真恋姫†夢想 弓史に一生 第五章最終話 第九話 頭角を現す者
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〜聖side〜

 

 

「じゃあ、月。今までありがとう。」

 

「はい…。聖さん、どうもありがとうございました。」

 

 

 

 洛陽の門前には、月たち董卓軍の武将全員と、俺たち、俺たちの私兵が勢揃い。

 

傍から見たら、出兵にしか見えない。

 

 

「なんや、寂しくなるな〜。折角、ここまで仲良うなれたんに…。」

 

「確かにね、霞。でも、俺も長いことここにお世話になっちゃったから…そろそろ行かないと、俺の街の人たちが待ちくたびれるだろ?」

 

「そら、そやけど…。」

 

「料理なら、城の料理長に教えておいたし、きっと直ぐに作ってくれると思うよ。」

 

「そうなん!! やったらええわ♪」

 

 

霞は、先ほどまでの寂しいそうな雰囲気から一片、眩しいくらいの笑顔で俺たちを見る。

 

 

…料理が食べたかっただけなのね…。

 

 

 

「…聖…気をつけて…。」

 

「あぁ、ありがとな。恋も気をつけてな。病気とか怪我とかしないように注意しろよ?」

 

「……。(コクン)」

 

「……行くのね?」

 

「あぁ。俺は、俺の街の更なる発展のため、各地を見て回らなきゃいけないからな…。今までありがとうな、詠。」

 

「そう…。あぁ〜ようやく、月に近付く虫が消えて、せいせいするわ。」

 

「……はぁ〜。だから俺は、月を変な目で見てなんていないから。」

 

「あらっ。ボクは一言も、月を変な目で見てた、なんて言ってないけど…。それが口から出てくるくらい、あんたにも自覚症状があるってことね。」

 

 

 

………嵌められた…。

 

てっきりそのことだと思ったのに…。

 

おのれ、流石は賈文和。

 

 

 

「まぁ、あんたが居たから、助かったことも多いのは事実。それで分けにしといてあげるわ。」

 

「なんかよく分からんが…まぁ、分けになったんなら良いのかな…?」

 

「さぁ? それは自分で考えたら。」

 

「むぅ…。」

 

「クスクス。詠ちゃんと聖さんは、本当に仲が良いですね。」

 

「「どこが!!!」」

 

「へぅ!!!」

 

「あっはっは。息もぴったりや無いか。」

 

「霞!!! からかわないで!!」

 

「そんなこと言うて…。昨日、聖たちが帰ることが決まった後、部屋で一人泣k『わぁわぁわぁ〜〜〜!!!!!』」

 

「霞、その話詳しく。」

 

「あんたも聞かなくて良いから、早く出発しなさいよ!!」

 

「はいはい…。」

 

「……後、これ餞別!! ……あんたのお陰でこの町は、より平和になった。それは紛れも無い事実…これは、少ないかもしれないけどそのお礼よ。」

 

「そうか…。ありがとな、助かるよ。」

 

 

 

結局、霞の話は聞けなかったが、寂しい別れとはならずに出発できそうだ。

 

 

 

「じゃあな。皆、元気で。」

 

 

 

俺は踵を返し、陽華に乗ろうとしたところで、服の袖を引っ張られたのに気付く。

 

 

 

「ん?? どうした…ねね?」

 

「聖…。行くのですか…?」

 

「あぁ。」

 

「……行かないで…欲しいのです。」

 

「……ねね。」

 

「せっかく…仲良く慣れたのです…。このまま、一緒に…!!」

 

「……駄目なんだよ。」

 

 

 

俺は、手をねねの頭に乗せて、撫でる。

 

 

 

「大丈夫。また直ぐにきっと会えるから。」

 

 

 

にこやかな笑顔を向けるが、ねねの顔は困惑していた。

 

 

 

「……じゃあ、約束するのです。」

 

「何をかな?」

 

「もし…この先、一諸侯となって、安定したら…また、会いに来ること…なのです。」

 

「………当たり前だろ?? 必ず会いに来るよ。それにもし、何かあった時でも、俺は直ぐに駆けつける。それこそ、どこにいようとも…だ。」

 

