魏エンドアフター〜断金ノ絆ヲ手繰リヨセ〜
[全5ページ]
-1ページ-

少し離れた場所で二人のやりとりを見ていた。

もう、俺は冷静に判断できるような状態ではなかったんだと思う。

目の前で、こんなにも悲しんでいる人がいる。

目の前で、離れてはいけない二人が離れようとしている。

こんなわけのわからない病なんかで。

 

 

 

 

一刀「ごめん、華琳」

 

目の前の雪蓮達を見て、頭に血が上っていたのかもしれない。

 

華琳「……何?」

 

一刀「予定変更だ。

   これから俺は馬鹿だと、愚かだと言われる事をする」

 

沸々と沸いてくる怒りにも似た感情を堪え、華琳に言う。

 

一刀「もちろん死ぬつもりは毛頭ない。

   だから華琳──」

 

二人のもとへ歩み寄り──

 

雪蓮「……一刀?」

 

 

 

 

一刀「後は何とかしてくれ」

 

 

 

世界一、無責任な言葉を放った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

返答を待たずに周瑜さんの手を掴み、

大きく息を吸い込み、吐き出す

 

華琳「待ちなさい一刀!」

 

華琳の制止の言葉を聞かず、そのまま全力で

 

 

 

 

 

 

──”それ”を引き寄せた

 

 

 

 

 

 

瞬間、眩暈、吐き気、頭痛、痛み、

もう脳が感覚を理解しきれないほどのものが襲い掛かる

ズクン、ズクンと全身が痛みで疼くような感覚。

どこが痛いのか、どこが苦しいのか。

心臓の鼓動が尋常ではない早さで加速する。

 

 

一刀「ッ……!!ッカッ……ア”あ”……ッ!!!」

 

痛みを紛らわそうと叫び声を上げようとしても、声が出ない。

うまく呼吸ができない。

 

華琳「────!!」

 

華琳が何かを叫んでいるがそれを理解できない。

雪蓮も俺が何をしているのか、なぜ苦しんでいるのかわかっていないのだろう。

他人から自分に異常を吸い上げる事に何のリスクもない訳がない。

それが命に関わるほどの重病というのなら尚更だ。

全身が悲鳴を上げ視界が真赤に染まる。

流れ込んでくるものを拒否するかのように痛みを発する。

 

意識を保っているのも難しくなってきた

まだ全て吸い上げていない。

まだ意識を失うわけには……

 

その思いとは裏腹に段々と意識が混濁してくる。

視界がぐるぐる回り平衡感覚が無くなる。

 

まだだ……まだ……!

 

視界が狭くなり目の前が暗くなっていく。

僅かな意識を総動員してさらに吸い上げる。

 

 

 

 

 

 

もう意識を保てない。

だが”それ”はまだ全て吸いきれていない。

 

あと少し……なのに……

 

今にも途切れそうな意識の中、

雪蓮が自分の目の前で泣いていた事を思い出した。

 

本当に、本当に悲しそうに泣いていたんだ。

大好きな人と離れたくないって……泣いていたんだ!

 

命を蝕んでいる黒い塊に抱いていた恐怖は既に無く、

二人を永遠に引き離そうとしている”それ”に激しい怒りを覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

全部──こっちに来やがれこの野郎……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

意識の糸を無理矢理繋ぎ、蝕んでいるもの全てを引き寄せた。

気力も体力も全て使い切り、自分の体が倒れるのがわかる。

周瑜さんの安否が確認できないのは悔しいが、あとは華琳がなんとかしてくれるはず。

俺は、彼女達の絆を守れたのだろうか。

 

一刀「ごめ……あと、は……よろ、しく」

 

華琳に届いたのかはわからない。

崩れ落ちる中、そう言葉を放ち、意識は暗転した。

 

 

 

 

 

…………

……

 

 

 

 

-2ページ-

華琳side

 

一刀「あとは何とかしてくれ」

 

彼が二人の下へ歩き出す。

嫌な予感がした。

 

華琳「待ちなさい一刀!」

 

制止の言葉を聞かずに彼は自分の体に”黒い塊”とやらを吸い上げた。

私にそれは見えないけれど、それは確かに存在するものなのだと実感した。

なぜなら──

 

 

一刀「ッ……!!ッカッ……ア”あ”……ッ!!!」

 

 

今にも死んでしまいそうなくらい、苦しんでいるから。

 

華琳「手を離しなさい!!一刀ッ!!」

 

叫んでも彼の耳に私の声が届いていないのか、それを拒否しているのか。

こちらに目もくれずにやめようとしない。

 

雪蓮「華琳!どういうこと?一刀は何をしているの!?」

 

彼に聞いたのは、冥琳がとても重い病にかかっていること。

それはもう治療の余地もないほどに全身を蝕んでいること。

そしてその病魔を一刀は見ることが出来、自分に吸い取る事ができること。

だから彼は病魔の半分を請け負い、華陀に治療してもらうと言っていた。

 

 

 

 

 

 

────!!

