偶然 |
その日、スパーダはいつものように河川敷の野原の上で寝転がっていた。
ただいつもと違うのは、いつもならただ時間が過ぎるのを待っているのに、今日はたった一つのことを考えていることだった。
(「何だったんだ・・・・・・?」)
スパーダはこの前の学内交流のことについて考えていた。
校舎の隅で泣いていた少年がたまたま同じ班だったこと――
その少年にドッジボールが上手くなる方法を教えたこと――
勝てなかったのに悪い気はしなかったこと――
少年にお礼を言われたこと――
―――‐そして、お礼を言われたとき、自分の中に湧き起った感情
(「・・・何だったんだ・・・?」)
スパーダはただそのことを考えていた。
考えていると――‐
「スパーダ!!」
スパーダが今まさに考えていた少年の声が聞こえた。
スパーダは驚き、声のした方向を見た。
「――――ルカ!?」
少年―‐ルカが、スパーダのところへ駆け寄る。
ルカの方もスパーダがいることに驚いているようだった。
「スパーダ!何してるのっ?」
ルカは息を切らせながらスパーダのところへ走ってきたが、スパーダに会えたことに喜んでいるようだった。
スパーダはスパーダで、ルカが自分のところへ走ってきてくれたこと、自分に会ったことに喜んでいるようであることが嬉しかった。だが、感情を素直に示すのが苦手で、素っ気ない態度をとってしまう。
「別に・・・何もねぇよ・・・」
スパーダのそんな態度で、ルカは自分が何かしてはいけないことしてしまったのかと慌てる。
「あっ・・・えと・・・ごめん・・・・・・」
ルカが落ち込むと、スパーダの方が慌ててしまった。
「!?・・・あー・・・悪い・・・。別に怒ってるわけじゃねぇから!寝てただけだよ」
ルカはスパーダが怒ってないことに安心したようで、再び笑顔になる。
スパーダはルカが笑顔になったことに安心しながらも、少し落ち着かない気分になってしまう。スパーダは、こんな純粋でまっすぐな笑顔を向けられることに馴れていなかった。
ルカはそんな笑顔のままスパーダに話し続ける。
「ねえ、今から僕たちと買い物に行かない?」
「え?」
スパーダはルカの突然の提案に思考がついていっていなかった。
ルカは話を続ける。
「あのね、僕とコンウェイ、今から夕ごはんの買い物に行くところなんだ!スパーダも一緒に行こうよ!」
ルカは説明しているつもりなのだろうか。だが、全然説明になっていなかった。
コンウェイって誰だ、スパーダは疑問に思いながらルカの周りを見渡す。すると、ルカの方へ歩いてくる一人のキレイな青年がいた。こいつがか、とスパーダが思って尋ねようとしたが
「やあ、君がスパーダくんかい?」
コンウェイの方が先にスパーダに尋ねた。
「ああ」
スパーダはコンウェイに対してぶっきらぼうに応えた。別にコンウェイが嫌いというのではなく、初対面の人間に対して警戒心が強いだけだ。
コンウェイはスパーダの態度に対して気を悪くしたようでもなく、笑顔のままスパーダに話し続ける。
「僕はコンウェイ。よろしくね。ルカくんから聞いてるよ。この前はルカくんの面倒を見てくれてありがとう」
コンウェイの態度は丁寧なものだった―――‐だが、スパーダは気に食わなかった。コンウェイの態度ではなく、その「言葉」が。
(「面倒を見てくれてありがとうって、何だよ・・・?」)
コンウェイのその言葉に、スパーダはイラついていた。
コンウェイはスパーダのそんな様子に気づいていた。
スパーダとコンウェイの間の空気が悪くなろうとしていたところ――‐
「ねえ、一緒に行こうよ!」
ルカの声が、そんな空気を柔らかいものにした―――
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TOI-Rの現代パロの6話目です。 | ||
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