もなくなり、冷たくなり始める。
(もう少し・・・・生きてみるか・・・?)
すると、突然デッキがポケットに入っているコアと共鳴するかの様に光り始めた。デッキをコアに近づけると二つが重なり、姿を変え始めた。腕にズシリと巻き付き、左手中指にも巻き付いた。途端に目の前が真っ白になる。
(ここは、一体・・・・?もしかして俺の意識の深層部か?)
『察しが良いな。』
(お前・・・・・インフェルノブレイザー・・・)
赤黒い体色は変わらないが、ティラノサウルスにも負けない巨体、巨大な翼、そして鋭利な牙と爪を持つ巨大なドラゴン、炎獄双龍インフェルノブレイザー(巨龍態)が目の前に立っていた。
『随分と派手にやってくれた物だ。ミラーワールドは閉じてしまったのだな。』
(・・・・ああ。餌が無くて困るだろうな?)
『いや、別に構いはしない。俺はお前に従うと決めていた。ケルベライガーともそう言う取り決めをしていたのだ。』
(え?)
司狼は驚いた。契約モンスターは餌の確保の為にライダーを利用しているに過ぎない筈の存在だ。それが言語能力を有し、今自分に話しかけている。だがそれだけには留まらず、自分に従うと言い出したのだ。契約破棄すれば直ぐにでも相手を迷わず喰らうモンスターが自ら進んで手を組みたいと言うのは、余りにも予想外な言葉だった。
『お前は俺の主に相応しいと言っているのだ。ISとやらのコアに融合すれば力が高まると言っていたが、奴の言葉は間違っていなかった様だ。俺はこのコアに俺の意識を完全に定着させる。そうすれば人を襲う事も無いし、((食事|エサ))も必要無い。まあ、ライダーになる事は出来んが、ISとしてでもライダーと同等の力を発揮する事が可能だ。さあ、どうする?』
(・・・・・裏があるだろ?契約とは互いに利益があるから結ぶ物。俺はそれによって力を手に入れる。だが、お前はコアに定着してAIになって、何を得る?)
『快楽だ。』
(快楽・・・・?)
『お前が築き上げたこの世界を、あの((狼|犬っころ))共同様、見せてくれ。ミラーワールドは大飯を喰らう事しか能の無い連中ばかりだったからな。現実世界はそれ程までに興味深いと見た。だから、見せろ。俺は、この世界を見たい。』
(・・・・・良いだろう。)
思案に耽り、遂に頭を縦に振った。
(ただし、一つ問題がある。俺以外にもライダーはいる。そいつらの契約モンスターはどうするんだ?お前みたいに聞き分けが良い奴らばかりじゃないだろ?)
『そこは心配するな。既に話はつけてある。向こうも了承した。何の問題も無い。誓おう。』
龍人態に戻り、手を差し出す。
『さあ、早く見せてくれ!』
「良いぜ。来い!」
差し出された手を掴み、目覚めた所は病室だった。体中に包帯が巻かれており、左手には宝玉を口に銜えた龍が手首に巻き付いた様なブレスレットが巻いてある。それに左手中指に嵌った赤い指輪が鎖で繋がっていた。ベッド脇のテーブルには見舞いに来た人物がいたのか、花や果物の入ったバスケットが置かれている。
『目が覚めたか。』
AIになったインフェルノブレイザーがブレスレットから現れた。
「ああ・・・しかし・・・・・・・今までどれ位寝ていた?」
『一ヶ月半近くだ。出血多量に加え肋骨八本、肩甲骨、膝の損傷、足首、脛骨の骨折、頭蓋骨の部分的な陥没、右腕の複雑骨折、腹背筋、大胸筋が壊死しかかり、皮膚四割強の第三度熱傷、その他の筋肉数種類の激しい損傷。普通ならば半年近くは入院し、また数ヶ月はリハビリに専念しなければならない。生きてるだけでもありがたいと思え。ああ、次いでに左の眼球に少し傷が付いてるから、直ぐには見えないぞ。』
「そうかよ。まあ、生きてるなら儲けモンだ。暫く休んでなかったし、ゆっくり休養と洒落込もうか。」
そう言って司狼は目を閉じた。
「ふーーっ・・・・・」
紫煙を口から細く吐き出し、森次は病院の屋上に立っていた。
「それ、体に悪いですよ?早死にしますし。」
「一本位良いだろう?戦争に行ってる時は必ず一本は吸ってた。」
ポケットから煙草の箱を一夏に抜き取られ、更にライターまでも取られた。
「けど、司狼さんどうしたんでしょうね?あんな酷い怪我するなんて。あの人があそこまでの重傷を負うなんて始めて見た。一体どこにいたんでしょう?」
「さあな。だが、ボスにはその事は聞くなと言われている。知られたくない真っ当な理由があるんだろう。だったら、その意志を汲み取ってやるのが部下の勤めじゃないか?」
「・・・・そうですね。分かりました。俺もこの事は忘れます。でも、もう一つ気になる事があります。モンスターの気配を全く感じられません。ダークウィングですら、反応しない。変身も、出来なくなってます。」
「何?・・・・・成る程。そう言う事か。だったらあそこまでボスが派手にやられたのも頷ける。あのボスですら手こずる程の強敵だったと言う事だ。」
「あ・・・・・!」
一夏はその意味を瞬時に理解した。
「そう言えば・・・・あの黄土色の欠片・・・・あのオーディンを倒したのか・・・・でもミラーワールドが閉じたのに、まだ契約のカードが残ってる。」
「それだ。それだけが俺にはどうしても分からない。何故、デッキがまだ使える?俺も((IS|コイツ))を持ってるが、ライダーの力は何の問題も無く使える。全く謎だ。まあ、いずれボスが俺達に話してくれるだろうが・・・・」
「その時を待つしか無い、ですか?」