「ん…。約束なのですよ…。」

 

「あぁ。」

 

「………じゃ…じゃあ、ちょっと屈んで欲しいのです…。( ///)」

 

「ん?? こうか?」

 

 

 

俺は腰を屈め、ねねと目線の高さを合わせる。

 

 

すると、突然。

 

 

 

「…ちゅ。」

 

「っ!!!」

 

「「「「!!!!!!!」」」」

 

「「「「「「「「……。」」」」」」」」

 

「…んっ…。約束…ですぞ。( ///)」

 

 

 

顔を真っ赤に染めるねねに、俺は苦笑を漏らすしかこと出来なかった。

 

 

 

「…ちょっ…ねね!!!」

 

「…なんですか、詠?」

 

「あ…あんた、今…。( ///)」

 

「………約束の証拠を残した…だけです…。( ///)」

 

 

 

 

 

この光景を後ろで見ていた、聖の仲間達は、

 

 

 

 

「(あらあら〜…。既に、落ちちゃってますね〜。)」

 

「(またお頭は…。)」

 

「(………キャラが被ってるのです…。)」

 

「(聖の奴、行く先々で女の子を落としてないか?)」

 

「(……わ…私も…お兄ちゃんと…。そして…その後…あうぁぅ…。)」

 

「(ご主人様と接吻…。ふふふっ…。)」

 

「(あの嬢ちゃん、姉さん達の前で堂々となんて…度胸あんな〜…。)」

 

「……。(イライラ)」

 

 

各々、面白い反応を示していた…。

 

 

 

 

 

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「今度こそ、本当にお別れだ…。月、詠、恋、ねね、霞。元気でな!!」

 

 

「「「「「お元気で!!!」」」」」

 

 

 

俺は手を振りながら、洛陽から東に向かって歩みを進めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

……誰か忘れてる気がするけど…。

 

 

 

 

 

 

 

「待〜て〜!!!! 徳種!!!!! 私と勝負だ〜!!!!」

 

 

 

 

 

 

……うん、気のせいだよな、気のせい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様〜!!」

 

「どわっ!!朱熹!! どうしたんだよ、一体!!」

 

「いえいえ、馬上の揺れで、体勢を崩してしまいまして…。」

 

「その割には、何とも不自然な気がするんだが…。」

 

「さぁ、何のことでございましょうか?」

 

 

 

 

 

 

今日は、俺の馬に朱熹が乗っている。

 

人数が増えても、馬の数が変わっていないので、一馬に二人で乗るのは如何せん仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

「…………。」

 

「〜〜♪♪」

 

「なぁ、何時までくっついてんだ??」

 

「ご主人様は、また私が体勢を崩してもよろしいのですか?」

 

「いやっ、そう言う訳じゃないけど…。」

 

「それとも…ご主人様は、馬から落ちて痛がる私を見るのが快感と…。」

 

「そんな趣味は無い!!」

 

「それでは、よろしいではないですか。」

 

「まぁ、俺は良いんだが…。」

 

 

 

周りからの視線が痛いんだよ…。

 

 

 

「朱熹〜?? 聖様に手を出す気ですか〜??」

 

「私はただ、ご主人様に掴まっているだけですよ?」

 

「お…お頭も!! 嫌なら嫌って言えよな!!」

 

「浮気です!! 先生は酷い人です!!」

 

「お兄ちゃん……浮気は……めっ!!」

 

「……朱熹…私と代わる…。」

 

 

 

ハハハッ…。コレが修羅場って奴かい…。

 

 

会話に参加していない雅は、余裕のある表情でその光景を見ていた。

 

あれが神故の落ち着きと言うものなのかね…。

 

 

 

「皆、もうその辺にしておけよ? 仮にも、俺らは兵を率いる将なんだ。その将が、こんなんだと下もついてこないぞ。」

 

「「「「「「は〜い。」」」」」」

 

 

 

皆さん良い返事ですこと…。

 

 

 

「そういえば聖様。次はどこに向かうのですか??」

 

