交流(2) |
学内交流で何をするかは、多数決でドッジボールに決まった。
チーム編成は、1チーム6人で、各チームに小学3年生が3人、小学5年生が3人となった。
また、小3と小5では力に差があるということで、小5の班長であるスパーダの友人の提案によって、特別ルールとして次の3つのルールが付け加えられた。
小5は小3を狙ってはいけないこと。
小3は2回当てられるまで外野にでなくてよい(もちろん、小5は1回当たっただけで外野へ行く)
小5は2回連続でボールを投げてはいけない(1回は小3に回す)
そして、最初に外野へ行くのは小学3年生が1人、小学5年生が1人の計2人ということになった。
各々がコート内か外野へ行く中、同じ班になったスパーダとルカはコート内へ入っていく。(ルカは外野へ行きたかったのだが、誰が外野へ行くかのじゃんけんで負けてコート内に行くことになった)。
スパーダがふとルカの方を見ると、ルカがびくびくと怯えている。
そんな様子を見てスパーダは、ああ、やっぱり、と思った。
(「どう見てもドッジとか、怖がりそうだもんなぁ・・・」)
じゃんけんのことだけでなく、この前のこともあり、ルカが怖がりということは気づいていた。
スパーダは少し何かを考えて、ルカに声をかける。
「なあ」
「あっ、はい!」
ルカがビクっとして、スパーダの方を見る。スパーダを怖がっているのではない。
スパーダが少しルカから視線を外しながら気まずそうに話を切り出す。
「俺の後ろにいとくか?」
「・・・・・・え?」
ルカは、何を言われているのか分からない、といった様子だ。
スパーダは自分の話が唐突すぎたのに気づいたようで、視線を少し上に漂わせながら自分が言いたかったことをできるだけ伝えようとする。
「あー・・・もしボールが飛んでくるのが怖いんだったらさ、慣れるまで俺の後ろにいるかって!ボールが自分のところに飛んでくるの怖いかもしれねぇけど、慣れたらそんな怖いもんでもねぇからさ!」
ルカはスパーダを見ながら2、3度目を瞬かせた。
スパーダが気まずそうに、横目でルカを見ていると、
「はい!・・・ありがとうございます!」
ルカが嬉しそうな顔をして頷いた。
途端にスパーダは安心した。それと同時に急に恥ずかしさがこみ上げてきた。その恥ずかしさを紛らわすためか、ルカから視線を外して――照れをかくすためもあって――いつもより乱暴な口調になる。
「敬語とかいらねぇよ!」
「えっと、・・・うん!スパーダさん」
「さん付けもいらねぇ!」
「あ・・・うん!スパーダ!」
戸惑いながらも笑っているルカを横目で見て、スパーダは顔には出さなかったが、心の中でなにか暖かいものが灯っているのを感じていた。
ドッジボールが始まると、スパーダはルカにいろいろ教えた。
ただ言葉で教えるだけでなく、ルカを後ろにして実際にどう受けるかを見せ、自分が受けたボールをほぼ毎回ルカに回してどう投げるかを教えた。
ルカは四苦八苦しながらも慣れてきたようで、少しずつだがボールの投げ方が上手くなっていった(受けるのは、まだ怖いようである)。
そのためか、始まって最初のときは、ただ怯えているだけだったが、だんだんと楽しそうに笑うようになった。
スパーダの方も、そんなルカの様子を見て少しずつ顔がほころんでいった。
キーンコーン
終わりを伝えるチャイムが鳴る。
「えっ!?」
もう終わり、と驚きながらルカが残念そうに呟く。
スパーダも授業時間が終わったのに驚いた。いつもより時間が経つのが早いように感じた。
結局、ドッジの勝敗は決まらなかった。スパーダは、いつものドッジでは時間内に敵チームを打ちまかせなかった時は、すごく機嫌が悪くなる。しかし、今回は――悔しさはあったが――そんな感情は湧いてこなかった。ルカがドッジの終わったことに残念そうにしながらも、笑っているのを見て、悔しささえ薄れていった。勝ちとか、負けとか、そんなものなんかどうでもよくなってきていた。
(「まっ、いっか・・・・・・」)
勝ったときとも違う―――
負けたときとも違う―――
引き分けたときとも違う―――
そんな、不思議な感情がスパーダの中にあった――――
みんなが教室に戻ろうと下駄箱に向かって歩いている時に、ルカがスパーダのところに走ってきた。
スパーダがルカの方を向く。
ルカが少し息を切らせながら――――
「スパーダ!ありがとう!!」
楽しかったと、顔を少し赤らめながら満面の笑みで言う。
スパーダは同級生のところへ走っていくルカの後ろ姿を見ながら、自分の顔が赤くなっているのに気づいた。
どうして赤くなるのか分からなかった。そして、顔が赤くなったことがなんだか恥ずかしくて余計に顔が赤くなる。
スパーダの友人はそんな様子に気づいたようで、
「スパーダ、お前顔赤いぞ?風邪か?」
「なっ・・・・・・違げぇよ!!何でもねぇ!!」
スパーダは慌てて答えて、顔が見えないように俯きながら下駄箱へ走っていく。
スパーダの友人が後ろで不思議そうにスパーダを見ている気配がする。
けど、今のスパーダに気にする余裕はなかった。
――何でもねぇ!
―――何でもねぇ!!!
スパーダは心の中で何度もそう叫びながら――――――それでも、確かに自分の中で何かが起こっているのを感じていた。
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TOI-Rの現代パロ3話目です。 | ||
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