「ああ。俺はクラリッサと一緒にボスの警護があるから、戻るぞ。」
「禁煙ですから、それだけお忘れなく。」
「ああ。だが、ライターは返せ。」
ジッポライターを一夏の手から奪い取り、二人は屋上から降りて行った。一夏は暫くの間そこに残り、風に当たっていた。すると、腕時計がアラーム音を発する。
「そろそろか。」
煙草を投げ捨て、左の袖からワイヤーを伸ばして別の建物の鉄柵に引っ掛けると、どこぞのアメコミヒーローの様に飛び降りて次の高台へとワイヤーを伸ばす。辿り着いた所は、ホテルの屋上だった。
「少し遅れたな。」
中に入ると、ドレスを着た皆が出迎えに来た。
「こんばんは、マイ・レディーズ。待たせた?」
「二分だけ。」
シャルロットが腕時計を確認しながら((和|にこ))やかに言う。
「だが遅刻は遅刻だ。」
箒は唇を尖らせて顔を膨らませた。それで怒っているつもりなのかは知らないが、単に子供っぽく可愛らしいだけだった。
「ごめんごめん、司狼さんのお見舞いに行ってたんだ。暫くは動けないけど、役員会全員がそれまでカバーする事になってる。それまでの間は・・・・」
「分かってるわ。ごめんなさい、冗談が過ぎたわね。」
楯無が子供をあやす様に一夏の頭をポンポンと叩いた。ヒールが高めの物を履いているので、数センチだが背丈が一夏より上回っていた。
「おい・・・・」
「あら、ごめんなさい♪」
謝る気ゼロの声音だ。
「もう、お姉ちゃんてば、一夏を虐めちゃ駄目だよ?」
「そうだよ、楯無さん?」
「兄さんを敵に回せば私も敵に回ると思え。」
楯無以外の全員が一夏の後ろに陣取る。
「え・・・えーーーー?!私一人だけ悪者?!」
「今も昔も散々人を丸め込んでおきながらそれは無いだろう?」
「う?・・・・」
バツが悪そうに俯いて目を背ける。
「ほら、機嫌直せって。(チュッ)」
楯無の額に軽くキスしてやり、パンと一度手を叩く。
「さてと。遅ればせながら俺も来た事だし、食べに行こうか。」
「「「「「「「「はーい!」」」」」」」
この様子を、完治した様にしか見えない司狼が見ていた事は誰も知らない。
「あいつも、やるね。さてと、ブレイズ。これからちょっと面白い事をやりに行く。」
『面白い事?何だ?』
「女尊男卑の燻りはまだ消えていない。その火種を消しに行く。手始めに、アメリカだ。」
『一人で、か?』
「いや、二人だ。お前も加えてな。混沌は未だに続いている。それを少しずつ、元通りにして行くのさ。俺達はもう革命家ではない。歪み、綻びを直す、言わば修復者だ。修復の為に、俺達に向かって来る奴らは薙ぎ払う。」
『・・・・・ほう・・・?面白そうだな。では、行こうか。』
「おう。」
屋上に上り、左手を前に突き出し、甲を前にしながらそれを顔の側面まで引き寄せる。
「変身。」
光りに包まれ、現れたのは赤、金、白、黒の配色を持ったISだった。リュードの時とは全く外見は異なるが、左腕のヘルバイザー、バックル等、細部が酷似している。
『IS名称を入力して下さい。』
「・・・・・ヴァジュラ!」
一遍の迷いも無く、その名を叫び、ヴァジュラは空に舞い上がって蜘蛛を突き抜け、まるで月を目指すかの様に((成層圏|ストラトスフィア))へと姿を消した。
説明 | ||
はい、遂に最終回です。次回はトークをやろうと思っています。二つ目の作品、速くも終了してしまいました。ここまで頑張る事が出来たのも、読者の皆様の紫煙とコメントのお陰です。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 | ||
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コメント | ||
オリジナル主人公は出る可能性は結構高いです。クウガはまだ良いとしても、ディケイドはチート過ぎると思うので、恐らくは出しません。(i-pod男) 一つ質問なんですが、次回作でもオリジナル主人公は出るのでしょうか?もしでるのならクウガやディケイドで^^(yosiaki) デーモン赤ペンさん、読了ありがとうございます。この短期間で二作品をアップでいるとは思いませんでした。自分でも驚きです。オーズはチート全開になりますからね、どうしましょう・・・?ichikaさん、ファイズとのクロスオーバーは現在思案中です。一つ言える事は、一夏とヒロインがオルフェノクになる事です。ISも当然チート改造します。(i-pod男) 完結・・・お疲れ様です!音撃の織斑が始まってからまだ半年しか経ってないんですね・・・もし次回するのなら・・・オーズ、もしくは・・・真さんなんて・・・(デーモン赤ペン) 次回作の要望なんですが、ファイズとクロスオーバーしてほしいです!(ichika) 電王ですか・・・・やる分には良いんですが、イマジンやら分岐点の事が今一つ理解しきれませんので・・・・後はゼロノスを誰にするか、カイのポジションを誰に与えるかとかが問題になります。オーナーとのやり取りは確かに面白そうですけど。検討はしてみます。(i-pod男) 次回作はISと電王のクロスオーバーが良いと思います!(biohaza-d) 後日談が読みたくなってきた><(yosiaki) |
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