「そうだな〜…。兵も率いてることだし…最近、黄巾賊の被害が後を絶たない、冀州の方に行ってみようと思うんだ…。」

 

「戦にて、名をあげる心算でございますか?」

 

「まぁね。そろそろかとも思うし…。体が動くうちに出来る限りの事はやらないとね。」

 

「愈々かい。良いね〜…腕が鳴ってきたよ!!!」

 

「くぁ〜!!!! 早く暴れたくて、うずうずするぜぇ!!!」

 

「……今度こそ、初めての大きな戦闘か…。(ぶるぶるっ)」

 

「……何だ、一刀。トイレなら先に行っとけよ。」

 

「武者震いだよ!! ……まったく、聖のせいで折角の俺の出番が台無しだよ!!」

 

「まぁまぁ、武者震いが出来んのは、戦う意思を持った奴だけ。一刀も遂に、将となったってことだな。」

 

「うっ…。なんか、無理やり良い方に話を持っていって、誤魔化そうとしてないか…。」

 

「さぁ、どうだかな?」

 

「はいは〜い!!」

 

「んっ?? 雅、どうした??」

 

「誰の体が動かなくなるの??」

 

「そりゃ、俺のだろ。」

 

「何で??」

 

「何でって…。そりゃ、俺ももう直ぐ三十歳だし…。」

 

「あぁ〜…。」

 

 

 

ポンッと音がしそうな感じで、雅は手を打った後、俺の傍に来て耳打ちをする。

 

 

 

「この世界ではね、年を取らないの。」

 

「何っ!!! 何でまた…。」

 

「この世界はね、時間軸がずれているの。だから、私達が生きている時間軸とこの世界の歴史的時間軸は被ることは無い。つまりは、私達に対する影響は何も無いの。でも、歴史としての時間は進むから、三国志としての物語は進む。」

 

「つまりだ…。俺達は年を取らずに、周りの環境だけが進んでいくってことなんだな。」

 

「そういうこと♪」

 

「ってことは…俺はこの世界に来た時と同じ年齢って訳か…。」

 

「そうだね。」

 

「成程…。どおりで体力が変わらないと思ったよ。」

 

「これで、何時まで経っても、ひーちゃんは子作りが出来るね!!」

 

「ぶふっ!!! いきなり何を言うかと思えば…。」

 

「良いじゃん。どうせすることなんだし。」

 

「……否定はしないが…。」

 

「そ・れ・に♪ 私だったら…何時でも準備出来てるからね。(ぼそっ)」

 

 

 

 

目を細め、艶めかしく、色香のある雰囲気を醸し出しながら、雅は俺に告げる。

 

 

 

……顔が赤くなり、頬が熱を帯びる。

 

 

まったく、こいつは平然とこういうことを言いよって…。もう少し、乙女の恥じらいとかを持ったらどうですかね??

 

 

 

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「おっ!!いたいた。 お〜い!!!聖の旦那〜!!!!」

 

 

 

雅とのやりとりであたふたしている俺に、遠くの方から声がかかる。

 

 

兵の鎧は…どうやら、俺たちの軍の者のようだ。

 

 

 

「あん?? 誰だ、俺を呼んでるのは??」

 

「あぁ。あいつは、最近になって新撰組に入ったやつでさぁ。何でも、聖のお頭に推薦されたとか…。」

 

「……推薦はしてないが…。まぁ、職の斡旋をしてやった奴はいるな…。」

 

「聖の旦那!! その件はお世話になりました。」

 

「まぁ、気にするな。 でも、良く入れたな。ウチの入隊試験はそれなりに厳しかったはずだが…。」

 

「職に就けるってんなら、大概の事は、努力でどうにでもなりますぜ!!」

 

「ほぅ〜。見上げたものだな。 で、何か用事か??」

 

「おっと!!忘れてた!! これを、簡擁の姉さんから預かって来やした。」

 

 

 

そう言って、懐から取り出したのは一巻きの竹簡。徐に広げて、中を読んでみる。

 

 

 

「……。」

 

「……聖様??」

 

「…悪いな、皆。冀州遠征はまた今度になっちまった。」

 

「一体どうしたんですか、先生??」

 

