そらのおとしもの  すき焼き戦争
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寒い日。

 

「あ〜寒いな〜」

 

季節は冬。

智樹はこたつにくるまっていながらも寒いという。

 

「そういう日は〜、熱いものを食べるといいわよ〜」

 

中庭から美香子がやって来た。

 

「あ、熱いもの……」

 

美香子がそんなことを言うと大抵碌なことにならない。

 

「闇鍋じゃないすっよね?」

「違うわよ〜、すき焼きよ〜」

「すき焼きですか?」

「そう、すき焼きよ〜」

 

こうして美香子の提案によって、その日の桜井家の晩御飯はすき焼きになった。

無論、桜井家の面々だけでなく新大陸発見部のメンバー+αも来る。

 

 

 

 

 

そらのおとしもの  すき焼き戦争

 

 

 

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美香子に呼ばれて、そはら、アストレア、守形、日和、そして秋山も桜井家の食卓に来ていた。

食材は美香子が最高級の牛肉、そはらとアストレアと守形と日和が山で採れた山菜、秋山は豆腐を持ってきた。

ちなみに桜井家の智樹、イカロス、ニンフ、カオスは場所提供ということで鍋、コンロ、卵などを用意した程度である。

 

「時は来た。参加する者達は9人。彼らはたれに入っている具を育て上げ、自身の獲物を狙って奪い合う。

それが……すき焼き戦争」

「また何言ってるのよ?」

 

鍋に油を引いて準備をする秋山に言うニンフ。

 

「それにあんたも入れて10人でしょ。この間の焼肉の時も9人って言ったけど……」

「それは俺は一応は参加者というより監督役だからだ。正式な参加者は俺を除いての9人だ」

「でも秋山も食べるじゃない」

「監督役が食べてはいけないというルールもないからな」

「変なの」

「いいじゃないですか、秋山先生も食べたいんですから……」

 

文句を言うニンフとアストレアを日和がなだめる。

 

「そう言うことだ。それにこういった料理は多ければ盛り上がりも増すというものだ」

「しかし、今回は焼肉の時以上の激戦になるな」

 

守形の言う通りであった。

焼肉争奪戦の時はお店で広いテーブルと大きい鉄板を囲っての争奪戦だった。

だが今回のすき焼き争奪戦は智樹の居間という狭い空間、小さい円卓、そしてそこまで大きくない鍋の中に凝縮されている具を取り合うというもの。

様々な種類の具があると言え、激しい争奪戦になるのは目に見えている。

それから肉を少し焼き、たれを入れる。

 

「よしよし」

 

その役はすべて秋山がやっていた。そして新しく肉や豆腐、野菜を入れる。

 

「これで大体OKだ。それじゃあ……」

「始めようかしらね」

 

全員の目の色が変わる。(イカロスに至っては言葉のまんま)

そして……。

 

「そこだ!」

 

最初に動き出したのは守形だった。

守形はなんと肉ではなく野菜の方を取った。

 

「守形先輩が野菜を……」

「先手必勝だ。誰も狙っていなかったみたいだしな」

「それじゃあ俺もぼちぼちするか」

「じゃあ私がいただきますね!」

 

アストレアが肉を狙う。そこに……。

 

「邪魔よ、デルタ!」

 

ニンフが強引に割って入り、アストレアの体を体当たりで突き飛ばす。

 

「きゃあ!」

「肉はもらったわ!」

 

ニンフは肉を卵につけて、食べる。

 

「う〜ん、おいしい♪」

「ひどいじゃないですか、ニンフ先輩!」

「何を言ってるのよ。これはすき焼き戦争よ」

「その通り。アストレアが悪い」

「イカロス先輩まで〜」

「うん、アストレアお姉様が悪い」

 

カオスにまで言われるアストレア。

 

「でも今回はお肉だけじゃなくて、他にもあるからいいも〜ん」

「そう言ってると取られるぞ」

「よし」

 

次に智樹が動く。しかし、それと同時に秋山も動いていた。

 

「やられる!?」

 

