詩集「奏詞」心巻 |
【焦流】
焦るばかりで時間だけすぎてく
何しているんだろうか
笑うよ笑ってくれよ
本当に何してんだ
ただただ時間だけが過ぎていく
どうしようもないぐらいに
他人ばかりが羨ましくて
自分ばかりが情けなくて嫌になる
そんでも明日という日は
毎日くるんだよな
生を終えるまでは
【敗逅】
机に転がるシャープペン
授業は進んでいるのに
白紙のルーズリーフ
その横に丸みを帯びずに
ケースに入った消しゴム
箱の中につめられていた時は
それをささやかな
抵抗だと信じていた
でもそれは抵抗でもなんでもなかった
そうそれはただの敗北
【虚繋】
繋がってない重なっていただけ
これが真実でそして現実
時間が過ぎていくごとに
一枚一枚また一枚と剥がれていく
そして最後には何も残らない
それが怖いどうしようもなく怖い
強くなれ強くなれ強くなれ
懸命に言い聞かせる
それでも恐怖はなくならない
頭の隅にいつでも居座って
気がつくと恐怖に包まれる
手を伸ばして重なりを掴む
剥がれるないようにギュッと掴む
けど無理矢理に繋ぐため剥がれていく
【贖許】
自分はこれだけしました
だから許してください
すべてを許される免罪符を求め
本質的な問題から逃げて
やらなくてはいけない事を
後回しにして
言い訳を正当化する免罪符を
いつもいつも求めている
【幸受】
幸せを誰もが求める
でもその幸せは
誰一人同じものではない
望むべきものが違うから
それも理由の一つ
例え同じ事象を
望んでいたとしても
結果を受け止める
人間によって
幸せかどうかがきまる
【弱芯】
優しくされたいそっと包んで欲しい
柔らかな温もりを与えて欲しい
小さな傷がいくつもいくつも
重なり合っていった
もう限界なんだまだ大丈夫だと思ったけど
すれすれのところで生きている
【気迷】
グツグツとよくわからない
気持ちで一杯になる
求めているものが
なんなのかわからない
何をしていても
楽しくない
ただ時間が過ぎていくだけ
気晴らし体に入れたアルコール
何も変わらない
気持ちよくないつまらない
何のために存在しているんだろうか
そんな意味のない事を考えてしまう
何を求めているんだろうか
何から逃げているんだろうか
もうわけわかんない
【あがれぬ場所】
元気に騒いでみて
一人を感じてへこむ
火がついちゃえば
自分はいらない
燃えてしまった炭と同じ
舞台を整えるだけで
いっぱいいっぱいで
舞台で踊ることも
演じることも出来ない
【浸食】
虫が体を蝕んでいく
次から次にと生まれながら
次々と蝕んでいく
蝕まれた体はボロボロ
いたるところに穴が開く
いっそのこと全部蝕んでくれれば
ボロボロがなくなるのにな
そんなアホなことを考えながら
無意識のうちに虫を振り払う
意識して振り払わなければ意味ないのに
その場を繕うために必死に振り払う
【侵殻】
いつのまにか包まれていた殻
気がつけばこの殻からのプレッシャーに
身を蝕まれていた
殻は本来身を守るためにあるのに
この殻は身をどこまでも蝕んでいた
この殻の名を世間と人々は言う
包まれたくて包まれているのでない
無意識のうちに勝手に包まれていく
テレビ ネット 雑誌 ラジオ
あらゆる媒体により培われ
つつんでいく
【虚求】
求めている
強く強く求めている
でも本当に求めているの
形だけ求めてない
そんなの意味ないよ
わかっている
わかっている
けど求めてやまない
孤独から逃げたくて
逃げたくて
求めて求めて
孤独から解放されたくて
空しさだけが
漂う事もわかっていても
安く求めてしまう
【思交】
様々な思いが交錯する
一筋縄ではいかない人間模様
どの糸を引き寄せれば正解なのか
はたまた正解などはないのか
それでも糸を引き紡いで
いかねばならないこの世の中
釣り糸のように絡まりちぎれるのか