 

 

 

 

 

気づいた。

今、彼は冥琳の体を蝕んでいる黒い塊を全て吸い取ろうとしているのだ。

 

華琳「この馬鹿……ッ!!」

 

気づいたときにはもう冥琳の体から限界まで吸い取ったのだろう、

そのまま崩れ落ちる彼を抱き止めた。

 

華琳「一刀!一刀ッ!!」

 

呼びかけるが応答はなく、全身の力も抜け完全に私に身を預ける状態になった。

意識は無く、額には滝のような汗、そして体は驚くほどに熱を持っていた。

 

思春「蓮華様!」

 

そこでようやく甘寧が到着し、医者を連れてきた。

近くの部屋から凪も騒ぎに駆けつけた。

 

凪「隊長ッ!!」

 

すぐさま状況を把握し、苦しんでいる一刀に駆け寄る。

 

「ご主人様は私に任せなさい。貴女は周瑜ちゃんを見てあげなさい」

 

突然の野太い声に振り返ると、一度だけ一刀に紹介されたことのある大男が立っていた。

 

華琳「あ、貴方……!」

 

貂蝉「ノーンノンノン。今は突っ込みはなーしよ」

 

口に人差し指を当て方目を瞑る。

 

華琳「……一刀を任せなさいとはどういうこと?」

 

貂蝉「まさか私もご主人様がここまで無茶をするとは思わなかったわ。

   一度簡単に外史の説明はしたわね?いい?

   今ご主人様は周瑜ちゃんの負のエネルギー、

   簡単に言えばよくないものを一身に受けているわ。

   それはとてもじゃないけど人一人では受け止めきれない程のものよ。

   人の命を容易く奪うものなのだから当然ね。

   でもそれはこの外史、この世界にしか存在し得ない物、存在できない物なの。

   なぜなら周瑜ちゃんのその病はこの続いた世界でしか存在するはずのないものだからよ。

   華陀が間に合わなかった今、ご主人様を救う方法は一つしかないわ」

 

ここまで言われればわかる。

わかってしまう。

最初は外史などという存在をまるで信じてはいなかった。

当たり前だ。

この世界が無数に存在し、春欄や秋欄、私自身もその存在する外史と同じ数だけ存在するというのだ。

それを鵜呑みにするほうがどうかしている。

だけど、こうして天の世界から一刀が来ている以上、

ただの与太話として笑い飛ばす事もできなかった。

 

華琳「……一刀を……別の外史へ……」

 

そう私が呟いた時の貂蝉の目は、悲しむような、私を気遣うような視線だった。

それは私にとって無言の肯定と取れた。

 

貂蝉「さらに言うなら外史と外史の時間軸は全て同じとは限らないわ。

   こちらでの一日があちらでは一年かもしれない。

   あちらでの一日がこちらでの一年かもしれない。

   まぁこんなに大雑把ではないにしてもずれは生じているわ。

   そして私自身も、どこの外史にご主人様が飛ばされるのかは把握できないわ」

 

華琳「……」

 

思わず彼を抱きとめている腕に力が入る。

わかっている。

今の彼を救う術はもうそれしかないのだろう。

理解はしていても、私の女という部分が納得をしてくれない。

離したくない。

離れたくない。

我侭な感情が邪魔をする。

 

華琳「一刀を移したとして──」

 

ちゃんと喋れていただろうか。

それとも震えていただろうか。

私が言葉を言い切る前に貂蝉は

 

貂蝉「絶対に連れ帰るわ。

   たとえどんな手を使うことになろうとも、

   必ずご主人様を貴女のもとへ連れ帰ってくるわ。

   決して貴女とご主人様を離れさせたりしない」

 

確かな決意と覚悟。

真っ直ぐな瞳で私にそう言った。

 

華琳「わかったわ。……なら」

 

一刀をお願い。

そう言おうとした時

 

凪「自分も連れて行ってください!」

 

周瑜の氣の流れを安定させていた凪が貂蝉に頭を下げた。

 

凪「自分はッ……!隊長を守るためにッ!二度と大切な人を失わないようにッ!