智樹はそう思っていたが、そうではなかった。

智樹の狙いは肉だったが、秋山の狙いは肉ではなく豆腐だった。

智樹の箸は無事肉を獲得、秋山も豆腐を獲得した。

 

「うむ、やはり豆腐はうまい」

「肉うめぇ〜」

「マスターがこうもすんなり肉を取るとは……」

「私達も負けてられないね、日和ちゃん」

「そうですね」

 

そはらと日和も負けまいと思う。

 

「しかし、これだとまた焼肉の時みたいに不公平なことが起こるな。

仕方ない、争奪戦には似つかわしくないが、そうめんの時みたいに一度取ったものはしばらく休みということにしよう」

 

秋山がそんな提案をする。

 

「はいはーい! それ賛成!」

「その方が、取りやすいしいっか」

「私も賛成です」

「え〜、私は反対よ」

「会長もね〜」

「俺はどちらでもいいぞ」

 

ニンフと美香子は反対する。

 

「そういうな。俺は争奪戦をすること自体は反対しないが、戦いにおいては対等でありたいと思っている。

とりあえず今からのルールだ。具を取った人はその取った具を食べ終えるまで他の具に手を出してはいけない。

ただしこれにも条件があって、早食いしても取ってから最低30秒経ってないと取れないというルールだ。いいかな?」

「監督役らしいルールの作り方ね」

「破ったらどうなるんですか?」

「このすき焼き争奪戦敗北の刑」

「いいだろう」

「それなら、まだ安心だな」

「ただ、まだ今は公平じゃない。だから、俺、智樹、守形、ニンフ以外のメンバーは何か好きな具を一つとって食べてくれ。

追加ルールはそれからだ。そして初めて公平になる」

 

秋山監視の元、そはらと美香子とアストレアは肉、イカロスと日和は野菜、カオスは豆腐を食べた。

 

「よし、今度こそ、真の争奪戦の始まりだ! ファイト!」

 

それから皆は慎重かつ大胆にすき焼き争奪戦に臨む。

 

「とりゃあ!」

「させなるか!」

 

智樹の箸を秋山の箸が阻もうとするが……。

 

「させないよ!」

 

カオスの羽が秋山を襲い、秋山はそれを回避する。

しかしその隙に智樹に肉を獲られた。

 

「おのれぃ」

「ありがとな、カオス」

「えへへ」

「とりあえず智樹、最低30秒休みだけどな。カオスは俺の妨害をしただけで具は取ってないから、継続OK」

 

そしてまた争奪戦が始まる。

 

「肉はもらったわ!」

「させんぞ!」

「俺じゃあ!」

 

美香子が肉を取ろうとするのを守形の箸が阻み獲ろうとし、それをさらに秋山の箸が二人の箸を阻む。

 

「せいやっ!」

 

秋山は阻むことに成功し、肉を獲るがその時、別の箸が入っていたことに気づく。

 

「む?」

「獲りました」

 

その箸は日和のもので三人が争っている間に箸を入れていたのだ。

秋山は一応、日和が狙っていたのに薄々気づいていたが、二人を阻むのに精一杯で日和の箸までを阻むことは出来なかった。

 

「まあ今回のすき焼きはこうやって複数取ることも可能といえば可能だ。これで俺と日和は30秒休みだ」

 

秋山はそう言って肉と一緒にご飯をほおばる。

 

「あんた、本当にご飯好きね」

「ご飯が主食だと焼肉の時に言っただろ。そして予告しよう。俺は肉と豆腐しか狙わない」

「偏ってますね」

「なんであんた野菜も食べないの?」

「俺が野菜嫌いだと何度か言ってたはずだが……」

 

アストレアの質問に答える。

 

「けど、これで秋山の狙いがわかったってことは、野菜は安全に狙えるって事ね」

「俺からはな……」

「野菜少しもらうね」

 

話してる隙にそはらが野菜を取り、食べる。

 

「あ」

「肉はもらいます!」

「Artemis」

 

アストレアが肉を獲ろうとし、イカロスが阻む。

 

「肉は私です」

 