羊の毛のように上手く紡がれていくのか
誰にもわからない
ただひたすら引き寄せ
人間模様を構築していく
【振れ幅】
気持ちはどうしようもなく
揺さぶられる
右に左に自分の意志とは無関係に
ゆらゆらゆらゆら揺さぶられる
揺れ幅が広ければ広いほど
思い悩み苦しんでいく
揺られている速度は初めのうちは早く揺さぶられる
終わりが近づくとゆっくりと揺さぶられる
同じように揺さぶられていても
初めと終わりでは得られる感情は違う
【自由の裏に】
自由に羽ばたいていたつもりだった
何かに庇護されている何て考えもしなかった
庇護から逃れ本当に自由になったとき
僕はもう羽ばたくことはできなかった
庇護があるから自由に羽ばたける
羽ばたいている裏にはそれを守る存在がある
自由に飛びたい
飛ぶだけの庇護が欲しい
まだ飛びたい飛んでいたい
許されるならずっと飛んでいたい
庇護を与える日がくるまで
【身喰】
暴れ狂う虫を身体の中で飼う
ドンドン蝕まれていく
そこら中が穴が開く寸前
薄皮一枚で微妙に保たれる
次から次へと餌が投下されるせいで
暴れ狂う虫はうじゃうじゃと増殖
いつ腹の皮を破って出てくる事やら
痛みを忘れるために
きつい酒をあおる
一時的に寝るみたいだけど
朝起きるとコレまたひどい
全身を蝕んでいく
まだ頭は大丈夫かな
たぶん大丈夫だと思う
【熱変】
熱くなる
自分に何の利もない
熱くなればなるほど
どんどんと不利になっていく
そんなことはわかっている
でも熱くならなきゃならない
熱くならなきゃ何も始まらない
熱くなって初めて形が変わる
熱ければ熱いほど簡単に変わる
【熟夢】
アルコールの力を借りて
夜の眠りにつく
眠りについては夢におこされ
長い夜を旅する
起きているのか寝ているのか
自分ではよくわからない
現実と夢を繰り返していたのか
はたまたそれまでもが夢だったのか
確認するすべもなく
ただただぼんやりする頭で考え込む
【添寄】
走り疲れたとき何も言わずに
そっと支えてくれる存在
どんな理由で止まっているのか
知りたいはずなのに何も言わず
走り出すまでじっと待ってくれる存在
どんなに心が落ち着かされるかわからない
例え右に左に上に下に滅茶苦茶にかき乱されていても
支えるように側にいてくれるだけなのに
凪の海のように心落ち着く
【無動】
焼けた鉄板の上に落とされて
生まれて初めてのダンスを踊らされる
足下から炙られでもしないと
何もする気がおきない無気力さ
何もおきなければ
ただただ立っているだけ
でもそれこそが人の本質かもしれない
【繋狂】
きっとどこかに何かを忘れてきたんだ
だからそれを取り戻すために
手がかりを得るために
夢が過去へ未来へ現在とつれ回す
どことなくねじれ曲がった過去
繋がらないはずの過去と現在
そしてまだ見ぬはずの未来
何を探しているのか
それすらもわからないのに
手がかりを探している
【自覚】
何かを失ったわけでもないが
喪失感が心の中に充満している
気持ちばかりが先に先にといく
焦らなくてもいいのに
雑音が四方八方から聞こえてくる
無視すればいいとわかっている
それでも焦ってしまう
焦ったところで何もかわらない
自分の気持ちをしっかりともって
ゆっくりと流れに身を委ねればいい
【忘探】
何処かに置き去りにしてきた大切な何か
その何かがわからないまま
刻々と時間だけが無為に進んでいく
本当は何も置き去りにしていない
そう思う時も時たまあるが
それが幻想に過ぎない
確信があるわけじゃない
でも何かが欠けている
そんな不自然さが体中にまとわりつく
置き去りにした何か
それは何だったのか
意識の中を彷徨っている
【搾空】
乾いた空に吸い込まれた
ピリピリ感を肌に感じた
吸い込まれた世界の視界は一面が青だった
吸い込まれているうちに心に溜まっていた