  あの3年間ずっと鍛錬をしてきました!!

  ずっと……!ずっと帰りを待っていました!

  それは自分だけではないと言われればその通りです……だけど!

  だけど自分にはもう……隊長が居なくなる事が耐えられないッ……!」

 

涙を堪えながら歯を食いしばり、

床に額を押し付けながら懇願する。

 

凪「これは完全に自分の我侭です……無茶を言っていることも重々承知です。

  だけど……!お願いします!お願いします……ッ!!!」

 

普段、自分からは絶対に主張をしない凪がこれほどまでに懇願している。

それほどに彼女にとっては一刀の存在は大きく、必要なのだ。

それは私以上に大きな想いなのかもしれない。

誰よりも一刀への想いを上回る自信があるかと問われても、

この子に関してだけは私は素直に頷けないだろう。

 

凪「後生です……!どうか……ッ!」

 

真剣な眼差しで凪の気持ちを見ている貂蝉。

しばしの沈黙の後

 

貂蝉「そうね。仮に曹操ちゃんを連れて行くとしても、それは無理だものね。

   すべての外史において”曹操”という人物はあまりにも存在が大きすぎる。

   本来なら私がそのまま行ければいいのだけど、二人ではどうしても力不足になってしまう。

   同じ外史へ二人も飛ばすのは、相当に力を消耗してしまうの。

   その点、楽進ちゃんなら私たち三人の力を合わせればなんとかできると思うわ。

   ……だけど」

 

力強く頷き、言葉を続ける

 

貂蝉「だけどかなりの危険が伴うわ。

   ご主人様は元々異分子という存在だから

   外史に受け入れる事も外れる事もさほど難しくは無いけれど。

   貴女はいくらこの続いた世界の者だとしても元は外史の一部。

   もし失敗すれば、貴女はご主人様が引き受けた病と同じく、

   文字通り消えてしまうかもしれない。

   そうすれば貴女の周りはもちろん、ご主人様も深く悲しむ。

   自分のせいで貴女が消えてしまったとね」

 

それでも行くの?と凪に問う

凪がこちらを向き頭を下げる。

 

凪「華琳様……どうか、どうか自分に隊長を追う事をお許しください」

 

華琳「ふたつ」

 

土下座の形をしている凪の前に屈み、顎を持ち上げ、目を合わせる

 

華琳「一刀を守ると誓うこと。

   そして──」

   

しっかりと、目を真っ直ぐに見つめ

 

 

華琳「必ず貴女も一刀も共に帰ってくること。これは命令よ」

 

涙を溜めた瞳を拭い、確かな強さに光らせた眼差しで──

 

凪「はっ!必ず!」

 

私に応えた。

 

 

 

 

 

 

 

-3ページ-

貂蝉「良いタイミングで新たな外史も始まったわ。

   それじゃあご主人様も危ないし早速始めるわよ」

 

凪が応えてすぐ、貂蝉が手鏡のようなものを出す。

 

貂蝉「本当は姿見くらいの大きさなんだけど、今回は緊急で用意なんてできなかったからね。

   私一人の力ではご主人様一人が限界。

   だから凪ちゃんの事は明日、卑弥呼達を呼んでからよ」

 

言うやいなやその手鏡を頭上へと投げ目を閉じる

 

貂蝉「……ふんぬぅあッ!!」

 

自分の正面へと落ちてきたと同時に目を開き、力を収束させる

貂蝉が目を開き、声を上げた瞬間、

ちょうど正面というところで手鏡が淡い氣のようなものを纏い空中で静止した。

その光景にその場にいた誰もが目を見開き驚きを示す。

 

貂蝉「さぁ開きなさい新たなる道よ!

   私の全身全霊の愛をぶち込んであげるわ!!

   どぅうるああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

城中を振動させたかと錯覚させるほどの雄叫びと共に鏡に打ち込まれる貂蝉の拳。

その瞬間、目を開けていられないほどの眩い光が部屋を包み込む。

数分だったか、数秒だったか。

あまりの目の前で起こっている事態に時間を忘れただ眩しさに顔を覆っていると

その光が徐々に小さくなる。

恐る恐る目を開けると、なにごとも無かったかのように夜の静寂を取り戻し、

皆も次々と目を開け部屋を見渡す。

 

華琳「…………!」

 

そして、先ほどまで腕に抱いていた温もりが消えていた。

 