「広陵郡太守張超が、どうも最近軍事力を高めているらしい。」

 

「でもそれは、黄巾賊に対抗するためじゃないのかい??」

 

「それだったら良いんだが…。間諜の報告によると、どうも謀反を企てているようだ…。」

 

「それって…まさか…。」

 

「あぁ。蓮音様相手に、謀反を起こすんだろうな…。」

 

「そんな…。太守にまで推挙されておいて…。」

 

「寧ろ今回は、それが問題だろうな…。張超は、自分のことしか考えてないような奴だ。あいつの頭には、自分が何とか安全に居れるようにすることしかない。そんなあいつの周りで、黄巾賊の勢力拡大、俺たち勢力の活躍などが立て続けに起こった…。ともすれば、奴は自分の立場が危ないと考え、どうにかして守ろうと必至になるだろう…。その結果、奴が考え至ったのが…。」

 

「…謀反による軍事蜂起…。今の自分が、ここまで追い詰められたのは、孫堅さんの所為であると考えての謀反…。それと同時に…自勢力の力の誇示。あわよくば・・・孫堅さんを落としての権力の奪取…。」

 

「その通りだろうな…。所詮は小物。自分のことしか見てなくて、他に配る目がないような愚かな奴さ。」

 

「じゃあ、俺たちはどうするんだ??」

 

「決まってるだろ?? 俺たちはこのまま、自分達の町へと戻り、張超が謀反を起こす前に、奴を叩く!!」

 

「序に、広陵の城を落としてしまいましょうか。その方が、私たち勢力の大きな基盤と為り得ます。」

 

「あ〜…よくわかんねぇが…結局戦うってことだろ?? じゃあ、問題ねぇ!! ぶっ潰す!!」

 

「はははっ。勇は単純思考で良い事…。 さて…蛍、勇!! 先行して、簡擁ちゃんたちにこの事を伝え、戦の準備をしておくように。」

 

「「御意!!(……御意。)」」

 

「芽衣!! 蓮音様の所に行って、出来れば、助力をお願いしてきてくれ。」

 

「御意です〜。」

 

「他の者は全軍駆け足!! 隊列を乱さず、一路、俺たちの街へ向けて、全速前進!!」

 

「「「「「「御意!!!」」」」」」

 

 

 

 

俺たちは、冀州遠征を諦め、一路広陵へと向かった。

 

 

 

 

歴史は動き出す。

 

その足音はまだ微かで、聞き取り辛い物だけど…しかし、着実に、それでいて乱暴に、一歩一歩迫ってきている。

 

果たして、後何歩で乱世という扉に手が届くのか…。

 

それは、神でしか分からない物なのか、もしかしたら、誰にも分からない物なのか…ただただ、起こり得るであろう未来に目を向けることしか、今の聖たちに選ぶ術は無い…。

 

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後書きです。

 

 

 

今話でもねねがキャラ崩壊してます。

 

でも、こういうねねもアリかなと……。

 

 

 

姐さんは………こういう扱いになるのかな……。

 

今後のことは今後考えます(笑)

 

 

 

 

次回から久しぶりに戦闘パートです。

 

それにより、第五章の区切りをここでしようかなと……。

 

ここまでの洛陽での拠点に近い内容が第五章ということですね。

 

 

 

第六章は来週の日曜日から投稿していきます。

 

作者のリアルも大分多忙になってきていて、正直書き溜めが底をつく寸前です……。

 

でも、どうにか六章までは今のペースで投稿していく予定ですので、読んでくださっている皆さんはこれからもよろしくお願いします。

説明
どうも、作者のkikkomanです。

前話のキャラ崩壊を受け入れた下さった皆さん。本当にありがとうございます。正直、苛烈なコメントが来ることも覚悟のうえでした。


ねねのキャラはあれで行こうかと思います。

ただ、今話でちょっと変になってる気がしますが……。


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コメント
<将軍さん コメントありがとうございます。  こういうねねもアリかと思いまして……お気に召しましたようで良かったですww(kikkoman)
ねねが積極的なんて・・・ありですねwww(将軍)
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