SAO〜黒を冠する戦士たち〜 第百五十三技 決意、光にして影 |
第百五十三技 決意、光にして影
キリトSide
俺とアスナは自宅のソファに向かい合って座っている。もちろん、説得するためである。
「ダメだからね。囮なんて、そんな危ないの…」
「何度でも言うけど、俺のHPならそうそうやられることもないし、《耐麻痺》や《耐毒》スキルもつけてある。
余程の事がなければ後れを取ることもない」
「その余程のことがあったらどうするの!」
俺の言葉に大きな声で反論するアスナ。
彼女とて分かっているのだろう、囮役は俺が適任ということは。
それでも、やりきれないのだ…。
「それが起きないようにするために、全力で警戒するんだよ…」
「絶対とは限らないでしょ? 奴らがいるのは圏外なんだから」
アスナの言うように、ラフコフの残党が潜伏しているのは圏外である。
カーソルがオレンジの者は基本街に入る事が出来ない。
街に入れば警備用のNPCに捕まり、『黒鉄宮』へと送られる。
「何も奴らはオレンジだけじゃない、グリーンの信奉者もいる。そいつらとの接触なら圏内でも可能だ」
「シリカちゃんの時みたいに『睡眠』をさせるアイテムで眠らせて、『睡眠PK』をするかもしれないんだよ!
どんな手段を、使うかも分からないんだから!」
『タイタンズハンド』がシリカを誘拐した時の手法。
この世界には眠りという状態異常は存在しない。だが睡眠は存在し、意識を失う事もある。
それらを促す薬を奴等は作り、睡眠PKの手法に用いてきた。それ以外にもどんな手を使うかは分からない。
「なら余計に俺が動くしかないだろう。それこそ他の奴等なら((殺|や))られるかもな」
「それはキリトくんだって同じ「アスナ」っ……」
「俺が、信用できないか…?」
俺の問いにアスナは震える。我ながらズルい奴だと思う。
こう言えば彼女は間違いなく黙ってしまうと、自分で分かっているから。
「信用、してる……信頼、してるよ…。だけど、だけど…」
涙を流すアスナ。泣かせたくないのに、泣かせてしまう。
こういう時ばかりは破壊することしか能の無い自身の力を恨む。
「それなら「でも…」アスナ…?」
「一人で、背負わないでよ……」
「!?」
その言葉を聞いて気付いた……なにを思い違っていたんだろうか。
彼女はただ俺が心配だったのではない、先の言葉通りむしろ信頼してくれている。
俺はアスナ、結城明日奈という人間を見誤っていたらしい。
彼女は、俺が一人で背負いこみ、潰れてしまうのではないかと危惧している。
アスナは俺が一人で背負っているのが、許せないのだ。俺はアスナの側に歩み寄る。
「ごめんな……また、泣かせてしまって…」
俺は彼女の頬に手をあて、目尻に溜まった涙をそっと拭う。
「わたし…また、我が儘言ってる…」
「いいんだよ。俺の独りよがりが悪いからな…」
アスナは少し困ったような笑みを浮かべ、俺は苦笑を浮かべる。
結局、俺達は頑固者で似た者夫婦ということだ。
「辛いことになる」
「うん」
「逃げたくなるかもな」
「逃げないよ」
「俺の醜い部分を見ることになるぞ」
「受け入れられるよ」
「俺のことが怖くなるかもしれない」
「それもキリトくんだよ」
「俺を嫌いになるかも」
「絶対にありえないよ」
「なら俺をもっと好きになるかも」
「喜んで!」
問答をしていく俺とアスナ。そして彼女の最後の返答を聞いた瞬間にその唇を奪った。
熱く何度も唇を交わし、舌をねじ込み、唾液を交換して飲み干す。
しばらくそれを行い続け、アスナの呼吸が乱れ始めたところでやめ、そのまま俺に凭れ掛かってきた。
「ん、はぁ、はぁ、はぁ……/////////」
「ふぅ〜…」
必死に呼吸を整えるアスナに対し、俺は一呼吸で整える。というのも、いつものことだからな。
「むぅ〜、キリトくんのバカ…///」
「くっくっくっ、ゴメンゴメン……さて、最後にもう一度聞く。いいんだな?」
「……はい」
アスナの瞳には決意の光が宿っている。俺は彼女を深くまで連れ込んでしまった。
だが、それすらも愛というのならばどこまでも連れて行こう。
「貴女に、狩りし者を狩る者の名を送ろう。名を『((狩人の光影|ファントム))』」
「ファン、トム…」