貂蝉「ふぅ、やっぱり疲れるわね。

   安心して頂戴。

   ご主人様は無事、別の外史へ飛ばされたわ」

 

分かってはいてもやはり拭うことはできない。

喪失感。

虚無感。

そんなものをどうしても感じてしまうのだ。

 

貂蝉「ごめんなさい。今はこうするしかないのよ」

 

華琳「わかっている。貴方が謝ることではないわ」

 

貂蝉「そう……では明日の朝、すぐに凪ちゃんをご主人様のもとへと移すから準備しておいてね」

 

凪に声を掛け、部屋の外へ出ていく貂蝉。

寝台には静かな寝息をたて、安定した様子の周瑜が残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-4ページ-

雪蓮side

 

雪蓮「華琳」

 

先程まで彼を抱いていた自分の腕を見つめている華琳に声をかける。

 

雪蓮「……」

 

なんて声をかけていいのかわからない。

言葉につまってしまう。

 

華琳「いいのよ。

   一刀が勝手に判断して起きた事だし、

   それに今回は前ほど悲観する状況でもないわ」

 

雪蓮「でも貴女……」

 

華琳「私は皆にこれを説明しなくてはいけないわね。

   少し頭を整理するから失礼するわ。

   冥琳の事、ちゃんと見ていなさいね」

 

そう言って部屋を出ていく華琳。

口ではああ言って態度も気丈に振舞っていたつもりだろう、

だが私には彼女が泣いているように見えるのだ。

 

雪蓮「……ごめんね」

 

もうそこにはいない彼女への謝罪をぽつりと呟き、寝台に寝ている冥琳に目を向ける。

呼吸も安定し、顔色も決して良いとは言えないが安らかな寝息を立てている。

 

雪蓮「……ありがとう」

 

そっと頬を撫で、手を握る。

 

雪蓮「蓮華、思春もご苦労様。

   今日はもう休みなさい」

 

蓮華「……はい」

 

思春「……は」

 

二人も何を言っていいのかわからないといった表情で部屋を後にする。

 

雪蓮「凪」

 

ポツンと佇んでいる彼女。

 

雪蓮「巻き込んでしまって、ごめんなさい」

 

凪「……それは違います」

 

ぎゅっと手を握り締め、こちらに向き直る

 

凪「華琳様も仰っていたように、隊長は自らの判断で貴女達を放っておけないと命を賭けたのです。

  確かに隊長が居ないと不安に押しつぶされてしまいそうにはなります。

  寂しさに涙を流してしまう事もあります。

  ですが、困っている人が居たら放っておけない、

  後先考えずに行動してしまう──」

 

凪が真っ直ぐこちらを見つめ──

 

凪「そんな人だからこそ、私たちはあの方を愛しているのです」

 

失礼します、と部屋を後にした。

 

雪蓮「……そっか」

 

凪の彼へ向ける愛情。

それはどこまでも一途でどこまでも純粋で、とても強い。

彼の周りにいる女性すべてが彼女のような愛を彼に向けているのだろう。

改めてその愛の深さに感嘆する。

それと同時に自分の気持ちも改めて再確認した。

 

雪蓮「やっぱり、いい男よ。キミは」

 

彼を巻き込んでしまったこと、彼女達を不安な気持ちにさせてしまったこと。

考えることはいっぱいあるけれど。

ただ今は、冥琳を救ってくれた彼に感謝し、涙を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-5ページ-

凪side

 

翌朝、貂蝉の指定した場所へ行くと貂蝉、卑弥呼、もう一人、白い衣服に身を包んだ者が待っていた。

 

卑弥呼「やれやれ、貂蝉貴様。

    よくもまぁこんな禁忌を犯そうなどと思ったものだ。

    正気の沙汰ではいぞ」

 

貂蝉「そんな事言って、卑弥呼だって協力する気満々だったじゃないの」

 

卑弥呼「ふん、貴様からあの子の乙女の決意を聞いてしまったからには、

    漢女として協力しないわけにはいくまい」

 

目の前で筋骨隆々の大男二人がくねくねと奇妙な動きをしながら会話している様は

なかなかに恐怖心を煽るものだ。

 

凪「お待たせいたしました」

 

早朝、華琳様から皆へ昨日の晩起こった事、隊長の身に起きたことをすべて話した。

最初は霞様や真桜、沙和等が大騒ぎを起こしたものの、

今回の対処について話し、なんとか落ち着いた。

 

霞「凪ー、絶対あのバカ連れて帰ってくるんやで。

  一発殴らんと気がすまんわ」

 

風「ですねー。

  もう両手足を拘束して部屋に監禁したほうがいいんじゃないですかー?