黒くどす黒いモヤモヤは乾いた空に吸い込まれた
全てを出し切った後の体は清々しくどこまでも軽かった
【伸ばした先に】
空に手を伸ばして星を掴もうとしていたあの頃
どんな気持ちで空に手を伸ばしていたのか忘れたけど
真剣に掴もうとしていたのは覚えている
あの頃は何の心配もなくいつもを過ごしていた
自分のしたいことを思いつく限りして
できないときは泣きじゃくり回りを困らせてた
今はどうなんだろう
そんなことを思いながら空に手をあげてみる
今も昔も掴めないのは同じでも
たぶん絶対にあの時の気持ちと同じじゃない
どんなに手を伸ばしてみても思い出すことはない
あの時はこの手の先に何を期待して伸ばしていたんだろう
【非抄】
忘れ物をしたと思ってたんだ
でもそれは忘れ物じゃなかった
だって忘れ物なら取りに戻る事ができる
でもそいつは取りに戻る事が出来なかった
えっ別に後悔はしてないよ本当だ
嘘じゃないよその目は信じてないな
まぁ別に良いけどさその通りだから
あぁ後悔しているさ
だから話をしているんだろう
それは何だったのかって
そんなことは教えれないよ
ここまで話しておいてそれは無いってか
しかたないなヒントをあげよう
それはお前だよお前
ヒントになってないって
そうだろうなわかっていれば
今日と言う日はなかっただろうしな
笑ってごまかすなって
何怒ってんだか誰もごまかしてないよ
【全理】
感じているこの結びは必然だったんだと
宇宙のように広がる世界でお互いに
気づいたことこれは偶然でなく必然
狂っているってそうかもね狂っているかも
そうじゃなきゃそんな事感じないし期待しない
狂っているから感じるんだこの必然に
偶然なんかじゃない
自分の中の感情すべてが肯定する
必然だとだから何も心配はいらない
必然である以上結びが切れる事も
綻びることもないから
【幕雲】
雲は夜空に広がり星夜を隠す
隠させる星星を人々は崇め求める
目に見えない何かを崇拝し
創造と妄想をひたすらくりかえし
都合の良い世界を構築
安住を求める
不安からくるのか
寂しさからくるのか
雲はいつになってもはれない
【途中】
立ち止まって
走っていた流れから外れた
立ち止まった瞬間今までにないものを
見た聞いた感じた色々な情報で
そして再び動き始めようと足を前に進める
けど踏み出し転けて両手をついた
歩けない
ゆっくりゆっくりと
赤ん坊のようにしか進めない
早く起き上がって歩いて加速して流れを
追い越さないと止まった意味が消えてしまう
立ち止まる覚悟よく言ったものだ
流れから外れるときの覚悟
立ち止まり流れを超す苦難の覚悟
二つの覚悟を決めて
立ち止まり
再び歩くき加速し追い越す
【空思】
1年の中で一番空を高く感じる
上を向いてゆっくりと流れる雲を目で追う
ころがって眺めていた
あの時を思いだす
自由だったのに不自由だと
嘆いていたあの時
目一杯自由にしていて
それでも物足りなくて
毎日を彷徨い続け
そして今に繋がる道を歩いたあの時
あの時の空も高く雲がゆっくりと流れていた
【隙誘】
ちょっとした隙間を埋めたくて
色々なつながりを求めてしまう
ちょっとした隙間なんて
誰にでも簡単にできるもので
特別なことではない
だから慌てて埋めなくても
ちょっとした隙間はほっとけば
自然と埋まっていく
ただあいた不自然さは
ちょっとだけ気持ち悪い
でも自然に埋まるのを待つのが一番いい
無理に埋めると後々気持ちが悪いから
【毒感】
詰め込み過ぎて破裂しそうな感情
いつもいつも体の中を駆け巡る
駆け巡っているうちに
少しでも軽くなってくれればいいけど
大抵は重くなってスタート地点に戻ってくる
詰め込んだ感情が恋愛感情とかならいいんだけど
大抵詰め込んで破裂しそうな感情は
ろくでもない醜い感情ばかり
そんなものが体を巡回していれば