「貴女は俺達の光であり、影である。
闇と共に生きる黒衣衆にとって、貴女は光。
闇という光の中で生きる狩人にとって、貴女は影。
故に光と影の幻影」
アスナは目を閉じ、俺の言葉を聞き入れていく。そして目を開き、言葉を紡ぐ。
「その名、確かに受け取りました…」
受け入れたアスナ。これで彼女も引き返せなくなった。それでも後悔はしていないようだ。
「これで、また別の意味でキリトくんと一緒だね」
「一心同体だな」
俺達は改めてキスを交わした。どこまでもお互いを守り続けることを誓って。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
そういうわけで、何人かの方々が予想した通り、アスナが『嘆きの狩人』に参入しました。
名は『狩人の光影』と書いて、『ファントム』と読みます、ネーミングセンスに関しては何も言わないでください・・・。
キリトにとっては辛いかもしれませんが、アスナが言ったようにある意味で一緒ということです。
とまぁそんなこんなで、アスナもキリトと一緒に行動するようになります。
ではまた・・・・・・。
説明 | ||
第百五十三話です。 キリトがアスナを説得する・・・はずが? では、どうぞ・・・。 |
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コメント | ||
音の葉様へ 学園ラブコメや恋愛中心ならともかく、バトル系が入り込むと厨二がほぼ必須になりますからねw(本郷 刃) 狩人の光影=ファントム」 そもそもラノベ自体が厨二の塊でもあるので、全然宜しいんじゃないでしょうか?っていうか、全然問題ないですよ。(Phantom;幻影の意)(D.HELIOS) meeshe様へ 二次創作を書いたりファンタジー系やバトル系だと通り名が大変ですからね、厨二病を復活させるようなものです・・・(遠い目)(本郷 刃) ミヤビ「まあ……氷の鬼人とか言う二つ名をつける作者より、刃さんの方がネーミングセンス良《良い》」貴女はとことん、人によって接し方が変わるなあ……カミト「まあ、別世界の俺に、漆黒の死神とかつける作者より格好いい名前だと思うぞ」……(meeshe) アサシン様へ ありがとうございますb!(本郷 刃) ファントム・・・・b!(アサシン) サイト様へ 元々黒衣衆は圏内という利点を生かして、設定無しデュエルを行いますので、鍛えられていますw リアルは・・・どうでしょうかね?(本郷 刃) ・・・責任を持って旦那が嫁を鍛えなきゃなwリアルで嫁を鍛えたりはしないのかな?(サイト) 不知火 観珪様へ キリトは理数系が凄いみたいですからねw ALO編へのフラグ、ですか・・・どうでしょうかね?(本郷 刃) 魅沙祈様へ 丁度良かったようでなによりです♪ テスト大変ですよね〜、ハァ・・・。(本郷 刃) 魅沙祈さんに同じく、理数系を教えてもらいたいです…… そんなことより、これもALO編へのフラグなのかなーとか勝手に勘ぐって2828しているのはボクです。(神余 雛) はい、ちょうどよかったです♪あぁ〜テストもうヤダ…(ToT)キリト君に物理と数学教えて欲しい…(>_<)(魅沙祈) 魅沙祈様へ はい、参入です・・・『ファントム』の理由、納得していただけてなによりです。今回はほど良い?甘さになったと思いたいですw(本郷 刃) なるほど、やはり『嘆きの狩人』に参入しましたか…。ううむ「ファントム」説明を聞いてなるほど、と思いました!…今回いい感じに甘かったですね〜(*´∇`*)(魅沙祈) Kyogo2012様へ そうなんですよね〜、どうしたものでしょうかね〜、ホントに悩むものです・・・。キリトとアスナが全てにおいて繋がったともいえる瞬間ですね。(本郷 刃) うーーむ。「ファントム」ねぇ・・・・・。ネーミングセンスの問題ですからねぇ〜。私が言えた義理じゃないですけど・・・・。キリトとアスナが両方の意味で繋がったと言うことですか・・・。今後の展開が楽しみだな。(Kyogo2012) |
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