いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した |
第八十七話 ルビと字面と俺への扱いが酷過ぎる!
このシステムの使用者は私だった。
作ったものがまず試し、それの安全性を示したかった。
私は盟主という立場上、必要以上に民衆から大切に扱われていたが、だからこそ私が一番に試すべきだと皆に言い聞かせた。
システムは無事に起動。
そして、設計上のデータを叩きだし新たなエネルギーとして私達はそれを利用し始めた。
…だけど。
想定していたデータを出すことが出来たのは後にも先にも((私|・))だけだった。
前回から三時間以上も拘留された俺はようやく保釈され、アースラのブリッジにたどり着く。
『まてーい!王様を傷つける奴は僕が許さない!たとえ、星光と王様が許してもこの雷神の襲撃者が許さない!』
アースラに戻ると大きな画面に映し出された雷刃とその後ろにいるはやて似のマテリアルという存在が映し出されていた。
彼女が予言の王様か?
「状況は?」
「はやてちゃんとリインフォースさんがピンクの人を追っていたんですが、そこに『闇総べる王』と名乗るはやてちゃん似のマテリアルが現れて、そこにピンクの人とはやてちゃん達をバインドで抑え込んだ後、攻撃しようとしたらユーノ君のズボンを剥ぎ取った赤い髪の女の人が来て王様をぶっ飛ばしちゃったみたいなの」
凄いなユーノのズボンを剥ぎ取った人。
ユーノ大丈夫かな?…あ、予備があるから大丈夫?よかったよかった。でも泣いている?見られたから?…二人に?
一人はあの人だろう。もう一人は助けに来たなのはがその現場を…。
…………ユーノ。あとで何かおいしい物を奢ってやるからな。
『そこの銀髪の方と茶髪の御嬢さん。うちのピンクの妹が失礼を働いてしまって申し訳ございません。ここは私がっ』
『ちょ、アミタ。あんたウイルスは!』
『そんなもの…気合で!』
かっ、かっこいい!
アミタと呼ばれたこのお姉さん、カッコい…。
『そして、美少年の半ズボンで!』
変態だぁあああああ!変態がいるよぉおおっ!
『…く、どこでそんな回復アイテムを』
二号がいたよ!変態二号がいたよー!
『あと、根性と熱血で!』
『確かに馬鹿は風邪をひかないというけれど…』
変態はどうなんでしょうか?
「あの論は間違っているわね。うちの((変態|バカ))も風邪を引いたもの」
「ルビと字面と俺への扱いが酷過ぎる!」
というか、プレシア。キーボードを凄いスピードで撃ちこんでいる。
何気に雷神のデータを取りまくっていますね。
『さあああ、キリエ。かくごしなひゃいいいい』
『てぇっ、滅茶苦茶ウイルスが効いているじゃない!?てぇいやっ!』
バチコーンッ。と、赤い髪のおさげ姉さんはピンクの姉さんの持っていた二丁拳銃を素早く合体させて出来上がった大剣に殴り飛ばされた。
と、同時になのはにとても似ている少女が現れた。
『レヴィ。王。御無事でしたか』
『む、貴様はシュテルか』
『レヴィって、僕の事?でも、いいね。その名前もカッコいい♪』
『そちらの方は?』
『ふん。我々にシステムU−Dについて情報を渡すと言ってきおってな』
王と呼ばれたマテリアルはキリエと呼ばれていた姉さんに杖を向けて砲撃をしようとしたが、彼女はそれを笑顔で止めに入る。
『は〜い♪話し合いはそこまでここは引きましょう。王様♪…どうやらこちらの動きは((向こう|・・・))にも見られているみたいですし…』
『構わぬ。むしろ、我ら三人が揃ったのだ。負けるなど…』
『王よ。それまでにしましょう。…この気配、『知りたがりの山羊』が近づいてきています。ここは彼女の意見を取り入れるべきです。それに、私達も復活したばかり。万全ではありません』
なのはに似たシュテルと呼ばれたマテリアルの言葉を聞いて王は苦虫を噛み潰したかのような顔をして杖の矛先をキリエから外す。
『…オリジナル達はどうにでもなるが『知りたがりの山羊』は困るな。…いいだろう。ピンク頭。我等について来い!役に立たない情報だったら消し飛ばすからな!』
『大丈夫ですよ、王様。決して損はさせないから♪』