いつかはおかしくなる
【1/8】
窮屈な箱の中で大勢の人間と共に過ごした
毎日決まった時間をあの箱の中で
考えもなしに消費していた
箱の中にいたときは毎日が退屈の繰り返し
退屈しのぎに枠からはみ出した
次の箱へ次の箱へと自由を求め
高みへ高みへと上を目指して昇っていった
昇った先に自由は確かにあった
でも箱の中で望んでいた自由は幻想だった
【霞折】
心に刺した杭がへし折れた瞬間
目に映る全てが色あせて見える
折れるはずが無いと信じて
力の限り打ち込み動いてきた
日々の衝撃にも耐え信じ動いてきた
でも少しずつ少しずつ衝撃を受けるたびに
小さな小さな亀裂が生じ傷ついていた
そして気がついた時には杭は見事に折れていた
折れたらさっさと抜いて別の杭を打ち込めばよい
力の限り打ち込んだ杭はなかなか抜けない
打ち込むときも苦痛を伴う
そして抜くときは激痛を伴う
だから多くの人は折れたままで生き続ける
それではダメだと分かっていながら
【気がつきし事】
すっと差し込む一本のか細き光。
闇の中ではそのか細き光でさえも眩しい。
「光がこんなに明るいなんて知らなかったな。」
私は闇の中で呟いた。
するとアイツは不思議そうに聞いてきた
「本当に知らなかったの。」
「まぁね。真っ暗だったからね今までは。」
「なるほどね。よかったじゃん知ることができて。」
私はアイツに寄りかかり言葉を続けた
「そうだ。知れて良かった。」
「そっか。」
そしてそのまま二人で寄り添いながら眠りについた。
【いつものこと】
不定期的に漠然とした不安に襲われる
ちょっとした事なのに勝手に広がっていく
取り越し苦労だとわかっている
わかっていてももしかしてと不安が広がっていく
一度広がりはじめたら不安が広がりきるか
何も考えないで寝てしまうしか
楽しい何かに溺れていくか
ただただ時間を経過させていくしかない
【緩考】
ゆったりとした時間に身を任せて
気になっていることの全てについて
答えを求めるのではなく
そこに確かな安らぎを求めて考える
先のこと人のこと
思いを巡らしている思考は様々だけど
現実世界と比べれば
そこは安らぎの世界が広がっている
【心律】
呼吸をゆっくりと整え
深く深く呼吸を繰り返す
体中を駆け巡る血流を感じながら
体のすべてを外に出すように
ゆっくりゆっくりと力を抜いていく
気持ちがいいと心の底から
感じられるまで力を抜いていく
疲れた体も心も元気になるように
【繋焦】
雨の音が響き渡っている
周りが静かだとうい事を改めて意識する
そしてほんの少しだけ寂しさを覚える
覚えた寂しさに浸かっていると
頭から離れなくなっている思いが
何気ない表情で顔をのぞかせる
その思いに戸惑い葛藤し焦がれる
焦がれるだけ焦がれてまた焦がれる
意識しているとき以上に焦がされる
でもそれが良い
焦がれる事なく楽に繋がっても
本物は手に入らないから
【非満】
満たされないものを
満たすためにあがく
あがくのは苦しかったり辛かったりする
でも満たされたときの喜びを夢見て
その喜びが苦しさや辛さを
忘れさせてくれると信じているから
いつまでもあがいている事が出来る
【臆弱】
こんなに弱い自分がいる何て思いもしなかった
誤魔化すためにアルコールで脳を揺らす
逃げるためにいれるアルコールは味がしない
飲んでいても楽しくないし美味しくない
でも酔わなければますます弱くなりそうで怖い
いっそのこと忘れてしまいたい
でも忘れたくないし忘れられない大切なもの
知らないうちに依存していた
それが何を意味するのかわかっている
ここにいる理由ここに存在する理由
そう答えはたった一つしかない
説明 | ||
奏詞の第二巻。 | ||
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