学園黙示録 〜とりあえず死なないように頑張ってみよう〜 プロローグ
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(……ん、ここは…?)

 

 

今まで意識を飛ばしていたのだろう、気が付くとそこは真暗な空間だった。

……いや、ただ俺が目をつぶっているだけか。

それに気付いた俺は目を開いたが、まるでもやがかかったかのように周りがぼやけていてここがどこだかよくわからなかった。

しかし、俺に不安は浮かんでこなかった。何かに包まれているような、抱かれているようなそんな感覚がする。

そのことに疑問を覚えはしたが、しかしそれはとても暖かくて、そしてどこか心地よかった。

しかし、なぜこのような状況になっているのだろうか……。

 

 

(……あぁ、そうか。俺、死んだんだっけ)

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

俺は……まぁ、平凡を絵にかいたような、特に特筆することもないどこにでもいる一般的なサラリーマンだ。

漫画などのように顔がかっこいいというわけでもなく(むしろ地味?)、頭がそれほどいいというわけでもなく(むしろ下から数えたほうが早いくらい)、もちろん異性にもてるということもない(てか、事務的なこと以外はほとんど話したことない)、そんなどこにでもいるような平凡な男、それがだ。

こんな俺には、まぁ当たり前だが嫁はおらず、もちろんあっちの経験もなく、もうすぐ世にいう魔法使い?になれる年まで来てしまった。

まぁ、言い訳に近いかもしれないが、もともと俺は人間関係とかコミュニケーションとかそういうものがあまり得意な方ではなく、友達といえる人も片手で数えられるくらいしかいない。

こんな俺に嫁などいても接し方がわからず関係がギクシャクしてしまい、いつしか破局してしまうかもしれないということも容易に想像できるから、ある意味よかったのかもしれないが。

それに、給料も自分のためだけに使うことができるからそれなりに余裕のある生活することができている。

もし嫁ないし彼女がいたらその分金銭的に少しきつくなっていたかもしれないな。

たぶん、これから先も嫁を見つけることはできず、一人年老いて死んでいくのだろう。

寂しくないとは言わないし、辛くないとは言わない。

実際寂しくなるだろうし、とても辛くなるだろうが、俺の中では「それはそれでしょうがないか」と割り切ってしまっている部分があるのも事実なんだ。

母さんはよく「早く嫁を見つけろ」とか、「見合をしないか」とか言ってきて、俺を心配しているということは十分にわかるのだが、まぁそこは悪いけど諦めてもらうしかないだろう。

幸い、俺には姉が一人に弟が一人いる。

その二人とも、俺とは違いそれなりに優秀で人付き合いもよく、顔もそこそこだ。

俺がだめでも、我が家の血はきっと二人が後世まで引き継いでくれるはずだ。

そして俺は今までと同じように、何の変わり映えもしない人生が何の変わり映えもなく過ぎていき、そして終わっていくのだろう。

 

……と、そんないつもと変わらなく過ぎていくある日のこと。

俺はいつものように会社を終え、アパートに帰り仕事終わりの冷たいビールでも飲もうと暗い夜道を帰っている途中、背中に急に冷たいような感覚がし、それと同時に背中に激痛がはしった。

一体何なのか、俺が疑問に思う間もなく次の瞬間には全身から一気に力が抜けて、そのまま前のめりに倒れ落ちてしまった。

いきなり何が起こったかわからず、激痛ばかりはしり力の入らない体を何とか仰向けにする。

するとそこには、手に血まみれの刃物を持った一人の男が立っていた。

その男は倒れた俺に乗りかかり、その手に持った刃物を俺の体に何度も、何度も突き刺した。

その時になってようやく俺はこいつに刺されたのだということを自覚した。

しかし、自覚した時にはもうすでに遅く、俺は抵抗も声も上げることもできず、ただされるがままだった。

体を何度も襲う激しい痛み、それがどんどんと感じなくなっていくにつれて俺の意識もどんどんと遠くなっていく。

 

「――――――」

 

遠くなる意識の中、男が誰かの名前を叫んでいた。

どうやら俺に向かって叫んでいるようだが、あいにく俺はそんな名前じゃない。

そう思った時、それを最後に俺の意識が完全に消失した。

 

……そう、俺はその誰かもわからない相手と間違われて殺されたのだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

それを思い出した今になって、やっとその時には感じなかった刃物に自分が刺されたということに対し恐怖が、そして間違われて殺されたのだということに対し怒りが同時に沸々と湧き上がってくる。

 

(でも、俺は今ちゃんと意識がある。てことは、俺は助かったのか?)

 

そう考えていると、ぼやけていた視界がやっと回復する。

そしてここがどこか周囲を確認しようと体を動かそうとするが、なぜか俺の体が思うように動かなかった。

 

(……あれ、なんだ?体が動かしにくいぞ?それに、あれだけの傷を負ったのに痛みも全くない……これは…)

 

「あら、目が覚めたのね」

 

すると、上のほうから女性の声が聞こえてきた。

首だけをなんとか動かしてみてみると、そこには美人といっても過言ではないような女性がやさしそうに微笑み、俺を見つめている。

 

「あ、だぁ、うぅぅ……う?(えっと、あなたは……ん?)」

 

俺は女性が誰だか聞こうとしたが、うまくしゃべることができない。

いや、それ以前に……

 

「あ、あぁ、だぁ、あぶぅ(え、いや、ちょっと待て、これって…)」

 

このしゃべり方、うまく動かすことのできない体、もうすぐ魔法使い?になる年齢ということもありそれなりに身長もあるはずなのに見た目俺の歳とそう変わらなそうに見える女性に見下ろされ、そしてその女性に抱きかかえられているだろう俺。

 

「うぅ、うぁ、あぁ(これって、ま、まさか…)」

 

「ふふ、おはよう、私はお母さんよ。そして…」

 

「やぁ、僕がお父さんだよ」

 

俺の視界のなかに今度はイケメンとは言えないだろうが、それなりに整った外見をしていてとても優しそうな目を向けてくれている男性が入ってきた。

 

「これから君は僕たちの家族だよ。よろしくな……『孝』」

 

「えぇ、よろしくね、『孝』」

 

……こうして俺は、神の悪戯か悪魔の悪戯か何かは知らないが、死ぬ前の記憶を持ったままこの人たちの子供として『孝』という名をもらい新たな人生を始めたのだ。

 

 

 

 

 

説明
某所で投稿していた作品を思いだし、ちょこちょこちょ書き直しながら投稿。
とりあえず、前回投稿していたところまでは少しずつ載せていきます。
ポケモンの方は……すみません、少しスランプってます。
もう少し、いやまだまだ時間がかかりそうでございます。
……もういっそのこと時間飛ばして完結させちゃおうかなぁ、とがぼやいてみたり。

……まぁ、とりあえず、学園黙示録、どうぞ一読ください。
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