(…私にもね)
そう言って、マテリアル三人娘とキリエはその場から転移していった。
『キリエ!待ちなさい!』
アミタという人が再びキリエを呼び止めようとした時には彼女達は既にいなかった。
代わりに…。
『…逃げられたか。もう少しで『偽りの黒羊』に関する情報を手に入れることが出来たのだが』
邪悪な黒い騎士甲冑を着込んだアサキムが現れた。
「アサキム!」
私は主はやてを後ろにするように前に出ながら『悲しみの乙女』の力の象徴。ガナリーカーバーを出現させて、その銃口をアサキムに向ける。
「…『悲しみの乙女』か。それに」
アサキムはこれといった興味を示さずにアミタの方に視線を移す。
「……へぇ。僕や高志とは違うが、君もまた次元を超えてきた者か」
「あなたは…」
アサキムの視線を受けて体を強張らせたアミタと呼ばれた少女は弱った体ながらにアサキムに二丁拳銃を向けて警戒する。
こんな時に『傷だらけの獅子』である高志が近くにいないのがとても怖かった。
以前、逆ユニゾンという裏ワザと『悲しみの乙女』のスフィアでなんとか拮抗していたに過ぎない。
あの時より自分は弱っている。アミタも戦力になるかどうかも分からない。
そんなことを考えていたが、アサキムから敵意のようなものを感じられないことに気が付いた。
「…まあ、いいさ。今は君達よりもさっきの彼女達の方が気になる。『悲しみの乙女』。次、逢う時には君と高志の因子が更に強まっていることを願うよ」
「………」
シュンッ。
と、アサキムも不気味な言葉を残しながら転移していった。
それからしばらくして、私達は警戒を解いた。
「…あ、相変わらず不気味やね。アサキム兄ちゃん」
「…ええ。ですが、助かりました。今、彼に対抗できるのは『傷だらけの獅子』だけですから…」
そう言いながら、主はやてと今自分達が無事であることを確かめ合うと、次はアミタと呼ばれていた少女の保護だ。
「すいません。こちらは時空管理局です。アミタさん。でよろしいですか?あなたにはお話したいことと聞きたいことがあります。ご同行をお願いできますか?」
「…は!さっきの人がキリエの所に!?」
アサキムがいなくなったことに気が緩んだのか、私の言葉に気が付くのにしばらく間をおいていたアミタ。
「へ?あ、アサキム兄ちゃんが言っていたことが本当なら、たぶんですけど…」
あ、主!?
今それを彼女に伝えるのは…。
「キリエ!」
リインフォースの予想は的中。
キリエを心配してアミタの体には再びリインフォースが感じたことのない魔力を帯びだす。
アミタはキリエを追って疲れ切った体に鞭を打って、彼女もまたこの空間から離脱してアサキムを追った。
「あ、ちょ、ちょっと…。待ってください!アミタさん!」
『待つのはお前だ!はやて!』
通信で『傷だらけの獅子』が止めに入った。
『いったん戻れ!あの人を追うならシャマルさんに送ってもらった方が速いし、省エネで済む!後を追うにしても監視するにもアサキムが関係しているなら万全で臨め!』
「で、でも…」
『お前の我儘でリインフォースまで巻き込むな!』
主はやてが忠告を無視して助けに行きたがっていたが、彼の言葉で思いとどまる。
後になって知るが彼の傍にはアリシアがいなかった。ただ、すぐそばにいないだけでアリシアは別室で待機していた。
アリシアと高志が合流するまでに一分はかからないだろうが、その一分ではやては彼女達を追うことが出来た。ただ、それを追っている間にアサキムに何をされるかわかったもんじゃない。
それを恐れて彼は主はやてを止めたのだ。
「わ、わかった…」
「…」(…すまない。お前に汚れ役をさせてしまって)
『とにかく、一度戻れ。クロノとリンディさん。プレシアで対策は練っている』
主はやては落ち込みながらも私と一緒にアースラに戻った。
―誰か私を呼んでいる?これは…―
駄目です。私はもう…。
『偽りの黒羊』に飲み込まれかけています。だから…。
どうか、私を見つけないでください。見つけてしまったら私は…。
あなたを壊してしまいます。
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