イカロスがそのまま肉を獲り、食べる。

そんなこんなですき焼きは入っている種類が多かったために争い自体はあっても焼肉の時以上に悲惨なものではなかった。

秋山以外の面々はバランスよく具を獲って食べる。

 

「最後だな」

 

鍋の中に残ったのは肉だった。しかも長い一切れ。

 

「イカロス、言っておくが、Artemisとかで直接の妨害はなしだぞ。これは俺も含めて全員な。箸と箸のぶつかり合いならOKだ」

 

全員がしばらく硬直する。そして一斉に箸を出してきた。

 

『うおおおおおお!!』

 

全員の箸がぶつかる。

 

「肉は私のものです!」

「私よ!」

「私だよ!」

「会長がもらうわ!」

「こればかりは譲れん!」

「俺が勝つんだ!」

「マスターが相手でも負けません!」

「私も負けられません!」

「私だって!」

「……とりゃ!」

 

秋山は全員の負けられない気迫を見て、箸を下げた。

するとバランスを保っていた箸の勢いが崩れ、全員が箸を滑らせる。

 

「いただき!」

 

その隙を秋山が付いて、肉を獲得した。

 

「俺の勝ち」

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そしてイカロスやそはらに日和が片付けをする。

 

「ずるいわよ、あの場面で、箸を引くなんて……」

「そうだ! そうだ!」

 

ニンフとアストレアに責められる秋山。

 

「そう言うな。俺はあの時、箸のぶつけ合い事態どうしようかと思ったんだぞ。

あの箸のせめぎ合いなら、誰か一人、最初っからせめぎ合いに参加せずにかいくぐることだってできた。だが誰もしなかった。

だったら俺も一つ、ぶつかり合いに参加しようと思ったんだ。まあ、能力なしであそこまでなると簡単に獲れないからな。だから引いた。

『押してダメなら引いてみる』って言葉もあるだろ。考えな……」

「くっ……」

 

秋山に言いきられて言葉が出ないニンフとアストレア。

 

「『押してダメなら引いてみる』ね〜。会長は『押してダメなら殺しちゃう』だけど〜」

「お前の考えそうなのことだが、怖いからやめてくれ」

「『押してダメなら引いてみる』」

 

カオスがそう言いながら、智樹に近づく。

 

「どうした? カオス」

「えい」

 

カオスが智樹を押すと、智樹は家の外堀まで突き抜けて道路まで飛び出してしまう。

おまけに智樹の飛ばされた延長線上にアストレアがいたためにアストレアまで飛んでってしまった。

 

「いたたた……きゃあああああ!!」

 

アストレアの胸に智樹の顔がうずくまっていた。

 

「げふ!」

 

アストレアにアッパーパンチをくらって上空に飛ばされた智樹。

 

「た〜まや〜」

「花火じゃないぞ、美香子」

「お兄ちゃん、いつ帰って来るの?」

「あのスピードなら、5秒だろ」

 

秋山の言う通り、5秒で智樹は地面に到達した。

 

「なんでこんな目に……」

「私のセリフよ!」

「あんた達の運命(サガ)でしょ」

 

ニンフにそんなこと言われる智樹とアストレアだった。

 

 

 

 

 

 

おわり

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おまけ

 

 

作者「久しぶりの秋山登場」

智樹「なんだこの終わり?」

作者「二次創作的にいつも通りだろ、お前やアストレアの悲惨さは」

智樹「アストレアはともかく俺まで……」

作者「原作でも二人は酷い目に遭ってるだろ」

智樹「そうだけどさ……」

作者「一応、これとは別にそらおとでの作品を書いたんだよな」

智樹「なんでそっちを投稿しなかった?」

作者「だってすき焼きネタは昨日の俺の晩御飯だもん」

智樹「昨日!?」

作者「まあもう一つのネタは予定している『3周年だよ』の予告でやろうかなと言うことをいってからだ。

それでは!」

説明
今回の題材は作者が食べた晩御飯を基にしてます。
また作者の分身となるオリジナルキャラ(秋山総司郎)も出てくることをご了承ください。

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