クリスマス |
その部屋のカレンダーは既に遠くへ過ぎ去った日々を示している。
生活の匂いのしない部屋。
机の上には栞の挟まった読みかけの本と、いくつかの鍵がさがったキーホルダー。
そして、オルゴール。
俺に初めてサンタクロースがきたあの日。
来年も俺にはサンタがくるのだと、疑わな かった。
「ありがとうございましたー」
店員の声を背に受け、通りに出た。
毎年プレゼント選びは俺を悩ませるが、戻ってきたあいつがどんな反応をするか
想像しているとその苦しみもまた悪くないものだと思う。
オルゴールを選んだときは、人にものを贈るのはずいぶん久しぶりだったから本当に大変だった。
どんなものなら喜ぶのかと悩みに悩んで、可愛い音色が似合いだとそれを選んだ。
しかしそれもあいつが開けた場合の話だったらしい。
俺が蓋を開けて流れる音はまるで別物のように悲しい音色で、すぐにねじを巻くのをやめてしまった。
そろそろ音のならないオルゴールにしまっておくのではなく、直接手渡したいのだが。
びゅうと強く吹き抜けた冬の風に、思わずコートの襟をかきあわせる。
今年も街が電飾で着飾る季節がこようとしている。
あの光の中に、今年はお前の姿があるだろうか。
15年の時間が流れ、俺は警察官になった。シンジほどじゃないが料理も覚えた。
電飾で着飾る街も様変わりした。お前との記憶とともに、姿を消してしまった古い店を数えたらきりがない。
俺が再びサンタクロースになったあの日。
流れ出す音に耳を澄まし、伏せられた瞼。
毎 年贈ると言った言葉に「来年が楽しみ」だと浮かべた微笑み。
俺の言葉に染まった頬の色。
あのときの全てが昨日のことのように、色鮮やかなままだ。
お前は俺の記憶の中のままの姿だろうか。
それともおまえも変わってしまっただろうか。
俺の元へ二度目のサンタはまだこない。
説明 | ||
真ハム。15年後のお話。P3フェス未プレイのためクリア後ねつ造を含む(主人公や寮がどうなったか、真田の職業について) | ||
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