  見張り付きで」

 

禀「お、恐ろしいことを言いますね」

 

やいのやいのと他にも後ろで騒いでいる。

皆それぞれに憎まれ口をたたいているが結局は隊長が大好きで心配なのだ。

その想いを私は一身に背負って行くのだ。

 

秋欄「凪」

 

皆がそれぞれ憎まれ口を叩いている中で、一人、語りかけてくる

 

秋欄「一刀を頼むぞ」

 

その一言にどれだけの気持ちが込められているのだろうか。

短い言葉、だけどその中には計り知れないほどの想いが込められていると解る。

 

春蘭「明花は私が必ず守ってやる。任せておけ」

 

本当にこの方は、どうしてこんなにも頼もしいのだろう。

 

貂蝉「いい?凪ちゃん。貴女の場合、ご主人様とちがって少し特殊なの。

   この世界の楽進という存在があちらに行ったとしても

   あちらの世界でも楽進という存在があるのよ。

   つまり貴女が二人存在してしまうという事になるわ。

   そしてその二人が出会い、互いを認識した瞬間、

   世界がどちらか一方、まず間違いなく世界に馴染んでいない貴女が弾かれるわ。

   そして世界から弾かれた結果、

   外史の狭間に落ちて永遠に抜け出せないなんて事になるかもしれない。

   それを阻止するために私たち3人がこうして集まっているわけなんだけど」

 

卑弥呼「必ずしも我々が守り切れるとは限らん。

    情けない話だがこれだけはどうにもならんのだ。

    さらにあちらの世界にはここにいる皆が存在しておる。

    それは偽物などではない。

    歴とした本人達だ。

    意思を持ち、志を掲げ、存在しているのだ」

 

貂蝉「さらに言えば、貴女はそこで彼女達と戦う事になるかもしれないわ」

 

凪「……それでも」

 

たとえそうだとしても

 

凪「隊長だって同じなんです。

  ならば自分も覚悟を決めるだけです」

 

貂蝉「……そう。良い目してるわん」

 

卑弥呼「さて貂蝉。貴様が昨日使った道を見せてみろ」

 

貂蝉「はぁい」

 

昨日の手鏡を卑弥呼に手渡す

 

卑弥呼「ふむ、本来もう使い物にはならぬが、

    楽進ほどの氣の使い手ならば我々三人の力でなんとかなるであろう」

 

貂蝉「そうそう、私も驚いちゃったわ。

   この子、もう氣に関しては常人どころか達人の域を超えているのよね」

 

卑弥呼「それだけ想いの力が強かったということだろう。

    さぁはじめるぞ」

 

今まで黙っていた白装束の者が近寄ってくる

 

「君なら大丈夫さ。頑張るんだよ」

 

小さく語りかけ、三人で三角の点を結ぶように立つ

真ん中に置かれた割れた手鏡の破片が徐々に光り、周囲を覆うほどの光を発する

 

卑弥呼「さぁ今こそ乙女の想いを叶える時!!

    乙女の恋路を邪魔するものは

    たとえ神が許そうともわしがゆるさんぶち殺してくれるわ!!」

 

卑弥呼の心からの雄叫びが周囲に響き、凪の体を光が包み込む

 

 

 

 

 

 

華琳「凪」

 

光に包まれ、何も見えない中、華琳の声が凪の耳に届く

 

華琳「行ってきなさい」

 

凪「はい!行ってまいります!」

 

華琳の言葉に応え、光と共に凪の意識は薄れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貂蝉「ふぅ、本当はご主人様を連れてきた時みたいに準備したかったんだけど、

   何年も掛かっちゃうからねぇ。

   さて、こうまで大掛かりな事をしてしまうとあの子達がどうするかしらん。

   何か対処を考えないとね」

  

「そうだね。

 新たな道ができてしまった以上、

 またこちらに流れ込んで来るだろうから。

 それに、あちらに行った彼を放っておくとも思えない」

 

卑弥呼「まったく面倒な連中よ。あの老いぼれ共の頭は固くていかん」

 

貂蝉「ま、こっちは任せるわ。

   私は一秒でも早くあの二人が落ちた外史を探さないとね」

 

 

 

 

そう言い残し、三人はその場を後にした。

説明
(ノ∀`)
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
7366 5519 43
タグ
魏エンドアフター 魏√ 恋姫 北郷一刀 主人公強化 真・恋姫†無双 

かにぱんさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com